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▼おすすめ小説 その3:セレクト商品

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) (詳細)
原 りょう(著)

「沢崎、デビュー!」「沢崎に惚れる。」「沢崎の初登場」「そして謎は甦る」「凝りすぎでこわい位」


私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)
原 りょう(著)

「絶妙なバランス感覚で書かれたハードボイルド小説」「至高の傑作。次はこれを読もう。」「拾った宝くじが当たったような不運」「「私」とはいったい誰を指すのか?」「ハードボイルド+逆転劇が絶妙!」


天使たちの探偵 (ハヤカワ文庫JA)天使たちの探偵 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)
原 りょう(著)

「銘酒を酌むような味わいの連作短篇集」「沢崎シリーズを知らなくてもおもしろい」「天使たちに振り回された日」


さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA) (詳細)
原 りょう(著)

「ふたたび「長き眠り」」「どうすればこいつみたいに・・・」「研ぎ澄まされた文章」「純正ハードボイルド」「タイトルの意味がよく伝わった!」


愚か者死すべし愚か者死すべし (詳細)
原 リョウ(著)

「沢崎探偵を堪能」「最初の一文から「沢崎ワールド」に引き込まれた」「待望の沢崎が戻ってきた」「最も正統なるハードボイルドミステリ」「10年ぶり!」


むかしのはなしむかしのはなし (詳細)
三浦 しをん(著)

「分からない。」「上手いな」「あとから感動がわいて来る本」「昔話が生まれるとき」「日常に非現実が入りこんだ時」


卵の緒卵の緒 (詳細)
瀬尾 まいこ(著)

「読後感のいい作品!」「みずみずしい小説。「7s Blood」も好きです」「10年ぶりのマイベスト」「ぽかぽかとして、ほんわかで…。」「なごみます」


図書館の神様図書館の神様 (詳細)
瀬尾 まいこ(著)

「文学のススメ」「いろんなことを育んでいる」「そう、文学はおもしろい!」「やられた!」「図書館に神様は本当にいるのです。」


天国はまだ遠く天国はまだ遠く (詳細)
瀬尾 まいこ(著)

「自分の居場所」「当たり前か普通のことか」「近年稀に見る作家の登場ではないか」「力をぬこう」「じんわりひろがる。」


幸福な食卓幸福な食卓 (詳細)
瀬尾 まいこ(著)

「シンプルだから伝わること」「心、温まる」「家族が崩壊する現代だから・・・」「家族の形」「不覚にも涙を浮かべてしまいました」


優しい音楽優しい音楽 (詳細)
瀬尾 まいこ(著)

「まるで心地良い風」「気持ちのよい本でした。」「優しすぎる小説」「素敵な時間」「ハートウォーミングな作品集」


むずかしい愛 (岩波文庫)むずかしい愛 (岩波文庫) (詳細)
カルヴィーノ(著), 和田 忠彦(翻訳)

「日常のなかのときめき、そして戸惑い」「寡黙な人々の愛と人生の物語。」


フランケンシュタイン (角川文庫)フランケンシュタイン (角川文庫) (詳細)
メアリー シェリー(著), Mary Shelley(著), 山本 政喜(著)

「文学史上もっとも美しい孤独」「原作を読む楽しみがあります」「フランケンシュタインとは誰のこと?」「古典的名作」「翻訳には疑問符をいくつもつけたくなった」


ヴィーナス・プラスX (未来の文学)ヴィーナス・プラスX (未来の文学) (詳細)
シオドア スタージョン(著), Theodore Sturgeon(原著), 大久保 譲(翻訳)

「面白い!」「タイトルがおかしいような」「スタージョンの温かい視線。」「傑作プラス?」「面白いですよ。」


サキ傑作集 (岩波文庫 赤 261-1)サキ傑作集 (岩波文庫 赤 261-1) (詳細)
サキ(著), 河田 智雄(翻訳)

「動物好きにもオススメ?!」「リスクを取るということ」


ザ・ベスト・オブ・サキ〈1〉 (ちくま文庫)ザ・ベスト・オブ・サキ〈1〉 (ちくま文庫) (詳細)
サキ(著), 中西 秀男(翻訳)

「読み終わるのが心底惜しかった本」「クローヴィス VS 動物たち」「オタクにオススメ」


ザ・ベスト・オブ・サキ〈2〉 (ちくま文庫)ザ・ベスト・オブ・サキ〈2〉 (ちくま文庫) (詳細)
サキ(著), 中西 秀男(翻訳)

「短編小説の極致」「極上の夜をどうぞ!」


袋小路の男袋小路の男 (詳細)
絲山 秋子(著)

「絶妙な距離感!」「透明感のある文体」「感歎」「小田切孝萌え」「まさに現代の恋愛」


熊の敷石熊の敷石 (詳細)
堀江 敏幸(著)

「心地良い」「記憶の襞をまさぐるような。」「心地良い」「触れることのできないあたたかな「貝の火」」「表紙に意味が、、、」


風味絶佳風味絶佳 (詳細)
山田 詠美(著)

「じっくり読みたい一冊。」「人生の味 絶佳なり」「文句なしなのでは?」「絶品!」「食べ物の好きな山田詠美。」


夏の庭―The Friends夏の庭―The Friends (詳細)
湯本 香樹実(著)

「一気に読んで、すぐにまた読みたくなる傑作」「スタンバイミー」「大好きな一冊」「確かに「人は死ぬ」ことへの再確認。」「あたたかい」


村の名前村の名前 (詳細)
辻原 登(著)

「リアルで幻想的な世界」「新世代への過渡期的作品」「幻」


ア・ルース・ボーイ (新潮文庫)ア・ルース・ボーイ (新潮文庫) (詳細)
佐伯 一麦(著)

「見えない世界」「お蔵入りしている映画を観てみたい。」「これはいいよ」「活「欲」」「うまい」


遠き山に日は落ちて (集英社文庫)遠き山に日は落ちて (集英社文庫) (詳細)
佐伯 一麦(著)

「妙に暖かい後味」


インストールインストール (詳細)
綿矢 りさ(著)

「ストーリーの展開にとりつかれました。」「同じ女子高生年代として支持!」「大好きな作品。」「(純)文学の入門書」「高校生に読んで欲しい本」


▼クチコミ情報

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))

・「沢崎、デビュー!
 作者である原りょうの、「りょう」という漢字がインターネット上で使えないことはかなり知れ渡ってきたようだ。今の時代、それだけでも印象に残るに違いない。その作者のデビュー作となった本作品は、作者が出版社に郵送で持ち込んだという。その経緯もファンの間ではよく知られている。編集者から連絡が入るまでの間、作者は作品の盗作を心配したらしい。そのため本作品には作者が作者であることを示す暗号が隠されていることも今となってはかなり知られているはずだ。

 「渡辺探偵事務所の沢崎です」

 主人公の私立探偵沢崎は、年に100回ほどこう言って相手の間違いを正す。沢崎は、姿を隠して久しい所長の渡辺が開いた探偵事務所を一人で維持しているのだ。その渡辺が起こした過去の事件を追い続ける新宿署の錦織警部と清和会の橋爪にとって、沢崎だけが渡辺につながる糸だった。沢崎は彼らを情報源として利用しながら、依頼を受けた事件の真相に迫る。シリーズを通じて変わらない探偵沢崎の型である。

 沢崎のデビュー戦は、海部と名乗る男から二十二万円の現金を預ったことから始まった。

 失踪した佐伯直樹はカレンダーに渡辺探偵事務所のなと電話番号を書き残していた。そして、その佐伯の行方を追う沢崎の前に過去のある事件が浮かび上がる。

 過去の事件の真相は? 海部と名乗る男の正体は?

 鮮烈な印象を残すラストシーン。マスコミが伝えた事実には肝心な部分が抜け落ちていた。

 自分の足で情報を集め、整理する。その繰り返しによって真実を突き止める沢崎の姿勢は、探偵という職業に徹する機能美を感じさせる。その美しさに魅せられた者はきっと「私が殺した少女」「さらば長き眠り」と続くシリーズを手に取るに違いない。

 ハードボイルド、万歳!  沢崎、万歳!  そして、原りょう! 新作を待っている!

・「沢崎に惚れる。
推理小説好きな人には、是非一度手にとっていただきたい作品。文章に独特の理屈っぽさがただよう。まず、それを心地良いと感じるか、不快に感じるかが、この沢崎シリーズを好きになるかどうかの、基準になると思う。「そして夜は甦る」は、探偵沢崎シリーズの第一作目。推定独身、東京都在住、すすけた中年探偵・・・・彼のルックスについては、ほとんど明らかにされていない。しかし、彼がくゆらせているであろう煙草の香りを、私は確かに感じた。彼に惚れてしまった。もし、現実に彼が居たら、哀愁を帯びたその背中を、いつまでも追っかけてしまうであろう。

物語は、緻密で、理論立てて構成されている。読み終わった後、妙に理屈っぽくなり、恋人と大喧嘩をした経験が有る。それでも、読むのを止められなかった。次の作品も、そして次の作品も、読み応え有り。まず、この作品からどうぞ。

・「沢崎の初登場
日本にもあったかと思わせる、沢崎シリーズの記念すべき第1作である。沢崎はけっしてかっこいい探偵ではない。しかし、ハードボイルドらしく、自分で決めた信念には忠実にしたがって生きていく。

各場面、へーと思わせる沢崎の観察眼を披露する。ストーリーも緻密に組み立てており、ミステリーの要素も多い。

じっくり読みたい一品だ。

・「そして謎は甦る
渡辺探偵事務所に、右手を見せない男が知人の安否を尋ねに訪れる。チャンドラーを敬愛する原りょうの、そして記念すべき沢崎シリーズ第1作「そして夜は甦る」はここに開幕した。乾いた文体と緊密な構成、極めつけのハードボイルドはこの湿った日本でも花開くことを証明してみせた。原りょうはその文体を自分の中に見つけるまで、始まりの違う第1章を何章も書き、終わりの違う終章を何章も書き上げたという。そして10年、やっとこれが自分の文体と呼べるものを見つけた。しかし出版関係に知己のない著者は、原稿を盗用されることを怖れてある仕掛けを本作に仕組んだ。さて、貴方は見つけることができるだろうか?なお、本書の文庫版には「あとがきに代えて」という短編が収録されている。

・「凝りすぎでこわい位
一気に読まないと、分かりにくいほど、凝っている内容。登場人物が多数いて、誰が誰と、どういう関係から、どのように係わっているのか、頭の整理が必要でしょう。それだけに面白さは保証する。蛇足だけど、I原知事、I原Y郎を連想して笑ってしまった。

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501)) (詳細)

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)

・「絶妙なバランス感覚で書かれたハードボイルド小説
探偵・沢崎シリーズの二作目です。沢崎が作家の娘でバイオリン奏者として将来を嘱望された真壁清香の誘拐事件に巻き込まれます。

実にハードボイルドらしいハードボイルドだと思います。探偵の設定、ワイズクラック、彼と「瞬間的な相互理解」ができる男の存在(沢木耕太郎曰くハードボイルド小説の構成条件の一つ)・・・・・etc。ストーリーも巧みです。

沢崎は基本的に優秀なので、淡々と調査を進めていきます。その手際が鮮やかなので、読者は読んでいくうちに彼を信頼していくような作りになっています。調査の進め方も大抵外堀から埋めていくような形で行われ、途中で警察の捜査とバッティングして、ここで調査と捜査のすり合わせが行われます。

様々な要素が絶妙なバランス感覚で配置されているのに驚かされます。バチグンの出来だと思います。原寮の小説は沢崎シリーズ以外出されていません。95年に5年ぶりに出された、長編第三作『さらば長き眠り』以来止まっているのですが、今年出版されるという話があります。前もあったのですが、今回は本当であることを期待します。

・「至高の傑作。次はこれを読もう。
プロット、表現(レトリックは、チャンドラー的ではあるけれど)ともに卓絶。いまだにこれを超えるハードボイルドミステリーは日本に存在しません。

とにかく読んでみてください。

作者の想像物であって、絶対にいるはずもないのに、どこかいて欲しい、いつか会ってみたい。そんなリアルな思いを、つい抱いてしまうほど、主人公の探偵・沢崎が魅力的。それは、いまや失われた孤高の姿を、どこまでも気高く守っているからなのでしょうか。

すごく、クールでカッコよいのです。いいですよ。

・「拾った宝くじが当たったような不運
直木賞受賞作。タイトルからして鮮烈である。残念なことに、登場人物はあまり魅力的ではなく、前作「そして夜は甦る」のカギとなる諏訪雅之のような、原りょう作品の色と匂いを全身に纏った男は登場しない。

だがそんなマイナスポイントをカバーしてなお、釣りがくるほどに展開が良い。謎の設定が良い。幕切れが良い。何より沢崎が良い。

誘拐事件の概念を覆すというより裏返す設定が破綻なく活かされており、振り回され苦悩する沢崎の姿が声を殺した悲鳴のように描かれている。渡辺との白日夢のような再会も映画のラストシーンにも似たエンディングへと見事に繋がっていく。そう、「そして夜は甦る」の場合もそうだったが、作家の力量が最も問われる最後の数ページがこの作家は本当に巧い。名作と呼ばれる映画の幕切れのように、その余韻を思わず誰かと共有したくなる。

原りょうが寡作なのが残念でならない。既発表作をすぐにも読み尽くしてしまいそうで、それが何よりも惜しい。

・「「私」とはいったい誰を指すのか?
 第102回直木賞受賞作品。 「週間文春 傑作ミステリーベスト10」 1989年 第2位 「週間文春 1977年~1990年ベストミステリー」 第7位 「週間文春 二十世紀傑作ミステリーベスト10」 第14位 「宝島社 このミステリーがすごい!」 1989年版 第1位 「宝島社 『このミス』が選ぶ 過去10年のベスト20」 第4位 「宝島社 読者が選ぶ 過去10年のベスト20」 第6位 「宝島社 覆面座談会が選ぶ『過去10年間のベスト20』」 第4位

 本書では探偵・沢崎の動き回る場所が実名でかつ詳細に綴られています。都心に住んでいる方やある程度知っている方は実際にイメージが湧き、物凄くおもしろいと思います。

 題名に「私」とありますが、この「私」が誰を指すのかということを読み進める段階でちょくちょく考えました。 すると、不思議なことに考える度に「私」が違ってくるのです。 少女を殺した「私」とはいったい誰なのかということを考えながら読むのもおもしろいと思います。

 沢崎が乗り回す自動車は日産のブルーバード。この本が出版された頃は憧れの車の一つだったようです。 因みに、今現在私が乗り回しているのも偶然沢崎と同じブルーバードです。 私は彼に妙な親近感を持たずにはいられませんでした。

 ソレデハ…

・「ハードボイルド+逆転劇が絶妙!
「102回直木賞」受賞作。文章の書き方にクセのある方なので、状況説明が長い小説が苦手な方には少しツライ作品かもしれませんが、前作の「そして夜は甦る」を読んで、気に入った方は本作を絶対に読むべき。あなたを裏切らない作品であることを保証します!

作品自体はハードボイルドです。主人公沢崎が寡黙な男で、それをとりまくヤクザ、刑事も渋いです。色気のある女性の登場は皆無で、主人公との絡みもゼロ。ここまで硬派な小説も最近珍しいのではないでしょうか。最後の最後には、筆者特有の「想像を越えた結末」が待っています。

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)

天使たちの探偵 (ハヤカワ文庫JA)

・「銘酒を酌むような味わいの連作短篇集
 西新宿の探偵事務所に詰めている沢崎が活躍する短篇集。一匹狼として、組織に縛られずに行動する姿、時折口にする洒落た台詞など、沢崎には、フィリップ・マーロウを彷彿させる私立探偵の匂いがしますね。この短篇集には、十代の少年と少女が事件に深く関わる話が、六つ、収められています。 著者のデビュー作『そして夜は甦る』のあとに書かれた「少年の見た男」「子供を失った男」「二四〇号室の男」、第二長篇『私が殺した少女』執筆中に書かれた「イニシアル<M>の男」、そのあとに書かれた「歩道橋の男」「選ばれる男」の六篇。これに、本文庫のための書き下ろしとして、掌篇「探偵志願の男」が、ボーナス・トラック的に掲載されています。 最も印象に深く残ったのは、静謐で凛としたたたずまいを感じさせる文章の趣でしたね。雨が降る中からしみ出してくるような、孤愁に満ちたハードボイルドの雰囲気。それが身にしみて、ぐっときました。酔わされました。 収録作品の中では、「子供を失った男」「二四〇号室の男」「歩道橋の男」「探偵志願の男」が、読みごたえあったなあ。どれも、銘酒を酌むような素晴らしい味わい。なかでひとつだけ選ぶとしたら、「歩道橋の男」でしょうか。スピーディーで、変化に富んだ展開。鍵となる人物が、表立って登場しないところ。後を引く余韻。珠玉の名品です。

・「沢崎シリーズを知らなくてもおもしろい
沢崎シリーズが好きで、ドラクエのごとく順当にここまで読み進めました(笑)。ちなみにこれはシリーズ3作目の短編集。

・「天使たちに振り回された日
沢崎を主人公に据えた連作は、長編が3作とこの短編集が1作で3部作+1の沢崎シリーズとなる。この短編集各話の構成は中篇または中長編の長さで、精緻な文体と構成が魅力の著者にあって、中篇でもその味わいを発揮するものの、やはり長編よりは劣る。本書はいわば箸休め的な内容で、沢崎シリーズの特徴である、実時間とリンクし発生する謎のために、初読者の方は、第1作である「そして夜は甦る」から読み進まれることを強くお勧めする。もちろん沢崎ファンなら、必携である。作中時間の流れは、短編1「少年の見た男」1986年から短編6「選ばれる男」1989年まで、そしてこの文庫版のみの収録である「あとがきに代えて」1997年となる。私はもちろん沢崎ファンなので、この文庫版にのみ収録されている「あとがきに代えて」のためだけに購入した。

天使たちの探偵 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)

さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA)

・「ふたたび「長き眠り」
1996このミス 5位95年文春ベスト10 3位

「そして夜は蘇る」「私が殺した少女」「天使達の探偵」に続く、私立探偵・沢崎シリーズの第四弾。

およそ400日ぶりに東京に戻った沢崎は、11年前の夏の甲子園大会準決勝での八百長の疑惑から姉が自殺した魚住の依頼を受け、自殺の真相を追うこととなる。世界を代表するハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーをこよなく愛し、その文体にも影響をうける作者であるから、本作品のタイトルも、チャンドラーの代表作「長いお別れ」と「大いなる眠り」からとられたのであろう。本作も前3作に違わぬできで、決して期待を裏切らない。作者の作品の魅力は、もちろん私立探偵・沢崎の魅力と、そのチャンドラーへのオマージュである単文を主体とした文体からくるなんともいえぬ読後感であるが、もう一つ付け加えるとすれば、ミステリーとしての骨組みもしっかりしているところであろう。

各作品の最後で、遅筆をわびている作者であるが、本作も全作から5年をへて発行された。1995年の本作品発表後、ふたたび「長き眠り」に入ってしまったが沢崎シリーズの第二期のスタートが待ち遠しい。

なお、文庫版の巻末には、「死の淵より」という短編が、あとがきにかえて添えられており、作品の最後に「それは新たな事件の始まりだった。」と結ばれている。期待して次回作を待つとしよう。

・「どうすればこいつみたいに・・・
どうすればこの「沢崎」みたいな奴に慣れるのかな。世の中、今の世の自分を含めて、いけてない奴達が多いなか、どうすれば「かっこいい」奴になれるかな?登場人物達の設定にも魅力的です。それぞれ「かっこいい」ですよ。最後の謎時の場面にいたるまでの流れは、本の中にひっぱりこまれる力がありました。一つ一つの言葉や行動に意味をつけてられてるのは、作者のユーモアセンスを感じてしまいます。でも、原さんに一つ質問、沢崎の愛車「ブルーバード」の設定はなぜ?「ブルーバード」を表現される場面、私のお気に入りです。「いけてない車」が「かっこいい」のです。

・「研ぎ澄まされた文章
400日振りに西新宿に戻った私立探偵・沢崎は、浮浪者から依頼人が探していた事を聞かされる。11年前の自殺の真相を探る依頼だが、周辺で次々トラブルが起こっていく。そして、遂には沢崎自身にも絶対絶命の危機が・・・シリーズ第4作。

この作者は、実に良く文章を推敲することで知られる。沢崎を主人公とした、長編としては3作目の本作も、実に5年もの間推敲が重ねられた。次回作はなんと10年推敲することになるのだが・・

作品と作品の発表のあいだに、間断なく推敲を重ねていたのかどうかは知らないが、そうだと言われても驚かない、それほど密度の高い文章だと思う。どのページでも良い。テイストを損なわずに、より短い文章に出来るか、一度トライしてみる事をお勧めする。いかに考え抜かれた筋肉質の文章かわかる。

ミステリーとしても十分面白いし、どんでん返しも効いている。ハードボイルドの探偵物として、正に王道の作品でもある。文庫版だけに加えられた「後書き」だけでも短編1作の価値がある。

しかし、本作の価値はそれだけではない。文章そのものを楽しむ喜びを感じて頂きたい。それこそが、読者が、5年も、10年も沢崎を待ち続ける大きな理由のひとつだから。

・「純正ハードボイルド
この歯切れの良い、短い文章で長編を、それもシリーズで書き続けることは確かに膨大な時間がかかる作業なのだろう。探偵沢崎の物語に饒舌な語りは似合わないのだ。しかし、依頼人を見つけるまでに約三分の一のページ数を費やすのはどうなのだろう。それからやっと本格的に捜査を開始するのだから、本当ならもっとページ数が増えそうなものだが。結構長いのにも関わらず、余計なものをそぎ落とした小説と言える。例えば行きずりの美女とかが出てこないし。ま、読者に待たせた分ちょっとしたファンサービスのようなものはあるのだけど、そのぐらいは目をつぶって。

確かにオチはリアリティを損なっているかもしれないが・・・やっぱりこういう作品は男のロマンが如何に描けているかが最優先であり、他はまあそこそこ書けてれば良いんじゃないか?沢崎も錦織も意外と橋爪も品があるしね。

・「タイトルの意味がよく伝わった!
ストリー展開の心地よさ、渡辺・錦織・橋爪との無遠慮な係わりが秀逸なのは勿論のこと、単なる推理小説を超えた壮大な人間観をモチーフにしていると感じた。そういう意味からもシリーズではイチオシしたい。まさしく「長い」→「眠り」→「さらば」を、そのまま語り尽くしている。 

さらば長き眠り (ハヤカワ文庫JA) (詳細)

愚か者死すべし

・「沢崎探偵を堪能
ストーリーよりも何よりも、沢崎探偵の佇まいを味わう。それが原尞の正しい楽しみ方だと思う。「ハードボイルドとは生き方なのだ」という手垢の付いた言葉が、ここでは沢崎の一挙手一投足にどくどくと脈打っている。

手にとって夢中で読んだ。9年ぶりの惑溺。うーん、満足。

・「最初の一文から「沢崎ワールド」に引き込まれた
最初の一文から「沢崎ワールド」に引き込まれた。他の作品より若干スピード感に欠けるきがするが、十分に堪能できるハードボイルド作品であった。余談であるが、本作品と前作「さらば長き眠り」の間には、実は「世紀末犯罪事情」という掌編が存在し、本作品の最初も、「世紀末犯罪事情」を解決し、事務所に帰ったところから始まっている。「世紀末犯罪事情」は、文庫版の「さらば長き眠り」にだけ収録されている(ハードカバー版には収録されていない)。なにしろこの作品が9年以上ぶりに刊行されたため、これを機会にシリーズ前作を読み返す、あるいは初めて読む読者もいると思うが、この場合は、文庫版の「さらば長き眠り」を読むことをおすすめしたい。

本作品巻末の後記に、「第二・第三作を早期に出版する」という作者の言葉がある。この言葉を信じ、次回作を待つとしよう。

・「待望の沢崎が戻ってきた
この作者の本を読む場合、必ず次の順に読むこと。そうでないと面白さが激減する。

「そして夜は甦る」→「私が殺した少女」→「天使たちの探偵」→「さらば長き眠り」→そして本書の「愚か者死すべし」

「新宿の私立探偵」沢崎のシリーズもの最新刊。上記の本の流れに沿って、沢崎ワールドがリアルの時と一緒に流れている。

前作の「さらば長き眠り」よりページ数が半減しているが、その分、一気にスイングするようなスピード感を味わえる。

日本の“レイモンド-チャンドラー”健在!これを読まずして死ねるか!!

・「最も正統なるハードボイルドミステリ
原寮に期待する声は多かったが9年ぶりに探偵、沢崎を主人公に新シリーズが出版された。‘さらば長き眠り’以降、作者は前作を上回る作品を求め、苦しんでいたと言う。だが‘愚か者死すべし’は従来の作品以上のプロットと推理を加味させた最高傑作の一つと言える。 沢崎独自の視点と理屈、これらはチャンドラーの流れを汲むものだが一層洗練された会話とサスペンス的な展開には近年国内で生み出された最高傑作の一つと多くのファンが認めるはずである。ミステリファンには必見の書と推薦したい。

・「10年ぶり!
原寮の約10年ぶりの新作だ。「人気ハードボイルド作家」といわれた著者だが、忘れかけている人も多い。「10年ひと昔」だからねえ。世の中に背を向けて新宿でひとりで探偵事務所を営む沢崎は中古のブルーバードに乗っている。たばこ好きのコーヒー好き。と、そんな「古風」な私立探偵「沢崎」シリーズの一冊。新宿署の駐車場での狙撃事件から、老資産家の誘拐事件、暴力団同士の抗争へと話が繋がり、ふたつの事件の背後にある真実に探偵・沢崎が迫っていくのだが、相変わらずの「これぞハードボイルド」という世界が展開されている。たまらないねえ。

愚か者死すべし (詳細)

むかしのはなし

・「分からない。
どの話も面白いと思うのですが、私は最後のお話が1番好きです。あの人が何を考えて、何を見て、何を聞いて。それを確実に知る事が出来るのは、その人自身なんだという当たり前の事に気付いた様な。分からない事があるから、その世界にリアルを感じるんだと思います。

それからあとがきにあった、『言葉を媒体にだれかとつながっていたい』という言葉(かなり省略してます/汗)が好きです。このお話たちにも、所々にそんな気持ちが散りばめられてるなぁ、と感じました。

とにかく、読んでみれば分かると思います。

・「上手いな
 誰でも知っている昔話をしをん風、そして現代風にアレンジした現代小説。 最後のももたろうの話が個人的には一番面白かったのだが、どの話も極めて秀逸。昔話の教訓めいたものを考えながら読むと、各々の短編がさらに輝きを見せる。 本当に力をつけてきている。直木賞取れればよかったのに。

・「あとから感動がわいて来る本
桃太郎や浦島太郎など、日本人にはおなじみの昔話をベースに小話が語られるという趣向。なにげなく、さりげない話の群集がいつしか「時」や「宇宙」のような壮大なリンクを描きはじめる絶妙な文章力。

私たち自身のさりげない日常や何気ない人生も今日あったことも昨日あったことも時間や宇宙のリンクの一部なんだ。そんなことを考えて、「むかしのはなし」という言葉の意味を実感、そしてじわじわと感動。また読みたくなる本です。

これは硬質で精密、シンプルで壮大なエンタテイメント。「完璧」という言葉を使ってもいいと思う。

・「昔話が生まれるとき
まず帯の「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」という作中の会話から抜粋された一言にやられた。エッセイがめっぽう面白い三浦しをんさんだが、小説がまた書くたびにグングン上手くなっていると思う。様々な立場から愛や生命、生きるということについて語られているが、思わず自分だったら・・・?と考えずにはいられない。一つ一つを読んでも面白いし、通して読めばしばらく余韻にひたるだろう。

・「日常に非現実が入りこんだ時
三浦しをんさんの小説は(エッセイはもちろん爆笑ものだけれど)ハズレがないなあと今回の作品を読んで改めて思いました。設定はとてもワールドワイドなものだけど、それでもその設定に流されずに人の心の交流が書かれています。愛しい想い、愛しい人間。どの話も、登場人物のその先を想像したくなります。そしてとても愛しく、そして少し切ない気分になります。でも、あれこれ説明するよりただ「読め!」と言ったほうがいいようです。

むかしのはなし (詳細)

卵の緒

・「読後感のいい作品!
「卵の緒」と「7's blood」の2編からなる中編集で表題作は第7回の坊ちゃん文学大賞の受賞作です。

2編とも瑞々しいタッチで描かれていて甲乙つけがたいほどいい作品だと思う。子供の視点から家族のあり方をさりげない筆致で描いているが、読者の胸を打つことは間違いなし。

表題作は母親が育生を引き取ったいきさつが、また「7's blood」は七子と七生の別れのシーンが・・・

いずれもそれぞれ血の繋がってない親子、異母姉弟の心のふれあいを描いているが、血よりも濃い思いやりの心が滲み出ていて読者に日々忘れかけている本当に大切なものを思い起こさせてくれる。

瀬尾さんの感性豊かな文章はとっても鮮やかで、読後感のいい1冊となりました。

・「みずみずしい小説。「7s Blood」も好きです
 初めて瀬尾さんの作品を読みました。タッチが好きです。描き方がいい。とてもみずみずしい印象をうけました。ストレートに言うなら「かわいい」! ボクは二つ目の作品、「7s Blood」が印象的でした。「夜のピクニック」ではないですが、異母姉弟の複雑な心のあやを少しずつ、トキホグクしながら、お互いの気持ちをかわし合い、成長していく。いやみがなく、素直に声援を送れる物語でした。こういうの好きだなあ。「感動」なんて大げさな言葉にしてしまうと陳腐になってしまうような、とてもさわやかな心象。こういう物語好きです!

・「10年ぶりのマイベスト
大きくなる前に、こんなことを話してほしかった…と思うほど、すてきな言葉が詰まっています。愛おしさばかりでなく、自分と子どもをおなじ人としてみている君子さんは、とても素敵な女性だと思いました。私が子どもを育てることがあるなら、こんなふうに接したいです。とりえのない毎日だけど、大好きな人とたまの美味しい食事があれば、ほんとにしあわせだと思います。10年ぶりにマイベストの本が変わった一冊です。

・「ぽかぽかとして、ほんわかで…。
 最初は、タイトルの『卵』という文字を見て、単純にアヒルやカモを連想して手にとってしまいましたが、ニンゲンのいちばん大事な繋がりについての素敵なお話でした。 印象的だったのは、まるでお日様に向かってすくすくと伸びていくかのように、真っ直ぐに育っている育生君の心と、そんな育生君を一人の人としてきちんと認め、真っ正面から接しているお母さんの姿勢です。 何を信じれば良いのかが分かりづらい今の世の中、こんな親子関係いいですね。「血の繋がり以上に大切なものもあるんだよ」ということを教えてもらい、なんだか心がやわらかくなる感じがしました。 こんなあたたかい本にめぐり合わせてくれた、アヒルやカモに感謝したいです。 

・「なごみます
偶然本屋さんでみかけて買いました。若い作者なのになぜかなつかしくなごみます。宝物にしたいような、読み終わるのが惜しいような、そんな本です。

卵の緒 (詳細)

図書館の神様

・「文学のススメ
瀬尾作品で初めて読んだ本、この本に出合えて良かった心から思えた一冊。心に傷を持つ高校の国語講師となったキヨは、たった一人の文芸部の垣内君と顧問として接していくうちに、自分の持つ正しさだけが全てではないと気付き成長して行く過程が丁寧に瑞々しく描かれている。垣内君とのやり取りが軽快で楽しく、キヨが成長の過程で文学の面白さにも気付くのがこの作品の面白いところ。この作品を読み終えると他にも沢山の作品に触れてみたくなるのだ。この作品は文学への窓口の様な作品だと思う。とても素敵な一冊、読んで損はない。

・「いろんなことを育んでいる
『幸福な食卓』も大好きですが、主人公の年齢がこちらの方が自分と近いのでグッとくる部分が多いかも。

・「そう、文学はおもしろい!
~この本で一番面白かったのは、一人しか部員のいない文芸部の部長と、その顧問になってしまった主人公のやりとり。そして、国語の講師なのに、文学にまったく興味のなかった主人公が少しずつ本を読み始めていくところです。主人公のように、この本に出てくる作品を読んでみたいなと思わせます。

~~そして、なんといっても文芸部の終わりが近づいたところから、ラストにかけてがとても素敵でした。映像力があって、まるで映画のように話の場面が思い浮かびました。

本が好きな人はもちろん、苦手な人や中学生、高校生にはぜひお勧めします。

作中のラスト、文芸部の部長が言います。「文学はおもしろい」と。この本は、きっとそう思わせてくれます。~

・「やられた!
結構薄めの本でさらりと読めてしまうんですが、すごく面白かったです!キャラクターがほのぼのと優しくて嬉しくなるし、大人びた垣内君とのやり取りには、必ず「ふふふ。」と笑わされます。

自分としては頑張って、真面目に、一生懸命、誠実に、取り組んだつもりでも、それだけじゃいけない時もあるんだよねぇ。で、身動きが取れなくなっちゃったりしてさー。あぁー分かるなぁ。とじーんとくるところもありました。

あまり本を読まない主人公が文学になじんでいく過程も描かれているので、本の楽しみ方が分からない人などはすごく参考になるんじゃないかなぁと思います。

・「図書館に神様は本当にいるのです。
なんとなく教師になった主人公。国語の教師だというだけで、文芸部担当となる。部員は元サッカー選手の生徒一人。

どうみても教師と生徒ではなく、対等な、時には生徒のほうが大人びているのだが、二人で部の活動として朝練と称して、図書館整理をすることに・・・

主人公は自分の学生時代のトラウマや、恋人との関係で悩み?を抱えている。いったいどうしたらいいのか。自分は何をしたいのか。

図書館というのは学校の中でも特異な場所だ。そこが仕事場である私には、臨場感溢れる?内容でもあった。

人は何かしらを抱えている。あなたはこの本をどう解釈するのでしょうか。

図書館の神様 (詳細)

天国はまだ遠く

・「自分の居場所
瀬尾さんの作品を三作とも読んできて、作品に流れるそこはかとない明るさや、人を信じようとする心や、足を地につけて歩こうとする主人公たちに、ちょっとした勇気をもらっています。読んだ後の、爽やかさが大好きです。傷心と再生、癒しの物語は、今たくさん出されていますが、瀬尾まいこさんの作品は、良質なものだと感じています。『天国はまだ遠く』も、主人公・千鶴がきちんと生き直すまでの過程を描いた物語ですが、前2作の主人公たちと異なって、優柔不断でぐずぐずしたところのある人物として登場します。仕事に倦み疲れ、希望を失って、命を捨てようと決意した千鶴が、投宿した民宿「たむら」で過ごした日々。痛々しくも、ゆっくりと心がほぐれ広がっていくようすが、こちらの胸に染みてきます。民宿の主人・田村さんの、要らぬお喋りはしないけれど、必要なことをちゃんと伝える言動に、温かな心根を感じて励まされていたのは、千鶴より私の方だったかもしれません。自分を見直す作業をし、自分を取りまく状況を素直に受け入れ、自然や近所の人々との何気ない会話などから、千鶴が心地よさやありのままの自分を享受できるようになっていくようすが、ストレートに心に響きます。瀬尾さんの描く傷や打ちのめされた心を抱えた人物たちが、前を向いて行こうと決意する場面は、心というものは何処かで自分で治りたがっていて、ある時期を得ると、自然にオンのスイッチが入る仕組みになっているんだと、思わずにはいられません。けれども、人の心が癒えていくとき、かすかな寄り添うような気配だけであっても、傍にいる人の「心」を感じ、受け止めていて、本当に人は一人では生きられないようになっているとも思わずにはいられませんでした。

・「当たり前か普通のことか
当り前の主人公は、当り前の人と出会う。当り前だけど、どこにでも居そうだけど、どこにでもいないかもしれない人達と出会う。田村さんは普通の人だと読者である僕たちは思う。主人公の彼女も普通の人だと僕たちは思う。でも僕は田村さんと、彼女と出会いたい。農家のおばあさんと、パン屋のおばさんと出会いたい。出会いたいけど出会えない。それは小説だからと当たり前の事実に僕らは気づく。そんな小説だからこそ愛をしい。心の隅にしまっておきたい、でも貴方に伝えたい、貴方と分かち合いたい。そんな小説に出会えた事がとてもうれしい。

・「近年稀に見る作家の登場ではないか
 文体、リズム、重苦しさ(嫌気)を感じさせない内容、全体的に作者の世界がバランス良く展開し、読み終えたあとは、すっきりと素直に「いい本だったなぁ」と思うでしょう。「いい話だったなぁ」ではなく、「いい本だった」と思わせる作者の力量に、今後も期待していいのではないでしょうか? 

・「力をぬこう
主人公は力を抜くことが下手な性格元来明るく友達も多かったのだが仕事にその性格がなかなか生かせない

生きて行くには仕事もしなくちゃいけないし嫌な上司とも付き合わなくちゃいけない毎日血を吐く思いをしても・・・

そんな風に思いながら仕事をしている人って都会には結構多いのではないだろうか?仕事ってそんなに大事?人間関係って血を吐く思いをしてまでも我慢するのも?

頭の角ではこんなの生活おかしい抜け出したいとおもいつつメビウスの輪にはまっていませんか?

そんな気持ちになった人は是非読んで貰いたい一冊瀬尾さんの本は読んだ後に体の力がぬけてなんだかポカポカ暖かくなりますよ!

・「じんわりひろがる。
死のうとしてた主人公が出会ったのは、平凡な暮らし。何にもしばられない、気ままに生きている田村さんに出会い、田村さんの民宿で日々を過ごすうちに自然と沸いてくる感情。ラストシーンが、なんだか切なくて好き。あんまり、現実でよく起こる話じゃないけど、学ぶことがいっぱいありました。仕事で悩んでる人に読んでほしい一冊。

天国はまだ遠く (詳細)

幸福な食卓

・「シンプルだから伝わること
久しぶりにいい本に巡り会えました。ここの評価をみるとイマイチなのかな?って思ってたんですが、いざ読みだすと止まらなくなりました。

読み終わると、なにか伝ってくるものがあります。是非、読んでみて下さい。

・「心、温まる
この話を読み終えたあと、なんかふんわ〜りとした気分にさせられました。家族の日常が描かれていて、とてもいぃ。言えば、リアルなのかもしれない。最後の方で涙がこぼれ落ち、最後の最後で、笑顔があがる。それまでは、何でもない、普通な感じだけど、ビックリする展開が待ち受けていた。心の中は、すっごく温まり、“自分の本”として、大切にしようと思った。宝物にしようと思った。普通に読んでいき、読み終わったら、表紙の絵を見てください。「あぁ〜、なるほどネ」ってきっと、つぶやきたくなりますから!!家族の心温まる支えと、日常風景がうつし出され、この本から教わるコトが、きっとあります。『どんなにつらい夜でも、朝は必ずやってくる。』―これが、この本のキャッチフレーズです。 私は、どんな暗闇からでも、希望の光は必ずある、というふうな意味をとらえました。          一度、読んでみては??

・「家族が崩壊する現代だから・・・
親による子殺し、子供による親殺しといった痛ましい事件がこう毎日のようにマスコミを騒がせるようになると、一体、家族ってなんだ?と、到底答えの見出せない思考のスパイラルにはまり込んでしまいそうになる。多分、いつからか、多くの家族が壊れて始めているのだろう。でも、じゃあ、普通のお父さん、普通のお母さん、普通の子供って?

そんな漫然たる疑問を日常的に抱える私たち現代人が何の気なしに、この小説を手にすれば、複雑なスパイラルから知らず知らずにふっと抜け出て、「なぁ〜んだ、いいっか、このまんまで。」と肩の力がすとーんと抜ける、そんな感動的な1作だと言えよう。

子供にも、そして、大人にも読んでもらいたい。すると、読んだ人たちが、家族問題の袋小路に、優しい風穴を少しずつ開けてくれるのではないだろうか。小説が社会を救う、おそらくこの可能性を信じるのは私だけではないはず。この作品を読んで、共に「幸せな社会」を少しずつ取り戻していきませんか?

・「家族の形
泣きました。主人公に降りかかる運命は厳しい。でも主人公の周りには家族がいる。いわゆる「普通の家族」とはちょっと異なった家族。でもみんな暖かい、そして優しい。「家族ってなんでも言い合えるものでしょう」というのは本当だろうかというのがよくわかった。家族でもお互いにすごく気を使っている。そんな気持ちが私にはよく分かる。家族には甘えてもいい。でも家族だからこそ、気をつかうんじゃないだろうか?また家族だからこそ、誰かの調子が狂うと伝染してしまうんじゃないだろうか?家族ってとても特殊な関係。逃げたくても逃げられない。この小説は、今まで分かっていたけど、気付いていなかったこと、いや気付いていることに知らないふりをしていたことを思いしらさせてくれた。私にとってすばらしい小説だ。

・「不覚にも涙を浮かべてしまいました
毎日朝食は家族4人そろって食べる。その食卓から物語は始まる。

父の自殺未遂、母の家出、兄の大学進学断念、そして、一応「普通」と位置づけられている妹。

こんな4人家族の日常を淡々と描いているだけなのだが、それが温かくもあり、切なくもある雰囲気を醸しだしている。

「家族っていいな」と重くなく、さり気なく気づかされます。

幸福な食卓 (詳細)

優しい音楽

・「まるで心地良い風
文章そのものが、まるでそよ風の様に心地良い。三篇の短編集だが、どの作品も、文章そのものに酔える。

表題作「優しい音楽」は、当初すれ違いだらけだった二人が、段々と溶け合って、最後は家族とも、、、。フルートは象徴的な意味を持つ。

この溶け合う過程が、実に自然で、まるで涼風の如くだ。

読後感はじんわりと温かい。作品自体が、一つのオアシスであるかの様だ。

・「気持ちのよい本でした。
瀬尾まいこの本は身体に良い。何のことやら?と思われそうですが彼女の作品はどれも読み終わった後、なんとも言えない幸福感に包まれるのです。私にとってはこの幸福感に包まれたくてついつい本に手が伸びる作家さんであります。そして今回も期待を全く裏切らず心地よさと心の奥底がホコホコと温もってきた一冊でした。普通短編集であれば多少なりとも好きな順位がつくのですが、この三編は「コレが一番!」など順位も差もなく、読むたびに「この話も好きだなー」と三作とも結局大好きになってしまった。まず「優しい音楽」では家に入れたがらない彼女の秘密を知った時点から暗雲立ち込めるのかと思えばその逆で主人公のタケル君はちゃんと彼女自身の気持ちを受け入れてくれる。彼女の作品に出てくる人たちは真っ直ぐに生きている品の良さがあり、それが読んでいてすごく心地良いのです。「タイムラグ」では不倫相手の子供・佐菜ちゃんと何か一悶着あるのかと思えば何故か相手の妻のために必死になる主人公、自分自身に少し苦笑いしながらも心の底では清々しく思っている彼女。不倫という言葉が入りながらこんなにも清さがあるのは瀬尾まいこ以外には書けない話だと思うのですよね。また最後に佐菜ちゃんが言った言葉で「心がぽかりする」というのがあるのですが、単純に胸が痛いとかココが痛いと言うよりも気持ちが伝わってくる言葉使い一つとっても上手さを感じてしまうのですよね。最後に「がらくた効果」では「全門来福」と書く同棲相手のはな子が良い味を出しています。一度外れてしまった、いや無意味と思い捨ててしまった人生のレースにもう一度戻ってみようと思わせてくれた二人との出会い。決して必死さがあるのでもなく、ただぼちぼちとまた頑張っていこうよ!と応援してくれている・・・。瀬尾まいこの本を読むといつもエールを送られている気がするのは私だけでしょうか?

心がじわじわと温もってくる一冊、オススメです

・「優しすぎる小説
どの登場人物も優しいよね。 タイトルどおりだ。

『優しい音楽』のタケル。 『タイムラグ』の深雪。 『がらくた効果』の章太郎とはな子。

自分のためではなく、なぜか人のために頑張ってしまうその姿は ほほえましくもあり、 痛くもあり。 でも、やっぱり自分のためだけでなく、 他の人のために何かをすることが 自分にも最後には返ってくるんだ、ってことを 改めて思わせてくれるものでした。

まぁ、浮気相手の父親に 浮気相手の妻のことを認めてもらおうとする 深雪の行動なんてありえないとは思うけどね。

読み終わってほわっとする3篇の物語でした。

・「素敵な時間
瀬尾さん独特の、ほんわかして優しい、そんな雰囲気をたくさん楽しめる一冊だと思います。短編集(3編)なので、瀬尾さんを知らない方も楽しめるんじゃないかなあと思います。普通の中の一コマ。平穏の中の非日常。そういったものを書くのが、とても上手だと思いました。瀬尾さんファンならずとも、読んでもらいたい作品です。

・「ハートウォーミングな作品集
ハートウォーミングな作品集。3作入っているけど、表題作が特によかったかな。主人公タケルのちょっとした勘違いが、恋人千波の家族の心を開く。ここのクライマックスがとてもいい。読んでいて心がふわりと暖かくなった。イチオシお薦め。

優しい音楽 (詳細)

むずかしい愛 (岩波文庫)

・「日常のなかのときめき、そして戸惑い
すべてに「ある○○の冒険」という題名がつけられた12編からなる短編集。イタリアの市井の人々の日常をかすめていくときめきと戸惑いが彼らの「冒険」として語られていく。人妻の、会社員の、夫婦の、詩人のおかしくそして悲しい奮闘ぶりに彼らへの愛おしさが、ポッと湧いてくる。

・「寡黙な人々の愛と人生の物語。
イタリア文学の巨匠カルヴィーノのさまざまな人々の折々の人生を綴った連作短篇集。本書には、タイトルに込められた微妙なニュアンスで愛について、時にユーモラスに、或いは哀感を込めて表現された全部で12の短編が収められています。全編に渡って、ある〜の冒険という題名で統一されており、それぞれが味わい深い人生を感じさせる結末になっています。

『ある会社員の冒険』では、ある奥方と不倫の一夜を過ごした主人公が朝帰りで幸福な気分でいるのですが、会社へ出勤し仕事に忙殺される内に段々と気が滅入ってしまい・・・。『ある近視男の冒険』は、最近心楽しまずにいた男が、原因は目が悪い為だと気づいて、眼鏡を掛ける事で大きな喜びを得ます。そして、彼は久し振りに懐かしい故郷へ帰るのですが・・・・。この話が私には一番身につまされて哀れみを感じました。『ある詩人の冒険』では、ある島に出掛けた詩人の男と友人の美女の話で、詩人は深く思索する性質なので単純に喜びを表現する女を素直に理解出来ずに、次第に気分が陰鬱で重苦しくなって行きます。

どの物語の登場人物達も皆とても寡黙で長い間、沈思黙考して優柔不断で次の一歩が踏み出せない人ばかりです。でも、私にはそんな人生に無器用な人達だからこそ愛おしく思えて、どうか気を取り直して、もう一度がんばってと応援したくなるのです。

むずかしい愛 (岩波文庫) (詳細)

フランケンシュタイン (角川文庫)

・「文学史上もっとも美しい孤独
未読のかたのなかには、フランケンシュタインという名が怪物の名だと思っているかたもいるかもしれません。でもフランケンシュタインというのはじっさいは、怪物を生み出した科学者の名なのです。怪物には名まえさえありません。それがこの作品の哀感をより高めています。

死体を繋ぎあわせて作られた名もなき怪物。

彼は人間としての愛情や感受性を持っていますが、その醜い容貌のために誰からも受け入れられることがありません。愛情や親切で人々に接しようと必死の努力をしますが、けっきょくは人々に迫害され、恐れられる存在としか扱われないのです。

彼の心は、生みの親である科学者フランケンシュタインへの復讐に向かいます。生みの親フランケンシュタインに尊敬と愛情を抱きながらも、復讐せずにはおれないという自己矛盾を抱えたまま。怪物と科学者は対峙し、会話します。しかし彼らはけっして交じり合うことはありません。生と死が交じり合えないように、断絶された世界で二人は生きているからです。

孤独という概念を煮詰め、不要な混濁物を排し、高い純度で結晶化した文学作品。それがこの「フランケンシュタイン」です。文学史上もっとも純度の高い孤独の哀感を感じてください。

・「原作を読む楽しみがあります
「怪奇小説」というジャンルで大成功したのはおそらく「フランケンシュタイン」の作者であるメアリ・シェリーと、吸血鬼を描いた「ポリドリ」ぐらいでしょうか。そのメアリ・シャリーの代表作と言われるのが本作である。社会思想家の父をもつメアリ・シェリーであるから、テーマがSFであってもテーマは深大で趣深い。

あまりに映画のイメージや、そのイメージが一人歩きしてしまった「フランケンシュタイン」。原点の面白さを楽しみたい人にお勧めです。

・「フランケンシュタインとは誰のこと?
フランケンシュタインと聞けば、ほとんどの人は、アニメにでてくるような怪物を思い出すのではないだろうか? しかし、フランケンシュタインとは、その怪物を作った科学者の名前なのだ。その科学者は、死んだ人間を生きかえさせる、神への冒涜ともいえる実験に夢中になった結果、一人のつぎはぎだらけの男をこの世によみがえさせる。甦った怪物は、切ないまでに人間との交流を求めるのだが、誰も彼を受け入れようとはしない。名のない怪物は、必死で自分を甦らせたフランケンシュタインに父性を求めようとするが、フランケンシュタインは、彼を創り出したことに後悔をしている。フランケンシュタインと怪物の結末は悲劇に終わる。

・「古典的名作
フランケンシュタインという名前は小説よりも映画の中で有名で、映画装置発明者の一人であるエジソンが1910年という映画草創期に「フランケンシュタイン」を発表し、以来ホラー映画の1ジャンルとして確立され50本近くが制作されてきた。文学的には1816年著者メアリー、その情夫パーシー・シェリー(後に二人は正式に結婚)、放蕩の詩人バイロン、彼の侍医ポリドリの4人がジュネーブのレマン湖畔のディオダティ荘に集まって「みんなで一つずつ怪談を創作しないか?」というバイロンの提案に応じて作品が創作された事が有名で、その時できたのがバイロンの「断章」(未完)、ポリドリの「吸血鬼」、そしてこの作品である。

このように「フランケンシュタイン」の名前だけは有名になりながら肝心の原作となると意外と読まれていない。一つには作品が生まれた時代性から文体に修飾が多くて読みづらいことや作品の構成が物語内物語で、手紙、日記など告白形式が多くてわかりにくいこと、そしてこれが一番の理由と思われるが、映画のような娯楽性の強いものではなく、むしろ人間の内面をテーマとした説教物語(モラル・フェーブル)に近いものになっているからだと思う。

それでもなお読まれ続ける作品の魅力とは何だろう。それは恐ろしくも悲哀な創造された男のキャラクターではないだろうか。さよならといって自ら氷の筏に乗って暗闇に消えていく男のラストシーンは印象的である。

・「翻訳には疑問符をいくつもつけたくなった
 日本語で読める『フランケンシュタイン』のうち、本書は出版年月日が1994年と最も新しく、しかも改訂版 とわざわざ銘打っていたので手にしましたが、一体この翻訳は何でしょうか。 あまりにも日本語が古めかしく、読みにくいことはなはだしいのです。 「微恙(びよう)などはふっとばしてしまうだろう」(59頁) 「少しの偏頗(へんぱ)もない」(93頁) 「感情が震盪(しんとう)された」(105頁) といった具合。それぞれ「病(やまい)」「かたより」「震えた」とすれば十分ではないでしょうか。 少なくとも1994年に出版する翻訳物にこうした大時代な表現がふさわしいとは思えません。 そもそも『フランケンシュタイン』となれば若い読者が手にする確率が高いでしょう。 なぜこれほど難解な表現に満ちた翻訳に仕上げようと出版社が判断したのか、首をかしげます。

 さらにこの翻訳家は漢字の使い方に誤りがあります。 「あわれみの対照」(84頁)は「対象」、 「私を尋ねてくださいまして」(103頁)は「訪ねて」のそれぞれ誤りでしょう。 本当にこれを平成の世に改訂版として出版したのでしょうか。

 残念ながら途中で読書の息が続かなくなりましたので、東京創元社から森下弓子訳で1984年に出された『フランケンシュタイン (創元推理文庫 (532‐1))』に乗り換えることにします。

フランケンシュタイン (角川文庫) (詳細)

ヴィーナス・プラスX (未来の文学)

・「面白い!
この本を手にするまで知らなかったのですが、国書刊行会から「未来の文学」と題された五冊が出版されていて、そのうちの一冊が、このスタージョンのヴィーナス・プラスXだったんです。まさに突然見知らぬ世界にトランポートされた男のお話ですが、我が身に置き換えて想像して見て下さい。ある日目覚めると知らない世界に居て、しかもそこは両性具有の世界だったなんて、貴方(貴女)ならどうしますか!シオドア・スタージョン作品の中では比較的読みやすい(理解しやすい)方だと思います、是非スタージョンの世界をご堪能下さい。はまりますよ!

・「タイトルがおかしいような
ヴィーナスにXを足してもX染色体が3つになるだけでは・・・?などと屁理屈をこねつつも絶賛してしまった小説です。愚鈍なる私は一つとして展開を先読み出来ませんでした。

ジェンダーやユートピアに流行り廃りがあるとすれば今は少し流行から外れた時期と言えるかもしれません。この小説はそうした「時代」に左右されることなく、確実に「未来」の文学と言えるだけのアドバンテージがあると思います。

非常に面白い。装丁も素晴らしい。できればもう少し廉価に。スタージョンの作品を買いつくすのは財布に厳しいのです。

・「スタージョンの温かい視線。
難解といわれるスタージョンの長編の中では、至極まともで読み易い。レダム世界とアメリカの何気ない日常を交互に語って、男女の性差の問題を問いかけるという手法も、冗長になりがちな展開に変化を与えて秀逸。二つのエピソードはラストにいたるまで一度もリンクしないのだが、描かれている事柄はお互いを補いあうような形で相乗効果をあげている。生物学的な見地から、日常の言葉遣いから、社会の立場から、子供とのふれあいから、スタージョンは様々な男女の性差の垣根の低さをアピールしていく。いま読んでも、なるほどと納得してしまう。スタージョンの視線は、どことなく温かく、それが強く伝わってくる。本書を読んで、さらに彼のことが好きになってしまった。孤高だ、難解だ、といわれるスタージョンはやはり『愛』においてとても甘い作家なんだなあ。

・「傑作プラス?
 他の人のレビューを見てもすこぶる評判のいい作品で、確かに文句なしにおもしろく、ラスト・シーンも抒情的でよかったのだが、あちこち読み返してみて、考え込んでしまった。 というのは、スタージョンは、こういう結末にするつもりで書き始めたのではなく、より意外な結末を狙って、途中で思いついたアイディアに変えてしまったのではないか、という気がするのだ。なお、ここで言っているのはフィロスの秘密のことではない。特に、レダムがいつ造られたのかという点については矛盾が出てくると思うし、その他にも、ミステリ的な伏線の観点からすると、不自然でアンフェアな記述が散見される。 ミステリ的といえば、レダムの章と交互に置かれている50年代アメリカの家族のパートが、小説のテーマをより際立たせるためだけでなく、このオチに対するミスディレクションの役割を果たしていると言えるかもしれない。

・「面白いですよ。
男女の性差が無くなった社会に突然放り込まれた男の驚きを描いたユートピア/ディストピア小説です。3回転くらい捻った小説ですので、楽しく読むことができました。が、後半主人公に性差の違いは社会的教育による洗脳に過ぎないとする書簡が登場しますが、なんか読んでいてつまんなかったです。もっと上手く物語の中に表現することはできなかったのでしょうか。ともあれ面白いので読んで損は無いです。夕食のあとの暇な時間に読むのにちょうど良いです。

ヴィーナス・プラスX (未来の文学) (詳細)

サキ傑作集 (岩波文庫 赤 261-1)

・「動物好きにもオススメ?!
サキの作品には,動物がたくさんでてきます。ネズミ,猫,いたち,狼,等等。川や丘,美しい庭園,イギリスの典型的な風景の中で,サキの動物たちは恐ろしいほどのびのびと,人間を無視して生きています。

そんな動物たちにキリキリ舞いする人間との対比がとびきりユーモラスでたまりません。また,サキは短編の名手とも言われていて,たった10ページ前後で起承転結,あっと言わせる落ちをつける技術には,思わず拍手したくなるほど。

この本一つ難を言えば,邦題のつけ方。

「人狼」という邦題が付いているのですが,原題は「ゲイブリル・アーネスト」といいます。「人狼」なんて題付けたら,妖しい男の子の正体バレバレじゃん!どうして素直に原題通りにしなかったんでしょう。

童話のように残酷で,皮肉でユーモラスなサキの作品を是非読んでみてください。

グリム童話やオー・ヘンリー,A・ビアスが好きな方には特にオススメします。

僕のお気に入りは,「スレドニ・ヴァシュター」。

・「リスクを取るということ
 系譜的にはオーヘンリーと同じジャンルに入るのだろう。

 オーヘンリーもサキの短編の結末にサプライズが用意されている。オーヘンリーの話は 心が温まる良い話が多い。一方 サキの短編はブラックユーモアである点が特徴だ。

 ブラックユーモアというものは 相当知的に構成されていないと難しいと思う。何せ 若干眉をひそめさせるものがあるだけに ひそめた眉のままで口元でにやりとさせるには 相当の芸が必要だ。サキをここまで高名にしたのは そのサキの芸が際立っているからだと思う。

 僕らの笑いにも色々ある。その中でブラックな笑いは 特に難しい。笑いが取れないと ただの酷い話で終わってしまうからだ。サキもリスクを取ったものだと感心する。但し それが上手く行っているからこそ このジャンルでサキは孤高ともいうべき立場を取得できている。いまもなお。

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ザ・ベスト・オブ・サキ〈1〉 (ちくま文庫)

・「読み終わるのが心底惜しかった本
次から次へと読んでしまうのが惜しくてブレーキをかけつつ読み進めました。ベッドサイドに置いて眠る前に一篇、一日のご褒美に読むのがいいかもしれません。もちろん全部を読み終えてしまっても大丈夫、サキの短篇は結末を知って読むのもまた楽しいのです。再読に堪える貴重な短篇集です。

・「クローヴィス VS 動物たち
この本の主役は,なんといってもクローヴィス・サングレールでしょう。世の中を小馬鹿にして悠々と生きる皮肉屋,でもどこか間が抜けていて憎めない。シェイクスピア「真夏の夜の夢」のパックを現代風にアレンジしたらこんな感じでしょうか。

400P弱という本の中に44編も収録されていることからも分かると思いますが,1作品が短いです。そうなると,一気に読むと,個々の作品の味が薄れてしまいそうですが,なかなかどうして。後で目次を見ても,内容を忘れてしまうような作品がないのが驚きです。短編好きは,是非一度,サキの作品を試してみてください。

では,クローヴィス好きからのオススメの読み方。「トバモリー」は,最後に読んでみてください。しゃべる猫に秘密をばらされやしないかと,ビクビクしながら思案をめぐらせているクローヴィスが見れます。最後まで読んだ人なら,そんなクローヴィスの姿を面白く見れるでしょう。さすがのクローヴィスもサキの動物好きには,敵わなかったようです。

・「オタクにオススメ
短編ごとに、様々な人間に対応した、いろんな種類の皮肉が載っている

全ての短編に皮肉が込められているとは限らないが、皮肉の割合が多いのは間違いないだが、もしかしたら割合が多いのではなく、全てが皮肉なのかもしれない僕は全ての短編の意味を理解したわけではないので、その辺りは少し自信がない

皮肉というのは、気分が悪くなるほど意味が理解できる物もあれば、全く理解できないまま通過してしまう物もあるこういうのは中途半端に解り難いのが丁度いいんだが、古い物の場合は感覚のズレの影響で解らなくなるので困る

個人的には、其の筋の人間を対象とした愉快な毒があるので、主にオタクにオススメしたい オタクの種類は指定しない

オタク向けのホームページを運営した経験のある人間なら、なお良いさらに中途半端に専門的な論争を何度も経験したなら、この本を読むのには最高の状態だ

数ページで終わる短編ばっかりなので、通勤途中か、仕事の休み時間にでも読むといいだろう

ザ・ベスト・オブ・サキ〈1〉 (ちくま文庫) (詳細)

ザ・ベスト・オブ・サキ〈2〉 (ちくま文庫)

・「短編小説の極致
本は結構厚いけど、短い話が多数収録されているので、忙しい人でも少しずつ読んでいけます。短い作品ならではの皮肉やオチの軽妙さが光ります。サキの代表作ともいえる作品はどちらかといえば一巻の方に収録されており、『ザ・ベスト・オブ・サキ〈2〉』は通好みという位置付けになるでしょうか。それを言ってしまえば、サキ自体が通好みかもしれませんが。全作品を通じて英国の香りが漂っていて、その中で辛口に人間の心の暗黒面を抉っています。それでも救いの全く無い残酷物語ではないのは、人間を見守るサキの目が優しさと温かさを決して失っていないからでしょうか。できの悪い子ほどかわいい、という親心なのかもしれません。

・「極上の夜をどうぞ!
極上のお酒を舌の上でころがして飲むように、大切に大切に一夜に一篇ずつ読むのが正しいSakiの読み方でしょう。この味わいははクセになります・・・。

ザ・ベスト・オブ・サキ〈2〉 (ちくま文庫) (詳細)

袋小路の男

・「絶妙な距離感!
前作「海の仙人」の余韻が消えることなく残っていたのか、思わず手にした本でした。書評の純愛に関しては、これがまさに純愛だと思う人もいれば、こんなのは純愛では無いと思う人もいるだろうし、各人のとらえ方によって異なってくると思うので、この作品=純愛とは、言えない様に思う。しかし、この作中の男女には、まさに絶妙の距離感が有り、二人の不即不離の関係がたまらない感を与えているように思う。互いの存在が互いの心の片隅で、常に消えることの無いものとして色濃く描かれていて、作中脈々と流れている。前作「海の仙人」でも感じたが、この作家さんは、人と人の距離感を実に上手く描く人だと、改めて感心させられた。

・「透明感のある文体
 「袋小路の男」は、一人称視点で世界を描ききっている。感情の過剰も事実の欠落も含めて、「わたし」から見た世界を余すところなく描いている。「わたし」という不思議な女と小田切という不思議な男との摩訶不思議な関係に、納得してしまった。 約束事・タブー・距離を守って正しく続ける一風変わった男女関係。そこらにはない関係だからこそ、大切なものなのだ。よくある男女関係になだれ込むには惜しいのだ。どちらも多分、それがわかっている。だからどちらかが一歩踏み込むと、どちらかが一歩引くのだ。 「小田切孝の言い分」では、同じことを二人視点にして客観化している。これも面白い。「袋小路の男」で、たぶん自分に都合の良い記憶だけをつなげているのでは…などと読者として裏を読んでいたことが書かれているが、その分普通である。 文体としては「袋小路…」の方がずっとずっとカナシイ。

 「アーリオ オーリオ」もいい。この作家は自立した孤独を美しく描く。それが星の世界の静けさとあいまって、つきぬけるような静けさを感じる。

 好きだなあ、この文体。他の本も読もうっと。

・「感歎
”純愛”小説とは違うと思うが、正統派の恋愛小説だと感じた。一人の男を一途に思い続ける女と、思われる小説家崩れの男の心のひだと。うまく描いてあると思う。主人公に同化していくことは出来ないけれど、「そういう恋もあるんだろうな」という共感を持った。

他の方も述べられているが、最後に収められている「アーリオ オーリオ」は佳品。抑制された文体と、中年男の姪っ子に注ぐ愛情が微妙な形で表現されている。

・「小田切孝萌え
 小田切孝が、フツーにカッコいいんだよね。こういう小説が文芸誌に載るようになったのか……じゃなくて逆。文芸誌に載るような小説に出てくるオトコがカッコよくてもよくなったのか。 ていうのは、男が書くオトコはどこかトホホなとこがないと主人公として成立しなかったし、女が書くオトコはトホホか、いないよこんなイケてるオトコ……がスタンダード。勿論例外はあるけど。 だけど、これいいよ、小田切孝。その辺にいそうで、それでいてカッコいい。受験偏差値高いのに服を着崩して学校サボッて酒煙草三昧、周りとおんなじことするのダサいぜ……という都立高校(と勝手に推測した)的メンタリティに自分で縛られて、いかにも生粋の東京人らしく(と勝手に推測した)自宅を離れず、ずっと母親といるのにマザコンぽくなくて、新宿のジャズバーでバイトしながら、性描写と暴力描写の多い小説投稿し続けてる。で、当然顔はカッコいい。萌え。こういうオトコ相手なら、主人公のややこしい恋愛を全面的に理解できる。 もっとも主人公の女も、これでなかなか確信犯。言いようによっちゃプライドの高いプー太郎みたいな小田切を“手の届かない”男として崇め、そこそこ不良ぶっててもいい大学からいい会社に入った(と勝手に推測した)のに、小田切に「おまえ」と言われ、「ばか」と言われて嬉しいのは、ある種ねじれた自己愛でしょ。そもそも皮肉なことに“俺にしか書けないものがある”と豪語する小田切は小説に苦心する。そして真に小説となりうるのはむしろ、主人公の、小田切に対するプラトニックで豊かに複雑にねじれた愛なのだ。松子夫人を御寮人様、と讚えた谷崎潤一郎すら思い出すね。 行間の豊かさもこの小説の魅力。行間の多い小説は増えてるけど、行間の豊かなのにはなかなか会えない。じっくり味わいましょう。

・「まさに現代の恋愛
絲山先生の文章は、読んでいて気持ちがいい。心では思い浮かぶけれど言い表せない難しい感情を、絲山先生は代わりに文字にしてくれる。私が実際に経験することはないストーリーだろうけど、日本のどこかで、全く同じ人生を歩んでいる人がいそうな気がする。もし自分がこんな状況に陥ったとしても、きっとこの主人公のように、相手を尊重して、いつまでも側にい続けるのだろう。

袋小路の男 (詳細)

熊の敷石

・「心地良い
堀江氏が芥川賞を受賞した受賞作。この作品で堀江敏幸氏を知りました。以後、氏の著作を買い漁っては読みふける日々がつづきました。

今までどちらかと言うとエンターテイメント分野(特にミステリ)中心だった傾向がガラッと変わりました。氏のエッセイとも小説とも判別しにくい作風がなんとも心地よいのです。氏の著作を読むと「教養」と云うものに対しての信頼が回復される様に思います。アアこういう精神世界もアリなんだと感じます。氏の著作から巨大な智(知)の世界を垣間見ることができる様にも思います。文庫に収められ同じく芥川賞作家の川上弘美氏の解説を読みたいために再度購入してしまいました。

・「記憶の襞をまさぐるような。
 芥川賞受賞作でもある、表題作について。 冒頭の夢の中の熊の絨毯のエピソードから、カトリーヌの息子と熊のぬいぐるみが一緒に写った写真、ラ・フォンティーヌの『寓話』の中の一挿話である「忠実な蠅追い」……。

 一見したところ無造作に主人公の行動を記述しているようでいて、読了した後に振り返ってみると、実は、かなり周到にエピソードを選択し、配列していることが了解される。 もちろん、表紙の写真や、そもそも「熊の敷石」というタイトルにしてから、ある種の計算を抜きにしては出てこない代物で、このように洗練された文章を読むと、ため息がでる。

・「心地良い
堀江氏が芥川賞を受賞した受賞作。この作品で堀江敏幸氏を知りました。以後、氏の著作を買い漁っては読みふける日々がつづきました。

今までどちらかと言うとエンターテイメント分野(特にミステリ)中心だった傾向がガラッと変わりました。氏のエッセイとも小説とも判別しにくい作風がなんとも心地よいのです。氏の著作を読むと「教養」と云うものに対しての信頼が回復される様に思います。アアこういう精神世界もアリなんだと感じます。氏の著作から巨大な智(知)の世界を垣間見ることができる様にも思います。文庫に収められ同じく芥川賞作家の川上弘美氏の解説を読みたいために文庫版も再度購入してしまいました。

・「触れることのできないあたたかな「貝の火」
 この小説にでてくる登場人物はよく人の前で眠る。堀江敏幸の文章の「心地よさ」は、気兼ねない人間関係のそうしたある「ぬくもり」の手触りに似ている。ノルマンディにある古い友人の家に訪ねていってそこで友人がでていくのに気づかずに寝る、砂遊びをしている母子の横で寝るといった間柄にあるものは「関係」というよりむしろ「場」とでも言うべきものかもしれない。この小説の人物たちはそうした曖昧だが信頼できる「場」を大切にする人たちであるからこそ、たとえ久しぶりにあったとしても心地よくそこで寝られるような「場」が保たれているのだ。

 「なんとなく」な相互理解に基づく人間関係に灯されている「貝の火」を大切にする「私」は、人との間には「触れることのできない距離を要請する」ものがあることがしっかりと分かっている。そうした主人公が描かれているこの小説はそれ自身が、触れることのできない距離感と、ぬくもりを残す「貝の火」を与えてくれるような、そんな不思議な読後感を持っている。

・「表紙に意味が、、、
いい表紙(装丁)写真だ。実はそれにも意味があった。どちらかというとロードムービーな展開。異国のロードなので実感はないけど、想像するのに文体が役立つといういい見本。重くもなく、もちろん軽くもない。淡々としているような感じなのに、残るものがある。こういう静かに流れる本てけっこうありそうで、ない。だから残るんだと思う。著者の正当さを感じた。

熊の敷石 (詳細)

風味絶佳

・「じっくり読みたい一冊。
山田詠美さんは、新聞でこう言ってました。「文学というのは実用的でなくてはならない」と。

でも、詠美さんの文章やシュチュエイションを実生活に活用できる人ってどれだけいるだろうか?活用できないから、本を読むのか・・・

短編集ですが、題名どおり非常に味わい深いものばかりでした。特に、グランマ不二ちゃんが格好いい!夕餉で出てくるお料理も素敵。男性たちの仕事の細やかな描写も素敵。夕餉だったかな?そこにごみ収集車の男性の話が出るのですが、声高にエコを叫ぶよりも、この小説読ませたほうがいいのでは?と思ったほど。私もごみ捨てを気をつけるようになりました。

とっても素敵な、何度も読みたい短編集です。これは、買わなくちゃ。

・「人生の味 絶佳なり
 もちろん装丁も気がきいているが、やはり作風の変化に驚いた。キッチリとオチをつける作風だったハズ。最後にキメ台詞があって、そこでスッと幕の下りる印象があった。 ところが、この短編集では、いずれもオチがない。そのまま世界の続いていく余韻で終わる。これがいい。人生は続く。面白い人生も、意外な余生も、ままならない生活も、続いていく。 そして、それら人生の全ては、実は丸もうけなのだ。苛立ちも、怒りも、中途半端も、そんな様々を抱えて続いていく人生の、なんと甘美なことか。人生はオイシイ。貧乏上等、逆境上等、いきてるよなあ、ワタシなのである。 作中、視点人物はそれに気づいていない。グランマや、葬儀屋の父が、脇からその達観をにじませているだけだ。人生は実にオイシイと。

・「文句なしなのでは?
待っていました、という感じです。最近、山田詠美さんの小説が出ないなあ、と思っていたので。中身は期待に外れないと思います。デビュー20周年、ということですが、その頃と切れ味が変わっていないと思います。短編集なのですが中でも、「風味絶佳」は「ぼくは勉強ができない」のような感じです。恋愛について、短編ですが内容はぎっしり、みたいな。恋愛小説は山田詠美さんが やはり一番。あれこれ、ぐだぐだとしていなくて下手な恋愛エッセイよりスマートに伝わる。恋愛はきれいごとではないけれど、それがわかるのは山田詠美さんの作品だけ、絶賛です。

・「絶品!
さすが、と言うべき妙味のある短編集。私は「夕餉」が一番好きでした。愛しい人へ作る料理は渾身です。最近は泣ける小説が売れている現状ですが、大事な人を失くした空虚さや寂しさで共感させて泣かせるのは、そんなに難しいことではないと思います。この本では愛情と幸せに満ちているのに切なさがよぎって涙がでるような、とても繊細で上等な感覚が描かれていて素晴らしいです。恋をしていても、恋を待っていても、忘れていても、それぞれに感じるものがある内容だと評価します。今まで詠美作品を読んだことない人にもオススメ!ヒリヒリ感は薄くて、それでも作者のエッセンス凝縮です。

・「食べ物の好きな山田詠美。
私は山田詠美が好きです。爪や耳、口の端、肌や汗、相手のそんなものに感じる、「どうにかしてやりたい」という感情が、私はよくわかる。

作者は好きな相手に対して、よく「食べてしまいたい」というキーワードを使う気がします。彼女の描く感情は、シャンパンやラムなどの酒や、キッチンで作る料理、ココナツやローストビーフ、様々な料理や食べ物と合わさって描かれることが多いような気がします。同様に作中の食べ物に関して強い美意識を感じるのは、長野まゆみですが、彼女は作者とは少し質が違うかもしれません(笑)「齧る」「啜る」「味見する」、恋愛を「トリートすることだ」という彼女の作品に、私はそれらの質感を感じます。そして私はそういう気持ちがとても好きです。気持ちいいと思う。

今回は「間食」「夕餉」「風味絶佳」「海の庭」「アトリエ」「春眠」の短編が六作収録されています。正直山田詠美の短編の中には、「ちょっと手抜きじゃないですか?」というものもあるのだけれども、今作はどれもおいしかった。あっさりし過ぎなのかもしれないけれど、私は表題作でもある「風味絶佳」がよかった。帯の「ベッドタイムアイズから20年」というフレーズにも私は納得します。PAY DAY!!!を読んでいなくて申し訳ないのですが、近作の表題「姫君」があまり好きではなかったので、「瞳の致死量」のダンケとメルシーよりは、「4U」のマルが好き、ココやスス、ジェシーやナルオが好き、という人の方が気持ちよく読めるかもしれません。読後感は梨木香歩の「家守綺鐔」に似ているでしょうか。江國香織の「すいかの匂い」「つめたいよるに」がお好きな方にもお勧めします。彼女に特有の、爪をひっぺがすほどの愛憎はでてきませんが、何となく、ちょっとだけ泣きそうになるような、いい作品です。私はこれが、とても好きです。

風味絶佳 (詳細)

夏の庭―The Friends

・「一気に読んで、すぐにまた読みたくなる傑作
 無邪気で残酷な好奇心から始まった出会いが、1つの幸せと、大きな悲しみに帰結し、夏の光にさらされた少年時代が終わる。  本のページ数が残り少なくなり、物語の終わりが近づいてきて、この魅力的な登場人物たちとの別れが非常に残念に思えてきた。そしてラスト。通勤途中の地下鉄で、僕は涙をこらえるのにとても苦労した。

 とても悲しく、だけど満たされた気持ち。  さあ、もう一度、最初から読もうか!

・「スタンバイミー
大人になっていくということは、その本人に智恵がついてくるだけでなく、自分以外の人の考えを参考に行動できるようになるということでしょうか。おじいさんならこう言うだろうということに基づいて、母の再婚に反対しないという最後の方の場面で、子供の成長を見たような気がしました。

・「大好きな一冊
忘れていた子供の頃の好奇心、冒険心。 そんな気持ちを思い出させてくれる素敵な本でした。 そして「死」を初めて意識して悩んだ頃のことも。 大人になると何気ない風景や出来事に鈍感になって 感動することも少なくなってしまったけど この本の情景描写はとても鮮やかで、子供のころの 新鮮な視点で景色を見ることができました。

幸せな人生ってなんだろう。 大人になるってどんなことだろう。 そんなことを考えさせられる一冊でした。 いつまでも子供の頃の新鮮な気持ちを忘れたくないですね。

・「確かに「人は死ぬ」ことへの再確認。
かなり前に読んだ本ですが、おそらくこの先一生心に残る物語として位置付けのできる作品。「よく眠るように死んでいるとはいうが、あきらかにおじいさんの「それ」は眠っているのとは違う」というくだり(記憶)を覚えています。「人間の死」というテーマを扱いながら、読み終わった後のなんともいえない爽やかさ(?)は悲しくてやりきれないのに、なぜかやさしい気持ちになるよう。ちょうど、映画の「スタンドバイミー」のラストの感じを思い出しました。(発売当初は日本版と言われていた)ただ悲しいだけの恋人や身内の死ではなく、あくまで他人の死であることにこの作品の意味があると思う。

・「あたたかい
読み終わった後は、「悲しい」よりも「あたたかい」だった。この本を読んでたくさん泣いたのに、読み終わったら「ああ。いい本だなあ」って。心があたたかくなった。読み終わるのに何時間もかからなかった。目をこの文章から離したくなかった。いや、正確には「離せなかった」かもしれない。この本から目を離している時間が勿体無くて、一気に読んだ。文章中の『もしおじいさんだったら』こう考えることは、「おじいさんを忘れないこと」「おじいさんと心の中で共に生きていること」につながるのではないだろうか。

児童文学とは思えなかった。子供だけでなく、幅広い世代に読んでもらいたい。そして、いつまでも忘れないでいてほしい。そう思った。

夏の庭―The Friends (詳細)

村の名前

・「リアルで幻想的な世界
芥川賞受賞作ということもあり、また個人的にも中国と関わる仕事をしている為、期待を持って読んだ。・・・筆者が中国関連貿易会社で働いていた経験があるからか、中国の風景描写はかなり細かくて、また登場する中国人達は一癖ある強烈な曲者揃いで、中国(それも内陸、奥地の田舎の方)に行けば本当に出会いそうなリアル感がある。物語の中身は桃源郷という名の村を中心としていて、幻想的で薄霧に包まれた様なミステリアスなストーリーだ。このリアル感と幻想感がミックスされて、独特の雰囲気を持つ内容に仕上がっている。これから中国で駐在して働く人、勉強する人、旅行する人などは持って行って、中国の雰囲気の中で読むと、よりこの独特の雰囲気を体感できると思う。

・「新世代への過渡期的作品
 文学は、性とアイデンティティーを求めていた時代である。しかし、時代が若干問題意識のズレを露呈してもいた。次の時代の中心課題は、宗教とナショナリズムだろうと評論されていたように思う。

 はっきりいって、この時期の純文学は力をなくしていた、いや、文学全体が力を失っていた。村上龍がわずかに異彩を放ち、よしもとばななとかとか村上春樹が溝を埋めてた。

 だから、たしかにこの話は面白い。併録の「犬かけて」も、後半ぐいぐい面白い。だけど、どこか無理がある。次世代の課題に偶然近かった題材を取り上げた作品が、たまたま時流にあったのかな、と思わないではいられない。だから、どういう傾向の作品がどんなタイミングで芥川賞候補になるかという、情報としての価値もあるかもしれない。

 少なくとも、一定時間の経過した今、作者から社会への挑発がない作品であったことだけは、はっきりしている。

・「
読みづらかった。表題作のほうが面白く、桃源郷の中での想像とかけ離れた出来事や実情を描いていた。 ただ個人的に好きな内容じゃなかった、という話。

村の名前 (詳細)

ア・ルース・ボーイ (新潮文庫)

・「見えない世界
非常に平易で読みやすい本であっという間に読み終わった。それほど引き込まれたのだろう。主人公の少年は数々のものにぶつかりながら、世の中には、それぞれの人には、見えないそれぞれの事情があるということを知る。それは独りよがりからの解放でもあり、社会と繋がるということであった。全てを受け入れることが出来る強さを手に入れたのだと思う。

この作品は確かNHKでドラマ化されたはずだが、テレビの方もかなりいい作品だった。

・「お蔵入りしている映画を観てみたい。
17歳。自分が何者かさえよくわからない。周囲はどんどん前へ前へ進んでいるように見えるし自分だけが足にからみつく沼地に取り残されている錯覚を覚える。17歳のそんな側面を見事に描き出している。

好きな少女が未婚の子を産む。17歳の少年は、自分に出来る限りのことをする。小さな部屋を借り、職に就き、少女と子を育てる。それはそれは、切ないストーリー。ラストには少々異議を申し立てたい気もするが・・・・「学歴」とか、「肩書き」とか、に振り回されている若い子がもし居たら、そっと傍らに置いてやりたい一冊。私もずいぶん救われたから。

余談ですが、お蔵入りしているこの本が原作の映画を是非観てみたい。この物語の地元仙台を舞台に撮影され、一度だけ上映された幻の作品。主人公の就職先の社長が、元バービーボーイズのコンタである。是非、観てみたい。

・「これはいいよ
ある程度勉強ができる高校に通っている高校生のなかには、周りが当たり前のように大学に進学し、その多くが将来の職業をほとんど考えることなく志望校を決めていることに疑問を感じている人も少なからずいるのではないか?そしてほとんどの教師が偏差値や得意科目の話をするばかりで、生徒が将来なにをやりたいのか考える助けになろうとする教師はあまりいないのではないだろうか。本書の主人公はそういった現実に嫌気がさして退学し就職するのだが、不安のなかにもある種の開放感も感じている。彼が下した決断は子供じみた甘いものかもしれないが、人生に誠実に向き合おうとした結果であるともいえる。この作品はそんな少年を非常に瑞々しい感性でもって描かれている。

・「活「欲」
自己を確立させようとする「ぼく」。ただひたすらに自分の信じたものに向かって突進していく様は、何物よりも強い。自己の内に秘めた強靱な「闘」の精神の中に、弱々しくも大事な者を守ろうとする姿は、この本の裏表紙に書かれているとおり、崇高である。この「ぼく」の中に流れている欲は、美しい欲だ。人間はこういう欲こそ持つべきだと思う。

ちなみにこの作品は、91年の三島賞を受賞している。当然の結果だろう。この作品のほかに、どんなものがあの賞をとるべきだというのだ?

・「うまい
 十七歳。子供をかかえ、学校を中退して仕事を探すぼく。 語り口、ストーリテリングは絶妙。 衝突、うちに秘めた悲しみの書き方もいい。 まぎれもない名作だと思う。

ア・ルース・ボーイ (新潮文庫) (詳細)

遠き山に日は落ちて (集英社文庫)

・「妙に暖かい後味
 皆に親しまれているドヴォルヂャークの歌をタイトルに冠したこの作品は、佐伯が今の奥さんと再婚し、仙台に近い寒村で暮らした実体験を基にした私小説だ。 北国での貧乏生活が描かれているわけだが、滑稽にも思える田舎暮らしと人々や自然との関係が淡々とした筆致で書かれ、妙に暖かい後味を残してくれる。やはり、後妻の影響が大きいのであろう(というか、前妻の呪縛から解き放たれたというべきか)。それまでの作品に見られる、悲惨でぎすぎすした暗黒面はすっかりなりを潜め、新たな環境の下で、静かにゆったりと壊れた自身を再生していく様子が、読み手を優しい気持ちにしてくれる。

遠き山に日は落ちて (集英社文庫) (詳細)

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・「ストーリーの展開にとりつかれました。
 本当にすらすら読めてしまうんですよね。あの独特の文体がいいのでしょうか、いややっぱりストーリーの持っていき方なのかな?! りささんが自分と同い年ということで、妙な対抗意識から遅ればせながら手にとった作品という感じでした(ゴメンナサイ!!)。でも、読んでみて、さすが!!って感じでした。 人間は、パソコンみたいに簡単にインストールなんてされないってことを感じました。必要な機能は自分で苦労して身につけていかなければ、絶対手に入らないし、そのことは便利なネット社会になっても結局変わらないと思いました。悩むことがあったら、ジタバタなんとかやってみる、それが大切なんだ、それが自分を強くするし、成長させるし、自分というパソコンの性能をよくしていくことなんだと感じました。主人公もそのことを自分の感情で理解したのではないでしょうか?

・「同じ女子高生年代として支持!
もう私が中学生の頃に買った本を今日ひっぱりだして読んでみた。当時は何の印象もなかったし、この本の面白みがまったくわからなくて、ずっと閉まっていたのだが、今読んでみるとするすると読めてしまった。

主人公が登校拒否になり、それゆえ部屋のものを全て一掃してしまうなんてなんて奇抜!私も一時期登校拒否児だったのだが、そのときの状況にとても似ていて、なんだか可笑しくなってしまった。いや、あの頃の思い出は決して可笑しいものなんかではなかったけれど。ここまで綺麗さっぱり、ある意味いさぎよく色んなものを放棄してしまうと、なんだかリセットされたみたいで、読者としてもなんだか気持ちが良かった。自分を偽って新たに別の人格を演じる、いや、そのものになってしまう、そんな疑似体験をするなんて、どこか奇妙な好奇心が湧いてしまった。まったく異世界に飛び込むのはどんな気持ちがするだろうか。妙に大人びた少年との秘密もスリルがあって、ますます興味を駆り立てられてしまう。

綿矢りささんの「蹴りたい背中」も前に買ったのだが、みつからなくて残念だ。この作家に凄く興味を持った。

・「大好きな作品。
普段、あまり本を読まない私ですが、この本には凄く引き込まれた。読んだのが当時17歳で、尚且つネット経験があったため、余計共感できた。特に、17歳の女の子に読んで欲しい本。こんな、変わった生き方も出来るんだ、と視野が広く持てると思う。

・「(純)文学の入門書
文学に限らず全ての物事に言えることですが、最高の頂上を目指すことだけに意味があるというものではないと思います。例えば野球ならばプロが最高ということになるでしょうが、頂上だけでは存在できません。それを支えるのはあくまでもアマチュアの野球愛好家であり、プロより遥かにレベルが低いからといって、地元リトルリーグや草野球や高校野球に存在価値が無い、ということにはならないと思います。綿矢りさのデビュー作『インストール』は純文学ともエンターテインメントともつかない短く読み易い青春小説です。確かに決してレベルの高い作品とは言えないでしょう。日頃からよく本を読む人にとっては、今更ながらの内容でしかありません。

その内容は、女子高生が色々思い悩み自分探しをするというもの。私はけっこう素直に共感できたんですけどね。人によって好みは分かれるでしょうが、私には面白かったです☆綿矢りさは今後、文学の山の一合目から三合目の間くらいを守備範囲として、裾野を広げる役割を果たして行くことが期待されます。

・「高校生に読んで欲しい本
私自身、現在高校2年生で、作者の方とも主人公とも年齢が近いということで、感情移入しやすかったです。独特の文体も特に気にならず、というよりむしろ読みやすく、一気にはじめから終わりまで読み進めてしまいました。お堅い言葉と子どもらしい(というと語弊がありそうですが)言葉が

混ざっているのは、女子高生の心理描写という感じで、妙なリアリティが生まれていたと思います。

今の自分との共通点をいくつもみられました。この作品はぜひ同年代の悩める高校生(笑)に読んで欲しいと思います。きっと、いい意味で開き直って生きられるようになるのではないでしょうか。

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