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▼読んでみた本(15):セレクト商品

風をつかまえて風をつかまえて (詳細)
高嶋 哲夫(著)

「オススメですよ。」「ネタの新鮮さに価値がある」


赤い指 (講談社文庫)赤い指 (講談社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)

「東野圭吾らしい。」「やられました、、」「東野圭吾らしい作品」「せつないです」「壊れた家族の描写で、良質ミステリーに」


芙蓉の人 (文春文庫)芙蓉の人 (文春文庫) (詳細)
新田 次郎(著)

「千代子夫人は憧れの女性」「買ってよかった」「まさに命がけの献身」「勤務の経験を活かして執筆」


あの日にドライブ (光文社文庫)あの日にドライブ (光文社文庫) (詳細)
荻原 浩(著)

「俺はタクシードライバーだ!」「30過ぎの人間にはたまらない話ですね」「人生は後悔の連続」「40前後の男性は共感できるはず」「誰もの頭に一度はよぎる“人生のやり直し”」


栄光なき凱旋 上栄光なき凱旋 上 (詳細)
真保 裕一(著)

「日系人の視点から書いた祖国日本との戦い」「さすが真保裕一!」「真保 裕一、新境地を切り開く」「戦時中のアメリカ日系移民の苦悩を描写」「彼らの勇気が仇に」


栄光なき凱旋 下栄光なき凱旋 下 (詳細)
真保 裕一(著)

「映画化を強く希望」「さすが真保裕一!」「彼らの勇気が仇」「戦時中のアメリカ日系移民の苦悩を描写」「日系人の視点から第二次世界大戦を描いた力作」


神の箱舟神の箱舟 (詳細)
高野 裕美子(著)


四度目の氷河期 (新潮文庫)四度目の氷河期 (新潮文庫) (詳細)
荻原 浩(著)

「設定も凄いが、何はともあれ筆力が凄い」「壮絶かつダイナミック」「男の子が男になるとき」「つかみとった答え」「欲を言えば、もっと“萩原節”があってもよかった」


楽園 (新潮文庫)楽園 (新潮文庫) (詳細)
鈴木 光司(著)

「古き時代の砂漠から始まる」「私にとって最高の本の一つ」「懐かしくさせる壮大ロマン」「心にホワっと残る作品」「これがこの世の楽園か!」


ブラバン (新潮文庫)ブラバン (新潮文庫) (詳細)
津原 泰水(著)

「ブラバン経験者は一読を。」「現在からみる過去と、過去からみる現在」「過去の自分と出会う本」「美しく見える過去と、人それぞれの現実」「他片と桜井が表紙」


借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫) (詳細)
垣根 涼介(著)

「前作よりもひとまわり深みと重みを増した人間ドラマの数々」「大切なのは矜持、そして生き方」「女性の心理描写がうまい・・・」「爽やか上等!ただしやや男子寄りのバイアスつきの。」「続編が楽しみ」


孤高の人 (上巻) (新潮文庫)孤高の人 (上巻) (新潮文庫) (詳細)
新田 次郎(著)

「何度も繰り返して読んでいる本です。」「ヒマラヤがゴールだったのに…」「「孤高」とは」「孤高の人生」「加藤文太郎というマイルストーン。」


孤高の人 (下巻) (新潮文庫)孤高の人 (下巻) (新潮文庫) (詳細)
新田 次郎(著)

「孤高の人」「フィクション?ノンフィクション?」「悲しき最後」「登山者は読んでみて」


ガールガール (詳細)
奥田 英朗(著)

「ガールの深層心理を読み解いた納得エッセイ。奥田氏の眼力に敬服!」「痛快」「女心」「30代の女性は必読な1冊。」「これこそが、奥田英朗の一番の傑作ではないか。女性の描写力の凄さにも、脱帽!」


八月の博物館 (角川文庫)八月の博物館 (角川文庫) (詳細)
瀬名 秀明(著)

「「瀬名秀明」と言う一人の作家の姿」「不思議なメタフィクション」「壮大なロマンを感じさせる一品」「最後の同調」「どうしても」


ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) (詳細)
真保 裕一(著)

「作者の技量の結実した作品集」「「思わず二度読み」」「芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊」「もっと早く手に取るべきだったと後悔」「しーんみりと」


強力伝・孤島強力伝・孤島 (詳細)
新田 次郎(著)

「極めて現実的に生々しく描写された人間の感情,行動に、背筋や首筋に悪寒を感じながら読み進みました」「筆が弱い」「「実直」、その何ものでもない小説」「ときには”仕事”の厳しさと正対してみよう。」


ボトルネック (新潮文庫)ボトルネック (新潮文庫) (詳細)
米澤 穂信(著)

「苦すぎるんだけれど絶妙な味わい」「間違い探し」「とんちんかんなレヴュー」「思春期の男の子が痛ましい思いをする話」「爽やかに苦い・・・・だろうか。説明が難しいです。」


僕たちの戦争 (双葉文庫)僕たちの戦争 (双葉文庫) (詳細)
荻原 浩(著)

「これぞ荻原流!ユーモアと哀感で戦争を見る」「読み応えあり!」「共通の衝動」「昭和の少年と平成の少年が入れ替わったら・・・」「荻原浩オソルベシ!な一冊でした!」


誘拐者 (文春文庫)誘拐者 (文春文庫) (詳細)
折原 一(著)

「良くできた作品だと思いますが描写が・・・」「折原作品でも1,2を争う傑作だと思ってます」「ワンパターンですね」「面白いが、グロテスクな描写の多い作品」「母の愛が引き金の狂気」


みんなのなやみ (新潮文庫)みんなのなやみ (新潮文庫) (詳細)
重松 清(著)


リセットリセット (詳細)
垣谷 美雨(著)

「人生のバイブル」「むやむやもリセット・・・」「おもしろかった」「面白い!」「幅広い年代の女性に自信を持ってお勧めしたい本」


感染列島 パンデミック・イブ感染列島 パンデミック・イブ (詳細)
吉村 達也(著)

「タイトルや期待への瞞着。」「物足りなかったです!」「儲ける為だけの小説」「お粗末」


黄色い目の魚 (新潮文庫)黄色い目の魚 (新潮文庫) (詳細)
佐藤 多佳子(著)

「たった一人を」「高校生の時の自分でなく、今の自分でも満足できる作品!」「素直に、自分と向き合わせてくれる」「絵は描く人と見る人がいる。」「マジ」


懐郷 (新潮文庫)懐郷 (新潮文庫) (詳細)
熊谷 達也(著)

「高度経済成長期、地方で暮らす女性たちの切ない物語」「3丁目の夕日とは一味違う昭和の物語。」


▼クチコミ情報

風をつかまえて

・「オススメですよ。
高嶋哲夫さんってミッドナイトイーグル (文春文庫)とかメルトダウン (講談社文庫)とか割と激しい小説のイメージだったけどこの作品は家族再生、地域再生がテーマでハラハラドキドキ度は少ないけど心に響く作品です。町議とかホテル経営者とか「嫌な人たち」の描き方がちょっと上辺だけっぽく感じましたが。。。オススメですよ。是非ご一読を。

・「ネタの新鮮さに価値がある
北海道の片田舎にある鉄工所が風力発電の風車を作っていく、というのが話の主筋で、それに町を飛び出して7年ぶりに帰郷した主人公が加わる。町や大学の妨害や助け、幼馴染との恋愛話、町一番の美人と言われる姉、が話のスパイス。風力発電ネタの小説、というのは読んだことがなかったのでそれなりに楽しめた。残念なのは起承転結があまりにも教科書どおりに行われてしまって、話に意外性がなかったこと。ネタの希少性によって価値を持っている1冊といえる。

風をつかまえて (詳細)

赤い指 (講談社文庫)

・「東野圭吾らしい。
今の日本の家族の姿を思い起こすような描写にたびたび腹が立ち、苦しくなりました。途中あまり辛くて泣きそうになりながら、最後の展開には少々びっくりして2度読み返しました。加賀恭一郎みたいなまともな刑事がいて良かったと。さすが、加賀恭一郎。今までの作品の中で一番かっこいいと思いました。少子化、高齢化問題に一石を投じた作品。考えさせられました。親の愛情は海より深く空より高い。これを肝に銘じたいです。春美がいてくれて救われました。。

・「やられました、、
読み始めはむかつく感情が続き、なんかいやな感じでしたが最後の結論にやられました。さすがです。

・「東野圭吾らしい作品
以前から読みたかった作品がようやく文庫になったので早速読みました!

さすが東野圭吾…と思える作品です。 物語自体は特に斬新な部分はないし、意外なトリックがあるわけではありません。今回の作品は、ジャンルで言うと「推理小説」というよりも「人間ドラマ」といった方がいいのかもしれないくらい。でも、「人間」を描く力はやっぱり東野圭吾ならではですね。今回も、どこにでもいる平凡な人間の“闇”の部分、そして“家族”…特に“親子”の深さについて考えさせられる物語でした。 たたみかけるように展開されるクライマックスでは、いつの間にか目頭が…

主人公(と言っても彼からの目線で描かれた話ではないのですが)の加賀恭一郎は、私にとって湯川先生よりも馴染みの深い東野作品の主人公。「眠りの森」などなど、彼が出ている作品は印象に残っているものが多いんですよね。今回の作品は特に、彼の作品を今まで順番に読んできて彼がどういう人生を歩んできたか知っているファンなら、更にこの作品の醍醐味を味わえるのではないかと思います。

ラストシーンが素晴らしいのも東野作品の特徴。 イイところ(イイ台詞)でスパッと潔く物語を終える彼の特徴が大好きなんですが、それは今回も健在で嬉しかったですね。

・「せつないです
 家族の崩壊、断絶、老人介護。今は家族みんなが元気で、仕事も順調、子どももすくすく成長しているような我が家では、なんだか他人事のような気がしてしまうが、いや、決して他人事なんかではない。どこの家庭にも起こりうる、いまや「当たり前」のできごと。何か特別なことがあったわけではなく、日々のちょっとしたひずみの積み重ね・・・それがいつしか、大きな歯車の狂いとなって、家庭を崩壊させてしまう。どこで狂い始めたのか、当事者にはわからないことが恐ろしい。

 事件は小学生の女の子が殺されるところから始まるが、これもまた、子を持つ親としては読んでいて苦しかった。被害者の両親の心情は、彼らの描写そのものよりも、経験浅い松宮刑事の描写から、より伝わってくる。どうしてこんなことが起きるのか?その事件の不条理さにだれもが怒りを感じるだろう。こういう事件は犯人を逮捕しても、虚無感が拭えないに違いない。たいていは”悪戯目的”などという許しがたい理由だからだ。こういった事件そのものも、どうしたら減るんだろうか、そんなことまで考えてしまった。

 今回は、事件そのものの推理よりも、加賀刑事の人の心の奥深くまで見通す洞察力、そして、深い哀れみの情。この人の人間性の奥深さを味わえる作品になっていますね。鋭い推理も好きだけれど、違う側面から加賀刑事の魅力を引き出している本作のようなものも大好きです。「刑事の仕事は、真相を解明すればいいというものではない。いつ、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ。」この台詞に、加賀刑事の人柄がよく現れていると思います。

 東野作品の好きなところは、どんなにつらい話でも、最後は救いがあるところ。どんな罪を犯しても、まだ立ち直る余地があると思わせてくれるところ。現実はそんな甘いものではないのかもしれません。だけど、小説の中くらい、人間捨てたもんじゃない、と思いたいじゃないですか。

 ラストは、加賀刑事がほんとに事件を解決できるのか、このまま不完全燃焼なんてことにならないか、といらぬ心配をしてハラハラしましたが、よかった、気持ちが通じて。母の、父の、息子の。家族それぞれの思いが交錯して、家族の絆の深さ、大切さを考えさせられた1冊でした。

・「壊れた家族の描写で、良質ミステリーに
国民的作家ですが、私にとっては初の東野作品でした。読み終えた率直な感想は、「家族って大事だね」というような小学生でも言えるようなものでした。

ただ、この小学生でも分かるような事を理解して実践している人が、この社会でどれだけいるのか、ただ、一緒に暮らしているだけでは、ダメなんだろうという事、いろいろと考えさせられる小説でした。

内容としては、殺人を犯した息子、彼を庇うために素人工作する準主人公の父(昭夫)と、関係が崩壊しているその妻、そして昭夫の母、この4人家族と、刑事2人が対峙し、事件解決に向けて話が展開していきます。

冒頭で殺人事件が発生してしまうので、ミステリーのトリック展開等は物語最後にのみあります。トリックには賛否両論あるようですが、私は望まずして家族の絆を結ぶことが出来なかった、彼らの哀れさを象徴するようで、違和感なく受け止めることは出来ました。あくまで小説なので。

それよりも、崩壊した夫婦、親子の描写が余りに切ない。見て見ぬふりをしていた、家族の不和の積み重ねの結果が、ドラマティックに描かれていました。ミステリーだけに終わらない良い小説なので、星5つ。

赤い指 (講談社文庫) (詳細)

芙蓉の人 (文春文庫)

・「千代子夫人は憧れの女性
中学校の英語の教科書で、野中到の偉業をかいつまんで紹介していた。教師が「日本に数ある野中氏関連の本でこれがもっとも読みやすい」ということでこの本を薦めていた。当時中学生ながら(もう15年も前になるが)自然の厳しさ、それに立ち向かう彼らの勇気に圧倒された。殊に千代子夫人の、なんと強く、あたたかく、美しいことか。「あんな素敵な女性になりたい」---「芙蓉の人」というタイトルをかみしめながら、何度も読んでは、千代子夫人に憧れた。

・「買ってよかった
新田次郎さんの本はもともと好きだけれどこの本には涙が出そうになった。100年以上も昔に重要な任務として冬季の富士山での気象観測を行った偉業が想像を絶します。山を登った経験のある人であればそれがいかに大変だったかわかると思います。なお魅力的なのはその偉業を支えたのが明治女性であったことに爽快な後味を覚えます。

・「まさに命がけの献身
天気を正確に予報するには上空の高いところの気象を観測する以外にないと、民間人の野中到が厳冬の富士山頂での観測に挑みます。まさに明治のプロジェクトX。富士山は当時冬に登山する人は皆無でした。想像を絶する自然の猛威に立ち向かおうとする夫の執念を支える妻・千代子の物語です。

当時の女性は「耐え忍ぶ」ことを美徳とし「夫に逆らう」ことなど許されませんでした。しかし、千代子は極寒の環境で一日2時間おきに12回気象観測をするなど正気の沙汰ではないと危惧し、夫の後を追います。男でも冬の富士登山は危険なのに、足腰を鍛え、またひそかに気象データの取り方を学びました。また、女性は今のような下着もなかった時代。外国の史料を参考に試行錯誤で用意します。そして、とうとう父母、義父母の反対を押し切って登山します。

荒れ狂う富士の猛威のなか、命がけで夫の命を支えゆく妻の愛と献身に感銘を受けました。

これが実際に存在した人であることに感銘を受けます。

また、残された家族や見守る人々の絆や愛情もすばらしい。平易ながら美しい新田次郎の文体もまたすばらしかったです。感動の作品でした。

・「勤務の経験を活かして執筆
平凡社の『太陽』という月刊誌に連載されていたが、単行本なったことを長い間、知らずにいた。読んだのは1974年の春ごろだったように思う。

高山病で身体がおかしくなって、気象観測を続けることがむりなのに頑として下山しなかった野中到の姿に、あらためて明治の人の意志の強さを感じた。

若い時は到の功績を褒めたたえたい気持ちであったが、今は子供たちを残して山頂に向った千代子の心境がよくわかる。

気象庁に勤務されていた新田氏ならではの記録体の文学である。

芙蓉の人 (文春文庫) (詳細)

あの日にドライブ (光文社文庫)

・「俺はタクシードライバーだ!
この主人公、銀行マンを辞めてからタクシードライバーになったが、過去のプライドを引きずってうじうじとしている。タクシードライバーになってから、最初は戸惑ったが、次第に要領をつかんできて、水揚げも増えた。つまり、立派に職務をこなしている。

・「30過ぎの人間にはたまらない話ですね
僕は主人公より6歳程年下(36歳)ですが、やっぱこの年になると多かれ少なかれ、「もしあの時ああしていたら…」と考えてしまうのではないでしょうか。

特に僕は妄想好きだったので、この話は色んな意味で効いたな〜。でも妄想を始めると周りの人は(嫁さんも子供も)みんないなくなってしまう。それでも良いの?と言う話だとおもうんだけど、そう言われてみたらそうだな…みたいな。

それにしても荻原浩の守備範囲の広さには本当に感心させられます。

・「人生は後悔の連続
人間誰しもが人生に対して「もし」を感じているのだなぁと言う事が良く分かります。振り返ってみると後悔の連続で「後悔先に立たず」という言葉を噛締めますが、それに反省しないのが人間であり、その時は、今の行動が後の後悔につながるなんて考えられないのが人間なのです。だから人生は面白く、人生に夢を見る事が出来るのだと思います。誰もが後悔をしながらも、実は一生懸命生きているのだという事が伝る本でした。また、荻原氏独特の軽いタッチで書かれた描写で思わず電車の中で一人で笑ってしまいました。人生について考え始めたら本書を読んで元気をもらってください。

・「40前後の男性は共感できるはず
学生のときにフラれた彼女と今も一緒だったら・・・自分から別れを切り出した彼女と今も一緒に居れば・・・今の会社ではなく、迷っていたもう1社に就職を決めて入れば・・・等々、このくらいの年齢の男性(会社勤めで中間管理職くらいになっているような方)なら、一度は妄想してしまいそうなことが綴られており、小説なのですが、ある意味自分と重ねあわせることのできるドキュメンタリーとして読めました。忘れかけてた切ない気持ちを呼び起こしてくれる一冊。

・「誰もの頭に一度はよぎる“人生のやり直し”
荻原浩は抽斗(ひきだし)の多い作家だ。たっぷり笑えてしみじみ泣けるユーモア小説や人情ものを書いたかと思えば、シリアスなミステリーや哀愁と感動の人間ドラマを書いたりする。 本書はあえて言えば、渡辺謙主演で映画化された『明日の記憶』の系譜に連なる人間ドラマということになるだろう。「直木賞」のノミネート作品でもある。

牧村伸郎は43才。優秀で着実な営業実績とキャリアを持つ銀行員だったが、おととし、上司へのたった一言の諫言がもとでリストラ同然の出向を命じられて、自ら退職する。公認会計士を目指して自宅浪人を始めたが、試験を受けるまでの腰掛のつもりで、3ヶ月前タクシードライバーになった。会社では営業ノルマに追いかけられ、家では特殊な勤務時間のため、妻や娘、息子ともまともに会話ができない。毎日に疲れきり、ストレスから円形脱毛症になってしまった。

彼は、今までの人生の岐路すべてで誤った選択をしたと思いはじめる。「もう一度、人生をやり直すことができたら」、「もう一度、チャンスが欲しい」、「できるなら、時計の針を戻したい」いつしか彼は、自分が選ばなかった道を見てやろうと決心し、やり直しの人生をバーチャルに想像するようになる。あの時違う選択をしていたら・・・、自分の人生はこんな風にはならなかっただろう。---悪い想像はひとつも浮かんでこない。 そして、夢のような過去を辿りなおし、“あの日にドライブ”をして、文字通り夢想した彼が見たものとは・・・。

著者は、ユーモアとペーソスあふれる独特の荻原テイストを醸し出しながら、誰もの頭に一度はよぎるであろう“人生のやり直し”というテーマに真正面から挑んでいる。どうなることかと思って読んでゆくのだが、最後には前向きでさわやかなエンディングに胸をなでおろしている自分がいた。

あの日にドライブ (光文社文庫) (詳細)

栄光なき凱旋 上

・「日系人の視点から書いた祖国日本との戦い
アメリカにおける日系人の視点から第二次世界大戦を描いた力作。自分たちの祖国はアメリカでありながら、敵国人として扱われる二世、三世の葛藤。そして、祖国日本との戦いに自分の子供達を送り出さなくてはならない一世の苦悩。アメリカ人であることを証明するために、あるいは日本に対する憎しみ故に兵士として参戦したものの、いざ日本人と相対した場合、敵兵である日本人の価値観に共感を覚え、自分の中に流れる「日本人の血」を感じるあたりの描き方が秀逸であった。なお、作品中、一件の殺人事件はあるものの、ミステリー性は薄い作品である。

ところで、下巻のp441に「引き金に指をかけた瞬間、脚の足を激痛が貫き」という文章がありますが、これは「左(か右)の足(か脚)を激痛が貫き」の間違いでしょうか?きちんとした作品でも、こんなことがあるのですね。驚きました。

・「さすが真保裕一!
最初は淡々としていて後半半分位までは読み進みにくいが、最後はやはり読者の期待を裏切らない。

・「真保 裕一、新境地を切り開く
第二次世界大戦中、アメリカの日系人たちが味わった苦難の様相はわずかに歴史教科書で触れる程度でほとんど知りませんでした。ヨーロッパ戦線で日系人部隊が多数の死傷者を出しながら戦ったことも多少聞きかじってはいたものの詳細について理解することはありませんでした。主人公の三人の日系人は全く立場は違うものの二つの祖国日本とアメリカとの狭間に立ち、苦しみながらも懸命に生きて行こうとしています。戦争の残酷さを改めて浮き彫りにし、矛盾に苦しむ若者たちの生き様を見事に活写しています。重いテーマですが真保 裕一氏が新しい境地を切り開いた上質の作品に仕上がっています。読後に思わず涙がこみ上げるのを禁じえませんでした。戦争を知らない世代の人々もぜひ読んで欲しいと思います。

・「戦時中のアメリカ日系移民の苦悩を描写
久しぶりに真保裕一の新刊が出たのでさっそく読んだ。垣根涼介の「ワイルド・ソウル」がブラジル日系移民を題材としているのに対し、こちらはハワイやカリフォルニアの日系移民を題材とし、戦時中の彼らの悲惨な状況を描写している。こういう書き方が流行なのか、主人公の3人だけはフィクションで、彼らを取り巻く状況はノンフィクションというスタイル。戦時中の日系移民の状況については、僕もある程度予備知識があったのだが、日系移民が中途半端な有色人種としてかなりの迫害を受けたこと、ドイツ移民やイタリア移民は強制収容されなかったのに日系移民だけ強制収容されたこと、日系移民で構成される米軍部隊が困難な前線にばかり投入され犠牲者を増やしたことなどを読むと、改めて当時の日系移民の困難について考えさせられてしまう。本自体は、前半1/3は主人公の状況やバックグラウンドの説明が多いため、割と淡々と進むのだが、後半2/3はいつもの真保節が炸裂し、どんどん引き込まれてしまう。真保本の中でも高位にランクされるだろう力作。

・「彼らの勇気が仇に
第二次世界大戦の始まりから、終戦の後始末までがジロー・マット・ヘンリーの青春期である。舞台は、アメリカ合衆国。もっとも大きな要素は、戦争である。また、彼らの共通点は日系二世である。当時、自由の、また移民への最大のチャンス(生活の場)がアメリカであった。かつてのブラジルや満州の如く(ここでは侵略の概念を外す)。しかし”12・8”が、決定的に運命を変えた。アメリカにおけるマイノリティーとして支配される社会集団と見なされるようになった。貧困でありながらもひたすら働く:ジローしかり、地元密着型小売店の息子:マットしかり、エリート教育学びつつあったヘンリーしかりである。彼らは、紆余曲折がありながらも、支配される側に踏み込み自己実現の生き様を選択した。それは潮流であり、選択の結果でもあった。優秀な彼らは、駄目もとの作戦に巧みに利用される。運よく成功する。しかし、結末は彼らのボディーは壊れ、魂は消えた。文中、侵略に成功した地域へ、いち早くジープで駆けつけるのは、白人将校たちであると記されている。まさに、社会構造の仕組みを裏打ちしていると感じました。同じ時代に・同じ苦労をしながらも、その後楽しく老後生活を送った人も少なくはないはずである。では何故、彼らは…。私は、彼らの勇気が仇になったと思いました。

栄光なき凱旋 上 (詳細)

栄光なき凱旋 下

・「映画化を強く希望
朝日新聞の書評で興味を持ち購入してみました。板ばさみになった日系人の複雑な心境を物の見事に活写して一気に読了しました。グローバル化の時代に海外で活躍している多くの邦人にこの物語を読んでほしいと願います。さらにこのストーリーは映画化するに値すると直感しました。それも日本人の監督によるアメリカ映画として。

・「さすが真保裕一!
最初は淡々としていて後半半分位までは読み進みにくいが、最後はやはり読者の期待を裏切らない。

環境も境遇も異なるジロー、ヘンリー、マットが、それぞれの思いで運命を背負い、多くの犠牲を受け容れ、すべてを失っても、最後まで守ったもの。守る意味は何か。第2次世界大戦中の日系移民の苦悩を通して、気高さや誇りを持つことの尊さを感じさせられる。さらに主人公や仲間達、脇を固める人物達まで、それぞれの個性が掘り下げられており、心の痛みも痛切に伝わってくる。どのキャラも好きにならずにはいられなかった。アメリカ人として認められたいがための彼等の人生に、どこか物悲しさを覚えるのは、当時の日本の姿を反映しているためか。

また、戦線での描写は、戦争映画などの画像で捉えるよりもよりリアルに鮮烈に、悲惨な状況を映し出していた。

読後は虚しさなのか、儚さなのか、切なさなのか自分でも解せない感情と清々しい感動に包まれた。重いテーマも決して陰湿さは残さず、勇気を与えられるような真保作品はやはり最高だ。

・「彼らの勇気が仇
第二次世界大戦の始まりから、終戦の後始末までがジロー・マット・ヘンリーの青春期である。舞台は、アメリカ合衆国。もっとも大きな要素は、戦争である。また、彼らの共通点は日系二世である。 当時、自由の、また移民への最大のチャンス(生活の場)がアメリカであった。かつてのブラジルや満州の如く(ここでは侵略の概念を外す)。しかし”12・8”が、決定的に運命を変えた。アメリカにおけるマイノリティーとして支配される社会集団と見なされるようになった。貧困でありながらもひたすら働く:ジローしかり、地元密着型小売店の息子:マットしかり、エリート教育学びつつあったヘンリーしかりである。 彼らは、紆余曲折がありながらも、支配される側に踏み込み自己実現の生き様を選択した。それは潮流であり、選択の結果でもあった。優秀な彼らは、駄目もとの作戦に巧みに利用される。運よく成功する。しかし、結末は彼らのボディーは壊れ、魂は消えた。文中、侵略に成功した地域へ、いち早くジープで駆けつけるのは、白人将校たちであると記されている。まさに、社会構造の仕組みを裏打ちしていると感じました。 同じ時代に・同じ苦労をしながらも、その後楽しく老後生活を送った人も少なくはないはずである。では何故、彼らは…。私は、彼らの勇気が仇になったと思いました。

・「戦時中のアメリカ日系移民の苦悩を描写
久しぶりに真保裕一の新刊が出たのでさっそく読んだ。垣根涼介の「ワイルド・ソウル」がブラジル日系移民を題材としているのに対し、こちらはハワイやカリフォルニアの日系移民を題材とし、戦時中の彼らの悲惨な状況を描写している。こういう書き方が流行なのか、主人公の3人だけはフィクションで、彼らを取り巻く状況はノンフィクションというスタイル。戦時中の日系移民の状況については、僕もある程度予備知識があったのだが、日系移民が中途半端な有色人種としてかなりの迫害を受けたこと、ドイツ移民やイタリア移民は強制収容されなかったのに日系移民だけ強制収容されたこと、日系移民で構成される米軍部隊が困難な前線にばかり投入され犠牲者を増やしたことなどを読むと、改めて当時の日系移民の困難について考えさせられてしまう。本自体は、前半1/3は主人公の状況やバックグラウンドの説明が多いため、割と淡々と進むのだが、後半2/3はいつもの真保節が炸裂し、どんどん引き込まれてしまう。真保本の中でも高位にランクされるだろう力作。

・「日系人の視点から第二次世界大戦を描いた力作
アメリカにおける日系人の視点から第二次世界大戦を描いた力作。自分たちの祖国はアメリカでありながら、敵国人として扱われる二世、三世の葛藤。そして、祖国日本との戦いに自分の子供達を送り出さなくてはならない一世の苦悩。アメリカ人であることを証明するために、あるいは日本に対する憎しみ故に兵士として参戦したものの、いざ日本人と相対した場合、敵兵である日本人の価値観に共感を覚え、自分の中に流れる「日本人の血」を感じるあたりの描き方が秀逸であった。なお、作品中、一件の殺人事件はあるものの、ミステリー性は薄い作品である。

栄光なき凱旋 下 (詳細)

四度目の氷河期 (新潮文庫)

・「設定も凄いが、何はともあれ筆力が凄い
単行本版のレビューで、さらに文庫版の帯にすら書かれているように、大枠は「母子家庭に生まれた子が父を恋う」だけの小説である。ただそれだけの小説に、クロマニョン的なエッセンスが加えられることでなんと鮮やかな物語になっていることか!

物語自体はシベリアの雪原のように静かで、普通の少年が友達を作り、なくし、恋をする、そんなおおむね普通の姿を描いたものである。それにクロマニョンという意味不明な設定を加えることで、なぜか、誰もが少しは経験するであろう青春時代特有の心のゆらぎが、恐ろしく繊細な感触で読み手に伝わってくる。私にとって、その感触こそが青春小説に最も必要なものである。終盤の性急さも、それまでの数百ページで渉をいう人間の気質をわかった上で読めば十分に納得のできるものだと思う。

人を選ぶとは思う。ドラマチックな青春を求めている人には合わないかもしれない。ただ少なくとも私にとっては、穏やかながらも確かな読後感で胸がいっぱいになる最高の青春小説でした。

・「壮絶かつダイナミック
物語の構成そのものは単純なのですが、展開は壮絶極まりないと言えます。しかも、後半はその度合いを強めてゆき、主人公とサチの運命は、どうなってしまうのだろう?とハラハラさせられます。

・「男の子が男になるとき
父はどんな人だったのか。姿どころか名も知らない。そんな父を僕は17年と11ヶ月をかけて探し求めた。生まれながらに父のいない僕が大人に成長する姿を描く。そこにはいつも母さんがいた。そして、同級生のサチの存在があった。男の子は母を、あるいは恋する女の子を守りたいと思った瞬間から男になるのかも知れない。

・「つかみとった答え
物語は、もうすぐ18歳をむかえるワタルが博物館に陳列されている古代人に、「父さん」と呼びかけるところから幕あけます。そしてワタル自身による、4歳の時からの回想としてつづられていきます。

・「欲を言えば、もっと“萩原節”があってもよかった
荻原浩で、しかもこのタイトルからして、ちょっと前の就職氷河期の頃の、奮闘する女子大生の話かと思ったら、ぜんぜん違っていた。 ‘ぼく’こと南山渉(みなみやまわたる)のおおむね4才から高校を卒業する18才手前までの、“自分探し”の物語である。

「ぼくは普通の子どもとは違う。」ワタルは、5才を過ぎて幼稚園に入園してから自覚しはじめる。最初は「おとなしく座っていることができない」程度だったが、成長するにつれて、他の子供に比べて身長が伸び、髪が茶色で、貌のほりが深くなり、足も速くなる。なにより、父親がいない。町では親子でよそ者扱いだ。そして、なんとワタル少年は、「ぼくはクロマニヨン人の子どもだ」と思い込んでしまう。

そこから先は、男子だったら多かれ少なかれ誰もが経験する、小学校から高校までの成長過程の物語が、例によって快調な“萩原節”で語られる。夏休みのトム・ソーヤばりの自然体験、第2次性徴によるカラダの変化、異性への目覚め、陸上競技に打ち込む青春、母の病気、そして“自分探し”の末に訪れる“ほんとうの父親探し”。

私はそのリーダビリティーにのせられて、一気呵成に読み進んでしまった。

本書は、他の萩原作品のような「何かに奮闘する」スタイルのお話ではないし、大きな転回はないが、読んでいて何かしらエネルギーを感じた。やっぱり萩原浩らしい、不思議と心温まる物語だった。欲を言えば、彼らしいユーモアがもっと随所に見られると良かった。

四度目の氷河期 (新潮文庫) (詳細)

楽園 (新潮文庫)

・「古き時代の砂漠から始まる
zabadakの「IKON〜遠い旅の記憶」が、この本に触発されて作られたということを知って手にとったのですが、読んでみたら大当たりでした。

モンゴロイドの移動や、それ以前の知識があるともっと楽しく読めると思います。ですが、勿論そのような知識が無くても十分に楽しめますよ。

輪廻転生って本当にあるのかもなあ、と思ってしまいたくなるような物語でした。

是非、zabadakのアルバム「IKON〜遠い旅の記憶」収録「遠い旅の記憶」をBGMにして読んで下さい。感動がより深まると思います。

・「私にとって最高の本の一つ
初めて読み終えた時の深い満足感はいまだに忘れることはできません。辛いとき、落ち込みがちなときには思わずこの本を本棚から取り出してしまうのでもう5~6回は読んでしまいました。スケールが大きく夢のあるストーリーは、心をいつも前向きにしてくれます。年間50冊ぐらいは本を読みますが、8年前に読んだこの本は、自分のベスト3の1つです。

・「懐かしくさせる壮大ロマン
作者の知名度も知らずたまたま手にした本。これが意外に当たりだった!!壮大古代ー現在ロマン(ス)ファンタジーは好きな分野。のびのびと爽風の様に太古モンゴルー>近代ポリネシアー>現代アメリカとワイルドなキャラが生死をかけて、愛をめぐって駆け抜けてゆく。それぞれの異国文化での生き方、愛し方がよく書けていて説得力があり、引き込まれる。せつなくなります。こーゆー本がもっと巷にあると良いのに...お勧めです。

・「心にホワっと残る作品
3つの物語が独立して存在しているにもかかわらず、そこに「赤い鹿」「海」など共通する芯をもっていて、とてもよく出来た作品だなぁ~と感心しました。何よりも、その情景が、イメージとして頭の中に広がってくるのには、感服しました。3つのラブストーリーが、とても力強く、希望に向かって終わっているので、読み終わったあとにはとても暖かい気持ちになれます。

・「これがこの世の楽園か!
鈴木さんの書くファンタジーはどんなものだろうかと気になっていましたが、やはり鈴木さんの書く文章は素晴らしい。三部の構成になっているが、その相関関係がとても綿密に構成されている。特に第二部は、漂流記を彷彿とさせる、生死の物語が別に有るような気がします。どういう風に、繋がるのだろうと、ワクワクしながら読んでましたが、最後までそのワクワクを持ったまま終わったって感じですね。これがオチみたいな明白としたものはなく、読み終わった後は、なるほどなぁ〜って感じでした。きっと、ラストで、輪廻の呪縛は解けたのでしょうかね。愛する人同士の、歴史的な長さを感じさせるとても綺麗な作品でした。

楽園 (新潮文庫) (詳細)

ブラバン (新潮文庫)

・「ブラバン経験者は一読を。
「高校時代のブラバンメンバーが25年の時を経て再結成する」

吹奏楽に青春を捧げた人なら、この設定を聞いただけでもワクワク、ウズウズしてしまうだろう。私もその一人です。

あの頃と同じメンバーでもう一度音を奏でたい、そう思い描いたことのある元吹奏楽部員は少なくないはずです。けれど、主に楽器や場所の問題からスポーツのようには簡単に再開できないのが吹奏楽。そんな我々の夢を叶えてしまうとは・・・。

もしかしたら、自分たちにも出来るかもしれない!?いや、それが無理だとしても・・・吹奏楽ってやっぱり最高だな、やってて良かったなとあの頃の自分たちと重ね合わせ色々思い出してしまいました。

登場人物が多過ぎたり、方言が多少読みづらかったり文書の好き嫌いは多少出てくるとは思いますが、総合的にみて私はとても楽しめました。ブラバン経験者にもう一度夢を与えてくれる、そんな1冊です。

・「現在からみる過去と、過去からみる現在
はやらないバーを経営している他片は、高校時代に所属していた吹奏楽部の同級生・皆元が亡くなったことを知る。同時期、彼らは、元部員・桜井の要望で、彼女の結婚式のため、25年ぶりに再集結し演奏を披露することになる。25年ぶりに会う仲間たち、そしてその消息を聞きながら他平は1980年の、高校時代を回想する。

高校時代からの25年。同じ時をすごし、同じものに熱狂し、自分たちの未来に漠然とした夢を抱いていた彼らが25年ぶりに出会って、たぶん当時の彼らは想像もしなかっただろうお互いの現在を知る。この、高校時代から25年という年月が鍵なのか、語り手である他片の性格なのか、彼らの現状が厳しいものであれ、穏やかなものであれそこには深い感情の移入はなく、たんたんと語られています。自分と相手を比べて、卑下するでも見下すでもなく、ただ受け止める他片はけれど当時は知らなかった現実も知り、ほんの少し変化する。それだけといえばそれだけのお話で、でも何か印象的なお話でした。

クリアな表面部分と、淡々とした印象、まだ自分は知らない「未来」の苦みというのがこのお話を読んだ印象なのですがむかし、著者の少女向け小説を読んだ時も、同じような感想を抱いていました。謎めいた印象が強くて、他の作家さんのお話に比べ、熱狂はしなかったのに印象深くて、折々に本から学んだ「未来」の苦みを思い出しては怖くなっていました。今現在は、この『ブラバン』は自分にとってはまだまだ未知の「未来」のお話なのですがまた折々に思いだすことになるような気がします。

・「過去の自分と出会う本
場末のバーに落ち着いた主人公が、吹奏楽部時代の仲間に声をかけられ、それをきっかけとして過去を振り返りつつ、現在を見つめる物語です。

本書の素晴らしいところは、上記の設定を最大限に生かしているところです。歳をとった主人公の視点から描写された高校生像は、同じく歳をとった私が高校時代を振り返る時の実感に一致しました。

では、その実感とはどういうものか。それはつまり「ほろ苦くも燦然と輝く青春時代」。これに尽きます。

異論はあると思いますが、歳をとってから若い頃の事を思い出すと、当時はどんなに平凡な出来事であったとしても、それらは全て美しい思い出や、悔恨の思いなど、強い印象の出来事に昇華します。平凡な日々など存在しなかったように思えます。そういった思いを、現在と上手く対比しつつ描いているので、浮き足立つようなこそばゆい青春物語ではなく、ほろ苦くも燦然と輝く青春時代を実感させてくれているのです。

そんな実感を覚えるのは、ひょっとしたら、当時の平凡な日常だけを忘れてしまい、強く印象に残ったことだけを都合よく覚えているから、だけなのかもしれません。だからこそ、いつだって過去は印象的で、遠い物語となっている。しかし現在という現実は、過去と強くつながっている。本書はその事を読者に強く感じさせます。

読み進めているうちに、自分も過去の自分と対峙するような気分になりました。社会人になり、高校時代が遠い昔に感じられる大人たちにお勧めします。

・「美しく見える過去と、人それぞれの現実
旧吹奏楽部メンバーの25年ぶりのバンド再結成を巡り、高校時代の回想と25年後の現在と行き来しながら、物語は進む。

25年という歳月の間に、メンバーそれぞれにいろいろな現実があり、高校時代という美しく見える過去に対する思い入れがあればあるほど、そのギャップが切なさを作り出す。非常にドラマティックなことが発生せず、最後も綺麗にわかりやすく終わらないことも、それでも人生は続いて行くということを描いているようにも思える。

ただ、登場人物も多いにも関わらず、時代が行き交うので、登場人物紹介を何度も読んだし、物語としても雑然とした印象は拭えない。現実ってそういうものだと言われればその通りなのだが、基本的に

・登場人物と同世代で、描き出される現実に共感できる人・吹奏楽経験者・80年前後の音楽に造詣が深い人

であれば物語を楽しめると思う。

・「他片と桜井が表紙
『ブラバン』です。表紙イラストから想像がつく通り、ブラスバンドが題材です。高校吹奏楽部を扱った青春小説、というよりは、本文にも明記してありますけど、そこから25年後に再結成を目指すエピソードがあくまでもメインです。高校時代描写はあくまでも回想です。面白いか面白くないかの二者択一でいえば、面白かったです。ただし、欠点というか問題点も多く、手放しでは賞賛できません。現実に賛否両論になっているようですが、当然だと思います。以下、良い点と悪い点を箇条書きで。

良い点。・音楽に関する蘊蓄が詳しい。へぇー、と思う。・随所に良いエピがある。ベースを買うシーン、ローマ法王、定時制に移った同級生、松山の先輩の純情、優しい先輩がビゼーを評するシーン、など。・緻密に計算された構成、張り巡らされた伏線は、確かにすごい。・起こる出来事がまるでドラマみたいに(そりゃもちろんフィクションの小説ですが)劇的ですごいので、起伏に富んでいるのは確か。・登場人物が個性豊か。・高校時代の青春エピと、それから四半世紀経って四十路となってのブラバン再結成エピの双方があるため、共感のストライクゾーンが広め。

次に、読む人によっては作品世界に入り込む妨害になりかねない問題点。・登場人物が多すぎる。巻頭に主要人物表がありますが、確認しながら読んでも覚えきれない。・しかもその登場人物が、四十路の現在シーンと高校時代現役シーンとの二つの顔を持っており、しかも担当楽器もあるので、覚える要素が三倍。・本作は、四十路の現代シーンと高校時代シーンと、蘊蓄とがそれぞれ三分の一ずつあります。それらがめまぐるしく入れ替わるので、慌ただしいです。・会話シーンで台詞が六個くらい連続すると、どれが誰の台詞だか分からなくなってしまいます。広島の方言のため、一部を除いてキャラの台詞に個性が無いですし。・蘊蓄も、音楽に関連するものはともかくとして、音楽に関係無いようなものも多い。そして、読者によって興味深い蘊蓄もある反面、興味を抱けないであろう蘊蓄も多い。

結末はなんとも渋いといいますか、かなりの後味の悪さですが、……それでもその後については語られていないので、読者の想像力に委ねられたと言うことでしょう。面白さから問題点を差し引いた自分的な評価も、あるいは読む人によって賛否が分かれることを考慮しても、いずれにせよ★は3です。

ブラバン (新潮文庫) (詳細)

借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)

・「前作よりもひとまわり深みと重みを増した人間ドラマの数々
本書は、山本周五郎賞を受賞した『君たちに明日はない』の続編にあたる、リストラ請負人・村上真介のエピソード短編集である。’06年5月号から’07年1月号にかけて「小説新潮」に掲載された5編からなっている。

前作は、真介の仕事と、8才年上の恋人陽子との恋愛が主体の痛快エンターテインメントだったが、本書の各作品では最後の『人にやさしく』を除いては、ふたりは脇役にまわり、真介が面接するリストラ対象者達が主役になっている。なぜ会社から自主退職勧告の面接を受けるに至ったか、それぞれの入社以来の仕事の来歴や個人的な心情を描くことに筆がさかれているのだ。

私の心に特に響いたのは、File2の『女難の相』とFile3の表題作『借金取りの王子』だった。両編共に被面接者の過去の生き様とこれからの人生の生き方、周りの人々との関係など、個人的な人間模様が良く描かれており、前作を上回る人間ドラマが展開されているように思った。ただのエンターテインメントを超えて、ひとまわり重く深みを増した感じだ。

それと、本書では、「老舗百貨店」、「生命保険会社」「消費者金融」「温泉旅館」が相手企業になるのだが、前作同様、垣根涼介による業界リサーチもきちんとされており、充分に取材したことがうかがえて、物語が恐ろしいほど現実味を帯びている。

ともあれ、現在は、派遣切りや内定取り消し、賃金カット、希望退職者募集の拡大など、本書が初出で書かれた時期よりも不況は深刻だ。明日はわが身だ。のんびりとはしていられない。しかし、そんな時代でも、世の中とうまく渡りをつけて自分らしく、人間らしく生きるとはどういうことなのか。ふとそんなことを思いながら本書を読了した。

・「大切なのは矜持、そして生き方
このシリーズ、なかなか良いです。

企業のリストラ請負人といういけ好かない仕事を生業にしている主人公ですが、この主人公が半端な人間ではないのだ。加えてその主人公のターゲットになる側のもう一人の主人公、つまり企業から退職勧奨される登場人物がまた味のあるひとかどの男あるいは女なのです。リストラ対象となった人間に自主退職を勧める真介によこしまな思いはないし、相手を蔑むようなことは決してしない。一方、リストラ対象となる社員もまた決して使えない人間ではない。その証拠に彼あるいは彼女たちは決して会社にぶら下がってはいないのだ。首を切られるかもしれない状況にあっても、それを他人や会社や社会のせいにしない。つまり一人の人間として自立している。そして、そのような逆境にあってなお、毅然としているのだ。垣根氏は読者に対しこう問いかけているのではないだろうか。「生き方なんて何万とおりだってあるんじゃないですか? 生き方次第で、明日はある。そう思いませんか?」

もちろん、現実の世の中はそんな甘いものじゃないだろう。現によこしまな意図を持って社員の首を切る会社があるし、ろくに仕事をせずに寄生虫のように会社にしがみついている人もある。格好良く会社を辞めても、次の仕事で能力をきちんと評価してもらえるとは限らない。下手をすれば能力を発揮するチャンスすら与えてもらえないかもしれない。そう、現実は厳しく理不尽だ。しかしそれでも垣根氏はこういっているのではないか。「矜持を持て。その会社に勤めることではなく勤め方が問題なのだ。大切なのは生きることではなく、生き方なのだ」と。

・「女性の心理描写がうまい・・・
リストラ請負会社に勤める村上真介主人公の「君たちに明日はない」第二弾です。前作は,リストラ面接で相手を追い込む場面が面白かったですが,今回は,追い込み場面自体はちょっとまんねり。その代わり,追い込まれる人たちに軸を置いて,それぞれの人生模様が丁寧に書き込まれており,よかったです。まあ,浪花節的だったり,いかにもだったりするんだけど・・・でも,ほろ苦い感じがうまいですね。しかし,一番の注目は,真介の8歳年上の恋人陽子の心理描写だな。年の差をちょっと気にしたり,でも案外相手を頼りにしていたり,時に別の人にちょっぴり目移りしていかんいかん!と自分を戒めたり。文体は,独特の端的で男っぽい感じのものですが,それでこの細やかな描写ができるなんて,さすがですね。女の私も何の違和感もなし,というか,普通にあるあるって感じで感情移入してしまいました。そのうち,垣根氏らしいハードボイルドな作品もちょっと読んでみたいと思います。多少苦手ジャンルでも,この人のなら読めるかも。

・「爽やか上等!ただしやや男子寄りのバイアスつきの。
垣根涼介といえば大藪春彦賞、吉川英治文学賞、日本推理作家協会賞をトリプル受賞した一大スペクタクル:ワイルド・ソウルにとどめをさす、ラテンの香りのフンプンたる濃ゆ〜い小説を得意とする作家である、と思っていた。

その作家が初めて?裏稼業ではなく表稼業?の爽やかなフツーの?サラリーマンのストーリーを書き上げ、(かなり?が入るのは若干その職業が・・である故である)しかも、らしくない(失礼)山本周五郎賞までとったのが前作、「君たちに明日はない」である。この「借金取りの王子」はその続編にあたる。タイトルに惑わされずに、まず前作を読んでから入ることを推奨したいところだ。

作者の名前を読まなければ、奥田英朗の 「ガール」に並べてもおかしくない爽やかさ。ただしよく読むとやはりそこは垣根節がちょいちょい混じる。女子を描いているようで結局は男子寄りの視点が常に付加されるスナップショットには、ある種爽快感さえ覚える程だ。ちなみに文庫判の巻末の解説文というよりは感想文にも苦笑混じりににんまり。なんとも男性目線のオンパレードだ。

ところでタイトルになっている「借金取りの王子」といい、主人公+恋人の年齢設定といい、もしかしてアラフォーの女子狙い?

これ、このまま連ドラになりそう。それこそ小池徹平と天海祐希とかね。

・「続編が楽しみ
これは、前に紹介した「君たちに明日はない」の続編。

主人公は、リストラする手伝いをする会社の社員。主に面接でリストラするのだが。そういえばこの主人公は、この会社に入る前はなにをしていたのだろう。

前回の1の時は、主人公とリストラされようとしていた40才頃のキャリアウーマンの恋愛がテーマになっていたような気がするが(これとて、確かな記憶ではないのだが…)、続編の2は、各章にそれぞれ主人公がでてきて、一話完結の、水戸黄門のような話になっている。

ただその各章にでてくるリストラ対象の準主人公が、とても魅力的で、思わず感情移入してしまう。みんな魅力的だった。

やはりサラリーマンが、一番遭遇したくないであろう状況は、退職とかリストラではないかと想像するが、そんな場面で繰り広げられる人間模様は、おもしろいのであろう。

たぶんこの話は次の続編がでると思う。たぶん作者はもう書いてしまっているのかもしれない。

で、私の予想では、この主人公と彼女は別れてしまい、彼女は主人公の社長と付き合うようになり、主人公はかって自分の仕事のパートナーであり、現在は自分の彼女の下で働いている派遣社員とつきあうようになる気がする。

これが当たれば、私も相当なものだと思うが…。

借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫) (詳細)

孤高の人 (上巻) (新潮文庫)

・「何度も繰り返して読んでいる本です。
学生時代に初めて読んでから、いままで一番繰り返し読んだ本だろうと思う。実際の人物を描いた山岳小説であるが、山にまったく興味がなかったのに無性に山に登りたくなった。そして主人公の魅力に取り付かれてしまった。 何度読んでも味わい深い内容である。山について語りながらも、仕事について、恋愛について、そして人生について語っている。

先日再び高取山に登ってみた。小説の中で主人公の加藤文太郎がこの山に何度も登るシーンがあるが、いまも当時とかわらない神戸の美しい街が広がっていた。

この本との出会いは、自分にとっては限りなくかけがいのない「出会い」とでもいうべきものだったと思う。

・「ヒマラヤがゴールだったのに…
 主人公:加藤文太郎の人生を描いたこの著作は、山岳小説の域を遙かに超え、愛と命と勇気を描いた作品である。作中、そうありたい自分・そうあってはならない自分の狭間で、選択すべきを折々に悩む。しかし、遠く大きく輝いた目標を定め、決して自己を見失わない。目的達成を目論んだストイックな思考と行動は、見事である。 しかし、悪い奴もいる、文太郎の生き血を吸うやつらが…。金を無心する同級生。彼の知性を我が物としよう忍び寄り、さらには自分の失態を押し付ける影村。しかし、こうした存在もまた、いっそう小説にリアルさを補完する。 終盤、彼なりの、「命」「愛」「人間」の証明を目指し、後輩との登山を目論んだ。彼は遭難、そして死。危険な雪山を避け、安全にヒマラヤ登山に成功して欲しかった。そう考えるのは私だけではないはずです。恩師や家族や多くの登山家、そしてこの読者も同様の筈です。 

・「「孤高」とは
孤独とはいかに強く、そして脆いものか。物語を通じて、主人公の次々と達成する「単独行」という偉業を追いながら、彼の心に落とす影が見事に描かれている。「人は所詮ひとり」と、「人はひとりでは生きられない」。どちらかを選ぶ必要はないけれども、うまく折り合いをつけられず悩む主人公の姿が忘れがたい。「銀嶺の人」「栄光の岩壁」と読み比べるのもおもしろい。

・「孤高の人生
実在の登山家・加藤文太郎の人生を、山岳小説の雄・新田次郎が描く。新田氏は富士山観測所勤務の折に故人と一度会っているという。本文中に観測所での職員とのやり取りが登場するが、実際もこんな様子だったのだろうか。

魔が差したとしか思えないたった一度のパーティによって、単独行の加藤は還らぬ人となる。結末がわかっていながら夢中で読み進め、次第に危険な方向へと向かい始める加藤の行動をこの時この人と出会っていなければ或いは・・・・・・と詮無いことを考えてみる。

若い頃の加藤は他人とパーティを組むなど考えられなかった。それは、不器用さから他人に対し心を閉ざし、常に一人で行動してきたからだ。しかし、妻・花子との生活により人の温もりを知った加藤は、もう以前の加藤ではなくなっていた。

物語のなかで、人は何故山に登るのかとの問いが何度か繰り返される。私自身、何かを振り切るように山の中に身を置いた時期があった。しかし、今あの時のような山行をしようとは思わない。あれは、当時の自分にとって必要な時間であったと今になって思う。

趣味として登る山と人生そのものを賭ける山はまったく別のものだろう。加藤氏の山はどのようなものだったのだろうか。

・「加藤文太郎というマイルストーン。
山岳小説では日本百名山・氷壁と同じくらい有名な作品。主人公の加藤文太郎さんは、サラリーマン登山家(プロの登山家ではない)として稀代の登山記録を残した人で、兵庫県六甲山には彼の偉業を展示した記念博物館がある。彼が生きた時代を知れば解るけど、彼の登攀記録は本当に凄まじい。彼を育てた六甲山の存在も、この作品を通じて伝わってくる。ちなみに、北アルプスの名峰槍ヶ岳の北鎌尾根を冬季に登攀中壮絶な凍死をしたことでも有名だけど、彼は北鎌尾根を下降したのであって、登攀はしていない。

孤高の人 (上巻) (新潮文庫) (詳細)

孤高の人 (下巻) (新潮文庫)

・「孤高の人
山とはなにか。人間とはなにか。人生とはなにか。そんなことを考えさせられた2冊。

・「フィクション?ノンフィクション?
引き込まれるように読みきりました。花子夫人からぜひ実名でということのようですが、どこまでノンフィクションととらえていいんでしょうか?だとしたら宮村健に対して言いようの無い思いに駆られます。加藤文太郎に対しても何故という気持ちで一杯です。

Wikipediaにはこう書いてありました。本作はフィクションであるが、実際の登山記録(加藤の遺稿集「単独行」(たんどくこう)など)を元に作られており、登山が行われた場所、日時などにおいて多くのものが実際に行われたものと共通している。しかし、吉田富久(作中では宮村健)の描写が単独行と比較して著しく異なり、吉田が登山に誘ったことが原因で加藤が遭難死したかのような誤解を招く恐れのあるものとなっている。

とても気になります。

・「悲しき最後
加藤文太郎は槍ヶ岳の北鎌尾根で遭難して死亡します登山家の宿命でしょうか悲しい最後ですね私も毎月山に登っています低山ばかりですが夢はヒマラヤですおよそ山に登るものの最終目的はヒマラヤです加藤文太郎は志半ばで逝きました彼の心を継ぐのは我々です

・「登山者は読んでみて
実在の登山家,加藤の生涯を物語にした小説。登山家としての加藤の生き方がすばらしい。

孤高の人 (下巻) (新潮文庫) (詳細)

ガール

・「ガールの深層心理を読み解いた納得エッセイ。奥田氏の眼力に敬服!
 まことにシンプルなタイトル。本書には表題作「ガール」を含む計5作品が所収されている。いずれも女性にとって主要な関心事を扱っている。女性が読めば、「そうそう、思わず納得!」という感想が出るだろうし、男性が読めば、「そうか、女性はこんなことを考えてるんだ!」とこれまた納得させられる。「共感度」こそ違えども、どちらが読んでも納得できる内容だと思う。女性の心理や価値観、生き方、行動様式などがよく分かり、「面白かった」というよりは「有益であった」というのが率直な読後感だ。奥田氏がここまで女性の深層心理を理解していることに驚嘆する。女性であってもここまで巧みに描けないのではないか。

 出世欲がなく妻のほうが給料の高い夫婦の関係を主題とした「ヒロくん」、女性なら誰でも憧れる都心での一人暮らしを取り上げた「マンション」なども興味深いが、表題作「ガール」における、若さという「特典」を失った年齢に達した女性が「いつまでガールでいられるんだ」という切実な問いかけは痛々しいくらい胸に響いた。本書に登場する女性はすべて30代であり、本来であれば「レディ」という表現のほうが相応しいのかもしれない。しかし女性はいつまでも「ガール」でいたい、いやその気持ちを失うまいと必死で生きている。すべてのエッセイはそうした女性の(永遠の)願望を赤裸々に伝えているのである。

 「ワーキング・マザー」という作品は、女性の社会進出の飛躍的上昇という時代風潮を反映したものだが、制度的条件を含め、これからの日本がもっと真剣に考えてゆくべき重要な問題を主題にしている。男性だからという理由は全く通じない。「本当の望みは、時間が止まってくれることなのだ」(244頁)という最後の「ひと回り」という作品にある文章は、すべての女性が「ガール」でいるための(無理な)前提条件なのだろう。「ガール」の定義は実に難しい。むしろ男性に読んでほしい一書だ。

・「痛快
奥田氏は女性の気持ちをどうしてこうまでとらえて表現することができるのか。マンションを買おうと決心する広報の30代女性、会社を辞めてはローンを支払えない。秘書室への対応が微妙に変化するくだりは最高。CanCanを読む30代後半先輩を見て「もうガールではない」とつぶやく展開。共感、おもわずにやり。奥田氏は本当にうまい!

・「女心
奥田英朗さんって男だよな〜?なんでこんなに女心が分かるんだ?ってくらい納得してしまいました。今迄読んだ奥田さんの作品では一番楽しめました。とくに「ガール」は男には分からない女達のかけひきにドキドキしてしまいました。

この作品独身女性が読んだら元気が出そうでオススメしたい!けど逆に開き直ってしまいそうでオススメしたくないような。。。男の自分としては特に既婚、未婚問わず男性に読んで欲しいです。ちなみに自分は既婚ですが女性に対する考えが少し変わった気がします。もちろん自分の嫁さんにたいしても。

・「30代の女性は必読な1冊。
課長になったりマンション購入を決意したり若い子と同じ服着るの、ぼちぼち卒業しなくちゃと思ったり子持ちで、フルタイムの仕事復帰したり超年下の新人君にときめいたり

なんか身に覚えがありすぎで怖いです。特に、洋服のくだりはヤバいです。明らかに20代、あるいは10代のコがターゲットのお店で服買ってるん自分。本当に、ボチボチ、これ辞めたほうが良いんじゃないかと相当、揺れ動いてるのです。

年相応に落ち着かなくては・・・と思っても落ち着けない。

描写は、毎度ながらリアルで、ぎょっとするんだけど30代の女性は必読な1冊に思えます。

・「これこそが、奥田英朗の一番の傑作ではないか。女性の描写力の凄さにも、脱帽!
この「ガール」は、本当に面白かった。私は、これこそが、奥田英朗の一番の傑作ではないかとまで思っているくらいなのである。この短編集では、社会の第一線で働くさまざまな女性たちの心の内が、実に生々しく描写されているだけでなく、「ヒロくん」、「ガール」、「ひと回り」を始めとした一話一話が、物語としても非常によくできているので、女性はもちろん、我々男性が読んでも、面白過ぎるくらい面白いのだ。 

この「ガール」には、それぞれの立場で、仕事で、あるいは、女として、人生の岐路に立たされた5人の30代の女性の物語が綴られている。 

「ヒロくん」では、課長に抜擢された女子総合職が、男のメンツをかけて反抗的な態度で歯向かってくる年上の係長と壮絶なバトルを演じ、「ワーキングマザー」では、子育ても山を越え、仕事にやりがいがほしくなり、閑職から古巣に復帰したシングルマザーが、周囲の過剰な気遣いにため息をつく。 

未婚の3女性は、「マンション」購入の決意をすることによって、色々な現実と向き合うことになって思い悩み、あるショックな出来事を契機に、「ガール」でいることの潮時を感じてブルーになり、ある日突然、自分の目の前に現れた「ひと回り」も歳の離れたハンサムな新人に、心が千々に乱れるのだ。 

それにしても、特筆すべきは、奥田英朗の女性の描写力の凄さだ。特に、登場人物の女性たちの心の奥底までもを覗いてきたかのような、微に入り、細にわたった心理描写は、たとえ、綿密な取材を行っていたとしても、取材に応じた女性たちが、ここまで素のままの自分の姿を男性にさらけ出すだろうかと思えるほどのレベルにまで達しているのだ。同じ男性として、作者の女性に対する観察力の並外れた鋭さと細かさには、素直に脱帽するしかない。ここまで描写されたら、女性たちも、自分たちの心の内まで見透かされているようで、こわいのではないだろうか。 

ガール (詳細)

八月の博物館 (角川文庫)

・「「瀬名秀明」と言う一人の作家の姿
小学生の少年、作家、エジプトの考古学者。三人の視点で進む「物語」の物語。

物語に没頭すると言うのは小説好きの私には常の事なのですが、この作品は読者を物語に没頭させながら、同時に「物語に没頭するとはどういう事か」と言う客観的な視点で考えさせます。衝撃でした。今までこんな小説は読んだ事がありません。作品中の作家「私」が問い掛ける「物語とは何か」と言う疑問は、恐らく瀬名氏の中に常にあるもので、「私」の視点によって彼が作家として物語を創ると言う事にどれだけの想いを傾けているのかが垣間見える、作品の向こうにいる「瀬名秀明」に初めて出会う事が出来る小説だと思います。「パラサイト・イヴ」「BRAIN VALLEY」と読者の前を歩いていた彼が、初めてこちらに振り向いてくれた…一ファンの私がより瀬名秀明を好きになれた思い出深い一冊です。

夏休み、博物館と言う語感がもたらす懐かしさと切なさが全編に仄かに漂っています。三人の視点で書かれる物語は情報量も多いですが、それらが終盤になるにつれて収束してゆく疾走感溢れる展開はまさに「物語」の醍醐味でしょう。「物語を読む」事の楽しさに改めて気付かせてくれます。

・「不思議なメタフィクション
メタフィクションというべき物語。ヒット作『パラサイトイブ』や『Brain Valley』より、好みの作品。古川日出男の『アラビアの夜の種族』の方が作品としては、完成度が高いが、作者と世代が近いせいか親近感がわく。

物語ること、小説は物語るものであったはず。最近は、読ませる小説が少ない。別にためになったり、感動したり、泣かせたりすることが必要じゃないんだ。ただ読ませること、それだけが必要。

この小説には、バーチャルリアリティやA.Iも出てくるが、それよりも博物館が主人公だ。博物館って大好きだったなぁ。博物館に限らず、美術館、水族館、動物園など何でも好きだった。今でも好きなんだけど、忙しくてなかなかいけない。この小説を読んだら行きたくなった。

・「壮大なロマンを感じさせる一品
小学校最後の夏休みに冒険を求めた少年、エジプトの古代遺跡発掘に一生を捧げた男、デビュー数年で行き詰まりを感じた作家・・・。3つのストーリーがはじめはばらばらに、そしていつしか一つに収束していく。エジプトの壮大な古代遺跡と歴史のロマンを描いたその内容は、今にもエジプ

トへ駆けて行きたくなるほどリアルに表現されており、冒険心が掻き立てられました。ただし、少し特殊な技法を使っているせいか小説に完全にのめりこめない部分もあり、そこが評価の分かれ目かも。

・「最後の同調
とても懐かしい、わくわくするような思い出というのを残念ながらあまり持っていません。それでも、この物語の主人公が迎える「夏休み」はどこか懐かしいのです。自分自身が物語を内包している証拠でしょうか。どこかにあった、どこにもなかった夏休み・・・・私は物語にいつの間にか同調していました。

作者が、書きつつ書かなかった最後の「同調」とは読者自身とこの本の間にあったのだということに、読み終わってから気がつきました。

物語の中に、誘われる楽しさに気がつかせてくれました。ストーリーの緻密さとか、物語のダイナミックさを味わう以前に、ちりばめられているたくさんの小さなお話をただただ読む楽しさを感じました。

・「どうしても
どうしても胸がきゅうと痛む何かを作り出すことの辛さや喜びが端々から見え隠れしてる全てがつながるその瞬間にハッとしてほしい。そんな一冊です。

八月の博物館 (角川文庫) (詳細)

ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)

・「作者の技量の結実した作品集
作者の技量の結実した作品集

真保裕一の作品は大別して二種類に分けることができる。「ホワイトアウト」「奪取」「小役人シリーズ」に代表される、ミステリー性の高い作品、そして

「奇跡の人」「発火点」に代表される、ベースにミステリー性はありながら、主人公の成長を描いた作品である。エラリー・クイーン藤子不二雄や岡嶋二人のように二人の作家がいるのではないか?などとくだらないことを考えたくなるくらい、はっきりと色分けされている。

本作品は、後者に属する短編集であり、既にカメラマンとしての地位を得た喜多川の人生を50歳・42歳・37歳・31歳・22歳という順で振り返る作品である。なぜ、22歳から成長を追うのではなく、50歳からはじまるのか。この答えは作者自身による「あとがき」!に記載されている。決して先には読まないようにご注意いただきたい。

この作品は、評価が分かれると思う。おそらく女性にとってはつまらない小説なのではないだろうか。しかし、30~50代の男性にとってはたまらない作品集である。この条件に該当する方にとっては、514円は安い!おすすめである。

・「「思わず二度読み」
真保裕一さんの作品は好きですが、短編作品だけは敬遠していました。真保裕一さんの真髄は長編だと思っていたからです。しかし、友人の評判を聞き読んでみたところ、今まで読まなかったことを後悔しました。多くの本を読んでいると、自分の人生観を変えさせられるほど、影響力のある作品に出会うことがありますが、その中でこの作品がそれにあたります。読み終えたときの高揚感。巧みに構成された物語。魅力ある登場人物たち。個人的な感想としては不満な点が思い当たりません。短編作品だからこその素晴らしい作品です。真保裕一さんのファンなので偏った評価になっているかもしれませんが、真保裕一さんの作品の中で好きな作品をあげろと言われたら「ストロボ」はまず入ると思います。

・「芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊
芸術家とは如何にあるべきかを、読者に構えさせずにさりげなく問う作品。遺影」「暗室」「ストロボ」「一瞬」「卒業写真」の五編からなる連作小説集。カメラマン喜多川の人生を22歳、31歳、37歳、42歳、50歳という年齢で区切り、各時期で流されていく人間の弱さ、そしてそれに棹差す人間の気高さを描いている。人の死を前にして、芸術家は単に芸術家に過ぎないのか、それ以上の人間としてあるのか。

 ともかく、構成が上手く、メモを取ろうと目次をみて愕然。そうか、こういう仕組みかと納得。本を片手に何度も肯いてしまう。

「慣れと計算と年期で仕事をした10年、代わりに失っていくもの」「昔と変わらぬ情熱」などという文字に、自分の仕事への姿勢を思い、省みざるを得なくなる。単に、人間の感情だけはなく、社会人としての仕事や芸術家としての誇りを描いたために、物理的なボリューム以上に重厚な作品になっている。

 江戸川乱歩賞作「連鎖」など社会派の作家として出て来た時は、どちらかと言うと理知的な作風という印象だったが、「トライアル」で小説作りの腕をあげた。今回は、泣かせるだけでなく、さらに人間のあり方を深く考えさせる作家になってきた。

「奇跡の人」や「ホワイトアウト」で評価を固めた人だが、僕はそれらを評価しない。人間の掘り下げが甘いし、本当の罪とはという問いかけの部分で安易な部分があるからだ。

しかし今回の「ストロボ」には文句の付けようが無い。芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊だ。

・「もっと早く手に取るべきだったと後悔
新保裕一氏の小説の主人公は地味な職業、設定の人物が多い。いわゆる「小役人シリーズ」と呼ばれるくらい定着している。その中でカメラマンを題材にした本書は、何をする職業か明確でありながらも興味がわかずに手に取らなかった一冊でありました。(ちなみにその他のものはほぼすべて読んでいます)

加えて50代から20代まで主人公の過去を遡る手法にいまいちピンと来なかったのです。出張先での雪害のため列車のダイヤが乱れたために時間つぶしにと思いやっと手に取った本書。第五章から始まり、第一章で完結する作り。第五章・・・「ふ~ん」第四章・・・「ほほう」第三章・・・「ううっ」第二章・・・「ぐぐっ」第一章・・・「ふ~っ」

よくわからない擬音ばかりでスミマセン。何が言いたいかというと、読み進めるに連れてのめり込みと心への訴えかけが凄いのです。もちろん現在の自分と主人公のジェネレーションには違いがあります。

しかし、ひとつの仕事を巡る自分の情熱、取り組み方など、もしかしたら忘れかけていたり、妥協したりしていたかも・・・と初心を思い起こさせてくれました。そして何より、「妻」の存在。その時々の「女性」の存在。男というのはつくづく女に翻弄されつつも守られていく生き物なのだな、と思いました。読後、何とも言えない暖かい気持ちになります。

・「しーんみりと
 小役人ものを書いたスピーディーなミステリとはまた趣向が違う。トライアルとも違う短編集。やけにしんみりさせられるのは気のせいではないだろう。

 本作は五章構成になっている。連作集というのは現在から見たものを集めて書くものだと思っていたが本作は違う。あとがきによるとそうとも言えないのだが、本作は第五章で50歳、そこから22歳まで遡るという異色の形式をとっている。力作だと、まず言っていいか。

 主人公はフリーカメラマン喜多川光司第五章遺影はラストシャッター。最後の最後に見せる顔は。第四章暗室は昔喜多川に憧れていたハルミの話。彼女が山で撮った写真は、壮絶すぎるもの。第三章ストロボは友人の黒部と。第二章一瞬は昔の恋人美佐子と。ラストを飾るのは卒業写真。喜多川いとって、本作にとって重要シナリオとなっている。ベストかもしれないな。

 写真に打ち込むのは何故だろう。何故そこまで写真が好きなのか。喜多川にとってそれをとくためのストーリーがこれ。特に暗室や一瞬、卒業写真と言った酷く思い入れの残るシナリオは欠かせない。

 ただのサクセスストーリーというのは惜しすぎる。これは喜多川光司という存在のヒストリーだと思う。何故美佐子と別れたのか。彼女の存在の意味は。ハルミは何故そこまで写真にこだわったのか。全てのストーリーには刻まれた喜多川の歴史がある。

 一作読むごとに手を休めた原因はなんだっただろう。しーんみりとして落ち着きたかったのかな。基本的に一気に読める真保らしいところはここでも十分に発揮されていると思う。ミステリーじゃないが個人的にお薦めできる。

ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) (詳細)

強力伝・孤島

・「極めて現実的に生々しく描写された人間の感情,行動に、背筋や首筋に悪寒を感じながら読み進みました
中央気象台で富士山測候所勤務等の経験を持ち、「山」,「雪」,「風」を知りつくしたスペシャリストとして山岳小説の分野を拓いた「新田次郎(本名 藤原寛人)(1912-1980)」の処女作で、第34回直木賞授賞作「強力伝」に「八甲田山」,「凍傷」,「おとし穴」,「山犬物語」,「孤島」を加えた6短編小説が収録。

極めて現実的に生々しく描写された人間の感情,行動に、背筋や首筋に悪寒を感じながら読み進みました。

特に「強力伝」,「八甲田山」,「凍傷」,「孤島」は実話をもとに書かれた小説で、その想像を絶する様々な出来事から、小説を読みながらにして「事実は小説よりも奇なり」という言葉を思い起こしました。

・「筆が弱い
強力伝の主人公は小見山正がモデルだといわれています富士山の強力でしたが腕を買われて白馬岳の頂上に石の台を上げることになります175Kgの石を二つ頂上まで担ぎ上げましたすごいですね8年前に白馬岳に登りました頂上に石台を見つけましたこんなものを一人で担ぎ上げたのです強力伝を書いていたころの新田次郎の筆は弱かった嫁さんに負けてはいけないという気持ちが強すぎて不要な書き込みが多すぎるそれでも直木賞をゲットしたのは行間にあふれる情熱です我々は新田次郎の情熱に共感し感動するのです

・「「実直」、その何ものでもない小説
「新田次郎」の名はさすがに知ってはいたが、その本を初めて読んだ。今までその名前の印象から、「堅い」感じがして全く興味が無かったのだ。

しかし、世が変わり、藤原正彦の「品格」に始まり、この人の父親は如何なる人か?ベストセラー作家の藤原ていの夫、家族より頑なまでに仕事を優先した人物はどういう人か?と非常に興味を持ったのだ。蓋を開けてみれば想像通り、文章から「実直さ」が読み取れます。今回の本は、全て厳しい自然、山に関する内容。

・山にとんでもない重量の石を運ぶ・雪山で遭難・冬の富士山登頂観測・狼との戦い・山犬退治・孤島の観測

中でも、最後の「弧島」は、環境は違えど同じサラリーマンとして多少ながらも気持ちが解かりました。

■お薦め度:★★★☆☆(さすがに、下級侍の血を引く男の文章。理路整然。ここからやんちゃ次男坊の「品格」に通づるのであるな、納得!)

・「ときには”仕事”の厳しさと正対してみよう。
 明æ-¥ã®ã‚¸ãƒ§ãƒ¼ã€çŸ¢å¹ã‚¸ãƒ§ãƒ¼ã¯å©ã„て、叩いて、叩いて、そã-てリングの上で真っ白な灰になってã-まいまã-た。 å"çªã§ç"³ã-訳ないですが、強力伝ã‚'読ã‚"だとき、まず私の心に浮かã‚"だのがã"のラストシーンだったのです。

 ç"Ÿãã‚‹ãŸã‚ã«ã™ã‚‹ã®ãŒä»•事なのか、å'½ã‚'è³­ã-てするのが仕事なのか。。。å€'ç"£ã€ãƒªã‚¹ãƒˆãƒ©ã€å޳ã-い社会æƒ...勢ですが、流行りのç™'ã-系に逃ã'るのではなく、時には”仕事”の厳ã-さã‚'æ"¹ã‚ã¦è€ƒãˆã‚‹ã®ã‚‚良いかも。そのきっかã'にお勧めã-ます。 『強力伝』が動の厳ã-さならば、『孤島』は静(停)の厳ã-さã‚'現わã-ています。

 『å...«ç"²ç"°å±±ã€ã¯å¾Œã«ã€Žå...«ç"²ç"°å±±æ­»ã®å½·å¾¨ã€ã¨ã-て完成度高くまとめられていますのでã"ちらがお勧めです。 そのほか『凍傷』、『おとã-ç©'』、『山犬物語』、æ!-°ç"°æ¬¡éƒŽåˆæœŸã®ä½œå"ãŒåŽéŒ²ã•れています。

強力伝・孤島 (詳細)

ボトルネック (新潮文庫)

・「苦すぎるんだけれど絶妙な味わい
 悩みます。 というのも、この本、紹介がとても難しいのです。 普通の意味で「面白い」という本でもないし、「感動的」でも「エキサイティング」でもないし、「胸が暖かくなる」というのとも違うからです。 どちらかといえば、「衝撃的」で、「印象深く」て、「考えさせられるところが多々ある」作品ですが、なにより印象に強く残るのは「異常なまでの後味の悪さ」だという作品です。負のオーラがばりばりに出ている作品です。青春小説のていは取っていますが、中身はなまじの厭世小説よりも心に苦みを植え付けます。 けれど、ある意味傑作なのは間違いがないのです。心に残るのです。 どのようにしてそのあたりのことを伝えたらいいかわからず、実に紹介を書くまでに悶々とした作品です。 彼の他の作品、たとえば「春期限定いちごタルト事件」のような甘酸っぱさはなく、結果的に衝撃が待ち受ける「さよなら妖精」とも違い、後味の悪さや悪意の度合いは、ユーモラスな中にも毒が強かった「犬はどこだ」を遥かに上回るというこの作品。米澤さんの才能を強く感じさせるとともに、読んでてしんどくなる一冊でもありました。 しんどいのに辞められない、どこか惹かれてしまうところがこの作品にはあります。主人公の弱さ、至らなさ、運命の理不尽さに翻弄されざるを得ない状況、悪意の強さ。どれもが味わい深いんです。例えていえば、ちょっとニュアンスは違うんですが太宰治の「人減失格」のような感じでしょうか。 主人公はまだ高校生ですし、パラレルワールドにも行くし、小さなネタをしっかりと回収していく日常の謎系の要素もふんだんにあって、全体の構成物はポップなんですが、できあがった作品はひ軽みの中に苦さが強くがつんと効いています。 なんだかわかったようなわからないようなレビューですが、是非読んでみて欲しい一冊です。

・「間違い探し
 恋人を弔うために東尋坊に来ていた「僕」は、強い眩暈に襲われてそのまま崖下へ落ちてしまった……はずだった。ところが気づけば見慣れた金沢の街中にいる。不可解な思いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられる。どうやらここは「僕の産まれなかった世界」らしい。 こうして姉と僕の「間違い探し」が始まります。育った環境は同じはずなのに、どうしてこうも「現実」は違っているのか。姉の世界と僕の世界の差はあまりにも衝撃的です。現実は直視したくないほど残酷でただ流されるだけの僕は無力。努力だけではどうにもできない。 ボトルネックとは何のことなのか、障害は排除されなければならないのか。考えるほどわからなくなりました。 サイコホラーのように怖く救いのない話ではありますが、全く救いがないのかというとそうともいえない。ここが米澤作品の不思議なところなのですが、絶望感や無力感がきっちり描いてあるところにかえって癒される気がします。後味は決して悪いものではありませんでした。

・「とんちんかんなレヴュー
 この小説から強いてメッセージ性を引き出すとすれば、それは、逃げるな! ということだろうか。 主人公リョウによって、物語は語られる。このリョウ、という男、あまりに私に似ている。

……足元を見て首を引っ込めていれば大抵の嵐はやり過ごせるというのに、想像力がなんだというのか。

 リョウは、想像力を働かせるのが苦手だ。私もまた。

この三日間で、ぼくは考えを放棄することを学んだ。ぼくが何を考えても、結局はどこにも行きつかない。なら、教えてもらうのがいい。導いてもらうのが楽だ。

 この二十何年間、私は「考えを放棄」し続けてきた。私が「何を考えても、結局はどこにも行きつかない。なら、教えてもらうのがいい。導いてもらうのが楽だ」。黙っていれば、誰かが助け舟を出してくれる。何もしなくても、誰かが横から助けてくれる。

ぼくも、ぼくなりに生きていた。別にいい加減に生きてるつもりはなかった。しかし、何もしなかったことが、こうも何もかもを取り返しがつかなくするなんて。

 私も、私「なりに生きていた。別にいい加減に生きてるつもりはなかった。しかし、何もしなかったこと」で、自分ひとりでは何も考えられない、決められない、行動できない、どうしようもない男になってしまった。私はいつもそれを、環境のせいにしていた。逃げていた。逃げずに生きること。現在と未来とを侵食してくる過去と、現在のなかで、目をそらさずに闘うこと。それが私に必要なことなのかもしれない。

 ミステリ小説らしい、不気味なかしょを紹介する。まずは、黒猫。

猫を見つけた。毛並みの美しい、黒い猫。ぼくと目が合うと、なぜか少し近寄ってくる。その猫の、美しい緑色の目に、ぼくは一瞬惹きつけられた。が、黒猫は退屈そうな鳴き声を上げると、ぷいとそっぽを向いた。まあ、好かれるとは思っていなかった。

 〈美しい緑色の目〉は、別のかたちで繰り返される。どう繰り返されるのか、それは、本書を手にとってご確認のほどを。

 つぎは、子供。

子供がふと顔を上げた。ぼくと目が合う。/にこりと子供が笑った。……途端、ぼくはものすごい違和感を感じた。その子の表情が妙に分別くさく、年不相応な、似つかわしくないものに感じられたからだ。

 さらに、この子は女性に、「川守! もう、汽車が来るよ!」と呼びかけられている。「川守」は苗字であって、名前ではなかろう。大人が子供を呼ぶとき、こんな呼び方をするものだろうか? この子はいったい、なんなのか。黒猫が化けたのか。あるいは、黒猫さえ、なにかが化けた、かりそめの姿なのだろうか。「川守」とは、川における渡し守か? とすれば、どんな川の渡し守か? 三途の川か? いずれにせよ、ただならぬ雰囲気を醸し出している。

伏線という視点では、序章の密度が特筆に価する。(村上貴史氏による「解説――次の一歩を」より)

 私が見事だと思った伏線を紹介する。

白い花を投げ込む。/しかしびょうと吹いた海風に、小さな花は押し戻され、投げたぼくの足元にはらりと落ちた。本当に風が強い。

 これは、私のカンであるが、この小説が訴えかけてくるものは、私たちが潜在的に感じていること、考えていることなどと、目をそらさずに向き合え、想像しろ、答えは自分のうちにあるぞ、という叱咤激励であるような気がする。

・「思春期の男の子が痛ましい思いをする話
パラレルワールドもの!?

思春期の男の子が痛ましい思いをする話程度の差はあるが米澤氏の作品にはこの手のものが多い!?

未熟であること罪なのか悪意をもって人を傷つけることに比べたら、仮に罪だとしても非常に軽い罪ではないのか

それに対して、この罰はひどいくないか失望の末の死か、絶望しながらの生かの選択

主人公は弱い立場の人間だ弱者にムチ打つラストだった

主人公は何もしなかったことで、危機(ノゾミの死)に気付かなかったこれって罪か

しかも、積極的に行動したサキというキャラは主人公に絶望をもたらした

じゃあ、どうしたらいいの???過程より結果が全てということか

現在の日本の閉塞感がよく現れている作品

元の世界で、ノゾミは主人公を恨んでないと思うノゾミが死なない可能性(世界)はあったしかし、元の世界のノゾミはそれを知らない

ノゾミの怨念が主人公を別の世界に送り込み、罰をあたえたとは思えないでは、誰が、なぜ、主人公を別の世界へ送り込んだのか???

・「爽やかに苦い・・・・だろうか。説明が難しいです。
高校生の主人公がもう一つの現実世界、パラレルワールドに迷い込んでしまう話です。そこには主人公の代わりに生まれなかったはずの姉が存在します。二つの世界の差はそれだけ。しかし、積極的に問題を解決しようと努力を続けた姉の世界は元の世界と比べるべくもなく素晴らしい世界になっています。自分の存在意義に苦悩しつつ、姉と共に協力し、主人公は元の世界に帰る術を探ります。二つの世界の差異を紐解く過程がミステリーになっており、この点においては謎解きも楽しく軽快に読み進めることが出来ます。姉のサキの明るくおせっかいな性格が作品に華を添えていますね。しかし、主人公に感情移入すると途中から読むのが辛くなっていきます。姉がいるもう一つの世界を知れば知るほど、元の世界と比べて何もかもがうまくいっていることに気づかされ、主人公は圧倒的な無力感に打ちのめされます。けれど、まったく救いのない作品ではありません。ラストシーンを終えて本を閉じた後、私は主人公の選択を想像しました。そこには読み手が想像力を羽ばたかせる余地があります。ぜひ、この感覚を味わっていただきたい。読んでいてもやもやする部分が多々ありますが、読んで損なし、と私は思います。

ボトルネック (新潮文庫) (詳細)

僕たちの戦争 (双葉文庫)

・「これぞ荻原流!ユーモアと哀感で戦争を見る
この物語が,単なる戦争モノと違う点はふたつあると思う。ひとつは,戦局をにらむ上官たちや,反戦を叫ぶ市井の人々はほとんど登場せず,訓練所における厳しい生活を赤裸々に綴っているところ。これを現代の若者の言葉で語らせることで,戦時中のリアリティがびんびん伝わってくる。もうひとつは,入れ替わりの期間が11ヶ月と長期で,最初は元の時代に戻ることばかり考えていた二人が,その時代で生きる術を身に付け,順応する過程がしっかり描き込まれていること。特に,終盤の健太の振る舞いには泣ける。惜しむらくは,後半に登場する人物がちょっとご都合主義過ぎること。タイムスリップという飛び道具を除けば,極めて素直に物語が進んでいるのに,そこで無理に因縁をつける必要は無い。果たして二人はそれぞれの時代に戻れるのか・・・結末に言及するのは避けますが,現代の恋人・ミナミの元に戻ってくるのがどちらであっても,ミナミと彼の前途が明るいものであることを信じたいです。

・「読み応えあり!
この作者の作品はどれもかなり面白いが、これは面白いだけでなく、強く心に響いた。読みながら、ふっと笑えたり、涙がこぼれたり・・ありきたりなタイムスリップ物としてでなく、ところどころにちりばめられた言葉が痛いほど、するどくこころに残る。「何もしなければ、歴史は変わらない」のではなくて、「何もしなければ、歴史は変わってしまう」今、自分に何ができるのか、ただ、漫然とその時代の波にのまれるのではなく、どう生きるのか?それを主人公たちが、必死で探ってゆく姿がいい。ラストはあれでいいのだろうとは思うが・・・

・「共通の衝動
現代に生きる若者も、戦時中に生きる若者も、心の奥底にある衝動は変わらない。どちらも、周囲に認められたくて、自分自身に納得をしたくて、そういう思いを秘めていることを主題に、物語は展開していく。タイム・スリップもの作品の中でも、特に、戻れるか否かの構成と描写は秀逸で、惹きつけられてやまない。同時に、それぞれの若者像も愛すべき人物像として描かれていて、深刻になり過ぎずに読める分、ラストの展開の重さはディフォルメされる。

・「昭和の少年と平成の少年が入れ替わったら・・・
現代っ子、健太は何事も中途半端なフリーターの19歳。一方昭和19年の戦時中。航空隊員の吾一は戦争の影響を受けた軍国少年の19歳。2人はひょんなことから時代を飛び越えてそれぞれ健太は昭和に、吾一は平成に飛んだ。驚いたことに2人は瓜二つであった。2人は自分の生きる時代が変わった中で生きてゆけるか?

よくある話・・・なーんて思っていたら痛い目にあいますよ!!!!!ストーリーが良く練られていて、すばらしい。2つの時代が重なるところもいい。そして感動のラスト。どっちなんだ!?ってだれもが言っちゃいますよね?ここは賛否両論があるとこだけど、あえてこのラストでよかったと思う。

・「荻原浩オソルベシ!な一冊でした!
というのも、設定が陳腐な、ありがちでありながらだ、

どうやって終わらすかが、この手のパラドックスものの核だけれども、

変に深刻ぶる事なく説教じみる事もなく、このテーマをこの普遍性でねじ伏せるストリーテラーっぷりは恐れ入谷のでんでんだいこであった。

おまけに、この究極のエンディング..................

これだけ普遍性を持たせつつ、メッセージありつつ、うますぎる!

あなたはどちらが海から浮かんできたと思いますか?

僕たちの戦争 (双葉文庫) (詳細)

誘拐者 (文春文庫)

・「良くできた作品だと思いますが描写が・・・
折原一の作品を初めて読みました。

・「折原作品でも1,2を争う傑作だと思ってます
自分は折原さんの作品ではこれが一番好きです。折原さんの作品で、ラストで感動したのってこれだけなんですよね(笑)まあ、色々とんでもない描写とか人物が出てくるので好き嫌いが分かれるのは本当によく分かります。ビニール袋に入ってたグシャグシャしたものの正体が分かった時は「うげえっ」ってなりましたよ。でもプロットが練られていて、とにかく一度読み出すとやめられない。この作品と『冤罪者』、『異人たちの館』、『天井裏の散歩者』が折原さん作品四天王だと思っております。

・「ワンパターンですね
 なぞの瀕死の男性、子供の誘拐、身元のわからない不気味な女性、、、などなど、時間、空間を前後して話はすすんでいきます。折原ワールドです。でも、話としては、つくり過ぎ。くどすぎる。 ある人物が、別な殺人者と入れ替わる(殺し方まで同じ)必然性はまったくないと思うし。精神に異常をきたしたからといって、いきなり、殺人はしないと思うし。

 もうすこし、適度なひねりと、落ちのものを期待しています。

・「面白いが、グロテスクな描写の多い作品
折原一さんのことは、朝の情報番組で「黒い森」が特集されていたのを見て知りました。「まずは読みやすい文庫から」と考え、本屋でなんとなく選んだこの作品を読んでみました。ということで、他の折原作品はまだ読んだことがありません。

帯に「追跡、また追跡、逆転、また逆転!」と書かれてありましたが、そのコピーがこの作品によく合っていると思います。ある程度予想しながら読んでいましたが、その予想が何度も覆されました。薄い本ではないけれど、いつの間にか話の中に引き込まれ、すいすいと読み進めていくことが出来ました。

ここまで褒めてきましたし、「面白い」「すごい」とも思いましたが、気になる点があります。それは、グロテスクな描写の多さです。この作品中の犯罪の異常性を示す上で必要な描写かもしれませんが、ホラーやグロテスクなものが苦手な私は目を背けたくなるような文章がたくさんありました。このような描写は作者の文章の上手い下手ではなく、苦手な人は生理的に受け付けないと思うので、不安な方は読まないでおいた方が無難かもしれません。もし仮にこの作品が実写映画化されるとしたら、R指定などされるのは間違いないでしょう。(実写化は不可能でしょうけれど)

不安だけれどどうしても気になるという方は、本屋でプロローグの部分だけでも読んでみてはいかがでしょうか。それよりもグロテスクな描写がたくさんあるので、その時点で苦手そうという方はやめておくべきです。

長文・乱文、失礼しました。

・「母の愛が引き金の狂気
ある写真週刊誌の記事を元に次々と起こるバラバラ殺人。その影には20年前のある誘拐事件が・・・。時間・空間を前後しながら「母の愛」を元にした狂気が進行していく様はスリリングで迫力があり、またかなり手広くなった世界観がしっかりとまとめられている結末も見事。

とはいえ、「落ち」の部分のトリックがやや苦しいかな?という印象もある。すべての辻褄はあっていて、物語はきっちりとまとまっているのだが、ストーリーとあわせて後読感はよくない。それが味だ、といえばそうなのかも知れないが・・・。

誘拐者 (文春文庫) (詳細)

リセット

・「人生のバイブル
ケン・グリムウッド著の名作「リプレイ」以降、夥しい数の、人生をリセットする物語が書かれた。私の知る範囲でも、50作品程度は揚げられるので、その実数は、非常に多い。そんな中で、本作品には一味も二味も異なる味わいがある。

本作品では、三人の中年女性が、三十年前にタイムスリップする。そこで三人が目の当たりにするのは、当時の眼では見る事の出来なかった現実だ。

ここでは、思ってはいても、口に出しては言えない様な事が、ズバズバと書かれている。これらは、齢を重ねて、多くの経験を積んでから、ようやく掴み取る事が出来る様な内容だ。

大人は、それらを、決して口に出しては言わない。それらは、人生の重要な指針であり、かつ、真理でもあるのに、だ。これから社会人になって、または、自らの輝かしい人生をアレンジしようとしている方には、正にバイブルの様な作品だ。

本作品は、多くの小説作品を読んでいる方には、小説技巧的な面で、少したどたどしく感じるかも知れない。それでも、充実した内容、つまり本作品のエッセンスの前には、その様な事は霞んでしまう。

人生とは?幸福とは?

・「むやむやもリセット・・・
 日ごろ割り切ってしまおうとしても割り切れない世の中、両親への理不尽さ…。読み終わった後、いつも心の奥のほうで燻っている感情を、ずばり代弁して言ってもらった気がして、すごく爽快でしたー。3人とも立場は違うけど、一番根底のところで抱えているものは一緒なんですよね…。巷のドラマの中によく登場する、ステレオタイプに分類された女の人を見るたび妙に違和感を覚えていたのですが、この物語はちょっとそれとはちがう正直さがありました…。リッセット先が高校3年生っていうのも私にはすごく絶妙でした。

・「おもしろかった
この本はおもしろかった。高校生にかえる?そんなことできるわけないんだし、、、そう思っていた。でもこの本は、時間をもとに戻してもう一度生き直すことを描いただけの作品ではなかった。あのころみていたものを今思い出してごらん、それって本当の姿だった?今ならみえるかも。さあこれからどうする? これは今を新鮮にみせてくれる本だった。

・「面白い!
読み追えた後に暖かい思いになります。改行ばかりで無理やりページ数を稼いだ小説とは違う。手抜きなし!読みごたえ十分です☆

・「幅広い年代の女性に自信を持ってお勧めしたい本
過去の自分に戻るタイムマシンもどきの小説は多いけど、この本はそこを47歳の女が30年前に戻るという、女の人生やり直しに視点を置いているので目新しく大変面白かった。結婚、仕事、出産、介護と、女の人生には避けて通れない問題を、異なるタイプの女3人が違う人生を生きることから見えてくるもの。30年前に戻っても、47歳の記憶を持ったまま戻り方が分からず33歳までその人生を生きる。その47歳の記憶がミソで、高校3年生の当時には見えなかった母親の姿が、47年間女の人生を経験したからこそ見える姿。晴美、薫、知子3人の個性が異なるだけに、人生の選択にも個性が出て、女の人生に幅が出ている。この本を読むと、なんだか体に元気が充電されていく。人生に遅すぎるとか、女だから、とか理由じゃないかもと思わせるからかもしれない。

リセット (詳細)

感染列島 パンデミック・イブ

・「タイトルや期待への瞞着。
H5N1型ウイルスについて、これまで「パンデミック 感染爆発から生き残るために」小林照幸著、「ウイルスパニック 新型インフルエンザ大感染の恐怖」皆川正夫著、「新型インフルエンザ上陸 その時どうする?」損保ジャパン著、「H5N1型ウイルス襲来」岡田晴恵著、「新型インフルエンザ対策ハンドブック」岡田晴恵著を読んできた。そして本書を見つけた。しかし他者のレビュー評価が低い。じっくり読んでその評価を確認しようと読み始めた。すぐにそれは本当だと思った。作品のタイトルを見て新型フルの大感染、パンデミックイブの緊迫した日本列島、患者、医師、厚労省に外務省に政府のパニック状態、と勝手なイメージを膨らませて読んだのがいけなかった。つまりタイトルと内容・展開がアンマッチなのだ。出版社の女性編集担当とミステリー作家、程度の低い厚生労働大臣、その実弟の総合病院長、パリにオスロ、その他欧州各都市、沖縄で鳥インフルエンザ発生、慶良間諸島でヒトに感染、絵画に棲息するダニ、フン、ウイルス、モナリザにムンクの叫び、これらが噛み合わずに話が進み、かつ世界中に鳥インフルエンザの脅威が増すばかりと言う。要はタイトルから期待する相当の緊迫感がないのだ。主題が恋なのか、絵画に秘められた謎なのか、H5N1型ウイルスなのか、パンデミックのパニックなのか、どれかに絞って欲しかった。或いはタイトルを変えて欲しかった。

・「物足りなかったです!
吉村達也の小説は結構読んでいて、そのテンポの良さや軽快な文体が気に入っています。

今回は重そうな内容かな?と思い、けれどそれはそれで楽しみだったのですが… う〜ん、何だか内容は深刻なんだけれど、それに反比例して文章が軽すぎる様に感じました。

映像向けの作品と言う印象を拭えませんでした

・「儲ける為だけの小説
こういった小説を書く場合、作者に求められる能力が二つあると思います。まず第一に知識、第二にそれを効率よく伝える文章力です。この小説の作者には第二の能力が欠けているように感じられました。鳥インフルエンザについての解説をするのは主軸人物の小説家の男ですが、それまでの会話文とは打って変わって、何行にも渡る、まるで新聞からコピペしてきたかのような説明を始めます。説明文は最初の警官たちの会話とは異なり、何年の何月に何羽感染した、中国は何万羽の鶏を殺処分した、とやけに正確なデータをズラズラ並べていますが、せめてもうちょっと人間らしさを残すセリフにするべきだと思いました。まるでロボットが喋っているようです。また、途中途中に作者の努力の跡とも言うべき他者が口を挟むシーンがありますが、とってつけたような不自然さが残る文章でした。どのような文章かと言うと、主軸人物の女性が小説家の男にデレデレするという文章と同席した男が単語の解説を求めるという文章なのです。更に、300ページあるこの小説の冒頭40ページ部分でこのような説明をされても読者は正確に覚えていないでしょう。覚えているのは国の予測は甘すぎ、死者は1000万単位だ、という主軸人物のセリフくらいだと思います。またストーリーの主軸になる二人の男女(小説家の男と美術系職の女性)は長身イケメンと理知的な美女という設定で、あまり恋愛要素を挟むべきでないこういった小説には不適当な配役だと思います。時節に合っているため、おそらく売れるでしょうがハッキリ言って読む価値はありません。また、帯に書いてある「まもなく起こる現実だ」という文章は取りやめるべきです。実際どのようなタイプの病気が広まるかは未知なのですから、いたずらに不安を煽るコピーは卑怯ですし不安に乗じて金を儲けるのは商売人として如何なものかと思います。

・「お粗末
序章で発見された焼死体の事件性が生かされず、生ゆるいまま感染という展開になってゆくのでパニック小説の臨場感が全く無い。感染ルートに重点を置いたからか、死に向かわざるをえない感染者の恐怖が全く無い。所々人を亡くした近親者の悲しみという感情が挿入されているものの、その悲しみは単語止まりで物語を膨らませもしない。更に登場人物が感染して死が差し迫る時に、電話・メール・手紙を長文で残していく展開が、死を真近にしながら残っている体力をも連想させてしまい感染による危機感を喪失させている。ラストの終わり方も社会への提言となり、それまでに恐怖を描けていない中での提言は、新聞のコラムにしか見えない。

感染列島 パンデミック・イブ (詳細)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

・「たった一人を
途中で読むのを止めたくなる小説がある。本書にも何度「もう止めたい」と感じたことか。あまりにも痛切で、胸苦しくて・・・いい大人が高校生の恋模様に何を今更、と思うが、本書は年齢不問の超越的な恋愛小説なのだから仕方ない。

主人公は、16歳の木島悟と村田みのり。はじめに小5の木島の章と中1のみのりの章があり、高校2年で同じクラスになったところで物語は本格始動する。各々の視点で交互に6章が描かれる。

16歳はバランスの悪い年齢だ。大人になりかけの過渡期。自分の気持ちが定まらない。感情の針が激しく振れる。エネルギーが充満して出口を探している。そんな時期に、サッカーと絵を描くことが好きな木島と、描けないが絵が大好きなみのりが出会う。二人は揺れながら、揃わない足並みで、けれど真剣に心を通わせていく。文章もセリフもなんてセンスがいいのだろう。それ以外にないような文言が連ねられていて、二人がひかれ合っていく理由が、プロセスがわかりすぎるほどにわかる。泣きたくなる。障害もある。アクシデントもある。年齢相応の悩み―自分の核となるものの模索、可能性と向き合うことへの怖れ、友人関係・・・そういったものを忽せにしないことがリアリティを生む。リアリティと言えば、二人を結びつける「絵」の扱いの丁寧さ。著者の『しゃべれどもしゃべれども』の落語もそうだが、人と人との間に介在する素材をとことん書き込む作家だ。どちらがメインかわからないぐらい徹底して。この点でもって凡百の恋物語と一線を画するのだ。

多くの人間の中からたった一人を選び、その人に選ばれ、長い約束を交わすことがいかに大変なことか。恋は易くない。本書を読めば嫌でもそれを知らされる。

・「高校生の時の自分でなく、今の自分でも満足できる作品!
角田氏が解説で高校生の時の自分に読ませたかったと解説していますが、何歳の人が読んでも、失いかけていたものを取り戻せる、人としての成長とそれを分かち合える人との出会いの素晴らしさを思い出させてくれる青春文学作品です。

最初と終わりを比べると、確かに文体が違いますが、それは10年間かかって仕上がった作品であることと、作者が児童文学のジャンルからきているためと思われます。

最初の1章と2章を読むと、この本は一冊の本ではなく、短編集だったのかと勘違いしますが、その時は、角田氏の解説の最初を読めば、謎が解けます!

3章を読む頃には、登場人物に引き込まれ、この本に出合ってよかったと思えるようになります。

ラストもドロドロした現実を乗り越えて美しい!!!!

高校生はもちろん、30代、40代の読者にも読んで欲しい作品です。

・「素直に、自分と向き合わせてくれる
「限界とか見えちゃいそう」だから「マジになる」ことからぎりぎりまで逃げている絵の得意な悟と、キライなものばかりで、家族とも友達とも関係を上手くつなぐことができないみのり、2人の「16歳」を、交互に一人称で描いていく物語。

美術の授業をきっかけに、2人は「描く、描かれる」関係を築いていくことで、それぞれが成長しながら、恋よりももっと特別のつながりを見つける――少し目を背けたり、あっちこっちと戸惑いながらも、自分の厭な部分もきちんと受け止め、自身を肯定できるようになる、その過程が丁寧に、生き生きと、きっぱりと巧みな挿話の積み重ねのなかに、描かれています。

嫌いだけれども好きという手に余る気持ち。受け入れてくれることへの嬉しさと、でもそれが一瞬にして崩れてしまうかもしれないという不安。真剣に向かいあってくれる人がいることがどれだけかけがえのないことか。読んでいると、たくさんの気持ちが容赦なく押し寄せてきます。

本の帯には「高校生の恋愛グラフィティ」とありますが、定義したり、説明しようとした途端にこの小説のよさがことごとくこぼれ落ちてしまいそうなので、とにかく、読んで欲しいと思います。

・「絵は描く人と見る人がいる。
絵描きで叔父の通ちゃんだけに心を開く村田みのり。自分が描く理由を探しながらも描くことに全てを注ぐ木島悟。ただの同級生だった2人が「絵」を通して立ち止まりながらも、悩みながらもつながっていく。お互い自分達が漠然と抱えていたモヤモヤにゆっくりと気づき、向き合っていく様子が上手に書かれていると思った。ある意味平凡な毎日だけれどもその中で一生懸命悩み心身共に成長していく2人がとても綺麗。甘ったるい恋愛話ではない。でもお互い正直に本音を言い合える、潔い仲だと思う。こんな恋愛は長く続くんだろうなv

・「マジ
強いのか?弱いのか?強いってどういうものなのか?

よく考えさせられる物語。

気持ちを正直にぶつけられる人や物があるだろうか?

絵が大好き、描くより見るのが好きという村田みのりは、叔父が有名なイラストレータでマンガ家。小さな頃から家族とはうまくいかず、叔父だけが心許せる存在だった。

絵が好き、描くのが好きだと知らなかった木島悟。好きか嫌いかさえもわからないくらい遠い存在である父親の影に振り回されている。

この二人のそれぞれの幼少時代の話、そして、出会い、それから。。。

何か小難しい人物達の話なんだけれども、いろいろ訴えかけるものがあり、その中でも、本気(マジ)がメインテーマとなるのでしょうか。

何かやろうぜ!マジになった、なれたら、すごいんだぜ。

マジになろうよ。マジに。。。

「マジ」って言葉によって、「マジ」になろうよ

ときっと思うはず。

きっと何か感じるはず。

私はこの本を読んで、マジになろうと思いました。

マジ!!私のやるべきことをやります!!

黄色い目の魚 (新潮文庫) (詳細)

懐郷 (新潮文庫)

・「高度経済成長期、地方で暮らす女性たちの切ない物語
 全7編、どれも時代は戦争直後、日本が高度経済成長に突入した時期に地方の寒村でひたむきに生きる女性たちの切ない物語。 なかでも『お狐さま』が秀逸か。教師である夫の赴任先、慣れぬ土地で暮らす小夜子。ある日お稲荷さまで狐を目撃する。それ以来、まさに狐に憑かれたように狐に執着する小夜子の姿は周囲の人々に奇異に映るが…。切なさの中にもユーモアあるもの悲しい物語。 読み応えある短編集。

・「3丁目の夕日とは一味違う昭和の物語。
彼女は、道に立ち、カタコトの英語で男に自分を売り、生きていた。一生1度の本気の愛に出会うまで…という生活のために売春をしたたかに続けながら純愛に生きる女性などを描いた話などがおさまった短編集。学生運動、朝鮮戦争、集団就職先の職場が微妙だった…など3丁目の夕日などノスタルジア狙いのお話ではでは生々しくは描かれないであろう「昭和」の物語である。また、稲荷のキツネにと主婦のふれあいとか、海女がアワビ漁のために潜る海など、自然と人間のふれあいを描いた話もいい。お涙頂戴のしんみりした人情描写が一切ないので、なんだかドキュメンタリーを読んでいるよう。そのあっさりした筆致が逆に物語をくっきりと印象強くしている。

懐郷 (新潮文庫) (詳細)
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