暗闇のスキャナー (詳細)
山形 浩生(著), フィリップ・K・ディック(著)
「他人の苦しみに胸を痛めるということ」「ドラックにずぶずぶの日々に泣く」「悲しい物語です」「プライマル・スクリームもインスパイアされてます。」「頭一つ二つ」
流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF) (詳細)
友枝 康子(著), フィリップ・K・ディック(著)
「ネタばれになるので書けないのが惜しい、すごいアイデア」「ベスト3には入ると思う」「混沌として謎に満ちた悪夢を描く奇妙な物語」「ディックの本でいちばん好き」「叙情的」
パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 (ハヤカワ文庫 SF (590)) (詳細)
フィリップ・K・ディック(著), 浅倉 久志(翻訳)
「私が愛するレビュー不可能作家、ディック!」「最重要作品の一つ」「何度読んだか」「現実の中で希望を持って生きる事の大切さ」「なぜ再読に耐えうるのか?」
去年を待ちながら (創元推理文庫) (詳細)
フィリップ・K・ディック(著), 寺地 五一(翻訳), 高木 直二(翻訳)
「ラストのセリフが秀逸!」「若干ネタバレ」「個人的には高く評価したい」「別れられない男」
ヴァリス (創元推理文庫) (詳細)
Philip K Dick(著), フィリップ・K・ディック(著), 大滝 啓裕(翻訳)
「前衛小説なのかも」「異色の宗教SF」「。。。」「バカバカしくて良い」「バカバカしくて最高」
逆転世界 (創元SF文庫) (詳細)
クリストファー プリースト(著), Christopher Priest(原著), 安田 均(翻訳)
「SF史上最高の奇想」「好きなSFの一つです」「マニアな唯一無比の作品」「サンリオSF文庫の傑作」「これは"現実"のことじゃないのか?」
スペース・マシン (創元推理文庫 655-1) (詳細)
クリストファー・プリースト(著), 中村 保男(翻訳)
「完成度とエンターテイメントのバランスが最高」「ロマンあふれる傑作」
スロー・バード (ハヤカワ文庫SF) (詳細)
イアン・ワトスン(著), Ian Watson(著), 佐藤 高子(著)
ヨナ・キット (サンリオSF文庫) (詳細)
イアン ワトスン(著), 飯田 隆昭(翻訳)
「魂の交感とは」
火星兵団 (海野十三全集) (詳細)
海野 十三(著)
ゲイルズバーグの春を愛す ハヤカワ文庫 FT 26 (詳細)
ジャック・フィニイ(著), 福島 正実(翻訳)
「三大感涙本のひとつ」「時のかなたへの憧れが心に静かに満ちてくる作品集」「珠玉の作品ぞろい・・・『愛の手紙』は宝物です」「ファンタジイへの扉」「セピア色の手紙から・・」
マイナス・ゼロ (集英社文庫 141-A) (詳細)
広瀬 正(著)
「昭和SFの最高峰」「素晴らしい小説」「日本長編SFベストワン!」「時代が追いついてきた!」「タイムトラベルSFの極み。」
タイムマシンのつくり方 (集英社文庫 ひ 2-6) (詳細)
広瀬 正(著)
「タイムトラベルの聖書」
サンディエゴ・ライトフット・スー (サンリオSF文庫) (詳細)
トム・リーミイ(著), 井辻 朱美(翻訳)
「再刊してほしい一冊。」「幻の作家の幻の作品集」
アンティシペイション (サンリオSF文庫) (詳細)
クリストファー プリースト(編集), 安田 均(翻訳)
火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114) (詳細)
レイ・ブラッドベリ(著), 小笠原 豊樹(翻訳)
「世に心を動かされるSFは数あれど」「詩情が煌めく珠玉のオムニバス短篇集」「故郷に帰ろう」「心優しい火星人」「幻想の詩人」
解放されたSF―SF連続講演集 (KEY LIBRARY) (詳細)
ピーター・ニコルズ(編さん), 浅倉 久志(翻訳)
モンゴルの残光 (講談社文庫) (詳細)
豊田 有恒(著)
「いまや日本SFの古典」
崑崙遊撃隊 (ハルキ文庫) (詳細)
山田 正紀(著)
「もっと読んでいたかった」「アンバランスな面白さ」
ツングース特命隊 (講談社文庫) (詳細)
山田 正紀(著)
天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF 474) (詳細)
フレドリック・ブラウン(著), 田中 融二(翻訳)
「ブラウン・マニア必読」
時間線を遡って (創元SF文庫) (詳細)
ロバート・シルヴァーバーグ(著), 中村 保男(翻訳)
「時間旅行の不埒な傑作」「18禁。」
ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237) (詳細)
スタニスワフ・レム(著), 飯田 規和(翻訳)
「結局は人間て・・・」「必読の書」「傑作の優れた訳業」「問答無用の最高傑作」「1960年代SFの実力」
火星のタイム・スリップ (ハヤカワ文庫 SF 396) (詳細)
フィリップ K.ディック(著), 小尾 芙佐(翻訳)
「やっぱフィリップ・K・ディックでしょ。」「シュールな火星だ」「精神分裂病の如実な描写」「悪夢の世界」「サラリーマンっぽいSF」
● あかふく2
● 時空を越えて
● 気になる小説
● 記憶に残る本
● 寄せ集め傑作集
● No ordinary love(Strange love)
● SFマニア時代
● やっぱりディック
・「他人の苦しみに胸を痛めるということ」
長い間SF作家として活躍してきたディックは、晩年神秘体験をしたことをきっかけに神学的な小説に転向するのですが、これはその過渡期の作品で、一応SFに分類できるもののSF色は極めて薄く普通文学に近くなっています。延々と描かれているのはドラッグ中毒患者の悪夢のような生活です。そのような特殊の人達の苦悩を描きながら、読者に「これこそ僕たちの人生そのものだ」と思わせるところはさすがディックです。
悪夢の中でのたうち回る中毒患者たちにディックは何もしてやることができません。ただ彼らの苦しみに胸を痛めるだけです。しかし、他人の苦しみに胸を痛めることができるというのは素晴らしいことではないのか。既に何度も教えてくれたこのことを、ディックはまた改めて僕に教えてくれました。
・「ドラックにずぶずぶの日々に泣く」
ディックらしいSFを楽しみたい人にはあまりおすすめできない内容。SF的要素は多いが、ドラックに翻弄される人たちを描く、オチがいまいち不発のミステリーっていった感じなので。その分、プロットの破綻も少なく、読みやすい。しかし、☆5つをつけたのは、ベトナム戦争前後の西海岸文化好きおすすめしたいゆえ。一時期、ディックは自宅にジャンキーたちを招き入れ、自らもドラックにずぶずぶでだったそうで、その体験に基づいたらしい、哀切きわまるエピソードの数々が胸をうつ。そういう状況からサバイバーになった人の言葉は、半端じゃなく重く、その当時の友人に捧げた、ディック自身によるエピローグは、何度読んでも泣ける。
・「悲しい物語です」
多分ネットで検索していただければわかりますが、実在の人物をもとに描かれている話とのこと。これを理解して読むとゾッとする描写がたくさんあり、いたたまれなくなります。猛烈に悲しい中に救いと感動のある作品ではないかと思います。
・「プライマル・スクリームもインスパイアされてます。」
プライマル・スクリームのアルバム『イーブル・ヒート』に収録されている『A Scanner Darkly』はこの作品からインスパイアされて生まれた曲。破滅的で暴力的な歌詞が表現するディックのSF世界は、この小説をさらに加速させた感じ。プライマル・スクリームのファンなら一度読んでみてはどうだろう? 読後に襲ってくる圧倒的な不快感こそがディック小説の醍醐味だ。
・「頭一つ二つ」
ディックの作品は割と似通った内容の本が多くて、この本もそのうちの一冊ですが、いくつかの点で他のディック本よりも頭一つ二つ優れていると思います。(1)訳が良い(山形浩生氏の訳は、いつも原文のニュアンスが伝わるし、読みやすい)(2)訳者後書きが充実している(山形浩生氏の訳書は大抵そう)。これらを考慮すると、ディックを読もうという人はまずこの本から入ると良いでしょう。
・「ネタばれになるので書けないのが惜しい、すごいアイデア」
ネタばれになるので言えないのですが、主人公が陥った悪夢の正体は、あっと驚くもの。そのアイデアだけでも読む価値あり。主人公が陥る、密告の罠や警察との駆け引きなど、神経症的な監視社会の描写は異常にリアルで、スリル満点。執筆には、ディック自身がFBIに日常生活を監視されていた経験が生かされているらしいそうですが、その過剰なリアルと、悪夢を生んだ奇抜なアイデアがうまく融合して、一気に最後まで読ませます。全編、これぞディックというまさに悪夢の世界ですが、終盤で出てくる、タイトル通りの涙あふるるシーンがある種のカタルシスになっていて、読後感は割とすっきり。最後に人間性と非人間性の妙な共存というディック大好きなテーマが現れて、うまくまとまっています。
・「ベスト3には入ると思う」
三千万の視聴者から愛されるスーパースターのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安宿で目覚めた。身分証明書もなくなり、誰も自分のことを知らない。そればかりか、国家のデータバンクにも彼に関する記録は存在しないのだ。 この世界では彼は「存在しない男」なのだ! 悪夢の突破口を必死で探し求めるタヴァナー。タヴァナーに興味を持ち、彼を追うバックマン警察本部長。果たして結末は? 目が覚めたら、誰も自分のことを覚えていないというアイデアはとりたてて珍しいものではない。追う者と逃げる者との両面から「サスペンスフルな逃走劇」を描くというのもありがちである。しかしディックは通俗的な設定から極端に異様な世界を作り出した。にも拘わらず、この世界こそが我々の生きる世界の真の姿なのだ。二転、三転する劇的展開から浮き彫りにされるのは、頼りなく、それでいて圧倒的な力で我々を弄ぶ「現実」の不条理性だ。「現実」を生きることのやるせなさが全篇を覆っている。 我々がこの絶望的な状況を切り抜けるにはどうしたらいいのだろう? 切り抜けられないまでも、何とか生きていくにはどうしたらいいのだろう? ディックはこの作品で答えを掲げている。それは愛であり、感情移入だ。精神的・感情的な意味での他者との連帯こそが我々を絶望から救う唯一の手段なのだ。 ディック文学の到達点を示す傑作。1975年、ジョン・W・キャンベル記念賞を受賞。
・「混沌として謎に満ちた悪夢を描く奇妙な物語」
原題は「FLOW MY TEARS, THE POLICEMAN SAID」。
世界設定が混沌とした近未来のためSFっぽいが、奇妙な因果律を奏でる純然たるファンタジー。主人公タヴァナーは原因不明の奇妙な悪夢に落とされ、その中でもがく姿が非常に悲劇的で同情を誘う。謎の核心に近づいていく展開が見事な物語性を発揮しながら、タヴァナーと出会う登場人物たちは非常に奇妙にもかかわらず、魅力的できちんと現実感がある。最後の最後で推測される因果律(謎)は、分かっても分かりたくない不条理感たっぷりであるにもかかわらず、結末は見事であった。
世界設定は混沌とした近未来であり、物語全体に悪夢感が分厚い雲のように垂れ込める。そして登場人物がハチャメチャという点が本作品の著者ディックの作品によく登場するため、ディックらしい作品と言える。その一方で、起承転結やテンションコントロールがきちんと構成され、読後に雲が晴れるような爽快感を与えてくれ完成度は非常に高い。あまつさえ、本作品では、エピローグまであるのだ。誠にディックらしくない。
思うに、物語を通して語られる主題は愛の形、幸せの形とは一体なんであるか、という点であろう。登場人物同士による関係の破綻がいくつも繰り返された最後に、そこに当り前のようにあるべき存在として描かれた花瓶が、最後の答えを訴えかけるようである。
何度も読み込む本ではないが、ファンタジーが理解できる人には、ぜひ一度は読んでもらいたい名作である。
・「ディックの本でいちばん好き」
ディックの中では割と異色な作品かも。どうしても割り切れない感じが好きです。あとこの作品で出色なのが女性の描き方。主人公が関わっていく女性達が皆ひと癖あり、そのややこしさが主人公を取り巻く悪夢のような状況とリンクしてます。「暗闇のスキャナー」と並ぶディックの裏ベストだと思います。
・「叙情的」
ディック作品の中ではプロットの破綻の少ない作品。もっとも充実していた時期に書かれた作品であることもあり、完成度が高い。
●パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 (ハヤカワ文庫 SF (590))
・「私が愛するレビュー不可能作家、ディック!」
ディックの作品は難しいのだ。私も10代前半の頃から読んで20年来のディックの大ファンで作品もほとんど読んでいると思いますが、はっきり解説しろと言われても出来ません。どの作品も理詰めで読んでいっても破掟してくる部分がいくつも出てくる。ほったらかしの伏線も山盛りだ。私も昔は「ディックってアイデア一発勝負の適当作家、しかも天才的な適当さ」みたいに思う事もありましたが、そういう意味では潔癖で頭の固い方からはろくな評価は受けないだろうし「ディックとバラードだけは読むべき価値のあるSF作家だ」とか言っている海外の文学評論家もいたと思いますが、そんな事言う人なんて漠然としか分かっていない。いや全然理解していない、ただの分類マニアだ。私も「ディックとレムだけは読んどけ」と言いたいのでまあ同類の分類マニアかもしれない。後書きにも有名な人達のディック評がいろいろ紹介されているけど、自分なりに皆さん理解しようとしているのがありありと分かる。どれも帯に短し襷に長しといった感じだが、「実存の苦悩」を表現すべくどこからとも無く指し示される様々な方向性、始点を与えられたアイデアを無限に放出し、作者自ら手探りしもがいている様な作品の数々ではあると思います。それでいて、多作の職業作家らしくラストは無難に無理矢理まとめてくるので余計に混乱するのだが。最後にディック自ら曰く、この作品の序文「人間が塵から作られた事をよく考えてみなくちゃいかん。元がこれではたかが知れとるしそれを忘れるべきじゃない。そんなみじめな出だしのわりに人間はまずまずうまくやってきたじゃないか。だから我々が今直面しているこのひどい状況もきっと切り抜けられるというのが私の信念だ。わかるか?」この序文にこの作品の全てが要約されているらしいです。分かった?分からない?じゃあもう一度最初から読み直そう。私も永遠に読み返すから。
・「最重要作品の一つ」
以前、利己的遺伝子説という学説が有名になり、その中に、遺伝子に変わりうる、人間の脳を媒体とする自己複製因子、「ミーム」の学説があった。ミームとは、脳を媒介して人間達の中に広がっていく何か、という意味で、言葉でも文化でも音楽のフレーズでも「ミーム」なんだけど、神もまたミームと考えることができるという。この学説で考えれば、神は、人間の脳を媒体として繁殖する、強力な自己複製因子(ミーム)ということになる。「リング」の貞子も、そうした意味では、呪いのビデオを見た人間の脳を媒介して繁殖していく、自己複製因子(ミーム)であり、絶滅された天然痘ウイルスの繁殖願望と合体した、恐ろしい魔女と言えるかもしれない。その貞子の何百倍も恐ろしい、文字通りの神(=悪魔?)が、このパーマーエルドリッチ(あるいは宇宙の彼方で彼に憑依した何者か)だと思う。それは、麻薬のフラッシュバックという症状の、侵食された現実に食い込んで、人類の脳の中で異常な繁殖を成し遂げていく。特に、いきなり現実に、エルドリッチの魔の手の幻覚が入り込んでくる、フラッシュバックの描写は、生半かな怪談など及ばないほど、ぞっとさせられるもので、すごいと思う。この物語は、様々な予言、可能性の段階で終わる。現実と幻想、希望と絶望、それらの異様この上ない「ない混ぜ状態」で終わる。ディックの一番根本的な要素を全てひっくるめた、彼の最高傑作のひとつだと私は思う。
・「何度読んだか」
ディックの長篇の中でも特に好きな一冊です。これ読んで泣くのは私ぐらいなのかな?
・「現実の中で希望を持って生きる事の大切さ」
作者のいつもの特徴であるが、SFの設定を借りて、現実社会のあり方、その社会の中での人間模様を描いた秀作。本作は特に道具立てが豊富である。灼熱地獄にあえぐ近未来の地球。太陽系内の惑星や月に開拓者に送り込む国連。その開拓者相手に束の間の夢を見させる非合法ドラッグ(キャンDと言う名前がオカシイ)を販売する会社。その会社で将来売れる商品を見極めるために雇われている予知能力を持つ主人公。そして極めつけは、異星から返って来たエルドリッチという謎の怪人。彼は本物のエルドリッチなのか、それとも異星人に体を乗っ取られた化け物なのか ? そして彼が持ち帰った「チューZ」という新タイプのドラッグ。
「チューZ」を服用すると、そこは多次元宇宙のようになるのだが、通常の多次元物と異なるのは誰が服用しても、その世界が常にエルドリッチが支配する世界となるのだ。白昼夢なのだが恐怖と戦慄の世界。本薬を常用すれば、全ての世界がエルドリッチに支配されてしまうのだ。この陥穽から逃れる手段は ? 作者はこれに対して、特異な解決策を提示せず、人々が希望を捨てず地道に生きていく姿を描く。
登場人物が多いせいもあり、各々に対する書き込みが必ずしも充分とは言えず、また本質的ではないエピソードも多く含まれており、全てのパズルがピッタリ嵌っている訳ではない。しかし、却って曖昧模糊とした現実認識の危うさを表現しているとも言える。幻想的な多次元宇宙を扱って、現実認識の重要性と希望を持って生きることの大切さを描いた傑作。
・「なぜ再読に耐えうるのか?」
なぜこんなにも再読に耐えられるんだろう?本当にわからない
エ○○○○チから人類への警鐘なのか侵略なのかおふざけなのか商品紹介なのか全部の解釈が同時に可能って困る
・「ラストのセリフが秀逸!」
内容はいつものディック小説。ほかの方のレビューどおり。しかしラストの主人公とある物との会話は、何度読み返しても疲れた心に響く。
無生物を描かせてこの作家の右に出る方はいまだ知りません。
・「若干ネタバレ」
最近あった政治的なドタバタとめっさリンクしてるなぁと思ったいやこっちが早いんだけどね
とにかくSF読みは必読陰謀論好きも必読 偉い人の仕事はいろいろあるんだよ 暗殺されたり病死したり というお話
・「個人的には高く評価したい」
彼の作品ではお馴染みの、受動型で流され易い(おまけに絶望している)現代的ダメ男の主人公が、滅茶自分とリンクしてて好きです。
ディック本人、この作品を気に入っていたようです。彼の作品の身内ネタ的な人間臭さが好きな人は、気に入るはず。
・「別れられない男」
1966年発表。この作品の以後に、「ザップ・ガン」、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」などが発表される。
2055年。地球はリリスター星と同盟契約を結んだ為に、リリスター星が敵対するリーグ星人との戦争に巻き込まれていた。この星間戦争を指揮する地球側の最高責任者は国連事務総長ジーノ・モリナーリという人物で、彼は病身で老骨な身体で過酷な任務をこなしているのであった。人口臓器移植医エリック・スイートセントはある日、モリナーリの専属担当医に抜擢された。エリックにはキャサリンという妻がいるのだが、二人の夫婦関係は不和状態が続いており、エリックは妻と別れるかのようにモリナーリの担当医スタッフに加わる為にシャイアンへ向かった。その孤独感からかキャサリンは禁断のドラッグJJ180を服用してしまう。JJ180とは軍事兵器用として開発された非常に中毒性の高い幻覚剤で、その幻覚とはドラッグ服用者を過去や未来へとタイム・スリップさせてしまうのであった。エリックは妻とは不仲であったが彼女を見捨てる事が出来ず、JJ180の中毒者となったキャサリンを救う為に、自らもJJ180を服用しながら危険なタイム・スリップを試みる。 タイム・トラベルによるパラレル・ワールドを描いたSF作品だが、主人公エリックの妻に対する愛惜感溢れる心情の方がストーリーの大部分をフィーチャーして描かれている。実際、タイム・トラベルを描いた部分や仕掛けにはご都合主義的で不整合さが若干感じられる。そもそもタイム・スリップの方法が特殊なドラッグを服用するというのだから変わった設定だ。その他、惑星間同士の戦争の隠された策謀を暴くというモチーフもあるにはあるが、なかなかスリリングだったその展開は最後の方まで生きてこない。それよりも妻の救済を重要視する主人公。それも別れたいけど別れられないという半分ウジウジした心情のままで。でも、それって実際の夫婦間のよくあるケースだからリアルな説得力を感じてしまったが。
・「前衛小説なのかも」
ディックの作品中一番やっかいな本だと思います。とりあえず普通の小説の常識から逸しています。そもそもこの本は作者自身の霊的体験の小説化であり、作者が記した「釈義」が小説の後にまとめて添付してあります。
そういうわけで、小説部分も殆ど主人公による神学的思索を追ってる感があり、実際読んでてもわけがわかりません。どうやらグノーシス主義の2元論的宇宙観が、ディックの神学の基盤になってるように思われますが、普通の読者はそんな話しにはとてもつきあっていられないでしょう。
とは言え、ディックを理解したい人には絶対はずせない作品と思われます。ある意味ディックの作品中一番肝心な作品ではあると思います。
ただし、小説自体もSFではなく純文学か前衛小説だと思えば、面白いっちゃあ面白いです。(そもそもSF的ガジェットが少ない小説です。)特に1章から8章までは文体も「暗闇のスキャナー」から踏襲している独特の感じがなかなか個性的な雰囲気で良いですし、70年代のアメリカを舞台にした前衛的私小説であると捕らえたら、かなり魅力的な小説であると思います。
また一人称である「わたし=PKディック」と主人公のホースラヴァ-・ファットの関係は、小説的処理がとても面白く、はっとするような書き方をしていて、ちょっと他の小説家の作品では読めない面白さがあります。
まあ、そういうわけで「ユービック」みたいな、例の「ディック・ワールド」を楽しみたいという方には向きませんが、「ディック・ワールド」を哲学的に考察したい人や、風変わりな小説が好きだという人は何度も読み返せる作品です。そういう意味ではすごくいい本なので星5つです。もしかしたらディックの作品の中ではプロパーとは反対の意味での、「高級感」が一番ある作品かもしれません。
・「異色の宗教SF」
カリスマSF作家、ディックがキリスト教の異端・グノーシス主義を元に造り上げた、異色の宗教SF。前衛的な手法を駆使した実験文学とも言えるが、私はむしろディックが《神》に対して捧げた、哀切な《祈りの書》として読んでいる。切なさが心地よい、ある意味、感動的な傑作です。
・「。。。」
今から10年くらいまえ、数ページ進んだところのある記述で「がん!」と衝撃を受けてしまい、それ以後しまいまですごく丁寧に読んだ記憶があります。最近、くだんの部分を読み返してみましたが、「がん!」はありませんでした。いずれにせよ、熟読する時間のある方におすすめ、かな。
・「バカバカしくて良い」
本書中に頻出する釈義に、まともに付き合おうとすると読了に困難をきたすが、その辺とは適当に付き合いつつ読み進めると、基本的には大変バカバカしくて可笑しい作品だということがわかる。阿部和重が「アメリカの夜」で、大量に本書からの引用をしているけど、面倒臭そうでいてストーリーはバカバカしくて面白い、という路線も引き継いでいるので、「ヴァリス」が気に入ったならば、こちらも読んでみると良いでしょう。その他にも大きな類似点あり。
・「バカバカしくて最高」
本書中に頻出する釈義に、まともに付き合おうとすると読了に困難をきたすが、その辺とは適当に付き合いつつ読み進めると、基本的には大変バカバカしくて可笑しい作品だということがわかる。
阿部和重が「アメリカの夜」で、大量に本書からの引用をしているけど、面倒臭そうでいてストーリーはバカバカしくて面白い、という路線も引き継いでいるので、「ヴァリス」が気に入ったならば、こちらも読んでみると良いでしょう。その他にも大きな類似点あり。
・「SF史上最高の奇想」
とにかく、この作品の奇想は見事の一語。アイデア派のワトスンに対してスタイル派と言われたプリーストだが、どうしてどうして、この作品のアイデアは図抜けている。ストーリーといい、キャラクターといい、異様な世界の全貌が徐々に明らかになっていく後半の描写といい、ラストのドンデン返しといい、ほとんど完璧。むちゃくちゃ好きです。
・「好きなSFの一つです」
SFを読まなくなって数年。何がきっかけかは忘れましたが、サンリオ文庫版を手に取りました。
「SFってこんなにおもしろかったんだ」と感激したのを覚えています。抜群の発想と展開。サンリオ文庫はなくなり、この本も絶版となってしまいましたが、この本は宝物。
創元で改めて出版されたこの本、騙されたと思って読んでください。SFが好きな人なら決して後悔はしないはずです。
・「マニアな唯一無比の作品」
おもしろい。閉じられた世界で、太陽は丸いと教えられ、それが現実(の知覚)と異なることを経験し、それを自己で昇華していく。その過程で、自分の、地球市の価値観を体現し、その実践者となる。ところがである。最後に、それがまっさかさまに崩れ散ってしまう。文中にSFらしい記述が散りばめられているけれど、それを楽しむのもよし。だけど、現実の我々の世界でも、このような価値観の逆転はいっぱいあるのではないだろうか。SF的にはラストがちょっとしょぼいけど、人生観の逆転を認識する瞬間の文章に感動しました。唯一無比の作品だと思います。
・「サンリオSF文庫の傑作」
今はなくなったサンリオSF文庫の傑作でした。表紙のイラストも素晴らしく、プリーストの世界がこの本に集約されていると言っても過言ではありません。奇抜な発想の元で展開される世界ですが、映像化されるとみんなの度肝を抜くものになるはずです。今では隠れた名作になっていますが、もっともっとみんなに読んで欲しい作品の一つです。
・「これは"現実"のことじゃないのか?」
何の先入観もなく、"最高傑作"との"裏書き"で手に取った。序盤、冗長で有体な設定に思える部分もあり(意図的か?)休み休み読み進んだが、作品世界同様"終末"に近づくにつれ加速度的に謎や構造が明かされて行く件(くだり)は圧巻と言っても良いだろう。読みながら"Inverted" という言葉に対応する正確な日本語を探そうとしている作品世界から離れた現実の自分も楽しめた。読後しばらくして、実は作者は虚構世界を通じて、現実の世界を描いているのではないかと思った。わたしは現社会に眩暈を覚えること多々の"相対的神経症"(と言い張りたい!)なのだが、作品には"救い"も感じられ、マニアでないと理解できない単なるSFの領域を超えていると思われる事も嬉しかった。個人的には、クリス・ボイスのキャッチワールド以来の既成概念がひっくり返される作品で、自身の現状と照らし合わせても、印象深い作品となった。映像化は困難だと思われる"文学"作品(世界はあくまで各個人の表象だから)なので、多くの人に読んで欲しいです。
・「完成度とエンターテイメントのバランスが最高」
プリーストは非常に高いポテンシャルを持つ作家だと以前から思ってはいたが近年の奇術師以降の諸作品ではSF作家という枠を越えて出世してしまった。そのプリーストのSF作家としての最高傑作は本作ではないかと思う。ウェルズ作品へのオマージュであると同時に、プリースト世界としか言いようのない上質のブリティッシュSFのタッチを持つ作品世界の広がりと実在感に満たされてアッという間に読み終わってしまう読書時間の心地良さが素晴らしい。エンターテイメント性が高いが、プリーストの持つ高い完成度も両立されていて、それでいて構えて読みにくいようなことはない。
・「ロマンあふれる傑作」
今では主流文学界からも評価される作家となったプリーストだけど、これはスリルに満ちた冒険SF。といってもやはり普通のSFじゃなくて、H.G.ウェルズの「タイムマシン」や「宇宙戦争」の世界を舞台としたパスティーシュ小説でもある。 プリーストの中でも、面白さと実験的なところが一番よく組み合わさった傑作だと思う。 とにかくロマンと郷愁にあふれた娯楽小説として堪能した。
・「魂の交感とは」
75年のイアンワトスンの作品。夢野久作の「ドグラマグラ」を連想する。しかし「ドグラ」よりも読みやすく、しかし論理的でかつ深遠であり幅広い思想を内包しているといった感じである。人間は頭の中の考えを言葉や手に触れる物を媒介して他人との意思疎通を図るが、鯨は音波によるテレパシーと言ってもいい直接他者との思考交換、意思疎通が出来る。概念自体が違う。人間のやり方では異なった人同士が同じ地で心を分かち合う事など出来ないという事を、ビルの違った窓からは何も見えないという風に例える。かと言って、鯨の様に全ての同種と思想的に共存出来たら、この結末の様に一気に絶滅への道を辿るとも言っている様だ。科学者ハモンドが提唱する新発見は地球上の人間に大きな衝撃を与える。しかし現実に生きる人間や生物というのは自分の周りの常識が真実であり、シュレディンガーの猫のパラドックスなど関係が無い。観察者が選ぶ道が真理である。レミングの様な種族レベルの生理機能では無いのなら、鯨の集団自殺はパラレルな世界を知ってしまったからとも、人間社会を知ったからとも、人間の頭脳を移植された鯨ヨナの意識が全体に波及した結果とも取れる。牧師は神の救世を説き、カーチャは「悪霊」のスタヴローギンに例える。日本の漁師はアメリカに支配された我らの様に鯨も人間に身体を乗っ取られたから自殺したんだと、三島由紀夫にかけて言う。イアンワトスンは神学的な見方もナショナリズム的な見方も非難しているかのようでもある。ただ日本に関する所は少しおかしいかなという所も感じるが、許容範囲ではある。そして植物人間となったヨナの人間部分は何を思うのか?認識と実存をこの様なアイデアSFで人間社会の問題も踏まえて展開する所が凄まじく、しっかりと纏まっているのがまた凄い。人間クジラヨナの深海を葛藤しながら泳ぐ描写も詩的で素晴らしい。イアンワトスン、凄い作家だ。
・「三大感涙本のひとつ」
ファンタジーの定番である。時間を戻すことに執念を燃やした作家ジャック・フィニィの傑作短編集が本書なのだ。過去には郷愁がつきまとう。ジャック・フィニィがノスタルジーの作家といわれる所以だ。この短編集に収められている短編のすべてがそういう話ではないのだが、どうもノスタルジーがこの作家の匂いになってしまってるみたいで、どの短編を読んでもその匂いはする。これが本書の最大の魅力だろう。やさしさにも似た郷愁やロマンティックな香り。それを最大限に味わえるのがこの短編集なのだ。中でも一番ノスタルジックでせつない作品はといえば、やはり「愛の手紙」だろう。この作品のことを悪く言う人とは口を聞きたくないと思ってしまうくらいだ。なんてやさしくて、せつなくてロマンティックな話なんだろう。これ一作だけでフィニィのことを好きになってしまうくらいだ。その他表題作も素晴らしいが、なんといっても印象深いのは「大胆不敵な気球乗り」である。このイメージは素晴らしい。夜空に浮かぶ気球のイメージがいまでも脳裏からはなれない。もう読んだのがン十年前なので、確かでない部分もあるかもしれないが、とにかくこの短編集はオススメである。なんせ、ヤングの「ジョナサンと宇宙クジラ」、ティプトリーの「たったひとつの冴えたやりかた」と並んで三大感涙本としてぼくの記憶に刻みこまれている本なのだから。
・「時のかなたへの憧れが心に静かに満ちてくる作品集」
タイム・トラベル小説の素敵な魔法使い、ジャック・フィニイ。タイムトラベルとロマンスをブレンドさせた多くの作品のなかでも、本短篇集に収められている「愛の手紙」と、ロバート・F・ヤングの短篇「たんぽぽ娘」の二篇は殊に忘れられない。 三年前の1957年に刊行された著者の短篇集『レベル3』が異世界とのコンタクトをスリリングに、スリラー風のタッチで描いていたのに比べて、『ゲイルズバーグの春を愛す』(1960年刊行。それにしても、なんて素敵なタイトルなんだろう)では、時のかなたへと旅立ち、溶け込んでいく人たちの姿が、これ以上ないというくらいあたたかく描かれている。「ノスタルジックに過ぎる」「単なる逃避でしかないよ」と嫌う方もいらっしゃるだろうけれど、わたしはそこが素敵だと思う。過去への憧れを、タイム・トラベルというロケットに乗せて打ち上げる作者の思いが、この宝石箱のような短篇集の中で輝いているような気がして仕方がない。収められた10の短篇のなかでも、「クルーエット夫妻の家」「大胆不敵な気球乗り」「愛の手紙」が好きですね。 内田善美さんの手になるカバーの絵もいいですねぇ。氏の“ゲイルズバーグ・ストーリー”、四つの作品を収めた漫画『かすみ草にゆれる汽車』も、機会がありましたらぜひ!
・「珠玉の作品ぞろい・・・『愛の手紙』は宝物です」
もっと早くにフィニイの作品と出会えばよかったと後悔しています。
読後3日たつのですが,『愛の手紙』について,仕事中も思い出してしまいます。気持ちを相手に伝える機会が,向こうからは3回。こちらからは2回しかありません。こちらからの3回目は相手に届かないのです。(届かないのですが,ある行動をとります)会ったこともなく,言葉も交わしたことのない人と恋に落ちたら,自分はどんな手紙を書くのだろう?
相手からの最後のメッセージに「とっても大切なキーワード」が添えられています。訳者(故人の福島正実さん)は何故きちんと訳さなかったのだろう?(ニュアンスが難しいです)
『愛の手紙』の原作を読んでこのキーワードの意味に気が付きました。頭を金槌で打たれました。心臓をわしづかみにされました。このキーワードを読み飛ばした僕は話の半分しか理解しなかったのです。通りいっぺんに読まれた方も,原作の意味を知ったら,きっと感銘を新たにするでしょう。A4サイズでたった9ページの短編ですが,奥の深い珠玉の輝きを放つ短編です。http://homepage.mac.com/cssfan/jackfinney/sep590801016.htm
ヘレンの「50年にもおよぶ誠」が凝縮された言葉なのです。(そして彼女のフルネームにもご注意)彼女が「初恋に殉じた愛の証」の言葉なのです。主人公ジェイクにとってはたった数日間でも,彼女にとっては50年もの時の流れの中,誠を貫き通したのです。あー,福島さん,とってもとっても大切な言葉なんだよ!
ヘレンが誠を貫いたことに心を打たれるのです。時の壁の無常に心を打たれるのです。単に「時間を超えた不思議な文通」というお話だけじゃないのです。不思議な文通話の書評は「話半分」です。あー,せつない,せつない。この文章を書いている今も胸が詰まります。
この作品は決して通勤電車なんかでは読まないでください。ジェイクとヘレンがそうしたように,家人が寝静まった深夜,ひとり枕元のスタンドの灯りでお読みください。そして二人のかなわぬ恋に思いを馳せてください。
僕にとって,『ふりだしに戻る』のジュリアに加え,ヘレンという新しい恋人ができました。
・「ファンタジイへの扉」
懐かしくて優しくて、そして不思議な10の物語を集めた短編集。でも、その「不思議」は私が心のどこかで望んでいたものかもしれない。そんな気持ちにさせられました。当たり前の日常から抜け出す、ほんの小さな扉。それは私たちのすぐ側にあるのかもしれません。少しばかり疲れていた心が、ほっと温かくなりました。
・「セピア色の手紙から・・」
街の骨董品店で買った机の抽斗(ひき出し)に眠っていた、一世紀も昔の手紙。そのセピア色の手紙から始まる“甘くほろ苦い一つのラブストーリー”。この本を読んで、本のタイトルにもなっている“ゲイルズバーグ”に行ってみたいなぁ、と衝動にかられたものです。10編の短編集で構成されていますが、それぞれのお話しに、ノスタルジックな“不思議な世界”が、展開されます。内田善美さんの表紙がレトロロマンティックな味わいを添えていて、ファンタジーがお好きな方にはかなりオススメするところです!
・「昭和SFの最高峰」
わずか47歳にしてこの世に別れを告げた不遇の作家・広瀬正。彼の経歴や作品群の書評は著名な作家などによって、また広瀬フリークとも呼べる人々によって語られているので、ここでは彼の処女長編であり日本SFのタイム・トラベル物の金字塔である「マイナス・ゼロ」に対する私見をとりとめもなく綴っていこうかと思う。
SFの中にタイム・トラベルと呼ばれるジャンルがある。SFが誕生して以来、数多くの名作が生まれてきているが、なぜかくも多くの作家がこのジャンルに惹かれたのであろうか。
文字通り、現在を軸にして過去に遡ったり、また未来に行ったりと、時間という次元を背景にした、ようは
「たら・れば」の世界における歴史小説
だからなのだ。
文学のジャンルを問わず作家とは、元来歴史が好きな生き物なのである。いや歴史に対して過剰なまでの関心を持つからこそ、それに溺れる者は歴史小説をメインに書くようになり、そうでない者は意識的に無視しようとするのだ。 作家たるもの一度くらいはタイム・トラベル物の作品を書こうと試みるのではなかろうか?
正統な歴史小説や時代小説は史実に基づき時代考証をなされた上で書かれるものである。 だからせいぜい「〜かもしれない」という想像は働かせても構わないが、「もし〜だったら」とか「あの時〜してれば」のような要素を入れてしまうともはやそれはSFになってしまうのである。
「マイナス・ゼロ」は昭和初期の2度に渡る世界大戦前および戦後の経済成長期の東京に住む市井の人々の日常生活や当時の風俗が主人公・俊夫の目を通して広瀬の調べに調べ上げられた緻密な取材に基づいて生き生きと描かれている。 銀座や日本橋の街並みの風景描写にある種のノスタルジーを感じる人は多いであろう。 このごく普通の世界を舞台にした中に「もしこうなったら、どうなっていたであろうか」と言う極めてSF的な要素を投入したら必然的にこういう作品が出来上がってしまったと言う見方も出来るかもしれない。
このジャンルの作品のストーリーを紹介するのはネタばれをしてしまう危険性を伴うのでここでは一切触れないでおく。
ただ、もし自分が主人公の俊夫だったらこれだけ時間や時代に翻弄されると言うのがいかにスリリングなものであるか、ということを共感できるに違いない。
この作品はSF界(広瀬正)から歴史小説界に対する敬愛を伴った挑戦状なのだ。
・「素晴らしい小説」
いろいろな出来事が作中でおこるが、その出来事が進むにつれてピタリピタリと当てはまっていく。最終的には全ての出来事が一本の線でつながるため、タイムマシンものの宿命であるタイムパラドックスをうまく説明し矛盾が残らないようにしているこのシナリオはもはや金字塔。
・「日本長編SFベストワン!」
今まで多くのSF小説を読んできたが、日本人が書いたもので長編の良いものが無かった。短編では数多くあるのだが・・・・。長編小説を最後まで、退屈させずに読ませるのは並の作家では出来ない。 たぶん著者はハインラインの<夏への扉>に影響されてると思うけど、それとは全く違うオリジナリティーにあふれている。
たぶん著者が、この本で描きかったのは著者の少年時代・・・昭和初期・・・戦前の良き時代だと思うけど、それがまた生き生きと描写されてて、文字通り読者をタイムスリップさせてくれる。 とにかくSF好きな方に読んでもらいたい、日本の長編SFベストワン!
・「時代が追いついてきた!」
戦前の東京への強烈なノスタルジーにあふれ、タイムトラベルラブロマンスとしても他の追随を許さないこの作品。何故、こんなに知名度が低いのでしょうか。
最近、「Always 3丁目の夕日」をはじめ、昭和へのノスタルジーに彩られた映画がたくさん公開されています。時代がようやく広瀬正に追いついてきたのでしょうか。
ジャックフィニィ、ハインライン、最近なら梶尾真治のタイムトラベルものにはまった人、是非、これを読んでみて下さい。日本のSFの最高傑作です。
・「タイムトラベルSFの極み。」
かつて日本にもこんなに面白いSFがあった。そのことが今忘れ去られようとしている気がして寂しい。ぜひ今の若い人立ちにも読んで欲しい。読み出したら、ページをめくるのももどかしい程の面白さ。そして最後にすべての伏線が一つに収れんしてゆく爽快感。これが、これこそがSFの面白さなのだ!!
・「タイムトラベルの聖書」
本作品は、短編、ショートショート等23編収録されています。ほとんどの話がこれでもかこれでもかとばかりにタイムトラベルがテーマなのでタイムマシン好きにはたまらないとおもいます。おまけにあのハインラインの「時の門」の評論まで収録されています。
・「再刊してほしい一冊。」
全編通して、いい意味での古臭さを感じた。白黒テレビ時代のSFっぽい大雑把さ、もしくは出たとこ勝負的な大らかさとでもいおうか。中でも特筆すべきは表題作。これは本書の目玉。四十五歳の女性と十五歳の少年の恋愛なんていったいどんな風に描かれるんだと眉唾ものだったが、ほんと素晴らしかった。二人の恋の結末は予想通りだが、いい余韻を残す。これがジャック・フィニイの作品だといわれても納得してしまいそうだ。完成された作品じゃないのに、ケチをつける気にならない。あと、閉塞的な村で起こるデモーニッシュな惨劇を描いた「亀裂の向こう」、死を滋養にして孵化する天使が登場し、あやしげな雰囲気が充満する夜のように完璧な作品「ハリウッドの看板の下で」、ハードボイルドの体裁で語られる変則的な吸血鬼物「デトワイラー・ボーイ」などがおもしろかった。再刊してほしい一冊だ。
・「幻の作家の幻の作品集」
作者は「沈黙の声」と本書だけを残して亡くなった。「SF文庫」ではあるが内容は幻想文学の範疇にある。表題作はネビュラ賞を受賞。ハーラン・エリスンの(例によって)長く熱い序文がついている。
・「世に心を動かされるSFは数あれど」
冷たい風の中に人肌の暖かみがさす様な本作の感動は独特です。
・「詩情が煌めく珠玉のオムニバス短篇集」
「1999年1月 ロケットの夏」から「2026年10月 百万年ピクニック」まで、火星を主題にした26の短篇が収められたオムニバス作品集。ブラッドベリにはほかにも素敵な短篇がいくつもあるけれど、たった一冊だけと言われたら、わたしはこれを持ってきます。短篇の粒が揃っていますしね、きらきらと輝く詩情の美しさ、みずみずしさ、透明感がもうほんとに綺麗。ダークなムードの作品もありますが、それもひっくるめてその宝石のような幻想の煌めきにうっとりさせられてしまうのです。 どの短篇も素晴らしいなかで、格別のテイストに酔っぱらっちまった作品を三つだけ選ぶとしたら、「夜の邂逅」「イラ」「第二のアッシャー邸」でしょうか。殊に「夜の邂逅」は珠玉の名品。サンリオSF文庫のブラッドベリ短篇集『万華鏡』で初めて読んだのですが、胸がいっぱいになりましたねぇ。数あるコンタクトもののなかでも、まず最高級の作品でしょう。 小笠原豊樹氏の訳文も、「名訳とはこういうのを言うのだろう」てなくらい見事なもの。素晴らしい読みごたえを堪能させられた一冊。
・「故郷に帰ろう」
「われらはもはやさまようまい こんなにおそい夜の中心は今なお愛に満ち 月は今でも明るいが」(本文より)
火星年代記の火星人は侵略しない。彼らはむしろ侵略され、人間の鏡であり、ある種の理想でもある。
火星へ行く、新しい土地へ行く話のはずなのに、なぜか感じるのは「故郷」「帰る場所」への人間の心だった。帰る場所、それはいとしい人間の腕の中だったり、思い出の中の生まれ故郷だったりする。たとえ別の場所にいっても、人は自分の居場所を捨てきれないのだな、としみじみ思う。
人間は、美しい火星を、地球らしく(この場合はアメリカらしく)する。また、死んでしまったはずの人間を、わかっているはずなのにそれでも望んでしまう。しかしそんな人間たちの愛すべき愚かしさを、冷笑するのではなく、火星人を通してせつなく描いているところは、まさにブラッドベリ。
「月は今でも明るいが」「夜の邂逅」「第2のアッシャー邸」が、小話として気に入った作品。いいSFである。宇宙へのロマンと、人間への愛情に満ちた目、美しい文章。ヒューマニズムに過ぎるという批判があって当然だが、それでも価値があるように思う。せつなさが、しんしんと浸みてくる良作。
・「心優しい火星人」
「火星人は宗教や・芸術と生活を混ぜ合わせることに成功した」とか「地球人が100年以上も前にストップしなければならなかったところで、ちゃんとストップした人たち」という表現がある。また、火星人は「何故生きるのか」という問いを捨てたと書いてる。なぜなら、「生そのものは、すでに良いものだったから」と説明されている。そういうところに、僕は深い感銘を受ける。
・「幻想の詩人」
地球人はロケットに乗って火星に向かった。無邪気さと無遠慮さを胸に抱きながら。しかし、第1探検隊も、第2探検隊も、第3探検隊も地球に還ってこなかった・・・・・ それでもなお、地球人は火星を目指した。そして第4探検隊が見たものは・・・廃墟と荒野だけであった。火星人はほぼ絶滅し、火星文明は滅んでしまったのだ! かくして火星は地球人のものとなった。地球人は火星へ火星へと、津波のように押し寄せた。移民してきた地球人たちは火星文明の遺物を破壊し尽くし、自分たちの好きなように火星を作り直した。しかし、我が世の春を詠う地球人たちについに報いが訪れた・・・ 精神的成熟を欠いた物質文明の発達、科学万能主義への痛烈な批判を、抒情豊かな文体と哀愁漂う優れた物語によって表現した、「SFの詩人」レイ・ブラッドベリの最高傑作。 13の短編と13の散文詩的掌篇から成るオムニバス形式の巧妙さは、O・ヘンリー賞を2度受賞した短篇の名手ならでは。オープニング、ラストはもはや芸術だ。 私は原書を読んでないので何とも言えないが、小笠原氏の訳には定評があり、本作品の翻訳も実に見事だ。
・「いまや日本SFの古典」
この作品は、著者の出世作とも言える、歴史SF・タイムトラベル物の傑作である。13〜14世紀、元帝国に世界史を覆す転換点があるという、壮大な構想のもと、白人優位の世界史、ひいては現在の世界情勢にも一考察を促す。SFが社会に持つ意義を感じさせる、豊田有恒の力量を認めさせた作品。文句無く、お薦めできる、読み継がれるべき作品。
・「もっと読んでいたかった」
著者の数作ある秘境探検ものの一冊。昭和八年、上海事変、満州国建国と動乱の真っ只中にあった中国に、男たちが集められる。日本人の青年、謎の美少年、秘密諜報員、中国人の殺し屋に馬賊の頭目。一癖二癖ある五人の男たちが、それぞれの思惑を胸に秘め、ゴビ砂漠の彼方にあるという伝説の理想郷・崑崙目指して旅立った。秘められた過去、道ならぬ恋、裏切りあり戦闘あり、怪獣も出れば神も出る。まさに何でもあり、エンターテイメントに徹した作品で、ページをめくるのももどかしく思える一作です。難を言えば、物語の展開が早すぎる感のあること。いい味を出している男が五人もいるのだから、一人一人についてもっとじっくりこってりと書いてほしかったです。まぁ、要はもっともっと読んでいたかったということなのですが。それにしても、本格ミステリからSF、冒険ものまでさまざまなジャンルで第一級のエンターテイメント作品を書き続けている著者のパワーとバイタリティーとイマジネーション、ほんと、すごいですねぇ。
・「アンバランスな面白さ」
それぞれ、過去や事情を抱えた4人の男の崑崙を目指す冒険談。
過去や事情は、ステレオタイプなもので、安心して読めました。一方で、砂漠からXXが現れたり、巨大なXXが空を飛んだりと少し「はちゃめちゃ」な面も。この「ステレオタイプ」と「はちゃめちゃ」の組み合わせで進む物語が、妙に面白い。楽しく読めました。あと、予想した男たちの最後は、見事に裏切られました。
・「ブラウン・マニア必読」
SF・ミステリの奇手F・ブラウンによる、ブラッドベリばりのロマンチックSFです。幼い頃から宇宙への憧れを抱き続けた主人公。宇宙飛行が実現間近となり、自ら宇宙船に乗り組むべく様々に奮闘するが…読後、本書のタイトル『天の光はすべて星』の意味が胸に染みこんできます。感涙。ブラウンの作品群の中でも、決して傑作ではないです。しかし、ブラウンが『斬新な着想、巧妙なプロット、あっと驚く結末』だけの作家ではないことを証明する佳作です。かなり昔、早い時期に絶版となったようですが、ブラウン好きを自認するなら必読の一冊です。
・「時間旅行の不埒な傑作」
時間旅行を扱った傑作である。時間旅行を使った遊びがたくさん出てきて、アイデアの量はかなりのものである。例えば、イエスの処刑見物ツアーのタイムパラドクス。あまりにもたくさんの未来人が見に来るので、見物者は全員未来人になってしまう。全体的には、性的な話題が多くでてくるので、要注意。自分の母系先祖すべてと性交渉をもつのが夢で、先祖の女を求めて過去へ旅しつづける男とか。浮気性で有名な中世貴族の婦人のところへ未来から浮気ツアーがやってきて、毎夜の浮気相手が未来人ばかりだとか。なんだかもう、そんなのばかりである。だが、面白いので読んでみるべきだろう。時間旅行ものの最高傑作は、この本かもしれない。
・「18禁。」
星雲賞受賞。 「克明な性描写」の作品かどうかはともかく、些細なミスを犯した一人の男がその隠蔽に失敗し、坂道を転げ落ちるように混乱の度を増していくという “ダウン系” SFの名著であることは確か。
気ダルげな主人公と皮肉たっぷりの展開、印象的な結末というストーリーには、子供の頃に濫読した星新一の作品と同様の、忘れられないおもしろさがある。 …ちなみに少年期の精神衛生上、星新一にハマッたことには深く後悔をしている。
・「結局は人間て・・・」
結局のところ人間とはなんなんだろうか、人間を愛すると言うことはどういうことなんだろうか、この、とても読後感の苦(にが)い小説をよんでますます分からなくなることばかりだ。
レム自身はこの小説を「宇宙人と仲良くなるか、勝つか、負けるか、というアメリカのSF小説への問題提起」つまり宇宙には我々の既成概念を超える形での知性があるはず、との考えから執筆したとのことだが、そのことを超えて私には、我々は(宇宙に出て行くまでも無く)自分自身について、恋というものについて、「愛」について、なんにも分かっていないのではないか、と考えさせられた。惑星ソラリスは主人公に、昔の恋人のレプリカを与え、しかし「彼女」は自分が「本当の彼女」ではないことに次第に気づき苦悩を深め!ていく。でも我々には「彼女」の主人公への想いは、まぎれもない「愛」だということが痛いほど分かるのだ。しかし「愛」ってなんなのか・・・?
・「必読の書」
30年近く前に読んだ名作。 当時ではこの作品、斬新かつ前衛的で、イメージが頭の中に溢れかえる新しいSFでしたが、今や堂々の古典作品であす。 地球に住む我々以外の命や知性を考えるとき、それまでのSFは地球に捕らわれた発想が主でしたが、作者は異なる存在を創造し、後々に大きな足跡を残したと私は思います。 最近公開されたジョージ・クルーニー主演の「ソラリス」は残念ながらレムの著書のテイストを充分には描くことができなかった。 やはり、読者一人一人が、活字を通じてソラリスへ旅する必要があると確信します。 私は、ソラリスを抜きにSFを語ることはできません。
・「傑作の優れた訳業」
今回、沼野版が出たのを機に再読しました。やはりこれは秀逸な訳業です(沼野版も秀逸です)。知とは何か? という深淵に追い込まれたケルビン、スナウト、サルトリウスの会話が非常に生き生きとしております(沼野版はこの会話部分がやや生硬です)。訳者が原書の内容をよく咀嚼玩味されておられる証拠です。
何度読んでも感動する傑作です。
・「問答無用の最高傑作」
なんですかこの作者!天才ですか!人類が知的生命体と遭遇すると哲学的諸問題に直面するだろう・・・みたいなことをこの作者は言ってるんですけど全くもってその通りの内容の小説です。惑星ソラリスの数々の学説はもう鳥肌ものですよ。知的興奮とはまさにこの事かと・・・。んでもってハードSFの枠におさまらないこの人間ドラマ。もう文句無しに最高傑作ですよ。
・「1960年代SFの実力」
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・「やっぱフィリップ・K・ディックでしょ。」
未来の火星植民地では、水不足にかこつけて水利労働組合が実権を握って居た。組合長のアーニイ・コットは権力者として君臨していたが、国連の火星再開発の投機の情報を入手するのが遅かったために、地位を失いかけない事態に陥った。そこで、偶然発見した時間を操れるマンフレッドという少年を使って、過去を取り戻そうと画策する。。。。。内容だけ書けば、ありふれたSFみたいだが、悪夢SFというものがあるとすれば、まさしくこれは悪夢そのもの。人間の現実認識と虚構のはざまを描き出したSFを超えたSFです。ぜひ読んでみて下さい。
・「シュールな火星だ」
私にとってディックのベストです。火星殖民の話ですが、この火星って、アメリカ開拓の延長線上にある、ウェストコーストのちょっと先っていう感じですよね。これ凄いシュール、もう以降の人には書けないよ。技術には完全に無頓着、舞台はLA郊外の住宅地としか思えない(この植民地は砂漠に作られたLAと似ている)。登場人物たちは、火星のテラフォーミングなどにはまったく関心がなく、彼らが心配しているのは、障害児の問題、仕事のこと(火星で食料品の家庭訪問販売員って凄いよこれ)、浮気のこと、だものね。本の主題は例の如く、自閉症の子供が感じる世界が現実世界を侵食していく話ですが、そんなのディックのお決まりのストーリーで全然驚かない、むしろこの火星植民地で展開されるソープオペラという舞台設定の方が衝撃が大きい。いやー、このシュールさ、ディックの中でもピカイチです。
・「精神分裂病の如実な描写」
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・「悪夢の世界」
不毛と荒廃と絶望に覆われた火星植民地。きれいな水は手に入らず、新鮮な自然食品も地球からの密輸に頼っている状態。そしてスクールによる徹底的な刷り込み教育。精神病患者が激増し、火星で生まれてくる子供の3人に1人は自閉症になって現実と関わろうとしない。 火星一の実力者である水利労組組合長のアーニイ・コットは国連によるFDR山の開発を嗅ぎつけ、土地投機を企てる。しかし、それには開発地区の正確な位置をつかんでおく必要がある。アーニイは自閉症の子供に予知能力があると考え、マンフレッド・スタイナーという少年を引き取ったが、少年には想像を絶する悪魔的能力が眠っていた・・・・・・ 数あるディック作品の中でも特に難解な作品。はっきり言って私にもよく分からない。 ただ言えることは、自閉症患者のマンフレッドはディック作品に頻出するアンドロイドと通じるところがあるということだ。それは、感情移入能力の欠如である。人間性を鋭く問うメタファーとしてマンフレッドは存在しているのだ。 あと1つ言えることがある。死の匂いの立ちこめる、この悪夢の世界は、本当に怖いということだ。
・「サラリーマンっぽいSF」
ディックの魅力のひとつは、主人公がサラリーマンなところだと思う。悪役は会社の会長で、主人公は毎日会社に行かなくちゃいけない。そんな庶民っぽさが、ディックの現実性であり優しさだと思う。そんなディックのサラリーマンっぽさが最も発揮されてる長篇が、これ。読みやすくて面白いが、独創性や爆発力はない。
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