神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫) (詳細)
山本 弘(著)
「読み応え十分」「ある意味リアルなSF。」「これは確かに魂の一部と言える」
沼地のある森を抜けて (詳細)
梨木 香歩(著)
「物語の強さ」「解き放たれてあれ 、という願い」「ますます惹かれる」「小説というジャンルを超える」「梨木さん、進化する作家」
ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫) (詳細)
シャーリィ ジャクスン(著), Shirley Jackson(原著), 市田 泉(翻訳)
「生活したいだけなんです。」「決定的に「何か」が狂っている傑作」「こわすぎる」「無垢な敵意VS自覚ある悪意」「直接的な恐怖はないが・・・」
ザ・ギバー―記憶を伝える者 (ユースセレクション) (詳細)
ロイス・ローリー(著), Lois Lowry(原著), 掛川 恭子(翻訳)
「一生忘れられない衝撃」「ロイス・ローリーという作家をご存知ですか?」「表紙が・・・」「不思議な世界に引き込まれて、あっという間に放り出されたような気分です。」「想像と現実と」
「映像で物を考えられない人にはチンプンカンプンだろう」「SFが好きなら、ぜひ。」「感覚の世界に身を置いてみませんか」「共鳴できた者だけが感じられる至福の小説体験。」「それでも日々は続いていくから。」
「著者初の短編集」「ライナスの毛布」「ビートで鳴らすファンタジー小説」
素晴らしい海岸生物の観察 (詳細)
小笠原 鳥類(著)
壜の中の手記 (角川文庫) (詳細)
ジェラルド カーシュ(著), Gerald Kersh(原著), 西崎 憲(翻訳), 駒月 雅子(翻訳), 吉村 満美子(翻訳), 若島 正(翻訳)
「読むより語(騙)る物語」「奇想とねじれ」「極めて前衛的な小説」「奇想・・・ではある。」「幻想短編」
インディアナ、インディアナ (詳細)
レアード・ハント(著), 柴田 元幸(翻訳)
「心に響くその静けさ」「一人の生涯に映る美しさと残酷さ」「誰かの日記。」「わからない。眠くなった」
シャルビューク夫人の肖像 (詳細)
ジェフリー・フォード(著), 田中一江(翻訳)
「思わせぶりなジャケットが……」「上質の幻想小説」「フォードの最高傑作!」「上質のミステリー」「傑作です」
上弦の月を喰べる獅子〈上〉 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)
夢枕 獏(著)
「人は幸せになれるのですか・・・?」「テーマ」「下巻を読むまで評価は控えさせてもらいます」
テレヴィジョン・シティ〈上〉 (河出文庫文芸コレクション) (詳細)
長野 まゆみ(著)
「近未来が舞台の・・・。」「切ない」「真夏の海と孤独」「難解さを乗り越えた先にある《離脱》」「印象的」
「驚嘆すべき新人作家の誕生」「村上龍の「イビサ」の最後を思わせるような・・・」「救われない現実を見事なまでに描ききった力は相当なもの」「コドモがとてもいい」「とてもいい出来」
夢の通い路 (講談社文庫) (詳細)
倉橋 由美子(著)
傀儡后 (ハヤカワJA) (詳細)
牧野 修(著)
「面白いが…」「傀儡后 (ハヤカワJA)」「SFと思わなければ」「面白みに欠ける」
神様のパズル (ハルキ文庫) (詳細)
機本 伸司(著)
「ライトノベル?SF?」「読破後の爽快感」「かなり面白い」「「当たり前のこと」はなぜ「当たり前」?」「面白い! これぞSF」
ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫) (詳細)
恩田 陸(著)
「これは映像にしたい」「散りばめられた伏線の収束が見事」「これはすごい!」「ジェイムズ・P・ホーガンファンならば評価出来ます」「これは傑作だと思います」
アフターダーク (講談社文庫) (詳細)
村上 春樹(著)
「合理性を追求した現代社会の欠陥に対して考えさせられる作品」「私は面白く読めました」「謎は全て解き明かされなくてはいけないのか?」「どこかで新たな深淵は生まれ、そして繋がって行く。」「読後感が心地いい」
象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA) (詳細)
飛 浩隆(著)
「美しく残酷な」「<破局>への志向」「SFファンに限らず読んでほしい」「島根の俊才が描く、極上のSFワールド」「耽美的な滅びの美学」
海辺のカフカ (下) (新潮文庫) (詳細)
村上 春樹(著)
「下巻も納得の五つ星!」「ロマンティックで切なく苦しい哲学的な名作!」「冗長性の回避」「がんばれホシノくん☆」「とっても素敵」
遊覧旅行 (河出文庫―文芸コレクション) (詳細)
長野 まゆみ(著)
「旅行に行きたい!」
夏帽子 (河出文庫―文芸COLLECTION) (詳細)
長野 まゆみ(著)
「きれいで優しい」「憧れです。」「中学生なら・・・」「心に残る話」「紺野先生 一年のお便り」
沈黙/アビシニアン (角川文庫) (詳細)
古川 日出男(著)
「読書は作品との格闘だということを久々に感じさせてくれた傑作」「善悪」「あなたは音楽が好きですか?」「『沈黙』『アビシニアン』の合本文庫です」
ソングマスター (ハヤカワ文庫 SF 550) (詳細)
オースン・スコット・カード(著), 冬川 亘(翻訳)
「カードの真骨頂」「ソングマスターの歌を聞かせて」
「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻) (詳細)
J. K. ローリング(著), 松岡 佑子(翻訳)
「愛は最強の魔法をもしのぐということが、充分納得できました。」「感動の最終話」「全巻を貫く「教育」というテーマ性」「作者J・K・ローリングに「お疲れ様!」」「この作品でファンタジー=子供限定と思わなくなりました。」
・「読み応え十分」
これまでレビューがなかったのが不思議なくらい.もっと話題になって良いのでは?
ディデイルまでよく書き込まれた力作だと思う.類似のテーマ(ネタばらしになるといけないので,具体的には書きませんが)のSFはいくつかあるが,それらとは視点が異なるのが本書のユニークな点.
途中から突拍子もない展開になり,どのように終わらせるのか心配だったが,良い結末だと思う.インターネット,コンピュータ,人工知能に興味を持つ人にはお勧めの一作である.
・「ある意味リアルなSF。」
最近、わくわくさせてくれるリアルなSFに出会えずにいた。かつての小松左京や外国のSFのような。しかし、本当に久々に出会えた気がする。現実と虚構の区別がつかなくなるような感覚を覚える。ある種、危険な作品かもしれない。近未来の日本を舞台にしたこの作品。実におもしろかった。
・「これは確かに魂の一部と言える」
上巻とは打って変わって事例リストが減り、話が勢いよく流れていきます。とはいえ、〇〇では………とか始まると、また長くなるかなぁなんてドキドキすることも。
展開が面白く、また一見単純なところも実は別の原因だったりして、全体を通して盛り上がっているように感じました。その分ラストは盛り上がりに欠けた印象でしたが、これは(超常現象とか勝手な人間が多かったから)自分が派手な終わりを予想したからなだけで、最後の部分にまとまっていったとみるべきなんでしょう。
なんにせよこの本を読んで考えることが特にないという人は……それはそれで一つのミームだと言うかもしれないが、もうちょっとくらい物事を考えるようにしたほうがいい。と言えるくらい色々な意味でのネタがあると思う。
上巻耐えた人は下巻も読もう。読み易さは格段に違うので。
・「物語の強さ」
ぬか床という、あまりファンタジックではない、むしろ生活臭の溢れたとても日常的なものに、別世界を植え付けてしまった、その作家の発想にまず驚かされます。物語は、規則正しくきれいには進みません。一瞬、物語の尻尾を見失いそうになることさえある。でも、だから私は夢中になりました。生物学的な堅苦しい解説も、意外にも全体から浮いていなかった。生命を見すえている梨木さんならではの、流れや結末もすばらしかった。物語りに振り回され、追いかけることができるのは、私にとってはとても豊かな時間なのです。
・「解き放たれてあれ 、という願い」
しみじみとした充実感で読み終わった本を閉じた。人間存在の不可思議と不条理が、酵母や菌類などの命のなりたちを背景に幻想的に語られる。女が担ってきたぬかみそという日常の食をめぐる営みから、命の連鎖と意識のありかの不可思議を語っていく細部、SF的な異次元の世界の物語をはさむことで、私たちの存在の不確定さも際だつ。そして上淵久美という研究者や、男性性を否定して生きて生きたきた風野さんという人物も好ましい。また最後のセックスの描写の美しさは極上のものだった。 読後少しして、10代の頃に時間を忘れて読んだ、アシモフの「銀河帝国の興亡」を思い出していた。 でも、この作品にはちょっと別の祈りが感じられる。生まれ出る命に希望が託されていること、命の流れの最先端のいうことばに一条の光がある。
・「ますます惹かれる」
このお話を読んで梨木さんのことがますます好きになりました。新境地というか、新しい場所にたどり着いた感じ。
「からくりからくさ」のいのちのテーマともリンクする柔らかく包容力のある意識が感じ取れます。
今回謎解きの要素も多くて、中盤以降読むのが止まらない面白さです。序盤が緩やかなぶん、より変化が楽しめます。
・「小説というジャンルを超える」
「西の魔女が死んだ」を読み梨木さんの著作に興味を覚えた。読み終えて最初の感想は凄いの一言である。長編小説と言う分類が正しいのか?誤解を恐れずに言えば、生命哲学がまずあり、生物学、心理学、民俗学、生態人類学、進化学そして地球環境学等々。「僕」の存在が名前を得て行く過程などはまさに哲学的存在論であり、ヌカ床と沼地は「心脳問題」の本質だろう。ヌカ床から生まれ出る存在は記憶であり、その実態は学習や経験からの記憶ではなく生まれる前から存在する記憶でもあるのだろう。クライマックスに登場する島、そして森、海はまさに「僕」でもあり「地球」でもあり、「宇宙」でもよい。細胞壁あるいは生体膜に区切られている存在が交わり時に新たな出発(進化)をする。それは単に人間と言う種だけの問題で無い事を複雑系である森(環境)を通して、全ての生物と非生物の折り合いという混沌の中にいる「僕」を表現している。
同じ歳の作者のあまりにも凄い才能と洞察そして思索に嫉妬を超えた感情を覚えた。
・「梨木さん、進化する作家」
読みながら何回も、だれの本だっけと思った。いい意味で、ごく自然に進化を遂げた作品だ。「ぐるりのこと」で、どんなことを考えながら暮らしている方なのか漠然と知ってはいたが、こう来るとは思わなかった。わけがわからなくなった(笑)分、少々鼻についていたお説教くささが抜け切って、でも「家守」や「村田エフェンディ」とも全く違う新境地。うまく表現できないが、読み終わった後、風の音だけが耳に残るような、そんな作品だ。 それにしても、皆さんの分析は、どれもすごい(褒め言葉です)。ひたすら雰囲気を味わい、夢の世界を彷徨い続けた後の心地よい疲労感に浸るのが楽しみ、という私は、ただただ脱帽するばかりだ。
・「生活したいだけなんです。」
感想:恐怖とは「生活を成立させている現実への認識を脅かすもの」と捉えると、事理は明確になるような気がします。
あるいは、わたし達は、何(どの現実への認識)を排除しなければ、生活ができないのか?
わたし達は何を思って生活していますでしょうか。何が生活の根幹にある価値観なのでしょうか。そしてその前提になる記憶とは?
自分の持つすべての記憶について、それが現実だと確認・証明しながら生きている人はほとんどいないでしょう。(常にすべての自分の記憶を確認・証明している人がいるとしたら病気です)だからこそ、私たちは盲目の現実を生きているという迷路に陥れられる可能性を排除する事ができないはずです。
そのため私たちは、「ある者たち」は排除しなければ生きていけない。そしてそれは、罪です。
と思いました。うーん・・・どうも言葉にしきれません。そんな残余が残ります。なので、良い作品です。
主題はまったく異なりますが、感触・趣はニコール・キッドマン主演の映画「アザーズ」と似てると思いました。
・「決定的に「何か」が狂っている傑作」
普段海外ミステリーや怪奇小説、日本の推理小説を好んで読んでいます。26歳女です。
子供の頃とても空想家だったので主人公のメリキャットに非常に入れ込んで読みました。気がつくと何度も手に取り、繰り返し読んでいます。本好き、魔法好きの女性なら誰もがメリキャットの憤りに共感できるかと思います。侵入者チャールズは憎むべき存在だし、町の人の悪意は心底酷いと思う。(あくまでもメリキャットの視点だからそう感じざるを得ないのですが)……が、確実に何かが、どこかがおかしい。ずれている。この違和感はなんだろう?また、姉のコンスタンスと伯父さんもどこかおかしい。伯父さんから語られる「あの日」の真相は読者をぞっとさせる。驚きというより、もし正常な精神の持ち主であれば現在のこの状況はおかしくないか?もし気づいていて、あえてそうしているのだとしたら……うう、怖い。でもとても美しい。
このぞっとする感じは何?幽霊も怪奇現象も殺人鬼も出てこない。それなのに、幽霊も怪奇現象も殺人鬼もそこにいる気がする。まるでモンスターを従えた……この世のあらゆる「非現実的な」怪物と仲良く暮らしている女王がそこに座って、読者が被った善人の皮を見抜いて本性をちくちく突付いてくるような。うーん、うまく言えない。
ちなみに作家桜庭一樹氏、恩田陸氏のお気に入りでもあるそうなので、両作者の本がお好きな方は是非ぜひ読んでみるべきです。(解説は桜庭氏)「ホーンティング」というタイトルで映画化された、魔女シャーリー・ジャクスン「丘の屋敷」(以前のタイトルは「たたり」)は超常現象系傑作なのでこちらもぜひ。
・「こわすぎる」
Shirley Jacksonの『We Have Always Lived in the Castle』(1962年)の翻訳。 1994年にも学習研究社から山下義之氏の訳で出ているが、それとは別の訳。 『たたり』や「くじ」で知られるアメリカの女流ホラー作家だが、本書もめちゃめちゃ恐かった。超自然的なものとかは出てこないのだが、人間の狂気と悪意が「可愛らしく」描かれており、ぞっとさせられる。 寝る前に読むのは絶対にやめた方がいい。
・「無垢な敵意VS自覚ある悪意」
壮絶な負の感情がぶつかり合う小説です。長編と言うにはページ数も少なく、2日程度で読みきってしまいましたが(時間がある方なら一日で充分でしょう)、読後感のもやもやはずいぶんながいことつづいています。 冒頭、語り手の少女メリキャットが村人から蔑まれながら、家(お城)に帰り着くシーンから始まりますが、ここからは村人の集団の悪意がひしひし伝わってきます。集団対個人。ここで感じる恐怖はいじめを見るときの嫌悪感にちかいです。一人の少女が大人にも子供にもよってたかってからかわれるのを見ていると、メリキャットがなんどもつぶやく「みんな死んじゃえばいいのに」のせりふも当たり前に思えてきます。城に閉じこもって外を怖がる姉と、体の不自由な伯父を、無邪気な妄想の魔法で守ろうとする少女。メリキャットの印象は初めそんな感じでした。 しかし読み進んでいくうち、メリキャットの中の敵意が底知れないものだということに気がつきました。この敵意は無垢で無自覚でした。村人達のブラックウッド家に対する悪意は自覚的でしかも彼らはたった一人でブラックウッドと対峙することはできません。いつも徒党を組まないといけない。しかしメリキャットはいつもたっと一人で敵意をむき出しにしています。メリキャットに感じる恐怖は怪物を見る感覚に近い。 つまり「ずっとお城で暮らしてる」をよむホラー好きの皆さんは二種類の恐怖の相克を楽しめるわけです。 村人の燃え上がるような悪意とメリキャットの冷たくてゆるぎない敵意の対決。最後はどちらが残るのでしょう。
・「直接的な恐怖はないが・・・」
本著で出てくる狂気は普段は体裁とか常識等がはばかっていて表には表れないがほとんどの人間に潜んでいるのではと。もしも登場人物のように同じ感情をいだき、同じ局面に出会ってしまったら同じ行動を取っているのではと。 想像力豊かな人が読むと、かなり来ると思います。私のような鈍感な人間ですらその風景がありありと浮かんできましたから・・・。
・「一生忘れられない衝撃」
ユースセレクション、ということで小学校高学年〜中学生向けの本ということになりますが、高校三年で初めて読んだときの衝撃と言ったらありません。
小学生には奥が深すぎるのではないか、もっと年齢層を上げても良いのではないかと思うほどの、描写と構成と主題の素晴らしさ。最後には涙がこぼれましたが、同時に「目から鱗」がボロボロです。これまでにそれほど多くの本を読んできたとは言えませんが、この本の衝撃が群を抜いていることは確かです。ネタバレだけは避けたいので、是非みなさん自身にこれを味わって欲しいと思います。
・「ロイス・ローリーという作家をご存知ですか?」
日本での知名度はいまいちですが、ニューベリー・アワードを二度受賞したアメリカの女流児童作家ロイス・ローリー。 彼女の作品には、やや社会から疎外された存在の少年少女たちが、内面的に成長していく様を描いたものが多いようです。そして人類が平和を勝ち取るためには、もっともっとお互いが隣人に対して優しくならなければならない、という真摯なメッセージを込めた作品を書き続けています。
中でもこの作品は、そういったメッセージがSFという形を借りて最も象徴的に現れた代表作と言っていいと思います。近未来を舞台に、人類の不幸な歴史をただ一人記憶することを宿命付けられた少年が、その記憶と共に、コミュニティからの脱走をはかります。最後に彼が到達した地点は一体なんだったのかー。このラストシーン、作者が少女時代日本に滞在していたことと別に関係はないんでしょうが、なぜか東洋的な雰囲気が漂います。
彼女の作品では、こまごまとした情景描写よりもストーリーの展開に重きがなされていて、原文もシンプルの極みで非常に読みやすいものが多く、簡単なペーパーバックを読んでみたいという方に是非お勧めです。この作品は少し長くてキツいなーという方には、やはりニューベリー・アワード受賞の、“ふたりの星”がまずお勧めです。
・「表紙が・・・」
今は絶版なんでしょうか?もったいない。
子ども時代に読まれるべき作品だと思う。大人になってから読んでもヒヤリとするけれど。
どうしてこんなに怖い表紙なのか疑問だったのですが、(あとがきで説明されていますが)この画家の写真をチョイスした作者に身震いします。
・「不思議な世界に引き込まれて、あっという間に放り出されたような気分です。」
あれれ?と思うまもなく、まったく違う世界に引き込まれていました。はじめのうち、これがSFだともファンタジーだとも思わず、そのうちに、なんだかこれは『別の』世界の話らしいと気づき、そして、すっかりジョーナスとともに次々に周りがはっきり見えていくにつれて、焦燥感とともにページをめくりました。最後の数ページがのこるころになると、「おかしい、そんなはずはない」信じられない気持ちでした。『こんなところで終わるなんて。』
作者のところにはこの後に続ける結末のプランがたくさん届くそうです。さもあらん、という感じです。わたしも、しばらく雪の中のジョーナスとゲイブリエルの二人のイメージが脳裏から離れず、『どうしよう、どうしよう』と一人考え込んでいました。
そして忘れられない物語になりました。悔しいけれど、作者がここで筆をとめた理由が考えれば考えるほどわかってくるようです。
お薦めです。
・「想像と現実と」
私も初めて読んだ時は凄くショックを受けました。 初めは「良くある話だなぁ」なんて思ってたけど、 段々「普通じゃない!」って妙に不安にさせられる本です。 これは画一化した社会に住んでいる私達に対する警告でしょうか。 提供される情報を常に鵜呑みにし、何一つ疑いもせず生活している私達に対する…。
理想という名の下に創られた、妙にリアルな幻想の世界。 それがこんなにも人を不安にさせられるものなのか。
・「映像で物を考えられない人にはチンプンカンプンだろう」
僕は毎週1冊は小説を読んでいるけど、これはかなり面白かった。最初プロローグを読んで「ん?わけがわからんぞ」と思うが、頑張って読んで行くと3章くらいから物語の全体像が浮かび上がる。意思のある『町』をどう演出するか難しいと思うが、映画にしたら面白いと思う。
逆に言えば、本を読んでいて頭の中に映像が浮かびあがってこない人には、薄っぺらい本に見えるかも知れない。でも僕はこれ以上説明してしまうとミステリアスな世界観が損なわれると思う。
とにかく妄想が大好きな僕には「おおっ」と感じた一冊です。
・「SFが好きなら、ぜひ。」
やばい!! 2007年1月半ばにして、今年最高の本かもしれない!! 『となり町戦争』がイマイチで、『バスジャック』で「おや!?」と思い、これで、やられました。 意思を持つ“町”。 30年に一度、町が消失する。町は残り、そこに住む人々だけが消えてしまう。そのことを、悲しんではいけない。忌み嫌われる町の消失に対して、戦いを挑んだ人たちの物語。 近未来的なSF。ネタばれになりますが、この町の消失への対抗策が、あらゆる芸術だというところが、また、なんとも手が込んでいる。 絵であり、写真であり、音楽であり、演劇であった(コレは書きすぎかな?)。 現代の合理性から遠いところにありながらも、人間らしさの象徴とも言える“芸術”。これなしに、人は生きられない。そして、町の消失を止められない。 とにかく、この町の消失にかかわる人々の、それぞれの話が織り成され、最後に、一つの線となる。 あらゆる仕掛けを施したものが、すべてすっきりした形で解決されていくし、何より、SFが好きな人にとっては、複雑になりがちな世界観を、見事に簡潔に表現し切れている。 プロローグでは、「????」となったけど、最後にもう一度、そこだけ読み返しちゃいました。SFファン、ミステリーファンなら、絶対おもしろいと思う。オススメです。
・「感覚の世界に身を置いてみませんか」
まず、この作品を感じることができた事を嬉しく思います。好みは分かれるとは思いますが、私の中では間違いなくベスト10に入ります。完璧ではないです。が、それを補って余りあるというか、欠点が気にならない何かがあります。読み終わったとき、それは、深い瞑想から覚めたらこういう精神状態になるのではないかと思わせるような感覚でした。達成感というのでもないし、清々しいというのともちょっと違う。とても言葉では表現できません。図書館で2ヶ月予約待ちした甲斐がありました。是非、多くの方に読んで頂きたい本です。蛇足というか老婆心というか、映画にはならないでしょうね。少なくとも、私は観たくはありません。
・「共鳴できた者だけが感じられる至福の小説体験。」
話題作ということで手に取りましたが、予想をはるかに上回る仕上がりでした。SFというジャンルは敬遠しがちでしたが、全然読みにくいということはなく、緻密に練られた世界は自分を魅了するに十分な力を持ち、完全に飲み込まれました。
・「それでも日々は続いていくから。」
「感情抑制」「消滅耐性」「電域」「汚染対象」…世界観を構築するために出てくる単語が見事にいかにも「お役所用語」ぽくて、すぐにこの物語の世界に馴染むことができた。(「となり町戦争」「バスジャック」でも使われていた手法ですね)
「失う」という圧倒的に大きな出来事の前に、登場人物それぞれが「それでも前を向いて生きていく」という選択をするまでの過程が丁寧に描かれている。全体のトーンとしては暗いが、作者の、人生に対する力強い意志を感じて、私はさわやかな読了感を得ることができた。多少の青臭さはあるのかもしれないけど、読書によって「元気になりたい」「勇気をもらいたい」と考える人にはおすすめ。
・「著者初の短編集」
彼の最初の短編集。今までも長編ではなくて、連作をまとめたのはあったけど、純粋な短編をまとめたのはこれが最初。
「メロウ」っていう作品は、長編化しても面白いと思う。小学6年生たちが、なぜだかスナイパーと対決する話。
でも一番好きなのは、「飲み物はいるかい」って話。神楽坂から飯田橋までかかっている橋を少女とたどるってだけの話だけど、あの界隈は学生時代になじみがあるので、情景が目に浮かんだ。
ちなみに、この本は古川日出男のサイン入り。あんまりサイン本って興味はないんだけど、彼のサインって不思議な味わいがある。
・「ライナスの毛布」
この本は、読者によっては「ライナスの毛布」のような効能を得られるものである。「ライナスの毛布」を知らないって?困ったな。昔、「チャーリー・ブラウン」とか「スヌーピー」とかが出てくるマンガがあってさ。登場人物の中にライナスというこどもがいて、いつも毛布を手放さないのさ。その子は毛布があれば安心していられたのだ。誰にとっても毛布は必要だ。守られている感覚がなければ、家から外に出るだけでも恐怖だろう。外界が怖くてたまらない人は無数に存在する。評者も少し前までそうだった。外を見るのが怖い人が、未知の世界に踏み出すときに、何を頼りにすればよいのだろう。それはヴィジョンだ。たとえばこの本に収録された「飲み物はいるかい」で示されるなにかだ。東京周辺に住むあなた。この短編と共に飯田橋駅の改札を出よう。すぐにあなたは知るだろう。一歩前に進むだけで、もう旅は始まると。
・「ビートで鳴らすファンタジー小説」
夢と真実の歪みが描かれた白昼夢のような不思議なシュールな世界。いつもと違う視点で日常を捉えてみたい方におススメなのかもしれない。
・「読むより語(騙)る物語」
まるでどこかの旅先で知り合った老人が、「ひまつぶしに話でもいかがかな?」と語りだすような、そんな不思議なイメージ。
この本はすべてが、すでに書き手が「誰かから聞いた話」という形で語られる。ああ、物語とは本来このようなものだったと思い出す。
人から人へと語り継がれる物語。そのたびに話は不思議さを増し、同時にそれが真実かどうかなんてどうでもよくなってくる。むしろ奇妙な話をどれだけ魅力的に語るかで、その物語の価値は決まる。その点、ジェラルド・カーシュの腕はまさに見事。
表題「壜の中の手記」のほか、「豚の島の女王」「ねじくれた骨」「時計収集家の王」がおすすめ。なぜか日本人がたくさん出てくるが、それもちょっとした見所のひとつ。
読書後には、誰かに「こんな話を知っている?」と、語ってきかせたくなる。
・「奇想とねじれ」
精緻かつ乾いた文体で奇想天外なホラ話を悠然と綴るカーシュの代表的短編集。単なるホラ話を歪んだユーモアで包んで文学的領域にまで押し上げる所が作者の手腕か。
冒頭の「豚の島の女王」は容易に乱歩の「芋虫」、「孤島の鬼」を想起させるが、乱歩の猟奇的描写が不思議と嫌らしさを感じさせないのとは対照的に、こちらは粘着質の強い嫌悪感をタップリ味あわせてくれる。タイトル作の「壜の中の手記」はA.ビアスの失踪という大事件を扱い、偶然にビアスが最後に残した手記を読むというもの。骨格は「注文の多い料理店」と同じなのでオチの予想は簡単だが、お膳立ての周到さに圧倒される。「ブライトンの怪物」は日本人の力士、空手家、レスラーが出て来てオヤオヤと思うが、更に原爆との組み合わせで話を繋げる奇想に驚く。「破滅の種子」は生体実験の怖さをねじれたユーモアで包んで描いた佳作。「時計収集家の王」は題名通りの時計収集狂の王(歳で他にする事が無い)と時計屋との残酷な交流を描いて秀抜。王の哀感とプロットの巧さが融合して、個人的には一番の好み。
途方もない奇想をねじれたユーモアで包んで描いた傑作短編集。
・「極めて前衛的な小説」
まずカーシュは前衛作家でノンフィクションを元にした題材から小説を構築するのを得意とします。私は単行本を以前読みまして今回の文庫で再読したことになります。まず新作2つ入っていますから文庫をお薦めします。また1作は完全版ということでやはり文庫をお薦め。何といってもカーシュの魅力はその前衛的、実験的な手法に尽きます。文庫の帯には宮部さんのこのミステリーお薦めと記載されていますけど、何かミステリーという範疇に収まりきらない様々な要素をこの短編集は包括しています。彼は生前それほど売れなかったです。しかし現在これほど評価されるということは作品発表した頃は彼に時代が追いつかなかったと痛感しています。
・「奇想・・・ではある。」
レビューでとても評価の高いジェラルド・カーシュという作家に、歯切れの良い、爽快な話を期待してはいけない。計算されつくした短編ミステリーを期待するのも良くない。話のテンポや台詞回しはちっともスタイリッシュじゃない(たぶん翻訳とは無関係だ)。しかも話の出来にむらがある。彼の特徴はその舞台装置だ。日常からかけ離れた場所と状況で、人がどのように考え、どのように振舞うか、そしてその結果どのような事が起こりうるか…そういった事を少しばかりの教養と共に我々に見せてくれる。多くは回想形式で、語り手は感情の高揚や悲嘆などをほとんど見せない。我々は発掘された骨や遺跡を見るように、当時を想像しながら話の流れに乗っていく。主人公の多くは、今の危機を回避しても、投げかけられた謎を解いても、自分が置かれている絶望的な状況にちっとも変わりはない。それが分かっているだけに、主人公も我々読者も、どこか無力感に囚われてしまうのかも知れない。楽しい訳でも怖いわけでもなく、かと言ってすごく不思議な話でもない。ただ、異常な状況に巻き込まれた主人公の淡々とした物語であり、妙に苦い後味が残る短編集である。
それにしても…この手の物語で読者に『これは面白い』と思わせるには、きっと何か特別な才能が必要なんじゃないだろうか。たとえばその語り口で、視点で、世界観で ―。果たして特異な経歴を持つこの著者にその才能があるか否か、それは読者が自分自身で読んで判断するしかない。
・「幻想短編」
飛行機の中にいつも持ち込みます。すると旅する国が違う彩りに包まれている、そんな短編。語り口が小さい頃幼稚園で先生が語ってくれたそんなトーンで始まり、うたた寝している気分になる。大好きです。
・「心に響くその静けさ」
なんとも美しく、静かで、やさしいようであり残酷である気もする、そんな小説。はじめは、話の方向性がよく飲み込めない。最後まで読んでも、よくわかんないところもある。でも不思議なもので、とてつもなく心を揺さぶられている。ノアが、その指の欠けた手で、顔を覆うしぐさをしている。その情景が、信じられないほどはっきりと頭の中に浮かんでくる。彼は僕。なにはともあれ、どうこう説明できるような小説じゃない。いつかまた、ふとした時に手に取りたいな。
・「一人の生涯に映る美しさと残酷さ」
散文的、詩的な文章で、ある一人の生涯から、美しさと残酷さを描いているとても印象的な小説だった。それゆえに読み終わった後の静寂な余韻は寂しさを覚え、自分の人生を振り返ってしまいそうになったほど。読了後に訳者が柴田元幸であったことに気付いたくらい訳者の癖が感じられない訳だった。読み始めたい作家ならぬ、読み続けたい作家。次は是非原著で読みたい。
ノアの人生を追体験しているようかのように、読み勧めていく中では、それぞれのシーンに大きな感動もなく味気ないと言ったもを感すらあった。それは私達が生きる日常も同じ。毎日が感動の渦というわけではないから。それゆえに読み終えた後に感じる余韻はとても大切なものに思えた。この小説は人生そのものか。ただただ感じるだけでいい。きっと読み終えた後の余韻が「思い出」としていろいろな形になって表れると思うから。
これは自分の人生でも同じことが言える。どんな辛いことも後で笑える日がくるように。読んでいるときには分からないことが後になって見えてくる。悟る。何気ないことが読み終えた後の余韻にどっと溢れてきた。
けれども、感じることが正直な読み方と言いながら、穏やかな展開の物語ゆえにか、読むために使ったエネルギーは結構なものであったと思う。気楽に読める部類の小説ではなかった。私に読むための時間的、精神的余裕があったものだから、他の小説と比べて時間を掛けてゆっくり読むことができた。これから仕事に行く朝の電車で読むような小説ではなく、正面に向き合って読める小説だと思う。
・「誰かの日記。」
なんだか、誰か知らない人の書いた日記帳を読んでいるような感じ。最初は、なんのコトか分からないけれど、でも、読んで行くとノアという老人が少しずつ分かってくる。でも、すべてが分かる訳でなく、彼らのような知らない誰かに思い馳せる本かもしれません。
・「わからない。眠くなった」
う〜〜ん、眠かった。詩のような小説。散文。とにかく何がなんだかわからなかった。物語なのか、心象風景なのか。がんばって読んだけど、まぶたが落ちていることが何度かあった。ボクには分からない小説だった。
・「思わせぶりなジャケットが……」
思わせぶりなジャケットが気になって、手にとってみると、あの山尾悠子訳で話題になった『白い果実』と同じ著者でしたー!!舞台は19世紀末のニューヨーク。主人公の売れっ子肖像画家ピアンボは奇妙な依頼を受ける。依頼主はシャルビューク夫人。初めての訪問の折、「われわれはなぜ屏風越しに話しているのか教えていただけませんか?」と問う画家に、「あなたに顔をお見せするわけにはいかないからですわ」と夫人はのたまう。夫人の顔を見ることなく、屏風の向こうから夫人が語る過去の物語と声だけで肖像画を描き、見事成し遂げれば、法外な報酬を約束する。この難題を挑戦と受け止めたピアンボは、まんまと罠にはまり込み……おっとっと、というお話。画家の野望と破滅といえば、やはり実在の画家が散りばめられたバルザックの短篇「知られざる傑作」(映画「美しき諍い女」の原作!)が有名ですが、本書の語り口はかなり幻想的。とはいえ、『白い果実』に比べると、時代背景や事実とおぼしきことも散りばめられ、物語の作りのおもしろさという点では、「50%増量」って感じ。作者の語りの中に、謎の貴婦人の語りが重層的に響きはじめると、もうたいへん。読者はピアンボと同様、まんまと罠にはまります。ジャケットと端整なたたずまいの装幀を裏切らない、本好きにはたまらない一冊でした。
・「上質の幻想小説」
シャルビューク夫人の語る物語を軸にストーリーが展開されるが、幻想小説初心者の自分にはホラ話か真実かわからない与太話の続く前半は読むのがきつかったが、後半になるとがぜん面白くなった。といっても、前半部分なしではこの小説の面白味は失せる。前半のぐだぐだした部分を我慢して乗り越えたものだけが読後の喜びを味わえる。読み始めたら躊躇わずに一気に読んでしまおう。
・「フォードの最高傑作!」
これはすごい! 雰囲気のある装丁に、思わずジャケ買いだったが、久しぶりに読んで得したと思える作品だ。
天才画家が「姿を見ずに肖像画を描く」という奇怪な依頼に翻弄され、虜になっていく話。その着想自体はミステリだが、夫人の語る嘘か本当か分からない物語は幻想的で、妖しい世界観を見事に醸し出している。
『香水』が好きな人には絶対にお薦めする。今年の、いや、数年来のベスト作品だ。これぞ小説の醍醐味!
・「上質のミステリー」
俺)これ、ぜったい読んでみな。楽しめるぜ。女)どうかな。あたしファンタジーはあんまり得意じゃないんだけどね。俺)いや、これはファンタジーではないな。「上質のミステリー」と呼んでください。女)ファンタジーとミステリーってどう違うのよ。俺)ファンタジーは神秘主義。ミステリーは合理主義。 設定がゴシックっぽいからファンタジーというわけじゃない。女)じゃあ「半身」(サラ・ウォーターズ)みたいな感じ?俺)あれも良かったでしょ。でもあんなに濃厚じゃない。 登場人物がみんな活動的なんだよな。 感じのいいユーモアもあるし、主人公はクレバーだし、 冒険あり、恋愛あり、勿論推理あり、ですよ。 でもそう言ったらゴッタ煮みたいな本だと思っちゃうかね。構成がいいんだよ。 文章のクオリティも高いな。翻訳がいいんだろうね。 「白い果実」(ジェフリー・フォード)もいい翻訳だと思うけれど、 この文章はキレがあって本の世界にすっと入れるな。 まあ、設定と序盤の展開からしてナイスですから一気読みですね。 十分な時間を確保してから読むように。分かりましたか。女)いいから早く貸しなさいよ。
・「傑作です」
多くの人がコメントなさっているように傑作です。映像化されたものを観たいと思うのは、私だけでしょうか。装丁・造本を含め、ランダムハウス講談社さんらしい良い本に仕上がっています。
・「人は幸せになれるのですか・・・?」
密林でアメリカ兵に遭遇し、現地の男の子と女の子が討たれる瞬間を写真におさめようとして米兵に撃たれ、海馬に石片を残したままになった写真家が高層ビルの「螺旋」階段に吸い込まれ、岩手の詩人は北上高地の斜面に巨大なオーム貝の化石の「螺旋」に飲み込まれた。
彼らは一人でありながら二人、二人でありながら一人の、混沌の中で二人分の修羅を持つ人間となって、見知らぬ世界に海から上がってくるところから物語が始まる。「縁(えん)であり、業(ごう)」である「アシュヴィン」という名の人間として。
アシュヴィンははるか上を、須弥山を目指す。仏教的な世界観でこの物語は進行していく。色は空であり、空は色であると。問いの中に答はあると。
陰陽師などから夢枕獏を知った人には、夢枕獏!にこのような一面があったとは、と驚くでしょう。獏自身、書き上げるのに10年かかったと言っている。それだけの本です。
うまくレビューが書けなくて申し訳ありません。アシュヴィンの修羅は昇華するのか?人は幸せになれるのか?まだ、下巻があります。消化するのが大変な本ですが、続けて下巻を読んで下さい。
・「テーマ」
本書は読みやすい。スラスラ読める。内容は、仏教、宮沢賢治、螺旋、生命、進化が、主なテーマ。科学が仏教に近付きつつある、と言うのは、どこかで読んだ。それを、なんとなくこの本でかんじた。抽象的、幻想的な内容で、何が起きてもおかしくない状況が続くので、少し恐怖も感じつつ読んだ。
・「下巻を読むまで評価は控えさせてもらいます」
日本SF大賞を獲ったという本書ではあるが、SFの意味を単なるサイエンスフィクションと捉えていると、途中でこの本を投げ出すだろうと思う。
かって「世界で一番美しい物語」という科学の概説書を読んだとき、私は「宇宙の始まりや未来の話、あるいは生物発生の秘密の話を聞けば聞くほど、哲学的なことを考えてしまうのはなぜだろう」という感想を持った。そういう感想を推し進めるとこういう作品が出来上がるのだろう。この作品は優れて「SF哲学」とでもいうべき本なのである。
この作品の主人公の「前身」として「肺を病む岩手の詩人」が出てくる。名前はついに明らかにはしてないがどう考えても「宮沢賢治」である。何しろ彼の詩や文章がほとんどそのまま引用されているのだから。ただ唯一違うのはこの詩人が「螺旋」に興味を持っているという設定である。その賢治に現代の「修羅」みたいな男をもう一人の「前身」として結びつける。そうすると、どういうことがおきるかというと、かって賢治が生前には出来なかった「殺生」「姦淫」などをこの主人公は行うことになる。その上で「自分は何者か」「人は幸せになれるのか」という「問い」を尋ねていくのである。私にはものすごい「冒険」に思える。まだ下巻は読んではいないが、いいかげんな「答」なら賢治ファンの私としては許すことが出来ない本になるだろうと思う。
●テレヴィジョン・シティ〈上〉 (河出文庫文芸コレクション)
・「近未来が舞台の・・・。」
監視された世界ビルディングで生活する少年達。パパとママがいるという碧い惑星を信じ、日々手紙を送り続けるアナナスは15億キロも離れた地にある青い海に憧れを抱いていた。少年達にとって外の世界はなく、取り囲むのはテレビジョンだけ。全てが幻影だった。またアナナスは味覚がないと云う障害を持ち、同室のイーイーは、ヴィオラと云う精油がないと声が出なくなり生きてはいけない。そんな壊れかけた世界の中で少年達は、本当の事実を知っていきビルディングの脱出を目指すようになる・・・。
長野さんの作品の中でも大好きなお話ですね。こんなに切なくなった物語は、初めてではないでしょうか?とにかく少年達の心の葛藤、苦しみ、本当に良く描かれていて先を読んでいくのが悲しくなってしまいました。下巻になっていくにつれ、どんどんと物語りは暗くなっていきます。上巻を読んだ方は、ぜひ下巻も読んでみてください。オススメです。
・「切ない」
良い。としか言いようが無い。この独特な世界観は滅多に無いと思う。本当に切ない。長野さんの本の中でも上位に入る程好き。読まないと分からないと思う。ひたって下さい。
・「真夏の海と孤独」
この本は、あらすじを楽しむというよりはむしろ感覚で楽しむためにあるような気がする。誰もが憧れる真夏の風景。煌く海と揺れる光、ビーチパラソルにジェリィ。それらの情景をバックに繰り広げられる非日常な世界。まるで薄いガラスの中に包まれているような美しさが、この本の中にはある。
精神とボディの離脱はありえるのか。光にあふれた世界に少しずつ翳りが見え始めた時、それ以上の何かが見えてくる。
・「難解さを乗り越えた先にある《離脱》」
手を取った瞬間、考えたのは「難解すぎる!」ということでした。
・「印象的」
奥が深い。最初に読んだとき、なんとなくわかったようなわからないような気持ちの悪さとともに、深い作品世界の中を手探りで進んでいく不思議な楽しさを覚えました。
●夏光
・「驚嘆すべき新人作家の誕生」
驚くべき筆力を備えた新人が現れたものである。この作家の扱うテーマは重苦しく、ホリブルで、その表現力は腐臭漂うグロテスクな世界を描き出しており、正視するに耐えない。しかしそれだけでは、この作家を凡庸なホラー作家へとしてしまっただろう。 では、この作家の魅力とは何か。
・「村上龍の「イビサ」の最後を思わせるような・・・」
現実にはあり得ない能力をもつ人々や漫画のような設定の小説は、ずるい感じがしてあまり好みではありません。しかしながらこの本、引き込まれるように最期まで読んでしまった!不気味なものと美しいもの、残酷な運命とこの世界への愛情とを図と地のようにして引き立たせる物語の構造、著者の鋭い五感など私の(少ない?)読書経験には新鮮でした。何より読後感の切ない感じがいいですね。私は生命への肯定的なメッセージ、しっかり受け取りました。次回はこの著者の「あり得る話」ぜひ読みたいです。
・「救われない現実を見事なまでに描ききった力は相当なもの」
この作家の現実を見る目には、相当な葛藤が存在している。にもかかわらず、どこまでも真っ直ぐな視線をそらすことなく、見つめ続けるのは、かなりな苦痛と忍耐を伴う作業だろう。私たちが、どうすることもできないから、という理由だけで目をそらしてしまうものを作者は徹底的に描ききっている。今度は長編に期待したい。
・「コドモがとてもいい」
ホラーの女王降臨、なんてオビがついていたけど、彼女をホラーというジャンルでくくるのはとても惜しい。この短編集に収められた作品の中で、子供の目線から語られるいくつかの作品は、郡を抜いておもしろい。それは決してホラーではない。視力や嗅覚などのとても原始的な力で世界を嗅ぎ取る力は、子供のころは誰でも持っていたはずの力だったかもしれない、忘れてしまっただけで。そう思わせられるほどに、乾さんの描く子供たちの持つ力や視線は非常にリアルで冷徹だ。死を見ることができる少年を描く「夏光」、相手のこころを匂いで知る少女が観た世界「風、檸檬、冬の終わり」、飛ぶ少年が登場する「Out Of This World」、どれも見事だ。これが乾さんの実質のデビュー作だそうだが、ぜひとも今後、乾さんには、ホラーにこだわらず、子供の鋭い目線から描き出した(それは決してジュニア小説だのファンタジーだのというジャンルにくくられるものでもないだろう)ぎりぎりのカタチの現代小説を書いていただきたい。
・「とてもいい出来」
非常に良く書けていると思います。読みやすく、心理描写も丁寧で、とても楽しめます。すべての短編がとにかく切なく、普通の文学として評価していいのではないでしょうか。ホラーと呼ぶには怖くなく、モラリスティックすぎる嫌いはありますが、逆に安心して読めるともいえます。デビュー作ということで無難にまとまっているのかもしれませんが、新人作家の本としては、視点の新しさや独特の感性を感じないのも気にかかるところではあります。矢島正雄・弘兼憲史の『人間交差点』に、スティーブン・キングのエッセンスを加えて小説にしたような感じを受けてしまうのです。別にそれでも面白いのでいいのですが。
・「面白いが…」
現存する小物をちょっといじるとSF的小道具になりますか?現存するサブカルをちょっとひねったら空想世界の文化ですか?面白くどんどん読めるのですが、個人的には「SF感」はあまりなかったです。また、特定の方向(オタク)に迎合しすぎて一般人は置き去りの危険ありかも。
・「傀儡后 (ハヤカワJA)」
二十年前の破滅的な隕石落下により、大阪は異形の街と化した。落下地点から半径六キロは、現在も危険指定地域とされ、ここを中心に、五感で世界と融合するドラッグ「ネイキッド・スキン」や、全身の皮膚がゼリー化する奇病「麗腐病」をめぐり、人類社会崩壊の予兆の中、変容してゆく人の意識と世界が醜悪かつ美麗に描かれる。ホラーの鬼才が満を持して世に問う、空前のテクノゴシックSF巨篇。第23回日本SF大賞受賞作。-----個人的に「牧野修」作では好きな作品です。若干、物足りなさもありますがゴシックな世界感がGood!!楽しく読ませていただきました。
・「SFと思わなければ」
ハヤカワ文庫だったのと、あらすじを読んだ感じでSF色の強い作品を期待して読んだためか、いまいち満足できませんでした。表紙の絵で気付くべきだったのですが、どちらかというとSF的なガジェットを取り込んだファンタジーとかホラーとか、そういうジャンルのライトノベルみたいな印象を受けました。改行が多く短文が続くのが読みにくかったです。作品全体に漂う退廃的な雰囲気自体は嫌いではないです。
・「面白みに欠ける」
~確かに、筆者の作った設定は面白いかもしれない。しかし、文章に繋がりがなく読んでいて物語の中へ入り込むことはない。場面転換も効果的どころか、読者の頭を混乱するばかり。ほんとに、駄作といって差し支えない。正直、購入して損した気分。
通勤途中とか、布団に入って寝るまでとか、とぎれとぎれ少しづつ読むとなると、内容が把握できないか~~も。~
・「ライトノベル?SF?」
どうやら、角川で映画化されるらしいですね(映画化ではあるが、アニメ化ではないようだ)。
感想。これはよいSFですね。堪能しました。おもしろかったー。……でもこれ、ライトノベルではないです。
ヒロインの穂瑞沙羅華(ほみず・さらか)は、飛び級で大学院に入った天才少女(16歳)。……なんですが、登場第一声が「〜だよ、綿さん」という「女ホームズ」口調で愕然(笑)。ライトノベルなら、もっと萌え萌えしたキャラクターを持ってくるでしょう。
これは、作者が46歳(執筆時)、もと会社員というのがあると思います。ライトノベルの第一命題「主人公の成長」はあるのですが……。表紙はライトノベルっぽいですが、内容はSFといっていいと思います。
「人間に宇宙はつくることができるのか?」というテーマで主人公・綿貫と、ヒロイン・穂瑞が組んで他のゼミ生とゼミ討論をおこなっていく……という内容。
で、宇宙論のゼミ討論で話が進んでいきます(笑)。素粒子、4つの力(電磁気力・重力・強い力・弱い力)、4つの力の統一、量子力学……
そして、穂瑞は宇宙を作るための「光子場仮説」を立て、実験(シミュレーション)を行います。詳しく書きませんが、この「光子場仮説」がこの小説のキモだと思います。シンプル&ビューティフル。これによって万物理論を説明している場面は「なるほど……」と思いました(まあ素人の印象にすぎませんが)。
しかし、この「宇宙を作る」はこの小説のテーマの半分であって、もう一つのテーマ、「人間はなんで生きていくのか?」が後半にクローズアップされてきます。ゼミともう一つの軸として、「米作り」が描かれるのですが、これが後半のテーマにつながってくる。主人公が出した「物理学の保障論」は、ハードSF的な展開の後にもってくるがゆえに、納得のいくものと感じました。
ハードSFとはいっても、キャラクターはライトノベル並みに立っているので、よみにくいところはありません。作者はこれが第一作ということで、一部展開に難があるところもあるものの、それを補って余りある筆力をもっていると思います。
・「読破後の爽快感」
初めて読むSF小説でしたが、読破後はただ呆然としていました。物理の専門用語がところどころ出てくるので多少戸惑いますが、主人公も同じようにあまり分かっていないので、読んでいくにつれて自然に感情移入していってしまいます。
しかし作品中で全て語るわけでなく、主人公とヒロインの今後や一部の事柄は読者に想像させる形で完結している。そこがまた、この作品のいいところ。
また作者独特の言い回しや、文体が非常に読みやすい。本作品が気に入った方は作者の他の作品もオススメします。
・「かなり面白い」
プログラミングに興味があり、物理や数学への憧れがあった私にはとても楽しめた本でした。
時代的には現代社会から見るとやや未来かあるいはパラレルワールドな感じ(今の時代には無い日常品が存在するので)なのですが、決して突拍子もないものは存在せず、どれもあってもおかしくないものなのでその辺はむしろ楽しめるかと思います。
宇宙を創る、と言う目標の為に実在する理論をコンピュータ上でシミュレートしてみたり、リアルな理論でキャラ同士が議論しあう様は読んでいるだけでこっちも分かったような気分になってしまいます。
実際そこそこ概念は分かるように書いてくれているので、私の様に宇宙や物理や数学についてほとんど何の知識も無い人でも楽しめると思います。
個人的にここ数年に読んだ創作の中では最も印象に残る本です。
・「「当たり前のこと」はなぜ「当たり前」?」
「宇宙を作ることはできるのか?」 この難題「神様のパズル」を 人工授精により生まれた天才少女を中心に 主人公である何事もさえない学生、その同級生、大学の教授達が 理論をぶつけ合っていくというのが話の大筋なのであるが、 主人公目線で物語が進むので難しい物理の知識は無くても全然大丈夫。
さらに言うとこの問題はメインのテーマではない。 天才少女と対比されて描かれる老婆。 このおばあさんは自分の人生に何の疑問も持たず、ただただ、昔からそうしてきたという理由で子を育て、米を作り続けてきた。それを少女は「哀れ」だと言う。
「知る」とはなにか? 「知らないこと」「知らずに生きること」は不幸か? 「人類は滅びる運命なのか」? 宇宙を作ろうとしていく過程の中でぶつかる更なる問題。
もちろん本書でその答えが出るわけではない。 しかし、私にとって、ものの見方について、新しい視点をくれたことは間違いない。 「常識を疑う」というのはよく言われることであるが、 それより前の段階「原理を疑う(知る)」ということである。 「あたりまえのこと」がなぜ「あたりまえ」なのか? この先こんなことを考える機会があるかどうかは分からないが、それも重要なのだと気づかせてくれた作品。
エンターテイメントとしても、人工的に作られた天才ゆえに苦悩する少女と主人公のさえない学生との心の交流(なかなか変化しないのであるが)が丁寧に描かれており、十分に楽しめる作品。
難しそうだと敬遠せずにぜひとも読んでいただきたい。
・「面白い! これぞSF」
書いてある物理学的表現が理解できるわけではないけれど、「これぞSF」だと感じました。小松左京賞受賞もうなずけます。これを青春小説として読むなんてもったいないと思います。
ただ、帯にある「映画化」や「ゲーム化」はどうなんでしょう? この本の面白さはそういうところにはないような気がします。
●ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫)
・「これは映像にしたい」
この小説の世界は映像にする価値が大きい。そうすることで、恩田さんの世界がより具体的になると思う。シールドの表現などはドキドキすると思う。二・二六事件は、雪の中で赤い色が印象的だから、映像の世界で物語の展開を見てみたい。
・「散りばめられた伏線の収束が見事」
過去の歴史に介入することができる技術を手に入れた人類。国連は歴史の転換点ともいえる「2.26事件」への介入を試みます。国連の介入により一見歴史が正しい方向へ向かったようにも見えましたが、それに伴い新たな事件や謎が次々と浮き彫りになってきます。最終的に歴史はどう変わるのか?やはり人類は同じ歴史を辿ることになるのか?「2.26事件」というとても難しい題材ではありますが、恩田さんは「シンデレラの靴」「シールド」等という独自の表現を使うことによって、物語は解りやすく、そしてミステリー要素を散りばめながらもきっちりとSFに収束されています。錯綜する時間、情報、空間…人類が如何に過去への介入をしようともやはりそれも予め決められた歴史なのでしょうか。時間遡行の恐ろしさと興味深さを感じた一冊です。
・「これはすごい!」
恩田さんの作品をそれほど多く読んだことのない僕です。しかし、(しかしっていう接続詞はおかしいかもしれませんが)この作品はすごい作品だと思います。ニ・ニ六事件を題材にするという慧眼。素晴らしいです。「攻殻機動隊」よりも早く目をつけてる。 ミステリーって読んでいれば面白いんですが、読んだあと、読後感というかが微妙だったりします。直木賞作品「容疑者Xの献身」も読んでいて面白かったし、その仕掛け(トリック)には感心しましたが、その後に来るものは希薄でした。 でもこの作品にはそういった読後感はありません。あまりにも壮大です。ニ・ニ六事件はあまり知られていませんが(それが起こった≠ニいうことは広く知られていますが)、謎の多い出来事でした。謎を呼ぶような出来事も起きています。 それを再構成させる文章力、見事でした。恩田さんの作品は新しいミステリーの形であると思います。素晴らしいです。
・「ジェイムズ・P・ホーガンファンならば評価出来ます」
例えばジェイムズ・P・ホーガンを好きな人ならばこの作品は行けます。光りの帝国、ライオンハートにはそれらしい臭いがします。でもこの作者には夜のピクニックに代表されるハードSFからはほど遠いいわば駅弁のような作品が主流である意味この種の本格的SFファンを満足させる作者とは思えませんでした。 この作品だけ読めば野尻抱介の世界がここにもあったかと思わせるものがあります。 願わくば六番目の小夜子ではなくサリバン家のお引っ越しのような作品を出してもらえればちょっとすごいのになと思います。
・「これは傑作だと思います」
上巻から一気に読んでしまいました。すごく面白かったです。二・二六事件を起こした決起軍を率いるやり直しを任じられた軍人たちの、未来を知っているが故の苦悩などに胸が締め付けられる思いでした。この事件の結末を変えようと奔走する人々の姿から、当時の時代の歪みが垣間見える本でした。あと、私にとって紙の上の出来事だったものが、非常にリアルに感じられた本でした。
・「合理性を追求した現代社会の欠陥に対して考えさせられる作品」
村上春樹氏の現代社会に対する疑念・思想をふんだんに盛り込んだ秀作。読み込めば、我々がどうやってこの社会に対処していくべきかの氏の意見も見えてくるだろう。
・「私は面白く読めました」
カバー裏には「新しい小説世界に向かう村上春樹」とあります。が、変わった点といえば、 ・厳格な時系列で書かれている(今までにもあったけど) ・カメラの視線での描写が中心になっている ・超常現象は起こらないぐらいしか気づきませんでした。もちろんこの3点により、「どういった意味だろう」などと考えずに読めるようになっています。で、いつものようにバラバラなできごとが最後にはひとつに纏まってくれる満足感を味わいました。いろいろな評価はあるでしょうが、私は面白く読めました。
・「謎は全て解き明かされなくてはいけないのか?」
よくストーリーがしりちょんぼで中途半端だとか謎が残ったとか一部で酷評された作品ですけど俺は村上春樹作品の中では一番好きですね。高橋とマリというキャラクターが魅力的だし現代が舞台だけあって他の古い作品に比べて同世代に生きる人間として共感し易い。
あと謎っていうのは全て解き明かさないと納得できなかったり怒る人がいますけど俺はそうは思わない。謎が残ったとしても色々、想像したり、解釈したりでそれはそれで色んな楽しみ方があると思うんです。
それにハッピーエンド、大円団を迎えて終わるより惜しまれるくらいの短さで終わるほうがダラダラ続けるよりすっきりしてて良い場合もあると思いますよ。少なくてもこの作品にはそれが当てはまると思う。
・「どこかで新たな深淵は生まれ、そして繋がって行く。」
この本を5つ星としてしまうのは 単なる僕の好みの問題なのかもしれない。
理解できない人にはとてもつまらない本。 故に 理解できる人にはとても意味の有る本。
これは、癒しだ。
真夜中に生きる人々が 良くも悪くもお互いに干渉し関わりを持って 深い夜という闇の中で 淡々とただ「生きている」様子が描かれている。
イベントというイベントもおきない。 意味不可解な事も多いし、解明されないことの方が圧倒的。
でも、 最後のほっとした安堵が得られるのは何故だろう? 深い深淵の底にそっと光が差すような。 限りなく意図的ではない、気がついたら手の中にあった光。
これはそんな本だ。
この本についてうまく説明ができない。 けれど、 村上春樹の他書物とは少し違うような気がする。 「世界の終わり〜」のような、ぞくぞくする春樹節もよいけれど、 体中に浸透する水のような透明感のあるこの本を 僕はあえてお勧めしたいと思う。
・「読後感が心地いい」
心地のいい読後感を持たせてくれるお話。特に一晩通して、「マリ」が色々な人に出会い、成長していくところはシンプルな展開ながら心地いい。 確かに色々気になる点はある。「白川」はその後どうなったのか、「エリ」は起きたのか、「マリ」は中国に行ったのか、等々。 でもそれらも大した問題ではない。やっぱり心地良いから。
●象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)
・「美しく残酷な」
「グラン・ヴァカンス」で、伝説のSF作家から一気に知名度をあげた飛浩隆の、「伝説」たりえた代表的な中篇4編を大幅加筆の上まとめた作品集です。
SFではあるんですが、斬新なアイデアで勝負するといったタイプではなく、SFの文法を使って作者独特の世界を見せてくれる作品です。文体は美しくイメージ喚起力に優れていて、その作品世界は、邪悪なものと聖なるもの、残酷なものと優しいものが混じり合って独特の陶酔感があります。それでいて手触りは冷たくて、物語も理知的にコントロールされている印象を受けます。
4編作品がありますが表題作と「デュオ」がすばらしいです。ごく個人的な感想としては、津原泰水に通じるものを感じます。津原泰水がホラーを通じてやっていることを、飛浩隆はSFを介して行っているというか(同意見なしって感じ…)。
・「<破局>への志向」
綿密に構築された世界の劇的な破局。この短編集を貫く基調底音は、そんな言葉で表現できる。非常に硬質な文体で隙のない作品世界を構築する著者であるが、その魅力をこの短編集で遺憾なく発揮している。
・「SFファンに限らず読んでほしい」
味覚や視覚といった五感に関する描写・語彙の豊富さ、物語を物語る語りの巧みさ、描かれる異世界の幻想的な美しさなど、どれも一級品のできばえではないでしょうか。初出がSFマガジンで、早川書房のベストSF2004でも一位になっているようにSFというジャンルの中で評価されることの多いようですが、ミステリーや幻想文学といったジャンルの作品を多く読む人にも読んでほしいと思います。
・「島根の俊才が描く、極上のSFワールド」
■優秀なSF作家が島根に居る。彼の名は飛浩隆。1960年生まれ。近未来SF「夏の虫」で94年の自治労四十周年記念懸賞小説最優秀賞受賞。現在自治労文芸幹事でもある(実は私も四国地連の自治労文芸幹事なので飛氏と面識がある)。氏は、商業誌の世界では80年代にプロ・デビューし『SFマガジン』に中短編を発表してきたが93年の作品を最後に沈黙。書き下ろし作品『グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ』(早川書房、02)が、いきなり2003年度の日本SF大賞候補作となり関係者の度肝を抜いた。
■今回紹介する『象(かたど)られた力』(ハヤカワ文庫)は中短編集。星を滅ぼすほどの力を秘めた文様・図像の謎を追う表題作、宇宙を折りたたむことで超光速を実現したため邪悪な空間世界を招来させてしまう「呪界のほとり」等、4編を収録。目くるめく読書体験が味わえる。芳醇な想像力、硬質緻密な文章、斬新なアイディア。極上のSF世界がここにある
・「耽美的な滅びの美学」
表題の中編「象られた世界」は、見事なサイバーパンクSFだ。具体的な視覚効果をもたらすくらいの緻密な描写力が素晴らしい。「夜と泥の」もまた、映像を見せられているかのような濃密さで場面が描かれている。読んでいてうっとりした。 「呪界のほとり」のみ、小型竜と無頼の冒険家による珍道中で、飛の異色作。ユーモラスで楽しかった。
・「下巻も納得の五つ星!」
この少年は断固として15歳なんかじゃないな。語り口もやってることも感じていることも、聴いてる音楽や、(部活と関係なく)黙々と身体作ってるとこも全然15歳じゃない。確実に壮年期のオッサンだ。
それでも彼は15歳なのだ。だから悲しいのだ。
結局、自分の心と身体が完全に一致して生きてる人なんてそうそういないのかもしれません。でも普段は一致してないことにすら気づかず日々の仕事に忙殺されているのが私達なんだと思います。例えばホシノちゃんみたいに。
上下巻通して大好きだったナカタさん、あなたの生きた意味はちょっと地球レベルじゃ計れない何かなんでしょうね。そうとでも思っておかないと、泣けてくるのです。
・「ロマンティックで切なく苦しい哲学的な名作!」
私はかなり好きです。かなり引き込まれてしまい、ページ数が少なくなっていくと、読み終えるのが寂しくて何度も本を閉じてしまいました。読み終えた後は、それこそ魂を半分持っていかれたように呆然とし、涙がこぼれてきました。
「ナカタさん」と「佐伯さん」の繋がりなんて大した問題じゃないのです。あちらの世界に一歩足を踏み入れた人にしか見えない、分からないものがあり、それを知った人達の繋がりの話なのでは?(大島さんと星野さんはあちらの世界には行っていませんが…)
露骨な性的描写との批判の声もありましたが、私は逆に、それらのシーンが切なくて、エロさはそれほど感じませんでした。切なさ・哀しさ・温かさの方が強かったです。続かない関係だということは誰もが(本人達も読者も)分かっていて、でも求めずにはいられない…。エロくないです切ないです。
佐伯さんが、ナカタさんによって苦しみから解放され、思い出の中に(もとあるべき場所)に帰っていくシーンは、私にとって一番印象的で忘れられない感動の一コマです。涙があふれて仕方ありませんでした。
私にとっては大切な作品のひとつになりましたが、評価がわかれているのを見ると、きっと合う合わないがあるのでしょう。が、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を好きな方は、この作品も好きになるのでは、と思います。長々と失礼致しました。(ちなみに初めて書き込みをしました)
・「冗長性の回避」
この小説を理解することは非常に困難だと感じました。何を伝えたくて、何故このような話の展開をし、何故このような表現を用いるのだろうか、という疑問を持ちながら読み進めていきましたが、途中でやめました。 というのも、村上春樹は他者によりよく伝わるような言葉を選択するのではなく、自分にとって適切な言葉を「過程」を越えて、つかみとって表現しているのだと感じたからです。つまり論理的に、緻密に構成されたストーリーというわけではなく感覚に依拠する側面が大きいのだと思いました。作中で、「象徴性と意味性はべつのものだからね。−−−芸術家とは、冗長性を回避する資格を持つ人々のことだ」という言葉がありますが、自分はこの小説自体にそのことを強く感じました。 しかしながら、論理性の面でも現実と虚構が混同していく展開はあくまで自然で、村上春樹の文筆力のすごさを改めて感じました。 歴史に残る作品であると思います。
・「がんばれホシノくん☆」
楽天的で、出たとこ勝負。仕事を無断欠勤してまで風変わりなナカタさんに付き合うホシノくん。彼の愛らしさから目が話せない。ホシノくんに自分を重ねていると、小説を読みながら、私もホシノくんと同じように、「ナカタさんの目を通してものを見られる」ようになったような気がする。ほんのちょっとだけだけどね。彼は自分で言うほど頭悪くないと思うよ。彼が「人生なんてどう転んでもクソみたいなものなんだ」と言うのを聞くと、これからの人生程よく、リラックスして生きていけそうな気がする。ありがとう。ホシノくんからこの小説で得たものは大きかったよ。勿論田村カフカくんから得たこともある。
人それぞれ胸に響くポイントは異なるかもしれないけれど、きっと皆何かを得られる。それだけ仕掛けの多く施された小説。読む価値はある。
ところで、村上氏の小説には必ず、手をたたいてそうそう!と思えるたとえが出てくる。今回の私のヒットは「趣味の雪かき」byホシノくん。分かる!!
・「とっても素敵」
主人公が自分を損なわれてしまうなにかから必死に逃げる、とってもどドキドキして、上下巻を3日で読破してしまいました。とてもリアリストかとおもえばファンタジー、「お化け」みたいな具象なわかりやすい怖さもあるけれど、カラスと呼ばれる少年と主人公との、必死でとらわれたくないと逃げる描写は焦燥のような気持ちが一番怖かった。ひさしぶりに寝る間も惜しんで読みつくしたいとおもう本に出会いました。
・「旅行に行きたい!」
京都や神戸を「わたし」がめぐる幻想的な旅行記と、長野ワールドならではのショートストーリーを収録した短編集です。どちらのパートもとても素敵で、読後は思わずこの本を片手に電車に飛び乗りたくなってしまうかも。どこかにありそうで、きっと探しても見つけられない。そんな古都の様子にとても魅了されます。
美しい言葉づかいや小物のひとつひとつが楽しい後半も、もちろんおすすめ。どこかに旅立ちたいとき、ぜひ読んでみてください。
・「きれいで優しい」
夏帽子がトレードマークの紺野先生は、理科の臨時講師。 先生が訪れるさまざまな土地、学校での、少し不思議で懐かしい短篇集。
一話一話がものすごく短いので、時間をかけてじっくり少しずつ読みました。 紺野先生が訪れるさまざまな土地の美しさや、その地独自の子供たち。 そこにとけ込んでいくけれど、踏み込みすぎることはしない先生。 美しくて優しいお話ばかりで、すーっと気持ちいい気分にさせてくれます。 どれもそれぞれにいい味を出しているんですが、中でも子ギツネのお話と最終話がかわいかったです。
・「憧れです。」
こんな先生いたらいいなと思います。中学の時に紺野先生みたいな先生に出会っていたら、私も学校が好きになっていただろうに…。長野先生には珍しい、主人公が大人である作品。臨時の理科教諭の紺野先生と生徒達の交流です。紺野先生が作る食べ物がとても美味しそう!
・「中学生なら・・・」
学校の国語の教科書で、夏帽子の一話を読んだことがある人もいるのではないでしょうか。「卵」という題のお話です。「卵」では長野まゆみさんの独特な文章がわかりにくいかも知れませんが、他のお話は「卵」よりも不思議な文章で書かれています。(だからこそ、このお話が国語の教科書に選ばれたのでしょうけれども・・・)素敵な小物が沢山でてきます。
それらはとても幻想的で本当に有ったらいいなと思うものばかりです。
かるく読めますが、何回も読み直してしまう本です。
夢に浸りたい人にもお勧めです。
・「心に残る話」
魅力的な理科の臨時教師 こんな先生に出会ったことがないからか、いないだろうと思いつつも羨ましくて仕方がなくなりました。 子どもであった時代なんてどうに過ぎてますが、読むたびに、子どもの頃にこんな先生がいたら、という想像をしてしまいます。 短編なのですぐ読み終わってしまうのがもったいないです。 ただ、何度読み返しても読み返しても魅力的なことには変わりないので、オススメです。
・「紺野先生 一年のお便り」
読者を紺野先生の行く先々に誘ってくれる短編集です。五感を刺激される小説でした。
どの回の終わりも始まりも、紺野先生の風貌も人物描写もはっきりしていなくて、読んでると自然と想像力が湧いてくるどんな風に読みましたか? 温かい部屋でゆったりお話してみたいなぁ優しい気持ちになれる本です。
・「読書は作品との格闘だということを久々に感じさせてくれた傑作」
一文字たりとも読み落とせない緊張感が最初から最後まで持続します。読み終えたあとは肉体的にも疲れ果てるような、そんな読後感。
・「善悪」
耽美でリズムのある文章が素敵。
そして、善悪の判断基準に一片の迷いのないところが素敵。
「音楽だけが悪を」
最高のフレーズです。
・「あなたは音楽が好きですか?」
あなたは一枚のレコードを言語だけで再生できますか?(もちろんあなたにとってはCDでも良いのですが、この小説の中ではあくまでレコードをレコードとして再生。)あたしには無理です。でもこの本の中では実現され、みごとに音楽が鳴り響いています。
音楽(ルコ)を生きるということ。
そんな希有な才能を体感したければ読んでみてください。そこには一枚のレコードが、「音楽」があります。そしてもちろん古川日出男の物語があります。
あたしは「13」→「沈黙」→「アビシニアン」という物語の流れを愛します。
・「『沈黙』『アビシニアン』の合本文庫です」
単行本として発売されていた『沈黙』と『アビシニアン』の合本文庫です。この二つの物語はまさに好みの分かれる二つだと思います。
『沈黙』は一つの謎から始まり、「神」へと繋がる壮大な物語。
『アビシニアン』は猫を巡る不思議で、どこか切なくて、強く生きようとする人たちの恋愛物語。
僕はどちらとも好きです。ただ、『アラビアの夜の種族』『サウンドトラック』『ベルカ、吠えないのか?』などを読んで古川日出男さんに興味を持った方には古川さんの違った味を体感できていいと思うのですが、これから古川さんの本を読んでいきたいという人にはあまりオススメできません。そういう方は上に上げた本や、短編集から入ったほうが良いかもしれません。
・「カードの真骨頂」
カードの作品郡でこれといって語られることが少ない、比較的地味で目立たない作品です。私個人としては、”歌”という文章で表現しにくく、どちらかと言うと感性で扱うべき題材をあえて選択し、なおかつ小説としても高い水準で仕上がっている点に、非常に価値を感じます。
独特の心理描写で、言語化が難しい感情やニュアンス、事象をまっこうから捉えて、物語として綴っていく、この技術のうまさがカードの真骨頂ですね。
そんな彼の魅力が高いレベルで昇華しているのが、この作品だと思います。”エンダーのゲーム”から入ったカードファンもぜひ読んでみてください。
・「ソングマスターの歌を聞かせて」
幼いときに誘拐され、売られたアンセットは子供市場からソングハウスへ連れて行かれた。
ここでは特別の才能を持つ子供達が訓練を受け、数少ないソングバードが選ばれる。アンセットにはソングバードになる才能が備わっていた。皇帝ミカルのソングバードになったアンセットはいつのまにか権力争いの中に巻き込まれて行く。
ソングバードの歌は聞き手の心に触れる。そんな彼の才能を欲しがる人達は多かった。
アンセットが波瀾の人生の終わりにソングハウスで歌った彼の人生の歌。ソングバードでいるために、子供をつくることさえできなかったアンセット。その歌はソングハウスの多くの子供達に受け継がれた。
― 彼は不幸ではなかった。
しかし、彼はまた幸福でもなかった。―
ソングハウスに戻る前に描写された彼の人生。しかし、選ばれた者としての人生を送った彼の生涯は、自分の中にではなくまわりの人々の中に、色濃く記憶された。もしも、聞けるものなら、ソングバードの歌を、アンセットの歌声を夢の中でもいいから聞いてみたい。その時自分の心にはどんな音色が響くのだろか?
人を愛することとは何なのか?自分に問い掛けたくなる1冊です。
●「ハリー・ポッターと死の秘宝」 (上下巻セット) (ハリー・ポッターシリーズ第七巻)
・「愛は最強の魔法をもしのぐということが、充分納得できました。」
第一巻ではなぜ赤子のハリーが最強の闇の魔術をはねのかわかりませんでした。その後の巻で明かされた、自らを犠牲にした母の愛が彼を守ったというダンブルドアの説明も説得力にかけると思っていました。愛が何の役に立つのだろうと思ったハリーに同感しました。そういう読者は多数いたと思います。作者があえて意図したのでしょう。しかし、最終巻を読んで、愛が最強の魔法をしのぐのは当然だと心の底から思えました。( 原書で読んだとき感動でしばらく涙が止まりませんでした。)愛には当然友情も含まれます。新校長の生涯にわたり秘めた愛はもちろん、ハリー、ロン、ハーマイオニーの友情、細かいところではドラコの母のドラコに対する愛、ハグリッドの弟に対する愛などなど。様々な人が様々な人に向けた愛の総和が結局ヴォルデモートを打ち破る力と成ります。
死をも恐れぬ勇気が愛から発生するのだということも学びました。
皆さんが述べられているとおり、今までの記述が伏線になっていることが多数あり、この長いものがたりを破綻なく書いたローリングのストーリーテリングの才能はすばらしいです。最終巻では死の秘宝も絡んでちょっと話が複雑化しすぎて、子供が内容についていくのは難しいかもしれません。もし今の年齢で理解できなければ、年月を得てまた読み返す価値のある物語です。
ローリングに乾杯。
・「感動の最終話」
長らく楽しんでいたハリー・ポッターシリーズもこの第7作で最終ということで、一体どのような締めくくりになるのだろうか、名作にふさわしい作品に仕上がっているのだろうか、最後にがっかりすることがないだろうか、など期待と不安の入り混じった気持ちで読み始めたが、結論的には期待に違わぬ充実した内容で、楽しめたし感動しました。
内容は実に盛り沢山で、ハリーが安全な場所へ避難しようとして待ち伏せを受ける最初から、最後の学校での決戦まで息もつかせぬ思いもかけぬ展開が続きます。謎解きの方も今回新たに出てきた「死の秘宝」に関わることだけではなく、これまで謎であったことがきっちり説明され、納得できます。
登場人物もこれまでシリーズで活躍してきた人達が最終話にふさわしく色々な形で登場するのも嬉しいところ。とはいってもやはり中心はハリーとロンとハーマイオニーの3名で、途中いつものようにひと悶着はあるのですが、友情は健在です。ロンとハーマイオニーはそれぞれにふさわしい活躍をするし、最後はハリーが本当にすばらしい勇気を見せてくれて感動しました。
また、個人的に納得できたしよかったと思ったのは、彼に関する部分です。あっけなく舞台からおりてしまうのかと思われた最後に重要な役割を果たしてくれました。このシリーズではずっとハリーが光だとすれば彼は影の部分を演じてきて、最後までそれは変わらないのですが、見事な生き方を見せてくれたと思います。
どんなに途中で面白いと思った作品でも最後で尻すぼみになってがっかりする場合もあるのですが、最初に述べたように本書は本当に期待通りの内容であり、これでこのハリー・ポッターシリーズは真に名作の仲間入りをしたのではないかと思います。
蛇足ですが、僕はこのシリーズは原書で読んでいるのですが、他の人のレビューを見ると日本語訳への批判が結構多いですね。原書の英語はそれほど難しいとは思いませんが、やはりどうしても自分の力不足で微妙なニュアンスが汲み取れない部分があり、そんな時は日本語版はどう訳しているのだろうと思うときがあります。このあたりが原書を読むときは悩ましいのですが、逆に日本語に直すとどうしても雰囲気がこわれて興ざめする時がありますので、やはり英語の勉強もかねて原書に挑戦することをお勧めします。
・「全巻を貫く「教育」というテーマ性」
各巻の終わり近くに必ずある、ハリーとダンブルドアの会話の場面が好きだ。 はじめの頃はハリーの解けない疑問にダンブルドアが答えていくというパターンだったが、最終章に近づくにつれ両者の立場は対等となり、弟子が師を乗り越えたと思わせるまでになる。 途中わが子のように盲目的とも言える愛を注いだダンブルドアに対し、ハリーはいつしか疑念を抱き、まさに親離れ的な成長を見せる。ダンブルドアはまさしく教育者の理想であり、魔法使いとしての実力以上に人間の信頼感に満ちあふれている。 第5巻で学校教育のあり方に鋭く切り込んだ作者だが、おそらくローリングは、学校が舞台という以上に「教育」に対し相当強い関心があるに違いない。「勇気」や「友情」、「自己犠牲」といった紋切り型のテーマ性に加え、もうひとつ確かに「理想の教育」がそこにある。
・「作者J・K・ローリングに「お疲れ様!」」
ハリー・ポッター・シリーズは7巻にも及ぶ、壮大な一大叙事詩であったが、後半になればなるほど、枚数が膨らんでいった。 前作よりかなり時間がかかっているにもかかわらず、色あせていない興奮は期待以上の出来栄えであった。著者はしばらく休養したいといっているようですが、「お疲れ様でした」と労をねぎらいたい。
・「この作品でファンタジー=子供限定と思わなくなりました。」
初めてこの作品を読み始めたのは高校生ぐらいだった気がします。現在社会人になってずっと発売を楽しみにしていた本が終わりを迎えるとあって、良い意味で残念です。
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