「1日で読んでしまいました」「小気味良い作品です♪」「読後感もさわやか」「笑えます」「軽く読める本」
君たちに明日はない (新潮文庫) (詳細)
垣根 涼介(著)
「読みやすく、痛快なストーリー」「息つかせぬスピーディーな展開と面白さ」「黄昏れた時代を撃つ、良質のユーモア小説」「シビアなタイトル、でも……」「君たちに明日はある」
「麒麟の田村が本当に伝えたいこと・・・」「上手い本じゃない。でも、いい本だ。」「噂通り読んで良かった!」「率直に、良かった」「自分が同じ境遇にあったら…多分もう死んでる」
ベルカ、吠えないのか? (文春文庫) (詳細)
古川 日出男(著)
「文庫本化で良かったこと」「「『ベルカ』、読まないのか?」」「誰かにオススメはしない本」「人の争いとともに盛衰する犬の血脈を味わう」「映像がスパークした」
対岸の彼女 (文春文庫) (詳細)
角田 光代(著)
「専業主婦、独身キャリア・・・にこだわらず」「心の機微をすくいあげるのが、とても上手い作家だと思った」「すばらしい」「胸に生まれる、何か。」「「フィクション」と見るか「ノンフィクション」と見るかは、あなた次第」
白愁のとき (角川文庫) (詳細)
夏樹 静子(著)
「誰にでもおきる可能性あり」
床下仙人 (祥伝社文庫) (詳細)
原 宏一(著)
「わかるかもしれない、、、」「現代版星新一ショートショート」「さすが本屋の店員さんオススメの本!」「評価は割れるだろうな」「ユーモアと風刺 長めのショートショート」
幽霊人命救助隊 (文春文庫) (詳細)
高野 和明(著)
「高野和明のヒューマニズム」「伝えたいことがあるから、人を惹き付ける形にして、伝える。」「この世の人たちのそばに居させてくれ」「読むカウンセラー」「「死なないでください、日没まで。必ず助けに行きます」 」
チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (詳細)
海堂 尊(著)
「デビュー作とは思えない圧倒的な筆力」「強烈なインパクトのある作品」「一見軟らかいが、内容は硬派」「文句なしのこのミス大賞。読めば分かる。」「とにかく面白い」
チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (詳細)
海堂 尊(著)
「楽しみなシリーズの誕生」「説得力ある構成」「『パラサイト・イブ』以来の衝撃」「現場のノウハウが見事に本作では炸裂している」「ロジカルモンスターと万年講師」
ゴールデンスランバー (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「過去を称えるやさしさにあふれている傑作」「伊坂ミステリーの妙を堪能しました」「こんな作品を待ってました。」「新作は大作。伊坂幸太郎氏の作家人生における注目すべき一書!」「そうなってくれてありがとう」
「雑多な豊かさ」「ステキな物語」「傑作!」「この本を手に取るのも何かの御縁」「とても楽しい」
トラウト・バム (詳細)
ジョン ギーラック(著), John Gierach(原著), 東 知憲(翻訳)
「バムに憧れる。だがしかし・・・」
東京奇譚集 (新潮文庫) (詳細)
村上 春樹(著)
「マジカルな話のきらめき」「ほのかに漂う再生の気配」「私は春樹が嫌いなのに」「 “偶然の一致”と“奇譚”のはざまの五編」「良いお酒を飲んで酔っ払ったような気分にさせる作品です」
親の品格 (PHP新書) (詳細)
坂東 眞理子(著)
「女性の品格よりは力が抜けていていい感じ」「2歳児の父親です」「振り返ってみた子育て論」「『女性の品格』の続編」「至極当然なことです。」
hatch!!!!!―はっちゃん日記〈5〉 (詳細)
八二 一
使ってみたい武士の日本語 (詳細)
野火 迅(著)
「手もと不如意でも読まれよ。すぐれた業物なれば。」「気楽に雑学♪」「意外と面白い(^o^)」「武士の日本語なのに」「「使う気にはなれない小説の日本語」」
「大好きです」「数枚の絵を重ね合わせた物語。」「確かに」「問題作!!だが、成熟した女性の書いた真摯で切ない物語・・・」「生理的には受け付けませんが。」
「今後が楽しみ」「似ているようで似ていない、他のどこにもない未映子ワールド」「テーマは自分の「からだ」」「テンポの速さ」「ちちとらん」
なぞなぞライオン (おはなしパレード) (詳細)
佐々木 マキ(著)
「なぞなぞ勝負」「3話とも賢い女の子の勝利!」「なぞなぞでピンチを切り抜ける女の子」
「不思議な魅力がある本です」「すっかりファンになりました。」「登場人物のつながりが絶妙」「ダメ人間から目が離せない」「思わぬ拾い物と言うべき、いとおしい一冊。」
イン・ザ・プール (文春文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)
「伊良部総合病院の神経科はなぜ空いているんだろうか?」「まさに怪作」「読者に「自分にあるかも!」と思わせる本」「これで筒井康隆の後継者は決まり。」「現実にこんな医者がいたらどうなるんでしょうね・・・(笑)」
空中ブランコ (文春文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)
「日常に疲れた人に」「医学博士の伊良部一郎はもしかしたら「人間博士」かもしれない!?」「前作よりもやわらかく」「単におもしろいだけではない」「マユミちゃんの意外な一面」
「理屈なんてないのだ」「『イメージ』の世界の人たち」「シリーズファンなら大変堪能できる作品」「さすが・・・・・」「3作目にして、一番」
「ほんのひととき交わる人生」「ほんわか人生物語」「電車は「人」を乗せて走っているんだよ。」「書きたいものを書く潔さ」「ジモティですが」
・「1日で読んでしまいました」
雫井作品は3作読みましたが、一番のお気に入りになりました。本でここまで笑ったものは久しぶりです。特に主人公と彼の父親の掛け合い(じゃれ合い?)は必読です。これは過去作品もそうでしたが、映像化するのでは・・・と思います。1日で読んでしまうのがもったいないくらい、でもページを繰る手が止まらない。テンポの良い小気味いい作品でした。
・「小気味良い作品です♪」
新米刑事となった夏輝は、自分達を捨てた同業の父ととある事件でコンビを組むことなになる。事件は、意外な進展を…!! ★サクサクとテンポ良く読み進めることが出来て内容的にもおもしろかったです♪★一見して身勝手そうに見える夏輝の父ですが、いつまでも実は家族を愛する意外な一面がとても良かったです。★そして、事件も二転三転して行きます。単なる、刑事物を扱った内容に終わらず家族の「絆」を漂わせる物語に仕上がっています。★夏輝と父親との掛け合い&ジャケットプレイが、とてもおもしろかったです♪
・「読後感もさわやか」
久々に読後感の良い本に出会えました。小さい頃に別れた父親との掛け合いに思わず声を出して笑い、最後の場面にはホロっとし、雫井さんの本は初めて読んでみたので他の小説は分からないのですが、細やかな視点で描かれていて、私としては今までにない読後感を味わうことができました。他の小説も是非呼んでみたいと思います。
・「笑えます」
いつもの雫井作品とは違います。軽く読みたい時にお勧めの作品。電車の中で静かに読むつもりが、面白くて笑いをこらえるのに必死でした。笑いのツボが同じであれば読んで楽しいこと間違いなし!です。ただ他の方のご指摘通り、主人公が父親に対してタメ口になっているのは気にされる方もいらっしゃるかも知れません。私はストーリーの流れからその言葉遣いに、主人公の蓄積された感情が表現されているのだと考えています。
・「軽く読める本」
佐原 夏輝は刑事になってようやく1ヶ月。3代続く刑事の家系といえるが、両親の離婚後、捜一の父:明村には反発してる。夏樹の管轄で転落死があった。どうやら、この辺りの情報屋らしい。父のいる捜一の五係が乗り出してきて、夏輝は父と組む事になったのだが――。 夏輝の父のキャラが面白くて、すいすいと読んでしまいました。・・・しかし、柔道のドーピングに始まって、刑事物、恋愛物・・・この方のジャンルも広くて面白いですね♪
・「読みやすく、痛快なストーリー」
リストラという暗いテーマとは反して楽しい気持ちで読めた。ホストのような容姿のリストラ執行者(主人公)とリストラ対象者との対話はさながら裁判のようである。一番に関心したのは主人公が所属するリストラ業を専門にする会社は存在しないということだろうか。さもありそうで「実はない」という設定を生み出す発想は凄いと思う。のど越し爽快な一冊だった。
・「息つかせぬスピーディーな展開と面白さ」
アマゾンの「おすすめ」で偶然見つけた、山本周五郎賞受賞の本である。一般企業から依頼を受けて、社員の退職斡旋を請け負い、高い成功率でノルマをこなす退職斡旋専門会社に勤める主人公。退職斡旋をする相手は、辞めさせられて当然の人から、能力があるにもかかわらず派閥争いの都合で辞めさせられてしまう人まで多種多様であるが、主人公はプロ意識をもって冷徹に自分の仕事を進めようとする。ところが、色々な人間関係のしがらみで、どうしても自分の役割に徹しきれないところが主人公のかわいいところ。小説は、退職斡旋される対象にしたがって5つの章に分かれており、章が進むごとに主人公が成長していく。間延びすることなくテンポよく話が進むので、読み手の方も休みをもらえず、一気に読み進めるしか仕方ない。ちょっと不必要に下品な箇所が数カ所散見されることを除けば、気楽に読めるエンタテイメント小説である。
・「黄昏れた時代を撃つ、良質のユーモア小説」
本書を手に取ったのはタイトルに惹かれたからだ。「君たちに明日はない」・・・もちろん名作映画「俺たちに明日はない」のパロディであり、「リストラ請負」を生業とする本書の主人公の稼業をよく表してもいる。
期待は裏切られなかった。
「リストラ」という、サラリーマンにとって人生最大の危機において表出する「人間臭さ」が、乾いたユーモアでもって語られる。File.1の冒頭に出てくるアクの強い営業マンとの駆け引きなど、リアルでいながら得も言われぬおかしみがある。人間のどうしようもないところを知りつつ、なお人間の「まっとうさ」を描こうとする、はっきりとした志向が本書にはある。そのあたりが「山本周五郎賞」だったのではないか、と思う。リストラが吹き荒れた「黄昏れた時代」に対して、作者からの「エール」である。
さて「ユーモア小説」としての本書の白眉は「File.4八方ふさがりの女」ではないかと思う。主人公・日出子の名古屋弁が素敵だ。しかも名古屋弁が好きになるような気分で大笑いできる。オススメです。
・「シビアなタイトル、でも……」
リストラという題材からして陰湿な物語を想像して読みはじめたのですが、良い意味で裏切られました。スカッとする導入から始まり、むしろサバサバとした印象の語り口が軽妙。
過去に大きな挫折を味わった主人公・真介の人間臭さが好ましく、彼のシニカルで適格な人物の見方が面白い。彼とリストラ対象者本人、二つの視点を通して浮き彫りにされる、人それぞれの仕事に対する思いがリアルです。タイトルで「君たちに明日はない」とバッサリ切り捨てているのに、物語が終わってからも連綿と続くであろう登場人物たちの人生について想像力を掻き立てられます。
この作者の作品は初見だったのですが、非常に満足しています。
・「君たちに明日はある」
リストラ請負人という現実にありそうで存在しない職業の主人公と主人公にリストラされる側の人たちとが織りなすヒューマンストーリー。
各話でリストラ対象となっている登場人物はそれぞれ個性的だけど自分の身近にもいそうな人たち。それぞれが人生の岐路に立たされた時に取る行動がどこか力強く、希望を抱かせてくれる。目を背けたいような暗いテーマにもかかわらず逆になんだか少しエネルギーをわけてもらえる小説でした。
性描写は多少表現が過激のようにも思いましたが、多用されている訳でもないのでそこまで不満には感じず面白く読ませていただきました。続編も凄く気になるので読んでみようと思います。
・「麒麟の田村が本当に伝えたいこと・・・」
この本を読んで、大して苦労していない、たった1ヶ月のホームレス生活じゃないか。バイトでもやりゃいいんだよって書かれているレビューを見たりすると、何だか切なくなります。麒麟の田村が本当に書きたかったこととは、極貧生活だったと思いますか?苦労話だと思いますか?ましてやホームレスの体験談でしょうか?
きっと私は違うと思います。田村が書きたかったのは、こういうことなんではないでしょうか。かけがえのない愛する大切な人を失った子供の気持ち、死を理解できない、認めたくない気持ち。自分が正直に正しく生きていれば、いつかきっと神様は母親を蘇らせてくれると言うことを信じて疑わない、けっして叶うことのない儚い願い。そして、それが叶わないものだと初めて認めることになった、お世話になった人の死という悲しい出来事。一人涙したその夜。それを皮切りに、生きる目的を失った田村のどうしようも無い絶望感や生きる気力を失った日々。そんな絶望の闇から救ってくれた恩師や友人たちとの出会い、それらは奇跡とまでも呼べないまでも、「思いがけない手助け」があったからこそだと思います。もし、それらに田村が出会うことが無ければ、あの友人がいなければ、起きるはずもなかった出来事だと思え、もし、その「思いがけない手助け」が無ければ、田村のホームレス生活がどれほど続いたのでしょうか。その恩人たちへの感謝の気持ち、そして、大好きだった母への届けたいメッセージを偽りの無いまっすぐな気持ちをただ伝えたい。それがきっと、田村が本当に書きたかった、伝えたかったことだと思えてなりません。
そして、それが届かない読者がいると言う事実が、非常に残念でなりません。
・「上手い本じゃない。でも、いい本だ。」
どうせ不幸自慢のような本だろうと思ってました。ごめんなさい。貧乏話を笑いのネタとしてテレビで話し笑わせてくれているから、そういう笑える本を求めて買ったら大変なことになります。ハンカチ、もしくはティッシュペーパー(出来れば箱で)を用意しておくことをオススメします。母親を始めとする家族とのエピソードなどは泣けて泣けて仕方がなかったです。
本人も言われているように文章は正直上手くないです。作文のように拙い文章で綴られる記憶。でも、だからこそリアルを感じました。全体の流れも、ちょっとネタの延長的なノリのエピソードと号泣エピソードが混ざりあっていて中途半端に感じました。でも、そこが逆にらしくていいのかもしれません。
生きる意味を失ってもただ自殺するのではなく家族に褒められるよう誰かの代わりになって死んでしいたいと思うほど深い家族愛、それでも家族を本当に喜ばせるのために楽しく笑って生きようとする思い、母のように周囲の人々に楽しくさせ力を与えるようになりたいという決意が、今の活躍と相俟って……笑いよりも、家族や周囲の人々との温かな交流が胸に迫る本です。
書店の売り上げランキング一位に君臨も、品切れ入荷待ちも、全国の学校図書館からの注文殺到も、納得。
文章も構成も下手くそで、決していい本じゃありません。でも、この本から得られる物はお値段以上です。それだけで、もう十分すぎるぐらいです。
他人の過去を読んで、いいとか悪いとか評価をつけるのなんて悪趣味かもしれません。それでも、この本を読んでよかったです。
・「噂通り読んで良かった!」
田村さんが本を書いていると聞いてた時から読んでみたいと思ってました。読んだ人達のいいよという噂を聞いて、益々読みたいと思ってました。が、、、近くの書店では売ってない。笑
一気に読めました!最初から涙があふれ、途中「10キロ女の正体」では大笑いしました。笑
読んだ後は、清清しいといいますか、心が温かい気持ちになりました。もちろん田村さん自身も素晴らしい人ですが、近所の方々を始め、一番素晴らしいのはお兄さんだと思いました。
小学生を始め、何か一歩を踏み出せない人などなど色んな年代の方の読んで頂きたい一冊です。お勧めします!!!!
・「率直に、良かった」
田村母という人は本当にすごい人だと思いました。読んだだけで、優しさ・温かさが伝わってきました。そしてその母に育てられた田村裕という人間の真っ直ぐさ、優しさが強く感じられた作品でした。人の優しさに触れるたびにそれをありがたいと感じられること、素晴らしいと思います。
文章力うんぬんは置いといて、素直にただ文章を真っ直ぐ受け入れて読んでみて下さい。
・「自分が同じ境遇にあったら…多分もう死んでる」
本などは興味のある歴史物しか手を出さない私が、この本を読もうと思ったのはただ単に麒麟が好きだったからでした。仕事が終わって本を購入して帰宅してからやりたい事がたくさんあり、本はさわりだけ読もうと思っていたにも関わらず、読み始めたら最後まで一気に読み切ってしまいました。少しずつ読むつもりが数時間で完読…本が嫌いな私でもつい引き込まれるというかすんなりイメージできる、そして自然に笑い声が出てしまったり涙がでてきたり、とても素晴らしい本でした。兄姉に対する謙虚さ、親に対する想い、周りの人達に心を開ける素直さ…普通なら何に対してもつっぱねたりまだまだ甘えたい年頃なのに、他の同年代の子達よりもショックな出来事が多かった分、彼はある意味大人だったのでしょう。私の中での田村さんのイメージはテレビのままなので、この本が作家さんの書くような難い文章なら、おそらく違和感があり最後まで読めなかったと思います。エピソードの多い人生、普通ならネタにしたところで自分は正直心から笑えないし抹消したいような過去を執筆する勇気、いちファンの期待を裏切らない田村さんがますます好きになった1冊でした。最後に、公園生活時代に死んでなくて本当によかった!!
・「文庫本化で良かったこと」
私は実は単行本で読んだのですが、内容は他の方が文庫でも単行本でも書いているので軽くだけですが、この本は読み手を選ぶと思います。何を訴えているのか、と言う点を聞かれると何も訴えていないと思います。しかし得手不得手はあるものの第二次世界大戦から刻々と変わる米ロ情勢など興味深く読めましたし、私は結構はまりました。で、単行本を読んだのに、文庫本のレビューを書いている理由は、単行本に載っていない犬の系譜図がついていることです!先に読まれた方に、犬がどれがどれか分からなくなるぞと忠告されたものの、な〜にそんな風になるものか!と思って読んだのですが、結局後半はこの犬はどの犬の子孫かさっぱり分からなくなってきました。本自体は内容が4つ星にしようと思いますが、この系譜図があることでもう1つ星を加えた満点の星です。
・「「『ベルカ』、読まないのか?」」
▼4頭の軍用犬から始まる血の系譜、そこに連なるイヌたちの戦後史。 その有用さゆえに、彼らはヒトのために殖やされ、ヒトのために改良され、ヒトのために生きて死んでいく。その過程で、イヌたちはしばしば他の犬種と、そして必要ならば狼とすら雑じる。ヒトによって意図的に番わされることもあれば、ヒトのくびきを噛み破って本能のままに為されることもあるが、(保護された)純血の力だけでは超えられない壁を、イヌたちはそうした力強い交雑と凄絶な淘汰の繰り返しによって突破していく。 そうしたイヌたちの血文字で紡がれた歴史上、ベルカ/ストレルカという最も「遠くまで」往還したそのイヌの名が、この物語の中でどう語られ、そして着地するのか。それは、是非直接読んで確かめてもらいたい。 乾いた疾走感、吐き出される悪罵、濫造される死、執拗なリフレイン。この小説は、全体としては重厚な叙事詩でありながら、部分としては時に暴力的で、時に愛に満ち、時にナンセンスで、情感のままノイジーに掻き鳴らされるハード・ロックだ。それだけに、その文体はかなり読むヒトを選ぶかもしれない。 それでも、「『ベルカ』、読まないのか?」と薦めたくなるだけの価値が、力が、この(「うぉん」と吠えるイヌが表紙の)文庫本には、ある。
・「誰かにオススメはしない本」
私は、かなり面白いと思いましたが、読み手を選ぶような本だと思います。そのため、私は読むことを誰かに勧めたりはしないかなと。
ストーリーは犬の話を縦糸に、ソ連に裏切られた男の復讐の話を横糸に編まれています。最終的には一本につながるのですが。
犬の話は、壮大さに心を奪われ、男の話では、その強さ、ハードボイルドな気分に心が奪われました。
・「人の争いとともに盛衰する犬の血脈を味わう」
通常の小説で、一定期間のある断面を切り取って、そこにドラマを作りこむ構成は見慣れていますが本作で切り取られた時間軸はまったく違います。時代背景は1943年から1990年約50年間での人間の現代史が舞台になっています。通常この期間であればその50年間を生きた誰かが主人公になるのが普通ですが、本作ではその時代と歩みを共にする特定の主人公は存在しません。つまり本作は50年間の時間軸を主人公なしで一遍の作品をなしているというやや実験的な作品となっています。では、おもしろくないのかと言えばこれがめっぽうおもしろく、一気読みしてしてしまいました。
本作で時代と歩みを共にするのは犬の血脈といえましょう。三匹の日本軍軍用犬が太平洋の北側、アリューシャン列島に置き去りにされてから、それぞれの子孫が戦争とともに世界に拡散し、人間の戦いとともに世代を超えて命を繋げていく営み自体がドラマとなっています。作中何匹もの兄弟姉妹、親子が出てきますが、家系図は大きな問題ではないでしょう。彼らの生命力は人間の争いや善悪、敵味方とは関係なく生きることを目的に環境に順応していきます。彼らの生命力を見せつけられると、現在地球に君臨している人間の営みがなんとも小さく見えてしまいます。そんな犬たちの生命力を感じることが本作の楽しみ方だと思いました。
・「映像がスパークした」
大傑作ベルカ!シブイ!ちょーシブイ!クール!えらいクール!読みながら映像と音楽が炸裂しました。ハリウッドで映画化していただきたいものです。プロデューサ兼監督そしてロシアの老将軍はC・イーストウッド。メキシコの怪犬仮面はジョー・ペシ。そしてイヌはイヌは・・と妄想が・・・。ベルカ強力推薦太鼓判!
・「専業主婦、独身キャリア・・・にこだわらず」
「どうしてこんなに人間関係に臆病になってしまったんだろう」と思うことがある。30歳を過ぎてからだ。似た気持ちを抱いた経験のあるかたならこの本は響くと思う。痛快でスカッとして元気がわくという本じゃない。静かに背中を押してくれるような・・・
単行本刊行時、「専業主婦(小夜子)と独身女社長(葵)、正反対の二人に友情は成り立つのか」みたいな本として紹介されたと記憶する。「30歳以上、独身、子どもなし」(葵がそう)といったことが注目されていた頃だから尚更、そうした印象が強く刻まれている。けれどこれは物語の基本設定に過ぎない。「現在の小夜子の物語」「高校生の葵の物語」が交互に語られる。正反対に見える二人が実はそうではないと次第にわかってくる。いじめの経験を引きずる高校生の葵に、現在の陽気な女社長の面影はない。一体今の彼女とどうつながるのだ?という興味で高校生部分を読む。それが徐々に悲しく、切実で痛いほど胸に染みる展開を見せていく・・ここに登場するナナコという友達が実に印象的だ。本書の中に胸を刺されるような、胃が重たくなるような箇所を見つける女性は少なくないだろう。だがどちらか一方でなく、小夜子、葵それぞれに自分と重なる部分を見るのではないか。つまり、専業主婦/独身キャリア女性といったわかりやすい対立構造を借りつつ、二人の女性を通して、この年代に共通する心理−迷いや不安、停滞感や孤立感−をより深く描いているのではと思う。だからこそ、本書の中に見出せる希望も二倍、いやそれ以上になるのじゃなかろうか。
『対岸の彼女』というタイトル。当然対極にある二人を意味するものだと思っていた。でもそれだけではなかった。読了後、このタイトルがしみじみとした感慨と共に胸に迫るはずだ。
・「心の機微をすくいあげるのが、とても上手い作家だと思った」
角田さんの本を初めて読んだ。正直「○○賞受賞作品」とか、そういうものを軽くバカにしていた。そういう本に限ってつまらなかったり、小難しい事をこんな繊細な気持ち誰にも分からないだろう、とばかりに書いてあったりすると思い込んでいたから。でも、これはどちらも違った。もしこの本を買うかどうか悩んでるとしたら「ぜひ買った方がいい」と勧めたい。
・「すばらしい」
どんな人間が読んでも感動出来る小説の代表のような小説だと思いました。ただの感動じゃない。じっくりと深い感動。 ただ、小夜子という主婦は大人しいくせに頑固で私はあまり好きになれなかった・・。「私ではない誰かだったら」という想いは私も何度も味わったことがあるので、共感出来ます。結構小夜子に似た女性の方が多いんじゃないでしょうか。何かを変えたい、と、望んでいる人はたくさんいると思います。 その答えは人との出会いのなかにある、というではないでしょうか。
・「胸に生まれる、何か。」
初めて角田光代さんの小説を読みました。まさに、喰わず嫌い、でした。
なんとなくふにゃふにゃの小説を思っていたのですが、かっちりとした、読み進むにつれて自分の胸の中に何かが生まれる小説です。
揺さぶられて頭がグラッとするような描写。
描かれているのはどこにでもいそうな2人の女性、2人の女子高生。
だけど、誰もが感じたことのあるなんとも表現できない感情が巧みに切り取られて、目を背けたいのに、ほらっと皿に載せられて、見せつけられているようです。
また別の作品を読みたいと思います。さすが直木賞受賞作。
・「「フィクション」と見るか「ノンフィクション」と見るかは、あなた次第」
読み進み、終盤に差し掛かって思ったこと。「対岸の彼女、タイトルが絶妙ですね」。
2者の視点で平行して進めて行くのは、よくある手法。最後に、マッチをさせるのも、よくある手法。幸いなことに、この手法を用いた作品のハズレを読んだためしがない。
今回も『対岸=川』をイメージすると、見事なさじ加減、表現方法で2者のエピソードが『合流』する。
角田さんの作品を過去2作読み、「独自の人間観察力をお持ちの方だな」との思いを抱いておりました。これは、私にはついていけないよ、との諦めも含まれています。
しかし、今作に関しては、非常に登場人物に共感が出来た。起きている内容は、非現実的だけれども、その全てが、現実と紙一重に思えてならなかった。その危うさも捕まえた心を離さなかった。
久しぶりに、時が経つのを忘れて、没頭してしまいました(苦笑)。
・「誰にでもおきる可能性あり」
「精神余命 あと一年余」と言われたら、貴方ならどうしますか?
物忘れが多くなったり、言葉が出てこなかったり、最初は、疲れているのだろうと思っているが、友人の医師より、アルツハイマー病と診断された主人公 恵門の苦悩、死にたいと思ったり、先の事を考え、揺れ動く心情。
自分自身が、50代に入り、物忘れが多く、人の名前画出てこなかったりするので、身につまされる。
この病気は、最初はこんな感じかなと思う。それでも日常何でもなく過ぎていく。(多少の違和感は、あるとしても)
それでも、自分でわかっているうちはいいけど、わからなくなったらと思うと、怖い。
夏樹静子=推理小説ではないので、50~60代の人、是非、呼んでみて。
・「わかるかもしれない、、、」
忙しすぎる仕事人間を夫に持ち、なおかつ自分の中にも「仕事中心人間」を飼っているわたしとしては、なんだか、奥さんの気持ちも床下仙人が発生する根拠も、、、わかるかもしれない、、、そして、わかってしまうことが恐ろしい。社会の仕組み、、、もう少し、、、人間が幸せになりやすいように、、、変わってほしいと思いつつ、、、仕事人間にしかわからない人生の醍醐味ってやつも捨てがたい気もして、、、人生って深いなあと思いました。
・「現代版星新一ショートショート」
書店員たちがつくったヒット作品「床下仙人」は4作の短編から成り立っている。それぞれが奇想天外だ。ストーリーの中に謎めいた部分がありそれぞれそのミステリアスな部分を解決するために一気に読み進めた。現代版星新一ショートショートと個人的には思っている。
・「さすが本屋の店員さんオススメの本!」
星新一のショートショートのような世界観☆短編集がユニークで、どれもこれも設定がおもしろい。日常に潜む不思議な出来事の数々をたっぷりの皮肉とユーモアで描いている。読みやすく、私と同じく活字離れのひとにもオススメ★とにかくおもしろい。
・「評価は割れるだろうな」
オビの「現代版カフカ」は違うなあと思いました。どちらかというと、星新一ですね。ちょっと長めの。
5編が収められていますが、どれもサラリーマン(元もあり)が主人公の、ちょっと「変」なお話。でもその「変」さはなんというかストレートな印象で、話の展開にそれほど斬新さとか意外性はありません。
では、つまらないかというと、結構面白いです。なんというか、作品全体に漂うユルさが、読み手の肩の力を抜いてくれる感じです。積極的に読みたい、とはあまり思わないのですが、たぶん時間が余った時に本屋によって、この作者の本を見つけたら、また買ってしまいそうです。
・「ユーモアと風刺 長めのショートショート」
前々から、タイトルにひかれてすごく気になっていた本でしたが、ようやく読むことが出来ました。 ジャンルは、なんといえばいいのでしょうか、長目のショートショート。言葉的には矛盾しますがそんな感じで、少し変わった話を膨らませて書き込んであります。けれど基本的にはワンアイデアワンストーリーで、ホラーに走ったり猟奇にいったりはしません。あくまで安心して読める感じの作風であり、小説範囲です。 ただし、その不思議感に隠れてけっこう笑えないというか身につまされる現代社会への風刺が入っていて、そのあたりの味がけっこう好みかも知れません。例えば表題作の「床下仙人」、これも風刺がきいています。ストーリーとしては、郊外の新居に家族も知らぬうちにいつの間にか男が一人住みついているという話なんですが、これが奥さんが気付き、そして主人が気付き、気付いた以上退治でもするのかと思いきや、その男はだんだんと家族に受け入れられていくという変わった展開をします。しかし、その男のために主人は、、、というこの話のオチが非常に風刺的ですし、ばかばかしいです。 まぁ、解説しがたい雰囲気の小説で、レビューを書くとなると非常に難しいのですが、ユーモアと風刺と妙な読みやすさが結構くせになるタイプの作品です。あと何作か出ているようなのでまた読んでいきたいと思います。
・「高野和明のヒューマニズム」
「幽霊人命救助隊」こんなふざけたタイトルの本で泣くなんて思いもしなかった。それも大泣きに近い形で。600ページの本だが、読み出したら止まらない。文章が平易で読みやすいのでするすると読めてしまう。決して格調高い文章ではないが、こう読みやすい文章を書く人は少ない。よく推敲された文章だと思う。
13階段で衝撃的なデビューをし、2作目、3作目と迷走した感じだが、やっと自分の居場所を見つけたのではないか。高野和明の人間に対するあたたかい視線は、作者自身が大事にすべきものだと思う。
この本、題名でかなり損をしたのではないか。もっと今風の題名がついていれば、本屋大賞に選ばれていたかもしれない。それぐらい、いい本です。そして、生きていくうえで役に立つ本です。老若男女を問わず、広く薦めたい本である。この本にめぐり会えて、本当によかった。心の底からそう思う。
・「伝えたいことがあるから、人を惹き付ける形にして、伝える。」
夕方からちょっと読み始めたらおもしろくてやめられなくなり、一気に読了。テーマは、「うつ状態に入り自殺しそうな人をいかに助けるか?」です。このテーマで正面から書いたら、大変暗い話になってしまいます。それをこの本は、見事にエンターテインメントに仕立て読ませてしまいます。受験を苦に自殺してしまった高校生の幽霊に神様が言います。「49日以内に100人の自殺志願者の命を救うことができたら、天国に行かせてあげよう。」頼みの綱は、3人の仲間と神様からもらったいくつかの小道具。一人、また一人と苦労して助けていくうちに、孤独・貧困・いじめ・借金苦・失恋など人が死ぬ数々の理由や、人間の弱さや強さ、命の尊さに気付いていく・・・。著者の、自殺志願者を救いたい、救う方法をみなに伝えたいという想いがあふれています。「何か伝えたいことがあるから、人を惹き付ける形にして、伝える。」と言う意味で、大変成功している本です。感動します。うつについて勉強になります。そして何より、おもしろいです。ぜひ読んでみてください。
・「この世の人たちのそばに居させてくれ」
自殺した幽霊4人が、神から「自殺をしようとする人間の命をすくうのだ」と命を受け21世紀の東京に送り込まれる。49日に100人の命を救うための奮闘が始まる。
救助隊のメンバーが予備校生、ヤクザの親分、中小企業の社長、暗い雰囲気の若い美女…の幽霊。 しかもそれぞれ生きていて時代が微妙に違うので、話がかみ合わなかったり、なつかしい流行語が飛び出したりと、笑う場面がたくさん出てきます。 扱っている自殺について、正面から取り組んで描いてあるので読み応えがあります。 自殺願望のある人たちの心理描写や、幽霊達の悔恨の場面で何回も涙しました。 さらさらと読みやすく、笑わせてくれる、でも押さえるところがしっかりと描いてある。 とても面白い、良い本でした。 なるべく多くの人が読んでくれたら、と思う本です。
・「読むカウンセラー」
4人の自殺者が神から命じられて地上に幽霊として舞い降り、次々と自殺志願者を救助していく話。あり得ない設定ではあるが決して空想上の物語ではなく、自殺志願者の動機および背景に現代の世相がリアルに浮かび上がってくる。この小説では現代人の様々な苦悩が描かれている。例えば、過酷なサービス残業を強いられてうつ病になった人、愛情に飢えたまま育ち、社会の欺瞞や批判から自分の心を必死に守る人、消費者金融に手を出して借金地獄に陥った人、銀行の貸し剥がしに合い会社が倒産して莫大な負債を負った人・・・。救助隊はこれらの自殺念慮を持つ人々に解決法を、または自殺が得策でないことを吹き込み説得していく。この小説で示される数々の苦悩の中に、読者自身の苦悩と重なる部分が見つかるかもしれない。そして読者は自分の苦しみを解決する一筋のヒントをもらえるかもしれない。精神的解決あるいは現実的解決のためのヒントを。私自身、自分の悩みと自殺志願者達の悩みが多少オーバーラップし、読み進める内に私がカウンセリングを受けているような気分になった。単なる小説ではなくカウンセリング機能も持つと言ったら大袈裟だろうか。とにかく中身の濃い一冊で一読をお勧めする。
・「「死なないでください、日没まで。必ず助けに行きます」 」
テーマは、自殺と、うつ病です。 とっても重いテーマなのですが、正面から取り組んでいます。 でも、決して暗い語り口じゃないのが、本書のすごいところ。
それぞれの理由で自殺してしまった4人の幽霊が、天国に行くために49日間で、100人の人命を救助する話です。
本書の中で、うつ病が大きく取り扱われています。 そして、それにまつわるいろいろな情報が、盛り込まれています。 本書で繰り返し、力説されているのは、うつ病は、治療で完治するってことです。 一時期TVで同様のCMが流されていましたが、まったく伝わらなかった記憶があります。 本書を読むと、ためらわずに病院にいくべきだ、ってことが理解できます。
本書で感心するのは、「幽霊人命救助隊」は、問題を解決してない点です。 問題を解決しなくても、自殺を食い止めることができる。 どうすればいいのかは、是非本書をお読みください。
●チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599)
・「デビュー作とは思えない圧倒的な筆力」
海堂尊のデビュー作にして第四回『このミステリーがすごい!』大賞を全会一致かつ数分で決定となった作品。作者はオートプシー・イメージング Autopsy imaging(Ai=死亡時画像(病理)診断)の重要性と医療制度への導入を訴え続けている現役医で、外科医を経て病理専門医となった人だ。その現場のノウハウが見事に本作では炸裂している。
文体が非常に軽く読みやすい。まさに現代向きの文体。それでいてストーリーの骨格はデビュー作とは思えないほど精緻だ。そして最も大切なキャラクタの作り込みが実に良くできている。おそらく多くの人が『白鳥』というキャラクタの魅力に魅せられている。どこか京極夏彦の榎木津と似た魅力で読むものを圧倒する。
既に映像化されそれを記念しての文庫化で、映画では『田口』は女性になっている。8月のDVD化が楽しみだ。
・「強烈なインパクトのある作品」
強烈なインパクトのある作品で、一気に読んでしました。 キャラクター、ストーリー、そして、そこにある緊迫感、リアリティと、どれを取っても最上級の作品でした。おまけに、現代医療の抱えている闇の部分をも表面化してゆくというテーマの面でも素晴らしい作品でした。 この本を読む上で先ず印象に残るのが、探偵役の白鳥圭輔である。一見常識はずれな言動を見せながら、“ロジック・モンスター”ぶりを発揮して、緻密な推理を組み立てて行きます。その相棒であるワトソン役の田口公平との凸凹コンビの組み合わせも魅力的です。 内容的にも、度重なる術中死が事故なのか、故意なのかという、その真実を求めて隠されたベールを一枚一枚剥がして行く手際のよさが、読み手を一層虜にしてゆきます。「手術室」という「密室」に近い状況の中で起こる「死」の真実は、読み進むものの興奮を誘います。 今年読んだミステリーの最高傑作の一つです。
・「一見軟らかいが、内容は硬派」
文章は軟らかいが、内容は新本格派真っ青。非常に面白く、ぐいぐいと小説世界に引き込まれていく。電車とかの空いた時間に読んでいるが、すぐに小説の世界に入っていける本ということでは、バッテリー以来。医療の専門用語なんかも気にせず読める。これらは、物語に余分なところはスパッと切り取っているからだろう。これから下巻だが、どうなるか楽しみである。今のところ、褒め言葉しか浮かんでこない。
・「文句なしのこのミス大賞。読めば分かる。」
ベストセラーになるのもうなずける、最高のエンターテインメント小説です。ミステリーとしての質はイマイチですが、それを補って余りうる展開の面白さと、魅力的な登場人物たちにやられました。田口&白鳥コンビはお見事です。
こういうタイプのミステリ作家は、きっとこれまでにはいませんでしたよね。本格派でもなく社会派でもなく、また重すぎず軽すぎず、なんともいえない絶妙な立ち位置をキープ。そして圧倒的なリーダビリティで、読者を飽きさせることなく一気に最後まで読み切らせる文章力。久しぶりの天才肌の新人だと思います。#石田衣良がミステリを書くとこんな感じになるのかなあ。
あまりにサクサク読めちゃうので、ちょっとバカっぽい小説に思えてしまうところはご愛敬。誰が読んでも確実に楽しめる小説なので、万人にオススメです。逆に言うと、コアなファンが付くような強烈な小説にはなり得ない感じですかねえ。。
それにしても、なんでこの薄さで上下巻2冊組にするかな。正直そこだけが不満です。
・「とにかく面白い」
映画が面白いと浜村淳が絶賛していたので、新幹線のお供に新大阪で購入。あまりに面白くて寝るのも忘れて、仕事が終わったら速く読みたいと思ってしまった。
医学関連の小説は読むと後味が悪い(医者が嫌いになる)ので積極的ではありませんでしたが、帯のセールストークや平積みになってるので外れはないだろうという軽い気持ちだった。
内容は他の方が書かれているので書きませんが、とにかく面白いの一言です。題材は病院や医者ですが不快感もなく万人に受け入れられる作品だと思います。
ひさしぶりに小説の醍醐味を充分堪能させてもらいました。作者はこれが初めての小説でおまけに本業は医者と聞いてあまりの才能にびっくりしました。
他の作品も早速読んでみようと思います。久しぶりに完全にノックアウトされた素晴らしい作品でした。
文句なく星五つです
●チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600)
・「楽しみなシリーズの誕生」
下巻も読みました。 前半の上巻も面白かったけれど、後半の下巻もかなり面白かったです。大満足。 食わず嫌いで読んでいなかったのを後悔する面白いエンターティナメント作品でした。前作では、病院側から愁訴外来の田口医師が探偵役として全員の聞き取り調査をしていましたが、目の前で手術中に患者が死亡、謎は解明できずという事態を受けやむなくギブアップ。厚生労働省からロジカルモンスターこと白鳥技官が派遣されてきます。 この白鳥技官という人物がキャリア組の公務員というイメージにまったくそぐわない、傍若無人・はた迷惑・トラブルメーカーといった感じの一見どうしようもない人物なのですが、そこはそれ、物語の牽引役として登場するわけですから、実はずば抜けた知性と行動力の持ち主で、バチスタ・チームの術中死の謎を明晰にズバズバッと快刀乱麻を断つがごとくに解決していきます。ただ、さきほどに書いたような人物ですので、尊敬と威厳を滲ませつつというよりは、助手に駆り出された田口医師も辟易するような捜査術でそれを行う訳ですが、それが破天荒で面白かったです。 医学ミステリというと堅苦しいイメージがつきものですが、そういう印象をばっさりと切り捨ててくれる一冊でした。続編も多々出ているようなので、文庫化を楽しみに待ちたい楽しみなシリーズとなりました。映画のキャストなんて吹き消すほどの出来でした。
・「説得力ある構成」
上巻ではわからぬ謎ときが、下巻で、徐々に、絞りこまれ、明かされていく。明かされた内容は、確かに上巻で、伏線がはられ、そう解釈できるヒントがちりばめられている。説得力のある構成だ。
・「『パラサイト・イブ』以来の衝撃」
緊迫した展開で終了した上巻のスピード感は白鳥の登場によって更に加速度を増す。チーム・バチスタの面々は白鳥の力づくともいえるヒアリングによって有無を言わさず容疑者となり、心の奥底をえぐられる。心の外科手術とはよくいったもので、白鳥のメスはチームのほころびを次々に明るみにしていく。
現役医師だからこそ描ける医療の実態、そして新たな技術。医者だって一人の人間でしかない、ということをこれでもかというくらい見せつけられる。桐生ブラザーズの苦悩が本策の山場であろう。その後の真犯人確立までの盛り上がりは白鳥の存在が薄い分、長いエピローグの感じさえする。しかし、それはマイナス評価ではない。読み手の気持ちをクールダウンさせてくれている気さえする。
文句なしに面白い。田口&白鳥コンビの探偵劇はすでに続編が刊行中。しばらくは海堂作品にはまってみるのも悪くない。
・「現場のノウハウが見事に本作では炸裂している」
海堂尊のデビュー作にして第四回『このミステリーがすごい!』大賞を全会一致かつ数分で決定となった作品。作者はオートプシー・イメージング Autopsy imaging(Ai=死亡時画像(病理)診断)の重要性と医療制度への導入を訴え続けている現役医で、外科医を経て病理専門医となった人だ。その現場のノウハウが見事に本作では炸裂している。
文体が非常に軽く読みやすい。まさに現代向きの文体。それでいてストーリーの骨格はデビュー作とは思えないほど精緻だ。そして最も大切なキャラクタの作り込みが実に良くできている。おそらく多くの人が『白鳥』というキャラクタの魅力に魅せられている。どこか京極夏彦の榎木津と似た魅力で読むものを圧倒する。
既に映像化されそれを記念しての文庫化で、映画では『田口』は女性になっている。8月のDVD化が楽しみだ。
・「ロジカルモンスターと万年講師」
『四日間の奇蹟』を読んでかなりがっかりさせられて以来、<このミス大賞>作品に手を伸ばすことはなかったが、この作品の完成度は別格だ。現役医師でもある海堂尊によって描かれる大学病院医局の現場は生々しく、慣れない医学専門用語の意味を理解しないまま俳優が発している『医龍』なんかよりも、めちゃくちゃリアルであることは間違いない。
そして、特筆すべきは<ロジカル・モンスター>白鳥圭輔の笑劇度だ。このキャラクターの強烈な存在感はあの<伊良部医師>にも匹敵する。上巻はその白鳥とコンビを組む田口公平のバチスタ手術中死をめぐる受動的な聴取調査が中心で、白鳥はまだ登場してこない。このアクの強いキャラの登場をわざわざ下巻までとっておいた作家の狙いは、本書の中で見事に成功している。静寂の壁をぶち破るような<火喰い鳥>の出現は、ハニカミ王子のドライバーショットなみのインパクトがある。
イリーガルでファイな白鳥も田口も、組織からハミダシたいわばオチこぼれだ。そのオチこぼれコンビがこり固まった旧態依然とした組織(本書の場合は医療チームだが)にメスをいれていく図式は、ある意味横山秀夫の小説や『踊る大捜査線』とも共通している。最近のヒット作の中に、こうした<組織に対する反抗>が描かれるのは、日本人(特に若い人)の中に白鳥や田口と同じ不平不満が渦巻いているからだろう。おかしくなった組織の膿を切除するのは、やはり組織の外にいる人間にしかできないのかもしれない。
・「過去を称えるやさしさにあふれている傑作」
伊坂幸太郎の小説のすごさは、構成力だと思う。点と点がいつしか線となり、大きなうねりを持って迫ってくる。そんな文章力が、一番の魅力だと思っていた。でも、今回の作品は、そんなことがちっぽけになるくらいに愛に満ちあふれていた。くだらない時間を一緒に過ごした学生時代の友人、そして一度別れてしまえば最も遠い存在になってしまう“元カノ”が登場するわけだが、時を経てもなお彼らの間に流れる“信頼感”は、目の前のとんでもない状況を凌駕するくらいに深い。自分の軸の所在をきちんとわかっているというか、自分の中の優先順位にきちんとケリをつけられているというか、そういう潔さに胸が熱くなる。変わっていっても、同じように大事なもの――その深さに胸を打たれた。話の軸は首相暗殺事件なのに、変わっていくことや、過ぎてしまった時間を称えるような優しさにあふれている大傑作です。
・「伊坂ミステリーの妙を堪能しました」
杜の都・仙台を舞台に、仕組まれた首相暗殺事件の犯人に仕立てられた男が、必死の逃亡者として逃げ切り、生き抜こうとするストーリー。
謀略者や警察、マスコミによって作り出された男のにせの姿が、男をよく知る親友たちと主人公が関わっていくなかで、真実の姿へと変わっていく。最初のうちは、虚像として映っていた絵をばらばらにして、あるべき場所にパズルのピースをはめこんでいくと、最初の像とは全く違う青柳雅春の実像が浮かび上がってくる、そんな感じ。ぱたり、ぱたりと、主人公・青柳雅春の虚像が引っくり返されていく展開が小気味よく、絶妙でしたね。
暗殺事件の真相は、事件当時のものとは違っていたことを明らかにした上で(事件から20年後の話を描いた後に)、黒い霧の中に葬られた事件を、カットバックを巧く使いながら描き出していく話の展開、伏線の生かし方も見事だったな。 殊に、青柳雅春の必死の逃避行を描いていく中に、彼と親友、恋人との思い出の光景が差し挟まれるところがよかった。容赦のない、冷酷無惨な謀略事件と比べると一層、彼らの脳裏に浮かぶ思い出の風景が、あたたかく輝いているように見えました。
久しぶりに読んだ伊坂ミステリー。これは面白かった!
・「こんな作品を待ってました。」
とにかくノンストップで読みました。面白くて、途中で止めることが出来ませんでした。私も主人公・青柳と一緒に一気に走った感じです。
女二人の会話から入る第一部が、まずいいです。何とも平凡だけどどこか軽妙な会話に引き込まれる中、あっと驚く事件が起こります。そのあとは過去と現在を巧みに行き来して、ストーリーは展開します。ちょっとした会話の中にも伏線があり、あとあとそれが「なるほど!」と思わせるし、登場人物はそれぞれなんだか適当に喋っているようだけれども、すごく物事の本質を見抜いていて、ドキッとさせられることばかりでした。
読後感は、何故かデビュー作の「オーデュポンの祈り」を読んだときと似ていました。あの、初めて読む種類の小説!と感じた新鮮さです。更にパワーアップしたものですが。正直言うと、みんなあまりにも無条件に逃亡者・青柳に手を貸すし、うまい具合に話が進みすぎる(たった二日間なのに!)という感もあるのですが、それは許せるぐらいのおもしろさです。でも面白いだけじゃなく、ホロッとさせる部分もあるんですよね。わたしは3箇所でグッときました。そしてラストがまたいいんです!
う〜ん、書き切れません。とにかく、オススメです!
・「新作は大作。伊坂幸太郎氏の作家人生における注目すべき一書!」
伊坂幸太郎氏の最新作だ。帯には「伊坂的娯楽小説突抜頂点」と明記されているが、たしかに彼自身の持ち味が十分に活かされた読み応えある作品だった。個人的にジョン・F・ケネディ暗殺事件には関心があったので、それをモチーフにした本作品の展開構成には最初から惹かれるものがあった。さまざまなシーン・会話が見事に繋がり、立派なオーケストラの演奏を味わっているような感覚に浸ることができるのは伊坂氏の筆力である。タイトルも印象的だった。
首相暗殺の濡れ衣を着せられたある男と彼を偶発的に応援するかつての友人達らとの触れ合いに多くのことを考えさせられた。しかも500頁を超える大作であるため、読了するまでに意外と時間がかかった。一気に読み終えた読者もいるかもしれないが、私には大変だった。興味深い作風・内容であるとは思いつつも、途中で頓挫してしまうのではないかと幾度も危惧した。今こうしたレビューを書いているのは、きちんと最後まで読み終えたからである。当然のことではあるが、今回ばかりはそれが何より嬉しい。
「第四部:事件」がとにかく長い。自分が「逃亡者」にでもなったスリリングな気分になるが、関心事は「最終的にはどうなるんだ?」という一点だ。十二分に読者を引っ張っておいて、「第五部:事件から三ヵ月後」のコンパクトな締めくくりがかえって心地よかったりする。最後にもらった「たいへんよくできました」というスタンプは一体どんな意味を持っているのか。このエンディングに私は安堵した。そして伊坂氏の人間らしさを何となく垣間見たように思うのである。伊坂的娯楽小説の貫徹ともいうべき本書のメッセージとは何か。本書を通じて作者は読者に何を感じ取ってほしかったのか。「娯楽=エンターテイメント」という単純な話ではないだろう。「現時点の集大成」というから、今度も彼の作品は進化を遂げてゆくということだろう。私なりに注目していきたい。
・「そうなってくれてありがとう」
この本はどこがおもしろいんだろうか? そんなことを考えながら読んでいた。 といっても、つまらないというわけではない。 確実におもしろい。 ただ、どうしておもしろいかがよく分からないのだ。 設定ははっきり言ってありふれている。 びっくりするような大仕掛けがあるわけでもない。 主人公は陰謀に巻き込まれる系の話にしては善良で平凡だ。 それでも台詞や心象は印象的で、主人公の逃亡劇には 本気でハラハラした。一体何が優れているのだろう? 352ページ。 理由はこのページにたどり着いたときに強烈に解った。 爽やかなのだ。 この小説はとても技巧的で数多く張られた伏線が、 次々に解明されていく。そのテンポは素晴らしく解明の過程にも嫌みがない。 でも、それはこのジャンルの小説に課せられるあたり前のハードルだ。 その上で「やっぱりそうだと思ったよorまさかそうだったとは」 なんて思ったりして楽しむのだが、 それは理詰で頭を追い込む部分がある。 おもしろさが内にこもるのだ。 しかし、この作品で伏線が解明される度に感じるのは 「そうなってくれてありがとう」と思える とても明るく爽やかな開放感だ。 352ページを読んだときに、私は普通に「今日はいい日だ」と思った。そんなことを思わせる圧倒的な爽やかさがこの本にはある。
・「雑多な豊かさ」
世界の豊かさを味わえる一冊。 しいてあらすじを伝えるなら「天然少女と、彼女に恋した青年を中心としたドタバタコメディ」となるが、これは「となりのトトロ」を「田舎に引っ越してオバケに出会う物語」と書くのに等しい。あらすじにすると、取り落としてしまうものが多すぎる。
主人公二人もいいのだが、この小説の本当の面白さは二人をとりまく人々の豊かさにある。十数人にも上る脇役が、それぞれ人格をもつ存在として書き込まれている。てんでばらばらな立場の、ばらばらな願望をもつ人々が、つながり結ばれていく面白さ。起こりえない事件、ご都合主義な展開でありながら、網の目のような人間の結びつきにリアリティと温かさがある。 多くの小説、映画が「目的を持つ主人公と、乗り越えるべき障害」というシンプルな構造で進んでゆくのに比べれば、実に雑多で魅力的だ。 「なにをいいたいのかわからない」という人がいるのも理解できるが、起承転結のストーリー、大上段のテーマばかりが小説の面白さではないだろう。ストーリーとテーマ性ばかりが重視されるようになってから、小説も映画も(ハリウッドを代表として)痩せてつまらなくなったのではないか? そうした作品とは対極の「豊かな」作品として、これは傑作だ。
なお特徴的な文体は、夏目漱石や太宰治などの古典的作品や、慣用句を下敷きにしたパロディを含んでいる。そうした古い文章になじみのある人なら、台詞回しにニヤっとさせられること請け合い。
・「ステキな物語」
表紙とタイトルに惹かれ、とりあえず1ページ目だけを読んだ時は、その文体に慣れておらず買おうか迷ったものでしたが、買ってその先を少し読めばあっというまに世界に引き込まれてしまいました。
読み終わった後味も甘くて心地よく、とても楽しくて、ステキな物語です。
いい本に出会えたので、いろんな人にオススメしたくなりました。
面白く不思議な登場人物や、不思議な(それでいてこんなことあるか!という文句は言いたくならないほど気持ちいい)出来事がたくさん詰まっているので、サブカルな漫画などが好きな人にも、是非読んでみてほしいです。片想い中の方も、青春真っ只中の方も男女問わず是非!
・「傑作!」
ずっと待ってました。
思えば、「四畳半神話体系」が出版されてから実に2年が経過しているわけです。その間、「Seet Blue Age」や「きつねのはなし」と氏の作品は出版されましたが、前者は本作品の1話目のみ、後者は「太陽の塔」で絶賛された独特の文体と世界観から離れ新境地を開拓した作品だったため、作品の出来とは別に物足りなさを感じていました。
というわけで、個人的な気持ちとしては2年間待ったということになるのですが。しかし、この作品を読んだ後は、待った甲斐があったという満足感でいっぱいです。今回は「太陽の塔」のような「不思議な幕引き」や、「四畳半神話体系」のような「実験的構成」も無く、先の2作でいまいちとの判断を下した人にも、納得の行く作品に仕上がってるのではないかと思います。
大げさかもしれませんが、この作品をきっかけに本格的なブレイクを果たすのではという手応えを感じました。
・「この本を手に取るのも何かの御縁」
春の夜、先斗町や木屋町界隈。夏の下鴨納涼古本市。秋も終わりの青春闇市たる学園祭@本部構内&吉田南構内。そして、冬。クリスマスを前に浮き足立つはずの四条河原町など。この本を楽しむには、やはり、京都を知っているほうが有利だ。京都で大学生活を送ったり、京都の大学生の生活を知っている人なら、尚よい。
癖のある文体がクセになった。大袈裟でしかつめらしい文章で、荒唐無稽な物語を紡ぐ。好き嫌いは別れるところだろう。物語よりも、この文章が個性だ。全文がパロディのようなノリのよさに釣られ、見知った地名の懐かしさを追うに連れて、最初の読みづらさも減じた。腹の底、心の奥をそうっと温めてくれるようなのどかさがある。偽電気ブランに酔うように、世界で神々と遊び、雰囲気を楽しみたい。
・「とても楽しい」
大傑作。文句なしに今年の恋愛小説ナンバーワン。(大森望 文芸評論家) 天然キャラの女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。
とにかく読んで損無しです。読むほどに引き込まれ、映画を見ている様な感覚に引き込まれて行きます。 是非とも、スタジオジブリの次回作品に推薦したいほど楽しい作品です。 奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々と運命の大回転にほんろうされる、恋愛の行方に引き込まれてみては如何でしょう。
今年最後の恋愛小説にピッタリな作品です。とても楽しい作品ですよ。ご賞味あれ。
・「バムに憧れる。だがしかし・・・」
フライフィッシングにのめり込み、魚のことだけを考える生活。そんなバム達に憧れ「いつかは自分も」なんて考えている時点で、僕はバムの資格を失っている。でも、究極の『憧れ』としてのバムな生き方を忘れないようにしたいと思う。雑用に埋もれ、ノルマに追いかけられる毎日だからこそ、この本は手放せないものになった。 翻訳も秀逸。夢を忘れたら、終わりですものね。
・「マジカルな話のきらめき」
話の静けさが、ひたひたと胸に満ちてくる味わい。五つの話それぞれの主人公の人生に訪れた不思議な出来事、不思議な縁が綴られていく短篇集。池に広がった波紋がすーっと消えていくみたいな文章の静謐感。心地よく浸ることができました。 「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の五篇を収録。解決されずにいる問題や悩み、わだかまりを抱えた主人公が、奇妙な出来事に遭遇することで、人生の新たな一歩を踏み出していく。 なかでも、「日々移動する腎臓のかたちをした石」の話が面白かったな。語り手の小説家が出会う女性のキャラが魅力的だったこと、彼女の職業が予想外なものだったこと、タイトルの作中作が話に深みを添えていること。そうしたところに、マジカルな話のきらめきを感じました。 話の後味も、余韻があってよかったですね。不思議な体験をまるごと受け入れた後、それぞれの人生に向けて、再び歩き出していく主人公たち。それまで引きずっていた重石のようなものが、ふっと消えていたような気配。清々しい心持ちになりました。
・「ほのかに漂う再生の気配」
村上春樹は、深い悲しみや不条理に立ち尽くす人間の感情を、日常が微妙に歪んでいき先にあらわれる非日常として描く。本作はそういう点で、村上春樹の典型的な短編小説であると思う。ただちょっぴり作風が変わったような気がするのだ。
5つの短編が掲載されている。ゲイであることをカミングアウトした結果、家族と孤立して暮らす調律師、ハワイで鮫に襲われ息子を失った中年女性、失踪した人間を捜す男、謎の恋人は果たして「本当に意味がある女」なのかに悩む小説家、名前を猿に奪われた若い女性。主人公の背景は省略されているが、全員、欠落を抱えて生きている。
いずも結末に再生に向けての希望がある。それが従来の村上作品に比して、異なる点だ。主人公達は、家族と和解し、息子の死後の生活を受け入れ、消えた恋人を「本当に意味がある女」だと受け入れる。前向きだ。希望に向けて立ち上がろうとする力強さ、再生の気配が本作のバックボーンにあるように思う。
・「私は春樹が嫌いなのに」
やはり春樹は日本と現代を代表する作家だった。私は村上春樹が嫌いだ。そもそも、アメリカ留学だのヨーロッパ暮らしが板についているだの、そういうオシャレ感覚が気に入らない。なーにが国産感覚だ。スカしてんじゃねーよ、と思っている。 だが、やはりこの人は一流だ。この短編集は面白い。しかも何か名状しがたい情念を呼び起こす。どんなにイヤなやつでも、一流絵画を描く人がいる。僕は村上春樹に会ったことはないが、たぶん反感を持つだろうと思う。でも、この作品は認めざるを得ない。 短編は、後半になるほど荒唐無稽になる。だが、私たち読者はそれを受け入れる。これぞ文学のマジックだ。 私は「偶然の旅人」と「ハバナ・レイ」に、戦慄のような共振を感じた。
・「 “偶然の一致”と“奇譚”のはざまの五編」
「僕はたしかにフィクションの中では大胆な作り話をする(なにしろそれがフィクションの役目だから)。けれどそういう仕事をしていないときには、わざわざ意味のない作り話はしない」と前置きした上で作者が語る自らの“不思議な出来事”と、その後に収められた五編の“奇譚”の間に差異はあるのだろうか?大体、“奇譚”として語られる五編の中でも、「品川猿」のしゃべるおさるは作り話だとしても、ほとんどのエピソードは、科学的に考えてもありえる、もしかしたら実話でもおかしくない“不思議な出来事”ではないだろうか。作者が作り話と実話をことさら分けた物言いをするのはトラップであって、虚実はデジタルに二分出来ないグラデーションである気がする。大体、作者は虚であるのか実であるのかの二分論には関心を持たない。「超能力についても無関心だ。輪廻にも、霊魂にも、虫の知らせにも、テレパシーにも、世界の終末にも正直言って興味はない」とする一方で作者は言う。「僕としてはただ、ある種の不思議さに打たれるだけだ。こういうことが実際に起こるんだ、と」。虚だろうが実だろうが、“不思議さに打たれる”ことにひとは感動する。そして“不思議”とか“奇譚”は一足飛びではなくて、とてもありふれた“偶然の一致”の積み重なりだ。この五編にはどれも不思議な味わいと静かな感動があるけど、個人的には「どこであれそれが見つかりそうな場所で」が、もっとも心に引っ掛かりがあった。 「どうして日本人は自分の国を守るために戦おうとしないんだ?」と絡む元米兵とか、“ダンカイ”とか“ビーズ(B'z)”とか“デニーズ”とか、最近の作者の「日本」の取り上げ方のスタンスの変化が本作でも感じられた。 「観察して、観察して、更に観察して、判断をできるだけあとまわしにするのが、正しい小説家のあり方なんだ」って話す登場人物の言葉は、作者のわりあい本音の文学観である気がする。
・「良いお酒を飲んで酔っ払ったような気分にさせる作品です」
同時期に発売された「ふしぎな図書館」の新しい文庫を読んで、村上春樹作品独特の不可思議な感覚にはまってしまいました。それですぐに「これも買わねばなるまい!」と即購入。ものすごくはまりました。プロローグとなる「偶然の旅人」のように、あくまでも現実に即した話しもありますが、「ふしぎな図書館」と続きの話しのような雰囲気のある「どこであれそれが見つかりそうな場所で」にノックアウト!羊男なみに怪しい猿が出てくる「品川猿」に頭を抱えました。夕暮れ、電車の中で読んでいたのに、どこか異境に連れて行かれた気分になりました。日常が舞台となのにまるで旅の本を読んだようだ。良いお酒を飲んで酔っ払ったような、幸せな読書気分を味わえる一冊です。
・「女性の品格よりは力が抜けていていい感じ」
当たり前のことしか書かれていないとお怒りになる方もおみえになるかもしれません。当たり前のことを、当たり前のようにするのが一番難しいこともあります。「親の品格」に書かれていることを半分できれば十分だと思うのも、一つの「品格」だと感じました。書かれていることを、すべて実現しようとすることは、必ずしも品質、格式とは関係ないかもしれません。品格は、もっと抽象的な考え方のような気がします。書いてあることをすべてすると、「品格」を失うことになるかもしれません。
力を抜いて読むとよい本だと思いました。
ps.本当に品格のある人は、あまり人を批判しないという話をお聞きしたことがあるような気がします。
同じ著者の「女性の品格」は、肩肘張っていて、誰もがやるとよいことだとは思われないような無理な点があるような内容がありました。
それに対して、「親の品格」は、力が抜けていて、無理な内容がありませんでした。#実際にそれができるかどうかは別にして。
・「2歳児の父親です」
きびしいご意見のレビューが多いですが、私は読み進めて、一語一語が納得できるものでした。自分が子育てが完璧にできていなかったのだから、こういった本は書くべきではないとのご意見には疑問に思います。実際子育てで苦労して失敗して思い知った教訓もあるのではないでしょうか。たしかに古来から言われている基本的な事柄が多く述べられていますが、これから子育てに入る親にとってはまず読むべき本ではないでしょうか。奇をてらった意見本よりあたりまえのことでも日ごろ忘れがちなことをまとめてくれている本のほうがいいと思いました。
・「振り返ってみた子育て論」
ブーム?にのって「品格」という題が付いていますが、内容は子育て論です。それも、子育てを終わった親が振り返りながら、理想論を書いたという内容です。そうは言いながらも、子育てしている当事者としては、目標や理論を持っていることは大切だと思います。著者が理想通り行っていたかどうかは別として、その考え方には共感しました。「子どもが泣いているあいだは要求を聞かない」「お辞儀まできれいにすることを習慣にする」「はじめから自由に育てると、かえって個性は育たない」「親が子どもをえこひいきしない」「親が先回りして子どもの希望をかなえてやらない」等々、意見を同じくしたり、考えを深める部分が多々ありました。子育てを終わった人の反省?を聞くのも、当事者としては参考になる部分があると思います。
・「『女性の品格』の続編」
『女性の品格』が感銘深かったので続編も興味深く読みました。親と子供の関係が良い関係で子育てをしていくというのは、思いのほか難しいものです。子供に当り散らしたり、その逆に機嫌をとり過ぎ甘やかしすぎたり。気がつくと反省しきり!子育てに追われ不本意な行動をうっかりとったときに、この本を思い出してください。良薬は口に苦いもの。
・「至極当然なことです。」
「女性の品格」の時にもレビューを書き、今回も姉妹書ですのでレビューを書くべく購読しました。前作同様、至極当然、当たり前な内容ばかりで真新しさはありません。でもこの至極当然なことが出来て初めて、普通並みのヒトになれるのではないでしょうか?当たり前のことがわかっているからこそ、ヒトは個性が生まれてくるのではないでしょうか?この当たり前を書くことも実践することもかなり難しく、現代はすぐに奇を衒いがちです。個性重視といいますが本当の個性って、やはり基盤があるからこその個性だと私は思います。社会・学校・地域との係わり合いを通して子供の心は発達していくもの。その中に必要な「親」としての心構えや振る舞いが書かれており、大変ためになりました。現代の「親」にとって必読の書物と考えます。みんなが「賢い親」になれるといいですね!
・「手もと不如意でも読まれよ。すぐれた業物なれば。」
手もと不如意(フニョイ)でも読まれよ。すぐれた業物(ワザモノ)なれば。
手もと不如意・・・ちょっと当座の持ち合わせがない。 原義は「思いのままならない」からきている。 貧乏さをむき出しにしないのが、武士の礼儀とのこと。
業物・・・・・・・腕のいい刀工が鍛えた刀剣。 (ある種の)「ブランドもの」
1ページに一つの武士言葉が紹介してある。説明は簡潔であり、飽きることはないだろう。同時に、時代小説でその言葉が使われている場面を引用する。作家は藤沢周平、山本周五郎、司馬遼太郎、池波正太郎等の錚々たるメンバー。
武士が現代にいないことが不思議に感じられるというまでの著者のこだわりが、面妖な本を生みだした。
読んでいただければ恐悦至極。ではさらば。
・「気楽に雑学♪」
タイトルから、武士の話し言葉について書いてるのか?と思ったら、時代小説の作家が産み出した言葉も結構入ってて、「時代小説用語覚え書き」って感じの内容でした。
しかし!「慮外な!」とか「卒爾ながら・・・」など、消えてしまった武士言葉も沢山解説してあります。
一章 武士の決まり文句二章 春夏秋冬が薫る言葉三章 武家社会の言葉---切腹というしきたり四章 武家社会の言葉---敵討という義務五章 剣術の醍醐味を伝える言葉六章 行動・しぐさをあらわす言葉七章 人物を評する言葉八章 酒と色を語る言葉
すべての言葉に時代小説から抜粋した例文が付属してるので、より分かり易くなってます。
これを読むと、言葉なんて時代の流れの中で、簡単に消えたり、簡単に意味が変わってくるものだ、と良く分かります。昨今の「正しい日本語を守れ!」という主張も、何をもって正しい日本語なのか?と思ったりしますが・・。
・「意外と面白い(^o^)」
今では使わなくなったような言葉でも、言葉の成り立ちを見てみれば、新たな発見が多くあり、使ってみようかなという気持ちになります。ぜひ見てください。
・「武士の日本語なのに」
作者は剣術に対する造詣が浅く、ゆえに解説が随分薄っぺらいと言う印象を受けた。剣豪小説からの引用によって構成している本の割には、その辺りをさらっと流すのはいかがなものかと。まあ、一語に対し一ページで解説という形態をとっているので、やむを得ないのだろう。
・「「使う気にはなれない小説の日本語」」
物凄く、タイトルにだまされた感が強いです。試みは面白いと思います。時折、今でも普通に使う言葉が混じってはいましたが、新鮮な頁も多数ありました。しかし残念ながら、その言葉を使った例文がほとんど歴史小説の文言なのです。読み溢しがあるかもしれないので全て、とは言い切れませんが恐らく全てそうです。歴史小説、時代小説の類は好きです。よく読みます。しかしそれらは本当に「武士の日本語」ですか?全体の編集にしても、箇条書きの様にただひたすらに列するだけ。一応のカテゴリ分けはありましたが、単調で、飽き易い装丁でしょう。買う前の期待が大きかった分、読後の落胆も大きかった一冊でしたね。過度な期待は持たずに臨むのがよろしいかと。
●私の男
・「大好きです」
一風変わった親子の、欲望の物語。直木賞受賞作であるが、それまでの桜庭一樹からは、少し毛色の違う作品です。近親相姦や、共依存がふんだんに取り込まれており、人によっては読んでいる途中で嫌悪感に苛まれるかもしれません。この小説に共感は出来ないが、猛烈に惹かれてたことは事実です。主人公の、花と淳悟は、作中に語られるチェインギャングの絵そのもの。(二つの鉢から生えた貧相な木が、鉢を近くに置きすぎたせいで途中から絡り、一本の木になる状態)彼らの関係は、共依存よりもっと醜くて淫猥で、 かつ枯れています。この関係は突き放して見るしかない。好きだけど嫌いな作品です。赤朽葉家の伝説の方が万人向けだと思うし、最後の一文の衝撃も上ですが、私の男における最後の一文は、全部をひとつの言葉で射抜いた。共依存よりも濃い、血の依存を書き切った筆致にも脱帽。桜庭一樹はどんどん進化しています。
・「数枚の絵を重ね合わせた物語。」
批判を招きやすい禁忌の題材を巧く料理したなぁ、という感想です。余り長々と書いていないんですね。場面を絞って、何枚かの絵を重ね合わせて全体を想像させるような構成にしています。スリル感が高まると作者は考えたのかな、と思いました。精神の歪み、と言いますか、壊れた精神を持つ男性である父がその場面毎に違ったイメージで登場します。父の変貌してゆく精神世界を垣間見せようとしたのかもしれません。近親相姦、ロリコン性癖、ファザコン性癖といったものは、家族の愛情のある部分が完全に欠けていて、その埋め合わせを行おうとしている、と受け止めました。この作品は、たくさんの謎の説明をしないまま終わってしまいます。心地悪さもあるのですが、余白を随分広めにとって、韻文のような雰囲気を狙ったのかな、と思います。文章の上手さで補っている面も大きいかと思います。
・「確かに」
★の低いレビューにも共感し、納得もできましたが、
僕はこの作品、すごい好きです。
先ず話の筋が独特で 彼女ならではのグロテスクな感じもよく現れていて
大変良いと感じました。
・「問題作!!だが、成熟した女性の書いた真摯で切ない物語・・・」
読み始めてすぐに分かる。危ないな〜・・・と言う感覚・・・。桜庭一樹の作品では、今までにも時々見られた「雰囲気」、じっとりと、濃密な、「淫靡」な雰 囲気が冒頭から溢れかえっている。章ごとに語り手が変り、時間は過去に遡っていくが、次第に濃さを増すその雰囲気に息が詰まりそうに・・・徹底的に過激な 「性描写」も現れる・・・。(18歳未満はちょっとやめた方が良い?)余りの徹底ぶりに投げ出したくもなったが、真正面から「タブー」に切り込む姿には作者の「本気」が感じられた・・・。
描かれるのは、父と娘の「救いのない日々」であり、やがて罪人として「破滅」を予感させる・・・。しかし、結末に向かうに従って見えてくるのは、「家族」 を知らずに育った二人の切ない思い・・・。そして、それまでの「救いのない日々」も納得させられる・・・。この「どうしようもない」、だから 「切ない」という描き方は桜庭作品の「王道」だと思うけれど、この作品は、その「どうしようもなさ」が並外れているな・・・。
最後に描かれるのは、ようやく巡り会った父と子の無垢なる姿・・・思わず泣けます・・・。
確かに、全体の構成や描写にこれで良いのか?とも思う。「未完」?とも感じるのだけれど、この終わり方によって、私は「救われた」としか言いようがない事を正直に認めましょう。
桜庭一樹・・・切ない物語を書かせたら最高であるが、成熟した女性としても、ここまで踏み込むとは思っても見なかった。これからどこへ向かうのか?末恐ろしい人物である。
・「生理的には受け付けませんが。」
まず、六つの章のタイトルがよかったです。だんだん過去にさかのぼっていくという、特殊な展開の本ですから、読んでいるうちに時代がわからなくなったとき、助かりました。そしてそれぞれの章で主人公が違い(うち三つは一緒ですが)、その人物の一人称で語られているところが良くできているなと思いました。
正直言って1・2章は全体がなんだかぼんやりした感じで、そんなに面白いとは思いませんでしたが、3・4章で急展開、ドーンと奈落の底に落とされた感じ。そして5・6章ではつらくなりました。それはあまりにもこの二人の孤独の癒し方が、普通の人とは違う方向に行ったからです。本文の中でも何度か出てきますが、やはり近親相姦というのは人の道に外れたことで、それを認めてしまったら、ホントに何でもありと言うことになってしまいますよね。物語としては面白く読めますが、この二人に同情したり、共感することは決してないです。ただ、「これはフィクション」としっかり割り切った上で、別の次元で読むと、新しい切り口の小説として高く評価できます。
●乳と卵
・「今後が楽しみ」
第138回芥川賞受賞作品。前回候補作『わたくし率 イン 歯ー、または世界』の文体は強烈に個性的で、この文体のままやっていくつもりかな?と思っていたら、テイストを保ったままずっと読みやすくなっている。個々の文章は異様なまでに長いのに、大阪弁モノローグ主体の文章の流れに身を委ねていると、苦労せずに情景やら心象風景やらが頭に入ってくる。見た目と違って読者に優しい小説だ。ストーリーも最後にきちんとカタルシスがあり、作風は180度違うけれども、著者の敬愛する村上春樹並みにサービス精神が溢れている。受賞第1作「あなたたちの恋愛は瀕死」も収録。文章はオーソドックスで大阪弁も登場しないが、主人公の息遣いまで聞こえそうな文章は紛れもなく著者独特のもの。小説を書き始めて間もないのに、すっかり個性を確立していて頼もしい。
・「似ているようで似ていない、他のどこにもない未映子ワールド」
最初の一行から最後の一行まで、一切の無駄も隙もない文章。ぐいぐいと読まされて、本当に新人?とびっくりです。前回の芥川賞で前作が候補になった時、町田康にそっくりと非難する声があったそうだけど……違うじゃん。単に大阪弁の語りというならむしろ谷崎潤一郎だし、作者本人は逃げも隠れもせず樋口一葉ですと言ってるんだし、多和田葉子が好きという言葉も出てくるから、おいくつですか?と本当にびっくりです。寺山修司とか岸田理生の匂いもするし、椎名林檎っぽい気もするけど、もうそんなんどうでもええわ、他のどこにもない、古そうでいて新しそうでいて、本当に凄い新人。凄いです。 たとえばもう、15ページから続く飲み屋街の描写ひとつとっても、饒舌というよりは本質のど真ん中を突くストライク。豊胸手術をしたがる母と、初潮を恐れる娘という設定にしても、その母子と語り手の距離感にしても、三日間のできごとがきっちり並べられた作品構造にしても、全てが満点。今日からファンです。
・「テーマは自分の「からだ」」
受賞で話題となり読んだ「わたくし率・・・」でKOされた。本作はある程度予想していたが、前作よりはるかに読みやすい。とは言え独特のリズムある文体はそのままで、今回も読むごとに世界に引きずり込まれた。なにしろ文章からあふれるエネルギーがすごい。関西弁であるのも必然だと思えてくる。クライマックスでは「魂の開示」のような壮絶なシーンが繰り広げられるが、それが面白いのなんの。卵、卵細胞、卵子、そしてメタファーとしての玉子をツールにつながる。性徴に戸惑う娘と豊胸しか頭にない母親。思春期の女の子はもちろん、体の成長をそのまま受け入れることが難しかった男性にも大いに共感できるだろう。併録の作品は、これまでの2作と違い頭にすっと入って来ず短いのに手ごわい印象だった。
・「テンポの速さ」
いいと話題なので、手にとってみました。一文の中で、これでもかという程、次から次への描写が書かれていて、テンポが速いので読みやすかったです。しかも、関西弁がより一層、物語の流れの速さをうながしているような感じがします。そして、この作者さんは、前回の「歯」の事もそうですが、実際に経験した事柄などを、文章の中で生かしてあると思いました。物語に結論というものがなく、普通なら一体なんだったんであろうかと思うところを、読後何も思わずすっきりと終わったという感じにさせるのもこの作者ならではの魅力だと思います。次に出るのが楽しみな作家さんです。
・「ちちとらん」
Microsoft Word2007で「ちちとらん」と入力して、変換ボタンを押すと、「父と蘭」と出るところ、「ちち」は「乳」であり姉巻子の豊胸手術、「らん」は「卵」であり巻子の娘であり同時に「私」の姪でもある「語らない」「筆談少女」緑子の、いわゆる卵子と精子が結びつく準備体制が整った女体の神秘・初潮を描き出す、シンガー川上未映子の芥川賞受賞作。 饒舌であり、かつまた大阪弁の面白さ、悲しさ、喜びを納める手腕は前作を凌駕するゆえ芥川賞という事になったのかどうか知らねど、途切れない、長く続く文章の続き具合の心地よさに、思わず脱帽、荒唐無稽の純日本文学のときめきに新たな国民作家の誕生!という掛け声しきり。日本文学を海外に翻訳本で出版する傾向が多い昨今、どういう風に訳するのやら、今からもって超心配するのは余計なお世話。 このお話の最後の最後、あの語らない少女緑子が、母親に向かって一気にしゃべりまくるその親思いの言葉の端々に我々読者は、涙、涙、ああ涙。
・「なぞなぞ勝負」
女の子が森や山で出会ったライオンやへびやサイになぞなぞや早口ことば、しりとりで勝負を挑んで「食べられちゃう」危機を脱するお話です。
子どもがお友達に借りて全部読んでしまったのに買ってくれとせがんできた本です。そんなに面白いのかと読んでみましたが、確かに子どもはこういうの大好きかもしれません。
なぞなぞのオチはかなり面白い、笑えました。誰かに出してみたくなります。
・「3話とも賢い女の子の勝利!」
2歳の子供のお気に入りです♪開いたページ毎にさし絵がありますので小さい子でも退屈しませんし、しかも3話入りとお買い得(^^)
女の子が山できのこを取ったり、洗濯をしてたりしてる時に出会う自己中心的な動物とのやりとりが面白くてたまりません。
「なぞなぞライオン」はズルいライオンに食べられそうなところをなぞなぞで勝負!「ヘビははやくち」も食べられそうなところを早口で勝負!「しりとりなサイ」は細い山道を決して譲らないサイとしりとりで勝負!
結局女の子が勝ってしまうので、小さな読者にとっても小気味いい終わり方だと思います。
・「なぞなぞでピンチを切り抜ける女の子」
森できのこを取っている女の子がライオンが襲われますが、危機一髪なぞなぞで切り抜けます、その他 へびやサイからはどうやって切り抜けたのでしょうか?絵本より、ちょっと字が多くなった本です。
・「不思議な魅力がある本です」
あまりにも評判が良かったので、手に取りました。前評判がいい本の場合、期待しすぎてがっかりするケースもよくありますが、正直言って評判以上におもしろかったです。
第一の魅力は登場人物。ホームレスに憧れる男性、アイドルを一途に愛し、応援し続ける男性、「なんとなく」カメラマンになりたいと思っているフリーターの女性、悪者になりきれない小心者のギャンブラー、売れない芸人に恋して上京した女性など、ちょっと社会からはみ出した感じなんだけど、自分の心の片隅にも住んでいそうな人たち。さえないけれど、自分らしく生きようとする彼らの純粋な姿に、ある時は笑わされ、またある時はしんみりさせられます。
第二の魅力は、劇団ひとり氏の人間観察力とそれをユニークかつ適切に表現できる筆力ですね。頭の中にイメージは浮かび上がっても、それを実際にことばで表すことはとても難しいことです。本業でもないのにこのレベルのものが書けるのはすごいと思います。
第三の魅力は、意外性のあるプロットと人物のつながり。読めば読むほど、「もしかしてこの人は…」という発見がありそうです。
そして何よりも、各登場人物へ向けられた温かいまなざしが、すがすがしい読後感を誘います。「自分は自分なんだから、そのままでいいんだよ」と背中を押してもらえた気がします。
・「すっかりファンになりました。」
もともと劇団ひとりさんは好きでしたが、この作品には驚きました。どうも、「芸能人が書いた本」みたいな冷めた感覚が心のどこかにあるようで。
この作品、1日で読みきりました。本当に、この本大好きです。これはずっととっておきます。文章も読みやすく、心情の描写も素敵です。すごい才能あると思います。
是非!あらすじを読まずに、すぐ作品に入っていただけると良いです。
心にじんわりきますし、「ここはこうだったのかっ!」ともなるんです。
自分の中の傑作本の上位です!
ぜひドラマ化してほしいです。
・「登場人物のつながりが絶妙」
読む前はいわゆる「芸人本」と思ってあまり期待していませんでしたが、読み始めると非常に面白くて一気に読んでしまいました。それぞれの章で主人公が異なり、それぞれの内心が描かれています。面白かったのは、それぞれの章の主人公がつながっているという点でした。つながりが絶妙で、最後の方は、前の登場人物がどこで出てくるのだろう、と楽しみにしながら読みました。芸人が書いたとは思えないほどの名作であると感じました。
・「ダメ人間から目が離せない」
ホームレスに憧れる男、アイドルオタク、頭の悪そうなフリーター女子、ギャンブル中毒の男、売れないお笑い芸人を好きになった女の子。世間的にはダメ人間に分類され、本人は大真面目だが傍からみると滑稽という人たち。劇団ひとりのコントなどは彼らの真剣さゆえの滑稽な部分を表現して笑いを取る。だが、小説では彼らの内面を中心に描いている。傍からみると笑えていたダメ人間たちだが、真剣に生きて思い悩むひとりの人間として浮かび上がってくる。
いきなりこのレベルの短編集が書けるとは、芸人にしとくのはもったいない。ベストセラーになるのも頷ける内容だ。ぜひ小説家に専念して欲しいと本気で思う。
・「思わぬ拾い物と言うべき、いとおしい一冊。」
驚いた。 そのナイーブで自意識過剰な感情表現の豊かさ。 お笑い芸人としての、類まれなユーモアとペーソス。 社会の片隅でみっともなく生きる、名もなき人々へのシンパシーと 優しい眼差し。 ミス・ディレクションや、時系列をずらしたレトリックを散りばめた "物書き"としての力量の確かさ。 各エピソードのラストの、余韻の味わい深さと暖かさ。 正に、切なくていとおしい、いつまでも手元に置いておきたい一冊。 劇団ひとりが、チォン・ユンファに見えてくる(笑)。 恩田陸同様、次回作へ期待大だ。
・「伊良部総合病院の神経科はなぜ空いているんだろうか?」
まさに「患者さん、いらっしゃーい!」の世界だ。本書は、第2弾『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞した奥田氏の「伊良部シリーズ」の第1弾。順序を逆にして読んだせいか、こころなしか伊良部一郎神経科医の奇形な言動ぶりにはまだ「抑制」が効いているような印象である。それにしても、本書で扱われている神経的・精神的症状に悩んでいる人は多いのか、「なるほど、そういう症状もありそうだ」と思えるものばかりであった。
精神科医は患者の症状を丹念に聴きそれに応じた処置を講じるのであろうが、この伊良部医師はカウンセリングを全く信用しておらず、患者には想像もつかないきわめて大胆な治療法を自ら実践してゆく。そこに「迷い」や「躊躇」の念は皆無である。「伊良部の精神科医も天職だ。人を深刻にさせない天性のキャラクターだから」(278頁)という文章にはまったく同意する。この医師と付き合っているうちに、自分が抱え込んでいると思っている症状や悩みそれ自体が、もしかしたら「馬鹿らしい」とみなせるようになるかもしれない。それを伊良部医師が「計算」しているとはとても思えないのだが。
さて本書も第2弾と同様に計5作品が所収され、多様な症状をもった患者が「地下1階」の神経科を訪問する。総合病院であり外装はそこそこ綺麗なのだから、本来は患者でごった返す状況が予想できるはずだが、この神経科を訪問する患者数はきわめて少ないようだ。訪問患者もあらかじめ選抜されているかもしれない。伊良部医師と対等に付き合うだけのエネルギーと覚悟が要求されているように思うからだ。ここを訪問した時点で症状はすでに治っているんだろうか。本書では伊良部一郎医師の素性や性格が克明に描かれており、かえって「逆読み」効果によって彼により多くの親近感を抱くことができた。伊良部医師を生み出した奥田英朗氏の作家という仕事もおそらくは天職なのだろう。注目の1冊である。
・「まさに怪作」
まさに怪作である。この作品は、すごく好きな人と、全く受け付けない人の二通りにわかれるとおもうが、私にとっては「ハマッタ」作品である。とにかく、主人公の精神科医・伊良部のキャラクターがよい。ひたすら笑わせる小説でありながら、泣かせる(?)ツボをおさえている。作者の代表作「最悪」「邪魔」とは、全く違った路線の作品でありながら、文章展開のうまさは両群の作品に通じるものであり、本作品ではあらためて作者の才能を痛感させられた。
この作品では惜しくも受賞は逃したが、続編の「空中ブランコ」で見事直木賞を獲得した。
・「読者に「自分にあるかも!」と思わせる本」
自意識過剰、神経過敏な現代人が、ちょっと踏み外すと、ここに出てくる「患者」になってしまう。
思わず読んでいて「自分を気をつけなきゃ」と思わせるような、ちょっとした現代人の心の狂いを、おもしろおかしく指摘してくれます。
ぜひ現代人のみなさんに読んでほしい。この本を読めば、自分の心の病が重病になる前に気づけるかも。
・「これで筒井康隆の後継者は決まり。」
筒井康隆先生も齢を重ねられ、往年のパワーがなくなった現在、ああいう小説を書ける作家を探していたが、やっと見つけた。筒井康隆ほどのパワーはまだないが、いずれ筒井康隆をしのぐであろうことは奥田英朗のほかの作品を見ると、想像に難くないところである。
「インザプール」映画は見ていないが、TVでアベちゃんがやっているのを少しみた。そのイメージで読んでいたら、伊良部の体型がまったく違うではないか。それを知ってからというもの、伊良部が出てくるたびに米米クラブのジェームス小野田がちびになった姿が脳裏に浮かび続けている。私の中で、伊良部がジェームス小野田のような格好で「ぐふふ」と笑うのだ。もう声まで聞こえてきた。あぁ、私も伊良部総合病院へ急がねば。
注意点:本書は電車などで読まないように。
・「現実にこんな医者がいたらどうなるんでしょうね・・・(笑)」
職場の人から「これ面白いから読んでみなよ」と薦められて読んだのがこの作品と出会ったきっかけです。
そしたら見事なまでにハマリました(笑)
患者さんと神経科医「伊良部先生」とのやり取りが面白くて、気がついたら数時間で読破。あまりに楽しい内容にシリーズ作の「空中ブランコ」「町長選挙」にまで手を出しました。
ただし伊良部シリーズを世に知らしめたという意味で、まずはこの本から読まれるといいでしょう。そうすると続けて「空中ブランコ」も読みたくなると思います。
現実に伊良部みたいな医者が存在したら、日本の医療制度も違う意味?で変わるかも知れませんね(笑)
・「日常に疲れた人に」
小説を読んでこんなに笑ったのは久しぶりだ。人間みんなどこか可笑しなところがあるよね、というユーモアに溢れた人間賛歌。
飛べなくなった空中ブランコ乗り。尖ったものが苦手な先端恐怖症のヤクザ。義父である教授のヅラをはがしたくなる医師。ボールが投げられなくなったプロ野球選手。過去に書いた小説と同じ小説を書いてしまうのではないかと、気に病む女流作家。
それぞれの登場人物たちは、自分がどこかおかしいのではないかと思って伊良部総合病院の神経科のドアを叩く。しかしそこにはそんな患者たちよりもっとおかしい精神科医、伊良部がいるのである。
丸々と太った体、子供のような言動。伊良部に振り回されるうちに、患者たちはやがて、まわりの人たちも自分と同じような悩みを持っていることに気づく。こう書いてしまうと陳腐かもしれないが、実際狭い世界にいると、本当ならこだわらなくてもいいような部分に固執してしまうのはよくあることだ。僕自身もしばしばそうなる。
このおかしな医師、伊良部はそんな行き詰った人たちの視界をほんのちょっと広げてくれるのかもしれない。日常に疲れた人に、ぜひおすすめしたい一冊である。
・「医学博士の伊良部一郎はもしかしたら「人間博士」かもしれない!?」
伊良部総合病院の神経科医である伊良部一郎を主人公とする人気シリーズ第2弾。神経科医を軸に組み立てた作風はとても斬新で、表題作の「空中ブランコ」を含む計5本の作品はいずれも面白く(個人的には、特に「ハリネズミ」と「義父のヅラ」が実に印象的であった)、思い切り笑わせてくれるものもあれば、思わずホッとするものなど、味わいに富んだ作品ばかりである。本当に一気に読ませる内容・文体であり、文句なしの「星5つ」の著書である。
神経科医を主役とした作風それ自体に最初は違和感を抱く読者もいるかもしれないが、軽快な話の展開構成に自然と本書の魅力に惹きこまれるのではないか(「趣向」が合わないと感じる読者もいるから、本書の評価は割れるだろう)。誰もが神経的・精神的な「病」を抱えているといっても過言ではないこの現代社会において、本書に登場する奇抜な思考・言動を惜しみなく披露する伊良部医師は、一服の「清涼剤」的な存在感を十二分に醸し出している。あまりの荒唐無稽さに、患者のほうが「自分こそ医者ではないか」と思わせるくらいだ。こんな医者がいるとは思えないが、どこかにいてほしい類いの医者だ。治療していないようで実際のところは治療している。とにかくこの医師は「ただもの」ではない。白衣の名刺に付けられた「医学博士・伊良部一郎」の「医学博士」の隣に、「人間博士」と付け足したい気分である。
本書のメッセージは、やはり「(とくに)心の病を治すのは自分である」ということになろうか。伊良部はそれを大胆な言動を通じて遠回しに患者に気付かせているのだ。なお「人間の宝物は言葉」であり、「その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう」(281頁)という最後の作品「女流作家」における女性作家の言葉は、まさに作者自身のそれであろう。伊良部病院の神経科が「地下1階」にある理由も私には理解できた。伊良部医師の今後の活躍が楽しみだ。
・「前作よりもやわらかく」
伊良部総合病院地下にある神経科。訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。シリーズ第2弾。
その患者たちの行動は確かに異常なのだが、ある程度は共感できてしまう。私たちが誰もが少しは抱えているであろう異常を、エスカレートさせたにすぎない。
そして精神科医である、主人公。その破天荒な行動に、患者は翻弄される。P193「無駄だって。話して治るなら、医者はいらないじゃん」このセリフは、すごいなあ。
ああ、あるある……ねーよwみたいな読み方ができると楽しい。主人公にいらつくともうアウト。フィクションと割り切れないと、かなり不快でしょう。
前作よりも、周りの人々との絡みが多くなっている。シニカルな感じが少しだけ薄れ、ハートフルな要素も入ってきたように感じた。その分深みが出ていいと思います。私は前作よりも好きです。「女流作家」には感動しました。
・「単におもしろいだけではない」
現実的には、こんな精神科医がいるわけがない。しかし、伊良部総合病院を訪れる患者たちの抱える病気は、現代の日本が抱える問題そのものである。程度の差こそあれ、自分自身にも思いあたることがある。そう考えると、笑ってばかりはいられない。 本の構成は、5編の短編集であるが、すべてに、精神科医の伊良部が登場する。5編とも上手くまとまっており、話の展開も本当におもしろい。
・「マユミちゃんの意外な一面」
「女流作家」に出てくるマユミちゃんの意外な一面に驚かされた。案外、直木賞受賞の決め手は、このマユミちゃんの以外な一面にあったのかもと思わされた。
●町長選挙
・「理屈なんてないのだ」
奥田英朗の作品が好きだ。読んだ後爽やかな気分になれるから。こんなことはありえない。でもいいのだ。小説なんだから。
伊良部医師は相変わらずめちゃくちゃな人で、引っ掻き回したまま去っていく。「物事、死人が出なきゃ成功なのだ。」と、バカボンのパパのような台詞を吐いて。何故か納得してしまう。説得力なんか全然ないのに。なんとなく元気が出る本だと思う。
・「『イメージ』の世界の人たち」
2006年4月15日リリース。初出はオール讀物の平成17年1月号から平成18年1月号。伊良部+マユミシリーズの第3弾。
今回の作品は限りなく具体的に現実にいる人3人(ちなみに誰が読んでも、渡邉恒雄・堀江貴文・黒木瞳だ)と伊良部+マユミを対峙させるというかなり実験的な試み(そんなにたいそうな物でもないのかもしれないが・・・・)と、別空間へ伊良部+マユミを送り込んだらどうなるか、といった試みに意図的に取り組んだ感じだ。その辺が小説手法にさまざまなアプローチを試みている奥田氏ならではのモノになっている。
本作を読了して感じたのは、人間というのは自分のイメージを創作し、そのイメージに沿って生きようとするモノなのだなということだった。そういう行為というのは人間のような頭脳を持ったものしかしないだろう。それが他の動物には決して生じないようなストレスを産んでいるのだろう。だから伊良部のように自分のイメージを創造しないタイプの人間は疲労しない。だから伊良部は子供のようなのだろう。
見ず知らずでなく、マスコミに多々露出している人たちは『イメージ』の世界の人たちだ。言ってみればそれは彼等が外の世界に向けて発している『偶像』に過ぎない。吉田拓郎の『イメージの詩』の歌詞が頭を過ぎった。
・「シリーズファンなら大変堪能できる作品」
読売渡辺会長、ホリエモン、黒木瞳のみなさんをモデルにしたとしか考えられない3編と、離島に2ヶ月だけ(おとうさんにポルシェを買い換えてもらう条件で)赴任して町長選挙に巻き込まれる一編。
この本から買うのではなく、他ので伊良部ファンになってから読むなら、物凄く楽しめる。これから入っても、ファンになれない。シリーズ物の中の、変り種という感じだ。
いわば、スマップが小学生やおじいさんになってやるコント。釣りバカの江戸時代の一編。カップヌードルの「しょうゆ・カレー・シーフード」以外の変り種。たまにならこういうのもいいか、という感じ。やや書き方が荒いけれども、今の奥田の筆力で、きちんと形にはしている。
ただし、町長選挙は、かなりの傑作で、最後の方には涙が出てくる。
・「さすが・・・・・」
さすがは奥田英朗といったところ毎度おなじみ伊良部ワールドが炸裂し、前作や前々作にも遅れ劣らない仕上がりになっている
最近発売された新作小説の中でもずば抜けて面白い作品になっていると思う
奥田ファンにはかなりオススメの本!!
・「3作目にして、一番」
一作目、『イン・ザ・プール』は、設定の面白さに惹かれ、二作目、『空中ブランコ』で、ちょっと飽きた私でしたが、三作目の『町長選挙』は、私の中では一番の秀作でした。
現実に生きている人を、ここまで堂々とモチーフにするところがすごいです。それにより、本人を想像させ、よりリアルさを感じさせます。それが面白かったのかもしれません。
●阪急電車
・「ほんのひととき交わる人生」
阪急今津線。全部で8駅。片道たったの15分という電車を舞台にした短編連作です。出会って恋が始まる男女のすぐ側には、元婚約者の結婚式で闘ってきた女がいる。彼女が降りるのを見送るカップルは、身勝手な暴力男と彼の横暴に耐えている女。偶然乗り合わせている彼らにはそれぞれの人生があって、電車に乗っているわずかの間に、彼らの人生がほんのいっとき交わる。この今津線というのは作者が住んでいるところだそうで、ツバメの駅なども、本当にあるそうです。「空の中」「海の底」のような大事件が起こるわけではなく、ほんの日常の一部を描いたほのぼのとした雰囲気の本でした。
・「ほんわか人生物語」
図書館シリーズも好きだったけれども…。個人的には『阪急電車』の方が好みだったかも。
いろんな人の人生を運ぶ電車だからこそ多々の出会いがある。彼を寝取られてしまった女性、『生』の字がご縁で付き合うことになったカップル、高校生達の話しから彼と別れる決意をする女性等の人生が交錯して行くお話。
身近でも何処かでありそうなお話なだけに共感出来ます。そして、恋愛問題であったも後くされなくサッパリなので読んでいても爽やかでした。物語の中の数多の出会い素敵でした。
・「電車は「人」を乗せて走っているんだよ。」
読んでいる間のわくわく感、読後の爽快感となんとも言えないあたたかさを じっと噛みしめる。 今、JRと近鉄が同程度に最寄の駅の沿線に住む身には、阪急は魅力的な ブランド電車的存在だ。学生の頃はよくお世話になった。 作品に登場する華やかな大学に通う友人の下宿に、ちょくちょく遊びに行ったり、 梅田まで遊びに出たり。本当に懐かしい。 ここのところ、万城目さんの京都、奈良、森見さんの京都といい ご当地ソングならぬご当地小説に恵まれて、今また『阪急電車』だ。 やはりその街の空気や微妙に違うそれぞれの街のことばを知るものにとっては、 作品の息づかいが生な感じで、とても近しく嬉しい。
片道15分の阪急今津線を舞台に、アトランダムに選んだかのような登場人物たちを 絶妙に、ジグザグに配しつなげていく話は、実に巧妙でちらりちらりと見かける あの人という感じで、すんなりと物語に導かれる。 同じエリアで行動する人を、リアルな世界で私たちも何人も知っているはずだから。 その登場人物たちが、ある瞬間、微妙な連帯感で切り結びことばを交わし、近づく。 あるいは、目にした情景、耳にした会話から、ふと我が身に深く入ってくる思いに 突き動かされていく。 わずかの時間に、人は多くのことを受け取り、消化あるいは昇華している。そのことが とてもリアルでしかもちっとも嘘くさくなく受け取れる。
登場人物のうち、さまざまな年齢の女性が、その年齢なりに、それぞれすごく魅力的。 みんな自分の「今」をいっしょうけんめい見つめて、考えて、案外素直に聞く耳も 持ち、なにより前へ進もうとする気持ちが読み手まで元気づけてくれる。 わずかなつながりでも人と人との会話のあたたかさやまっすぐなことばの 有難さに、ぐいぐい引かれて読んだ本。
・「書きたいものを書く潔さ」
関西の私鉄「阪急電鉄」を舞台にした全16編の連作短編集。
本屋で見かけた時には思わず「おぉ!」と声を上げてしまった。まさか関西を離れて阪急電車の文字を見るとは思わなかった。しかも有川浩の小説。
阪急電車と言えば、普通は神戸・三宮と大阪・梅田をつなぐ神戸線が最もメジャーとなる。私が神戸に居たころ最も使っていた神戸線はほとんど出てこないが、舞台となる阪急今津線には懐かしい思い出がいっぱい。作中で紡がれる自然な関西弁も情景が思い浮かびます。
見事なつながりを見せる連作短編は、電車という限られた空間の中で輝きを放っていた。
他のレビュアの方が素晴らしいレビューを書いてくれているので、私は少し違う目線で。可愛らしい表紙デザインも非常に好感を持てるが、個人的に嬉しかったのはカバーを外した時に見える本体カバーの色。阪急のカラー、マルーンですよね!懐かしいなあ。カバー最初と最後は作中のスケッチと思われる絵。遊び心が利いた、非常に魅力的な一冊です。
恐らく、阪急電車に、しかも今津線に惹かれて本書を手に取る人は少ないように思える。しかし、ひとたび読み進めれば、たとえ阪急電車に馴染みがなくとも物語に引き込まれるはず。愛する地元の風景を魅力的に描ききってくれたその筆致に感嘆を覚えるとともに、書きたいものを書く。その潔さに敬意を表したい。今年も早速素晴らしい小説に出会えました。
「下らない男ね。やめておけば?苦労するわよ。―はい、別れるだけでも一苦労でした。でも、頑張って別れてよかったです。ありがとう、おばあさん。 もし、もう一度あの老婦人に会えるならそう言いたかった。中学のときに叱られたあの老人にも、今会えるならきっと今度はお礼が言えるだろう」本文127ページより
・「ジモティですが」
駅の本屋さんに並べられていると、阪急沿線のガイドかなと思って買ってしまう人がいるかもしれませんが、通勤時間の暇つぶし以上の充実度です。一駅一話完結の短編集なのかなぁと思っていましたが、複数のストーリーが同時進行でつながりながら展開していき、折り返しできちんと消化してくれるので、読後感もさわやか。最近のベストセラーの大部分を占めていた細切れ完結タイプではないので、久々に頭を使いながら読める本が登場したと思います。それでいて純文学ほどの硬さもなく、推理小説を読むときほどの記憶力も必要ではなく、イマドキのリアリティーあるエピソードがちりばめられているので読みやすいです。ハイソなお阪急といわれていますが、、ブランドに高級ランチ・・・外はご立派でも言動でボロが出てしまう似非セレブおばちゃんがいたり、電車の中でうるさくてマナー違反かなぁと思う女子高生のほうが実は他人にたいして優しかったり・・・
もちろんつらいエピソードがある人もいるのですが、そのあときっとこの人は立ち直れると思わせる救いが残っているので悲壮感もありません。
個人的には、孫を連れたちょっとおせっかいな良識的なおばあちゃん(年齢的にはまだおばさん)のキャラが秀逸だと思います。
また地元の人にとっては、沿線の街の描写がよくわかって楽しく、テレビに自分の知っている街の風景がうつったときのようなうれしさがあります。
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