邂逅の森 (文春文庫) (詳細)
熊谷 達也(著)
「壮大なスケールで描くマタギ、富治の半生」「山本周五郎賞は裏切らない」「人智を超えた自然の営みに神を感じた時代…」「クライマックスは凄い」「圧倒的に骨太な名作」
翳りゆく夏 (講談社文庫) (詳細)
赤井 三尋(著)
「安心してよめる社会派ハードボイルド小説」「ミステリーと切ない人間ドラマの融合」「サスペンス劇場にピッタリかも」「超優良ミステリー」「なるほど受賞作」
ノーザンライツ (新潮文庫) (詳細)
星野 道夫(著)
「宝物になりそうな本」「何度読んでも新鮮」「北からの光が照らすもの」「アラスカ紀行」「深い輝きに満ちたエッセイ集」
株価暴落 (文春文庫) (詳細)
池井戸 潤(著)
「面白い!」「推理小説なのか経済小説なのか?いずれにせよ面白い」「1冊で3度おいしい小説です!」「読み応えのある本」「金融推理小説」
蝉しぐれ (文春文庫) (詳細)
藤沢 周平(著)
「何百冊か読んだ時代小説の中でこれがベスト」「作家の力量」「10年後にもう一度読みたい」「深いなぁー」「精神がきりりとする作品」
クライマーズ・ハイ (文春文庫) (詳細)
横山 秀夫(著)
「短編もいいが、長編もすごい。」「命の重さと報道のあり方を問う本格社会派小説の真髄!」「素晴らしい作品です」「心拍数上昇」「一気呵成にせまる傑作!人生とはなにかを考えさせられる。」
天使の代理人〈上〉 (幻冬舎文庫) (詳細)
山田 宗樹(著)
「中絶に対して様々な角度から考えさせられた」「命。」「全ての女性に(男性も是非!)読んで欲しい」「尊厳」「異性が読んだらどう思うのか、と男女ともに思うだろう」
フォー・ディア・ライフ (講談社文庫) (詳細)
柴田 よしき(著)
「眠れなくなること請け合いの本」「がんばれ、ハナちゃん」「ハナちゃんがいくー奈美先生の主人公の作品も是非!」「保育園の園長が大活躍」「心にしみる」
子盗り (文春文庫) (詳細)
海月 ルイ(著)
「普通の展開で驚きがなかった」「読後感が・・・」
鳥玄坊先生と根源の謎 (講談社ノベルス) (詳細)
明石 散人(著)
行きずりの街 (新潮文庫) (詳細)
志水 辰夫(著)
「男の苦い優しさ」「ハードボイルド恋愛小説の秀作」「優れたハードボイルドミステリ」「不撓不屈の熱き魂」「探偵ではないハードボイルド」
月の扉 (光文社文庫) (詳細)
石持 浅海(著)
「爽快な謎解き」「独創的な設定」「一般向けではないのかも」「密室殺人+ハイジャック。緊張感と手堅い論理に作家の高い能力。」「美しく構築されたファンタジックなミステリー」
「おもしろ過ぎる!!」「愛に対する欲望は、簡単に時間を超えるか?」「いろいろ考えせられました。」「スピード感があってよかった。」「過去の自分が現在の自分を支えている」
「衝撃を受けた徹夜本」「アキラを思い出す」「大作RPGをクリアしたときの気持ちを楽しめます」「読み手の想像力が試される「新世界」」「これこそエンターテイメント小説です」
ハゲタカ(上) (講談社文庫) (詳細)
真山 仁(著)
「綿密な取材に基づいた生々しい描写が魅力」「基本的にドラマとは別物」「一気に読めます」「面白」「バブル崩壊後の日本経済のダイナミズムを描く」
黄泉がえり (新潮文庫) (詳細)
梶尾 真治(著)
「愛の物語なのだ」「黄泉がえり」「死別した愛しい人にもう一度逢えるなら」「泣く」「映画に今ひとつ納得できなかった人も是非!」
整形美女 (新潮文庫) (詳細)
姫野 カオルコ(著)
「幸せって何?」「鮮やかに、ひとしくひとの心の動きを述べた」「どっちがしあわせか?」「テンポいいです。」「並みの美人論なんて読まないでいい!」
「最後まで飽きさせない!」「まだの方は是非!」「絶対損をさせない一品です。」「惨劇と兄弟愛」「話に引き込まれ2晩で読破」
「橙色のリュックサック」「“そこはかとなく”こみ上げる可笑しさ」「レーナウーン、レナウンレナウン」「読み始めから」「参加したい!」
対岸の彼女 (文春文庫) (詳細)
角田 光代(著)
「出会い。信じること。」「専業主婦、独身キャリア・・・にこだわらず」「「フィクション」と見るか「ノンフィクション」と見るかは、あなた次第」「対岸の彼女」「初めてみる小説技法」
「最高傑作!」「再読する価値あり!」「まさにミステリー史に残る傑作」「なぜ直木賞とれなかったのか不思議なくらい」「読んでないとわかんないような批評になっちゃった・・・」
自転車少年記―あの風の中へ (新潮文庫) (詳細)
竹内 真(著)
「風の様に爽やか」「少年少女じゃなくても楽しめる」「旅がしたい」「変わっていくことと変わらないこと」「自転車と人生」
13階段 (講談社文庫) (詳細)
高野 和明(著)
「理想から乖離した現実に打ちのめされることになる」「「死刑」についていろいろ考えさせられた作品」「驚いたぁ」「罪を背負って生きること、罪を背負って死ぬこと」「やられた・・・」
なで肩の狐 (新潮文庫) (詳細)
花村 萬月(著)
「面白い」「面白かった」
「好感が持てる作品でした!!」「まあまあ」「今年一番のミステリー」
・「壮大なスケールで描くマタギ、富治の半生」
凍てつく東北の山に暮らすマタギ、富治。富治の半生をマタギという狩人としての暮らし、圧倒的な自然の中で壮大に描いた力作巨編。読み始めるやストーリーにぐいぐい引き込まれ、一気に読了した。読書の悦びをストレートに再認識させる本だ。文句なく★5つ。
・「山本周五郎賞は裏切らない」
東北の狩猟で生計を立てる「マタギ」の物語。作者ならではの東北の雄大な自然を満喫できます。東北の自然は本当に神がかっていて、自然の力強さを我々に見せてくれます。秋田、山形という設定も地元の私には強く訴えかけてきます。本作の凄さは自然賛歌だけの物語ではなく、一人のマタギの人生を描ききっているところにあるのです。その人生もすざましく濃いものであります。富治の辿ってきた人生、出会った人々、恋愛、全てが読者の心に響きます。本当に良い読書体験でありました。人間を自然の一部分として捕らえた時に、自然と対峙しなければなりません。その経験は現在では殆ど体験することが出来ません。本書に触れることでその一端を垣間見ることが出来ます。
・「人智を超えた自然の営みに神を感じた時代…」
邂逅の森…
読み進めていくうちに考えさせられた。 現代の人間は、そして自分は、 本当に生き物としての本来の生を生きているのだろうか…?
厳しい大自然と生身のまま対峙し、 共存して生きたマタギのひとり、松橋富治…
ひとたび山に分け入れば、 紛れもなくそこには命のやり取りがあり、 知恵の限りを尽くして獲物と勝負する。
獲物を仕留めた時には思いっきり息を吸い込み、 「勝負!勝負!」と腹の底から声を発っし、 木霊する雄叫びにより仲間の漁師たちに宣言する。 それは最も高揚感の滾る瞬間であり、 同時に自分が手にかけた獣の死を見つめる時でもある。
獲物となる獣たちへの敬意と、 人智を超えた自然の営みに神を感じた時代… 季節が巡り、その変化から、 そして自らの内に宿る生き物としての衝動により、 今の瞬間をどう生きるべきかを感じ取っていた時代…
多分ボクには同じ生き方は出来ない…
でも、読み進めるうちに、 登場するマタギたちの生き方に想いをはせ、 何と生き生きとしているんだろう!! 心からそう感じ、意外なほど強く羨望を覚えた。
人間の作った人間の社会という身勝手なシステムに 余りにもどっぷりと浸かり、 生かされていることへの感謝や敬意を忘れがちなボクにとって 生きるって、なんだろう…? 人間として、生き物としての本来ってなんなのだろう…?
「邂逅の森」は、そんなことを考えさせてくれる、 強烈に迫ってくる一冊でした。
・「クライマックスは凄い」
秋田のマタギ富治の大正から昭和初期にかけての半生を描いた作品。抗い難い力によって人生の重荷を背負わさされた人々が、それでも懸命に生きていく姿は感動的です。テンポの良いストーリー展開にぐいぐい引き込まれる感じ。クライマックスの富治とクマの死闘は物凄い迫力です。
・「圧倒的に骨太な名作」
ものすごい驚くべきストーリー展開というわけでもないし、血脇肉踊るサスペンスフルなシーンが連続するわけでもない。それでも、ここに描かれた一人の男の人生を通して、自然とは、文化とは、女とは、親子とは、命とは・・・いろんなことが深く胸に刻まれる本です。
・「安心してよめる社会派ハードボイルド小説」
第49回江戸川乱歩賞受賞作。乱歩賞の作品は毎年読んでいるが、私にとってはここ数年で一番楽しめた作品だった。 20年前に病院でおきた嬰児誘拐事件。主犯と思われる男女は死亡し、嬰児は行方不明のまま事件は迷宮入りとなった。 そして、20年の時が流れ誘拐事件犯の娘・朝倉比呂子が難関の入社試験を突破し東西新聞社が内定した。たが、誘拐事件犯の娘であることが週刊誌により明らかにされ、彼女は入社をあきらめる決意を固める。その優れた能力ゆえ、また、人権への配慮から、東西新聞社では、当時事件を担当した梶をつかって再調査を開始するが・・・。 物語は、20年前の誘拐事件の経緯と、現在の梶による調査が交錯し進行し、これに脇を固める登場人物のエピソードが巧みに挿入されている。また ! 現在は閑職にまわっている梶、当時事件を担当した刑事・井上、病院長だった大槻などの登場人物も脇役に至るまで丁寧に描かれている。乱歩賞というと、その字数制限ゆえ、後半ばたばたした印象を受ける作品を散見するが、本作品は、じっくりと無駄なく作り込まれており、安心してよめる社会派ハードボイルド小説である。
・「ミステリーと切ない人間ドラマの融合」
逃亡中、犯人は共犯の女性と一緒に事故死。誘拐された赤ん坊の行方も分からない。そんな20年前の事件を追う東西新聞社の梶。一つ一つのできごとを丹念に洗い出していったとき、今まで見えなかった真実が見えてきた。さまざまなできごとが最後にうまくはまっていくように、とてもよく練られ、考えられた作品だと思う。登場人物の心理状態もていねいに描かれている。何気ない言葉に隠された真実への伏線も見事。長い作品だったが、一気に読ませる力を持っている。この誘拐事件は、いろいろな人間の思惑が複雑に絡み合って生まれた事件だと思う。ミステリーとしての面白さと同時に、人間ドラマとしての切なさも合わせ持った、読み応えのある作品だった。
・「サスペンス劇場にピッタリかも」
「第49回江戸川乱歩賞」受賞作です。こういう賞ものに弱いです(^^;)
赤井さんはニッポン放送を経て、今はフジテレビにお勤めの現在52歳かな?他にも出版されてるのか分かりませんが、受賞作という事で興味を持って購入しました。しかしながら、とても面白かったです。
舞台も赤井さんに近いような新聞社というだけあって、臨場感がありました。20年前に起こった未解決の新生児誘拐事件に絡んで、被害者、加害者、記者、病院関係者と、もう時効もとうにすぎた事件を追っていくのですが、少しずつ核心に迫っていきます。そして最後は・・・う〜やられた・・・!
これは間違いなくドラマ化されそうだな〜。サスペンス劇場にピッタリかも(^^;)
・「超優良ミステリー」
久々にハマった超優良作。
「誘拐犯の娘が記者として入社する」 とのスクープをすっぱ抜かれた大手新聞社が, 窓際に追いやられていた「かつての記者」に, 20年前の誘拐事件を再調査させるところから 物語りは始まる。
出て繰り人物ひとりひとりが個性的で魅力的。 綿密なプロットと読みやすい文章。 自然な流れでぐいぐい読ませる筆力と ピリッと効いた伏線。 心憎いストーリーと読者を驚かす結末。 ミステリーとしての必要な要素が すべて詰め込まれた傑作です。
モノローグに若干拍子抜けするところと, きれいごとにが過ぎるところがあるが, ミステリーとして,エンターテインメント小説として, 抜群の出来にあることは間違いないと思います。 乱歩賞受賞(2003年)は当然!のレベルの作品です。 この作品以外に読めるモノがないのが残念。 次回作に大いに期待です。
・「なるほど受賞作」
読み終わった感想は、よくまとまった作品だなーって感じ。十分面白かった。テレビのサスペンス物って感じ。登場人物がみんな好感持てるって事と、視点が変わるので誰が主人公かぼやけてる点が、チョッと作品を浅くしている感じ。犯人の苦悩がもっと伝わってきたら良かったのにな。
・「宝物になりそうな本」
図書館でふと手にして読み始めたら、すぐに引き込まれてしまいました。著者に関しては、アラスカに詳しい写真家さん、というくらいの認識しかなかったのですが、その卓越した文章力に唖然!「本当に写真家の人が書いたの?作家じゃなくて?」という感じでした。
アメリカの経済社会に組み込まれ変貌しつつあるアラスカを愛し、そこで生きていく人々の心の機微がとても丁寧に描かれていて、繊細なのに圧倒される、とてもパワフルな本です。アラスカの自然の描写も美しく、写真も多く載っていて興味深く読みすすめられます。
アメリカ政府による核実験の実験地にされかかったアラスカの町を、その危険性に気付いた人々が救っていくというエピソードは、事実なだけに胸を打つものがあります。 なぜか読んでるあいだずっと胸に熱いものがこみ上げてくるので、少しずつ読み進めました。ぜひ大勢の人に読んでもらいたいです。装丁が黒いのは、きっと喪に服する意味なのでしょうね。亡くなられたのが残念です。
・「何度読んでも新鮮」
昨夜暫らくぶりに“星野道夫”さんの本が読みたいと思い、久方ぶりに帰ってきた。なんなんだろう。彼の本を読み返すのは1度や2度ではない。ただその度ごとに新鮮な衝撃を与えてくれ、必ず泣かされる。内容も知ってるはずなのに、である。彼の本に共通する一貫した根底にある流れは、圧倒的な“やさしさ”であることは、周知のとおり。それは、北風の寒い日に家の扉を開けた途端「お帰り」と言ってくれる母の声であり、肌寒さをかき消してくれる、フワッとした毛布であり、汗ばんだ体を冷ます一陣のそよ風のようなもの。誰もが知っている、懐かしい記憶。察するに、自然と人、アメリカ、アラスカと日本人である自分という明確な立場を、彼は意識してか無意識なのか常に精緻に嗅ぎ分けていて、そして誤りが無い。ぶれがない。的確に自分のいる場所であり、やっている事であり、おかれている立場をピンポイントで“わかっていた”。それに、(一般的な)入植者と違い、神道の流れをくむ、日本人である彼は自然を征服する相手と捉えず、自然の中で生かされている人間という立場をもきちんと“わかっていた”。
だからこそ彼の、大自然の営みに対する畏怖の念や、家族、隣人に対する温かい心遣いや、アラスカの歴史や未来、自然と人を考える姿を前にして、私たちは圧倒的な憧れと共感を嵐のように受けまくる。細胞が理性よりうんと先に反応してしまうのだろう、きっと。
私は、良本に出会うと読む前も、読んだ後も“ありがたい”という、思いで一杯になるが、星野さんの本も完全に出会えてよかった、“ありがとう”と感謝で一杯になる。星野さんを紹介してくれた義理の妹、ありがとう。
・「北からの光が照らすもの」
アラスカという北の大地に根を張りながら、 毅然と生きている人々の姿が生き生きと描かれ いて、あたかもそれらの人々が自分の親しい人の 様に感じられます。
この本は丁度自分自身が病に倒れて入院している 時に出会あい、自分に生きることの素晴らしさと いうものを思い起こさせてくれ、勇気付けてくれた 大切な本です。
星野さんの新しい作品にもう触れることは出来ま せんが、残された本から彼の考えや経験と言った ものにふれることの出来ることはとても幸せなこと と思っています。
とにかく、読後アラスカに行ってみたい衝動に駆ら れることを請け負います。
・「アラスカ紀行」
星野さんの文章には力があります。それは読むものに対して強制してくるようなものではなく気づいたときに星野さんの世界観にどっぷり浸かってるようです。
ポッと心に灯がともる感じがします。それもアラスカの静寂の中に灯る光のようです。
・「深い輝きに満ちたエッセイ集」
ただアラスカに飛んでゆきたいという強い憧れのもと、半世紀近く前の1946年にアラスカに舞い降りたふたりの女性パイロット、シリア・ハンターとジニー・ウッド。1960年代の初め、アラスカでの核実験計画の国家プロジェクトに反対し、アラスカを追われた生物学者ビル・プルーイット。白人の血が流れていても精神的にはエスキモー、違った価値観と文化を持つふたつの世界のどちらにも属しきれないジレンマを抱える若者、セス・キャントナー。アルバムをめくるようにして、アラスカのひとつの時代を生きた人たちの物語が語られてゆきます。
白黒、カラー取り混ぜて、多くの写真が掲載されているせいでしょうか。それは全くアラスカのアルバムをめくるような感じで、それぞれに旅をしている人間の物語が綴られていきます。<さまざまな人間の物語があるからこそ、美しいアラスカの自然は、より深い輝きに満ちてくる。人はいつも、それぞれの光を捜し求める、長い旅の途上なのだ。>(p.276)と記す著者のアラスカへの想い、アラスカで出会った忘れがたい人たちへの親しさが、あたたかく息づいているんですね。決して声高にならない、静けさをたたえた文章の底に流れる、アラスカの自然とアラスカで暮らす人たちの精神的な豊かさ、スピリットの輝き。清々しい風のような物語に魅了されました。
掲載された写真のなかでは、マニトバ大学の研究室に立つビル・プルーイット(本文庫でも紹介されている彼の著作が、『極北の動物誌』という書名で出版されています。ただし、現在は絶版中)を写した一枚と、部族の集会に参加したグッチンインディアンの人たち(全部で200人くらい、いるかな)を記念撮影した見開き二頁にまたがる一枚が印象的。ほのぼのとして、あたたかな気持ちに誘われました。
1996年8月、不慮の事故により著者が急逝したことにより、未完のまま刊行されることとなったエッセイ集。アラスカの風と匂いが行間の隅々にまで浸透した、豊かな味わいに満ちた一冊です。
・「面白い!」
企業テロの標的となった巨大スーパーやそれを支援する銀行といった利害関係者の視点、そして連続爆破事件の容疑者とそれを追う警察の視点など、次々に起こる事件や社内抗争が、暴落していく「株価」を軸にそれぞれの視点で見事に描写されており、ハラハラしながら一気に読んでしまいました。
金融エンタテイメントとしても推理小説としても秀逸の作品だと思います。
・「推理小説なのか経済小説なのか?いずれにせよ面白い」
池井戸潤の本は、最近になってなかなか切れが出てきたように思う。この「株価暴落」は、経営状態がおもわしくないワンマン経営のスーパーの大手チェーン店が、爆弾魔による脅迫を受け、株価が暴落し、さらに経営が傾いていくというストーリー。その容疑者と目される少年、スーパー、スーパーのメインバンク、警察と、それぞれの立場からシンクロするように描写が進む。さすが金融に明るい著者だけにそのあたりの描写が細かいのが個人的には嬉しい。とはいえ、誰にでも楽しめるスピード感のある小説である。
・「1冊で3度おいしい小説です!」
ちょうどNHKのドラマ「ハゲタカ」を放送してる頃に、同じような話だろうなと先入観もって読み始めました。そしたら、まったく違う!嬉しい驚きでした。最後までハラハラドキドキ。
主人公が銀行員として社内でぶつかりながらも、前に進もうとする姿に、会社勤めの身ならば(銀行員でなくても)共感したり、わが身を振り返ってハッとしたりすると思います。
ミステリーとして、金融小説として、サラリーマン小説として、1冊で3度おいしい小説でした。勢いのまま、同じ著者の小説を読みあさっているところです。
・「読み応えのある本」
経済小説とサスペンスの融合小説で、非常に読み応えがあります。展開としてもサスペンスとしてのハラハラ感と経済小説としてのドキドキ感が上手くマッチングしています。金融機関出身の著者ならではの視点で描かれているため銀行業務の厳しさや難しさもビンビン伝わり、読み終えたあとの満足感は非常に大きかったです。
・「金融推理小説」
金融再編、外資参入などの金融小説というよりも銀行を舞台とした金融推理小説として評価したい。黒幕がなかなか見えてこないのが歯がゆくて、読者心をそそる。登場人物は、動機の見えない怪しい行動を随所に見せる。犯人とは別に黒幕までいるのだが、読んでのお楽しみ。読者の推理は見事に外れるだろう。結局、私は、最後まで一度に読んでしまった。タイトルの意味も読み終えてあらためて納得した。ぜひ、一読をお薦めしたい。
・「何百冊か読んだ時代小説の中でこれがベスト」
「父を愧じてはならん」の言葉を残し、主人公の父親は刑死。残された少年は謀反人の子として蔑まれ、藩内で過酷な忍苦の日々を過ごす。しかし、その鬱屈したエネルギーを剣の修行で昇華し、少ないながらも堅い友情で結ばれた友を得ていく。青年剣士へと成長した主人公は、父を死に追いやった苛烈な派閥争いに巻き込まれ、自らの運命に立ち向かう。
完成度の高いストーリー、端正な文章、常にベストを尽くした主人公が残す爽涼感、過ぎにし少年時代と淡い初恋への愛惜の念。藤沢周平の代表作というだけでなく、時代小説の最高傑作のひとつと言える。
・「作家の力量」
風景描写が素晴らしい。精緻な文章とはこうゆう文章を言うのだと思えた。純粋な文章の表現力に驚くことは少いが、GWに実家で父親の本棚にあったこの作品に驚いた。ファンが多いのは知っていたが、藤沢周平が優れた作家であると遅ればせながら知った。主人公は江戸時代、北国のとある藩の下級武士の子である。当時の武士の子弟は儒学や剣術に励み、将来の官吏としての修行に励む。幼少から主人公は剣に抜群の才能をみせる。藩の権力争いによる父親の横死などの困難に耐えながらも友情や剣術に励む姿が描かれる。その話の展開は無駄が無く、無理が無い。奇抜な展開で構成された小説と対極に位置するような、丁寧な描写と無理の無い展開による構成は同時に強い説得力とリアリティを持つ。主人公は平凡な半生を送るのではない。しかし、抜群の剣の腕前を持ちながらも、やはり主人公は普通の人間であり、藩という組織の内部抗争に翻弄される下級武士である。剣は主人公を助けるが、主人公を超人にはしない。
主人公は良い結末を迎えるが、読後に残るのはやはり切なさである。不幸な結末となった人々や藩という組織の非常さ、抗いようもない下級武士の悲哀、過ぎ行く少年期、それらに対する緻密な描写が主人公の活躍があっても心躍る物語ではなく、切ない物語にしている。印象的な場面が多々ある。冒頭の自然描写。物静かな父が大声を上げて進言し、その確固たる良心に日頃の尊敬の念を深めた場面。主人公が死罪となった父に思いを伝えられなかったことを悔やむ場面。刑死した父の遺体を荷車に載せて牽く主人公の描写。先輩の官吏に従って野山に分け入って農村を巡り、稲の作柄を相談する場面。上げればきりがないが、精緻な文章がそれぞれの名場面を表現しており、それらが無理のない展開で連なっている。それぞれの名場面の描写はおそらく、作者が相当の労力を掛けて書き上げた労作と思われる。そう思えるほど良く練られており、緻密である。
・「10年後にもう一度読みたい」
藤沢周平の一番の小説ということで、会社の大先輩から紹介を受けて読みました。(1)まず感じるのは、描かれている風景が「小説 上杉鷹山」の風景とよく似ているということ(もちろん表現方法は違いますが)。巻末には「蝉しぐれ」は山形新聞の連載小説だったとあるので、まあ納得した次第です。(2)内容的には、江戸時代の地方の藩で、子供の居ない藩士の家に養子に入った少年が成長して、跡を継いでいく様子を描いたものです。底流には「今こうしている間にも人が生まれ人が死んでいく」という観念が流れていて、それでも「1人の個人で見れば成長を通して変わっていくようであり変わらない部分がある」と著者は言っているようでもあります。(3)結末では10代半ばのお互いの気持ちを確かめ合うシーンは、私(39歳)には到底まだ早い内容で直ぐには消化しきれないです。この部分は、とって付けた感もありますが、衝撃を受けたことも事実であり、10年後にもう一度読んでみたいです。(4)全編を通しては、流れるように読めて、風景描写が目に浮かぶようであり、色んな事件を読み進むうちに、果たして結末は吉か凶かと心配して読み進みます。最近は無意味に長い作品がよくあって辟易しますが、「蝉しぐれ」は1000ページくらいあっても楽しめたと思います。
・「深いなぁー」
この年にして、藤沢周平デビューである。別に時代小説が嫌いなわけではなく、むしろ好きな部類に入る。池波正太郎・吉川英治など大好きである。ただ、藤沢周平に関してはなんとなく読む機会がなかった。ただそれだけのことである。そして、蝉しぐれである。さわやかで清涼感にあふれているのだが、一番印象深かったのは「深いなぁ」ということだった。とにかく、書かない。これでもかというほど、行間を読むことを要求してくる。もともと新聞小説だから、読者の興味を翌日まで引かねばならないこととも無関係ではないだろう。こんなに、読者にゆだねていいのかと思うほどである。安っぽい恋愛小説ばかり読んでいる人にぜひ読んでもらいたい極上の一品である。
・「精神がきりりとする作品」
日本の昔の男子は、これほどまでにりりしく、そして大人であったものかなのか、と思わせる作品です。汚名をきせられ、罠にはまって切腹させられる父親。その父親の遺体をたった一人引き取りに出かけ、謀反者との罵声を浴びせられながらもひたすら歯を食いしばって車をひくまだ十代の文四郎。互いに心を惹かれあっている幼馴染のお福との切ない別れ。不動の固い友情で結ばれている3人の若者。それらの一つ一つが感動させられます。そして、大人になった文四郎は、殿様のお手がつき「お福様」となった福とともに、再びお家騒動に巻き込まれていきます。このお家騒動の結末は?文四郎とお福は?さわやかな、一陣の涼風が吹く、すばらしい傑作です。
・「短編もいいが、長編もすごい。」
横山作品の大半のベースにあるのは、よい意味での「おじさん視点」。がむしゃらな若い時期を過ぎ、それなりの社会的地位(でも超エリートではない)を得た一方で、理想と現実、あるいは組織と個人の狭間で悩む大人を描かせたら右に出るものは無い。
日航の墜落事故後の報道を題材に、人物の心理と葛藤を丁寧に描いた本作、ハッピーエンドではないけれども、説得力があり、納得の行く筋運びと相まって、読み応えあり。主人公は欠点も多いが、理想も忘れてはいない中年の新聞記者。組織に翻弄され悩むさまは、同じ社会人として共感を覚えます。
著者には珍しい長編作品ということもあり、横山作品に興味があるならば絶対に読む価値のある力作。
・「命の重さと報道のあり方を問う本格社会派小説の真髄!」
本作品は横山秀夫の18番ではない。1985年の御巣鷹での飛行機墜落事故の全権デスクを任された男、悠木和雅をめぐる「事件記者ドラマ」ともいうべき大作である。帯には「心を揺さぶる横山秀夫の最高峰」という表題が付されている。本当にそうか、読んで確かめてみる必要があった。途中で、「これが最高傑作?読むのやめようか」と躊躇った。しかし最後まで読むしかないと思い直した。正解だった。ぐんぐん内容の濃さが増してゆく。全権デスクとしての誇り・苦悩・苛立ちといった、さまざまな人間の内面心理の克明な描写が、「自分がデスクにでもなった」気分へとテンションを高めてゆく。後半の読書スピードは速かった。飛行機墜落原因のスクープを突き止めながらもその掲載を見送り、他社に抜かれた時の失望感と後悔の念、時折挿入される友人の息子との臨場感溢れる登山状況とそこでの会話、墜落事件を社会面トップで扱い続けてきた悠木の前に現れた女子大生の生々しい言葉「人の命って、大きい命と小さい命があるんですね」(406頁)など、十分に読み応えがあり、そして読者であるわれわれに真っ向から問いかけてくる「命の重さ」と「報道というもののあり方」。かつて上毛新聞記者であった作者ならではの切実な問題意識に違いない。全権デスクによる、「どの命も等価だと口先で言いつつ、メディアが人を選別し、等級化し、命の重い軽いを決めつけ、その価値観を世の中に押し付けてきた」(410頁)という心の呟きは、作者自身が直面した状況を端的に述べた言葉ではないかと思うのだ。本書には余計な講釈は必要ない。深い感銘を受ける傑作(いや最高傑作とみなしてよい)である。多くの方が「読了」することを切望する次第だ。「クライマーズ・ハイ。一心に上を見上げ、脇目も振らずにただひたすら登り続ける。そんな一生を送れたらいいと思うようになった」(462頁)という文章で本文を締めくくりたい。
・「素晴らしい作品です」
実際に起きた1985年の日航機墜落事故をベースにしており、当時事故現場の地方新聞記者であった筆者がその経験も踏まえて、筆者の分身とも言える新聞記者が主人公です。
この作品の素晴らしいところは、各人の人間臭さだと思います。新聞社の日常はわかりませんが、未曾有の大事故をものにするために奔走し、争い、そして時間とも闘い、そんな姿が生々しく臨場感・現実味を増しているのだと思います。そして最後におそらく筆者が伝えたかった、ごく当たり前のことを再認識させられました(読んでいる間に新聞記者目線になってまして。。)。
本当に素晴らしい作品です。
・「心拍数上昇」
読み始めたら止まらなくなって、一気に読んでしまいました。それくらい迫力ある男のドラマです。頁をめくる毎に心拍数が上昇するのを感じました。読後、本作が『幻の直木賞受賞作』と言われる所以を知ってますます感動致しました。日航機事故を知らない世代の方達にも是非読んで頂きたいです。
・「一気呵成にせまる傑作!人生とはなにかを考えさせられる。」
この小説が出たとき、作者の横山秀夫が当時実際に御巣鷹山の事故現場を取材したと聞いて読むのを躊躇っていた。おぞましい大惨事の現場を見る勇気がなかったのだ。 しかし、この小説には、作者が実際には見たであろう生々しい現場の様子がほとんど描かれていない。それを伝えるのが目的ではないからだ。 報道という「大義」の影に隠れたマスコミ社会の内実と浅ましくも愚かな人間社会通して、その中で生きる人間の苦悩する心の葛藤を描いている。 「下りるために登るんさ」という謎めいた言葉と共に、「一心に脇目も振らずに登り続ける・・・クライマーズ・ハイ」と対比させ、人生とは何かを示唆している。 最後の場面、悪く言えば「けれんみ」たっぷりであるが、素直に泣けてくるところが横山秀夫の魅力だろう。お勧めです。
・「中絶に対して様々な角度から考えさせられた」
天使=中絶されて何も分からないまま殺される胎児 その代理人として意見を言うべく、助産士などが立ち上がる。 同時期に、中絶をした家庭不和の女の子、 精子バンクで妊娠をした女の人、 医療ミスで中絶させられてしまった女性、 などの話が同時進行で進んでいく。
いろいろ考えさせられた作品でもあり、勉強になった作品でもあり、純粋に読み物としてもミステリー感があっておもしろい。 中核となるのは数人の女性だけど、その周りの脇役とも言える人たちにもちゃんとそれぞれのキャラクターや人生が設定されている。 そのあたりが、この作者の小説が深みを持っている理由だと思う。
・「命。」
とても重く考えさせられるテーマでした。天使の代理人が言うように、宿った命は、生きていたいというでしょう。でも、いろんな事情により女性は決断を迫られる。選んだ結果が正しいのか正しくないのかは、分かりません。でも、命の大切さを考えるきっかけになるのでは。男性にも読んでほしい本です。そして、考えてほしいと思う内容でした。
・「全ての女性に(男性も是非!)読んで欲しい」
松子とはまた違った『女性の世界』を見せ付けられました。上・下巻とも泣いて顔をカピカピにさせながら一気に読み上げました!本当に山田先生は男性なのか?と疑ってしまうほど(笑)強く惹き付けられました。そしてまた改めてファンになりました! これは、まだ妊娠とか中絶とか考えた事のない人、今中絶という現実と戦っている人、もう子供は無理かなと諦めている人、命とは何かを問う人、そして男性にも、是非読んで頂きたい作品です!本当に勉強になります。改めて命の大切さを学びました。 山田先生ありがとう!!
・「尊厳」
心打たれました。中絶に対する様々な価値観を偏る事なく書いているにもかかわらず、しっかりと命の尊厳を伝えられています。老若男女問わず読んでもらいたい作品ですが、とくに男性に読んで欲しいと思いました。単に中絶反対だけを書いて命の尊さを伝えていないだけに読み終えた感想にその人の人間性がはっきり出る作品ではないでしょうか。
・「異性が読んだらどう思うのか、と男女ともに思うだろう」
中絶について、自分が知らないことがたくさん書かれていた。特に、人工死産という名目で妊娠後期においても中絶をするという事が決して少なくないという事には本当に驚いた。
僕は、自分も含めて周りの人間に中絶をした(させた)人がいない。だからいまいち実感を持って考えたことという経験がなかった。この本を読み終えた今になって、初めて少し考えた。「もし自分の女友達が『子供が出来た。考えたけど、中絶する』って言ったら、、、」混乱する。賛同も出来ないし、非難も出来ない。「そうなんだ。」としか言えない。言葉が何も見つからない。
ただ、今思うのは、生まれてくる命は祝福されるべきものだという事と、初めて妊婦さんの大きくなったお腹に手をあてた時の不思議な、神秘的な感覚は鮮明に覚えているという事。
・「眠れなくなること請け合いの本」
とにかく面白いです。私は柴田よしきの本は、最初に読んだリコシリーズ1作目が重くて挫折してしまったので、これもダメかなーと期待せずに読み始めました。で、その晩のうちに読んでしまった。
とにかく出てくる登場人物がみんな魅力的。いい人も悪いヤツもみんな味があって、愛すべき存在になっています。スピーディーな展開なので、分厚い本もあっという間に読めます。かなりハードな内容ですが、ユーモアたっぷりで最後にホロリと...。
この後、リコシリーズももう一度読んでみましたが、最初に読んだときは挫折してしまったのに、なぜか今回は一気に読めました。両方のシリーズの舞台と登場人物が微妙に重なっているところが余計興味を持たせたからでしょうか。花ちゃんシリーズ2作&リコシリーズ3作、どれもオススメです。
・「がんばれ、ハナちゃん」
主人公は、元マル暴の刑事で、今は新宿二丁目で無認可保育園を経営しながら経営難の保育園のために探偵もやっている花咲慎一郎。一見無理がある設定を作者は見事に物にし、ヤクザと渡りながら子供達のはしかの予防接種にも悩むというハードボイルドにしてしまった。子供達のかかえる事情に、「自分には何もできない。もう疲れた。放り出したい」と思いつつ“フォー・ディア・ライフ(一所懸命)”してしまうハナちゃん。そして、ハナちゃんの周りのわけありな人たちも皆魅力的です。
バラバラに思えたそれぞれの事件が最後に向けて一つに繋がる終盤は、絶対に読むのを止められませんよ。
・「ハナちゃんがいくー奈美先生の主人公の作品も是非!」
柴田作品では「聖なる黒夜」が一番好きですが、この花咲シリーズ(現在シリーズ3冊目まで読了)は安心して、かつ楽しく読めるという点では柴田作品ピカイチです。「聖なる黒夜」では心がキリキリと痛む山内錬が、この作品では少々楽しく登場している点も良いです。彼も「聖なる黒夜」や「RIKOシリーズ」のキャラばかりでは、確かに余命いくばくもないかと思いますので、たまにはくのくらいで良いですね^^錬くんは麻生さんより花咲さんの方が幸せなのでは?とついついBLに興味のない私でも思ってしまいます・・・(笑)
柴田先生はとても几帳面な完璧主義な方なのでしょうね。読者につっこまれそうな所は言い訳も説明もきちんと書いていらっしゃる。そのため少々冗長な点はありますが、文句なしに楽しめる作品です!
花咲シリーズ第一弾の当作品では、奈美先生のカッコよさがたまりません。ハードさといい、淫乱ぶりといい、RIKOといい勝負だと思うのですが、RIKOの痛さがない分痛快で、また彼女の悲哀はRIKOのそれとも違うと感じますので、是非是非、彼女主役の作品を書いて下さいませ、柴田先生!!!
・「保育園の園長が大活躍」
探偵という職業柄、やくざとのいざこざ、殺人などがあるが、フランス料理店の理沙、女医の奈美、そして漫画家の詩乃子など魅力的な女性が何人も登場すること、そして本業が保育園の園長ということから、サスペンス性を感じさせない作品だったと思う。家出した少女を探しながら、やくざに目をつけられている少年を助けるための情報を集め、保育園の子供たちの世話をする展開の早い話だが、話がこんがらがらないよう、丁寧に描かれていて読みやすかった。
・「心にしみる」
無認可の保育園、そこに子供を預けに来る人たちにはそれぞれの事情がある。ハナちゃんはそんな彼らのために奔走する。探偵と園長。この両極端ともいえる二つの仕事を無難にこなし、かつ人を思いやるハナちゃん。そんなハナちゃんが巻きこまれた事件。それは人と人との利害関係が複雑に絡み合ったものだった。自分が傷ついた分、人はやさしくなれる。そして人の痛みも分かるのだ。ハナちゃんはまさにそんな男だ。こういう保育園に預けられた子供たちは、きっとやさしい子供になっていくのだろう。人と人とのふれあいが、心にしみる作品だった。
・「普通の展開で驚きがなかった」
前半部分は屋敷の本家と分家の話が中心で、いろいろな名前が出てくる割に説明が少ないため誰が何なのかよく分からなかった。中盤から後半にかけては子供を手に入れた経緯、協力した女性の過去、そして子供を盗られた女性の嫉妬、復讐などおもしろかったが、強請=殺人というのが明確すぎて驚きがなかった。
・「読後感が・・・」
登場する女性たちの描写がとても残酷なまでにリアルで、少々、辟易する感もありましたが、そのくらいに書かないと面白くならないですね。場面展開が、あちこち飛び、その分次はどうなるのかと、引き込まれました。★3つにしたのは、テーマの重さの割には、ラストがありきたりの感がしたので。
・「男の苦い優しさ」
ハードボイルドの傑作である。主人公は塾教師。失踪した教え子を探す。淡々としているところがいい。主人公の苦い過去も含めて男の優しさがにじみ出ている。ハードボイルド好きで未読の人、読んで下さい!
・「ハードボイルド恋愛小説の秀作」
読み終わったとき、素晴らしい宝物を掘り当てたと思った。ハードボイルド恋愛小説の秀作と言ってよい。主人公は意思の強いハードなタフガイだが、元々は正義感の強い生徒からも慕われる名門校の将来を嘱望された優秀な教師だった。今は郷里に退いて塾の教師に後半生の希望をかけている。その彼が、一転してある事件に巻き込まれる。事件を追って東京に出てきた彼は、生死を賭けて事件の謎に挑む。事件の展開、主人公の行動に息を飲ませるような迫力とスリルがある。これは、ハードボイルド小説だが、同時に、恋愛小説でもある。かつて激しく愛し合って結婚し、外的事情からやむを得ず別れなければならなかった夫婦の再びの愛が、濃密に描かれていて、心に沁みる。ハッピーエンドにもほっとする。しかし、この小説が、レビュウアーたちに評判がよくないのはどうしてだろうか。決してそう低く評価されるような作品ではない。筋に無理があったり、偶然が重なったりするというが、それは世界のどんな名作にも見られることだ、筋に多少とも無理のない小説など先ずない。登場人物の夫々の個性が見事に描き分けられ最後までぶれがなく、各人の個性の絡み合いによって、自然に物事が進行して行く。心情、情景描写も確かである。これから読まれる方は、先入見なしに読んでいただきたいと思う。事実は小説よりも奇なりという。どんな不思議な人生もあり得るのである。これは、再会したかつての妻への愛に心惹かれつつも、教師である自分を慕う葛藤から東京へ家出した教え子の女生徒を救うべく大冒険を余儀なくされた勇敢な一人の男の物語である。
・「優れたハードボイルドミステリ」
久しぶりに優れたミステリを読んだ。ハードボイルドに恋愛小説の味付けもされていて大変おもしろく一気に読み終わった。こんなにいい作家がいたことを知らないでいた。東京港区の街の描写も具体的でよく描き込まれている。文句なしの星5つ。
・「不撓不屈の熱き魂」
テンポ良く,リズミカルで巧みな心理・情景描写。それが志水節と呼ばれる名調子であることを読後に知った。 悪は悪,善は善で,その中間の濁ったキャラクターはいない。失踪した塾の教え子の足跡を辿りつつ,巨悪に独り立ち向かう主人公。燻っていた純愛の復活もあり,不撓不屈の熱き魂全開で読める,ハードボイルド・アクション・アドベンチャー・ラブストーリーだ。 絶体絶命の主人公が「殺るなら殺れ,俺は何度でも立ち上がる」ってな感じの矢吹丈的な口上を呟く場面に胸が躍った。
・「探偵ではないハードボイルド」
誰がなんと言おうと本作は「ハードボイルド小説」です。それは主人公が様々な困難や苦難、暴力、女性、裏切り、騙しなどの様々な障害と出会います。しかし彼の意思は折れません。唯一教え子を救う、という目的のみを見つめているのです。それを達成まで彼の意思は貫かれています。主人公の人生にもバックグランドが当然あり、それは会話から理解できるように、良いものではありません。それをまったく見せず、男の意思のみで追求していくのです。だから、物語のもう一つの柱である、別れた妻との物語も深まっていくのです。彼女との会話や仕草、波多野の思惑は読んでいて、ずっぽりその世界に引きずりこまれてしまいました。ここまで感情を書き込める作家だとは。敬服します。ラストもよかったです。言うことなしです。新たな帯で売れ始めていると聞きましたが、良い書物が時を超え再発見されるのは、嬉しい限りです。
・「爽快な謎解き」
閉鎖状況ミステリの佳作。綺麗なリドルストーリーです。ミステリに実在性を求めると、ホワイダニットがすっきり納得できないかもしれませんが、それを展開のなかできちんと纏め上げ、きちんと風呂敷がたたまれていて、むしろ好感が持てます。どこにたたむんだろうとヒントを小出しにしながら最後まで読まされます。ドキドキ感やワクワク感は少ないかも知れませんが、のんびり、じっくり読むにはかなりお勧めの作品だと思います。
・「独創的な設定」
沖縄の空港で3人の男女が、乳幼児を人質に取ってハイジャックを起した。犯人の要求は、拘留中の師匠を空港に連れてくること。しかしその飛行機の中で死体が発見された。
・「一般向けではないのかも」
良くも悪くも、今日の「本格ミステリ」のありようを示す作品として、それなりに楽しく読んだので、他の方の評価が低いことに驚いた。『生ける屍の死』(山口雅也)は、ありえない状況下での、ありえない事件を描いて、日本のミステリの新たな可能性を開拓した。猫丸先輩シリーズ(倉知淳)は、素性のよくわからない素人探偵が“推論”を語るだけでも、ミステリ的興趣が生まれることを示した。となれば、ありえない前提を踏まえた、ありえない状況下で、素性のよくわからない素人が推論を組み立てるだけでも、ミステリは成立し得ることを目指した“野心作”が、あっても良いことになる。そうした意味づけで本作を読んだので、それなりの成功を収めていると思えた。事件の関係者はあらかじめ限定されているのだから、フーダニットやハウダニットではなくホワイダニットが主眼であるのは明らか。しかし、本来ありえない事柄が前提なのだから、本来ありえない動機が成立してしまう。なるほど、と思える展開である。本作がランキング本で高い評価を得たのは、ミステリを読みなれた者にとっては、こうした小説の存在が許せてしまうからであろう。そういう意味では、一般向けではないのかもしれない。
・「密室殺人+ハイジャック。緊張感と手堅い論理に作家の高い能力。」
ミステリーのなかでも密室殺人系に属するだろうか。ただ舞台が飛行機の中でハイジャッカーが一緒に謎解きをするという設定が新しいし独自の緊張感を生み出す。心理的物理的根拠から数々の仮定と洞察を生み出す展開はとてもしっかりしていて、石持 浅海という作家の能力の高さを表していると思う。映画化してもおもしろい脚本になるのではないだろうか。サスペンス好きにもお勧めしたい本である。星5つがあげられなかった理由はこの物語の根幹をなす師匠とよばれる石嶺という人物がブラックボックスのまま終わってしまったところに消化不良の感があること。
・「美しく構築されたファンタジックなミステリー」
ネタバレが怖いので詳しくは書かないが、ハイジャック犯が解放しようとしているのが、<新興宗教の教祖的な存在の男性>であることから、物凄くアンフェアすれすれのファンタジックな展開が予想できる。教祖を本当に超能力者ならば、本来の推理小説では禁じ手とされるトリックも成立してしまう。
このため、筆者は一体どうこの物語を完成させるのだろう、と非常に興味深く、ページをめくる手が止まらなかった。
一方で、このファンタジックな物語を、きっちり成立させているのは、細かい部分まで美しく構築された犯人たちの行動だ。この筆力があるからこそ、あり得ない犯罪がリアリティを持ち、あっと驚く探偵役や、同じくあっと驚く(途中で推測可能だが)殺人犯の存在が、説得力を増すのだと思う。
「アイルランドの薔薇」もそうだったが、人の書かないような個性的なミステリを書く筆者だから、ミステリファンはぜひ一冊読んでみてほしい。
・「おもしろ過ぎる!!」
この本は恋愛小説という名の推理小説だと思う。漫画しか読まない23歳の私が初めて『おもしろ過ぎる!』と思った推理小説である。そもそも小説という物は最初が肝心で、出だしが面白くなかったら読む気が無くなって最後には寝てしまう(笑)
けど、この小説は出だしで私を引き込んでしまった。寝るどころか、寝る間も惜しんでとはこう言う事なのか!と実感したぐらいだ。推理小説は苦手だという人も一度は読んでほしい!読み終わったあと必ず誰かに薦めたくなる一冊だから。
・「愛に対する欲望は、簡単に時間を超えるか?」
「あのとき、ああすればもっと、今より幸せだったのか。あのとき、ああいえばもっと、いまより幸せだったのか」いまでは数多くのフォロワーがいるらしい(モンパチとかゴイステとか、あと知らないけど)ブルーハーツの歌詞だ。
時間を止めるディオという怪物もいた。ドラえもんに頼めば、恐竜のいる時代にさえ連れていってもらえる。
ふりかえってみれば分かることがある。あのときが、人生の分岐点だったな、と。そのときは、大したことではないように思えても、時がたつことによって、ある時にした自分の選択が間違いではなかったかと不安で仕方なくなることがある。「あのとき、ああしていれば、自分は今よりもっと幸せだったかもしれない」
簡単にいえば、後悔するってことだ。自分の生き方に。!
作者は大胆に、私たちの夢をかなえてくれる。あの日、あのときにつれていってくれる。自分の目で、昔したあの選択が正しかったかどうか確かめてみろとでもいうように。
読めばわかる。いま私たちのしている後悔が、正しいのかどうか。
・「いろいろ考えせられました。」
新橋の書店に立ち寄ったとき、なぜかふと手にとることとなったこの本。パラパラとプロローグを読み、もう手放せなくなりました。どうしてもあの日、あの時の過去を変えたい、その思いがかなうことは現実にはあり得ないことと思われていますが、この本を読むうちに、もしかしたら…などと思ってしまうほど、のめり込んでしまいました。ぐいぐいと引き込む筆力はさすがです。久々に読んだ小説ですが、佐藤正午氏のほかの小説もぜひ読んでみようと思えるような傑作であると感じました。
・「スピード感があってよかった。」
冒頭の部分がとても不思議な感じで書きはじめられており、どうなるのかな?と思っていると読みきっていたという不思議な作品。たまに自分が使用する鉄道等が出てくるので、自分も作品の中に溶け込んでしまうような錯覚に陥りました。久しぶりに本を楽しめました。
・「過去の自分が現在の自分を支えている」
過去の行動を悔いることはよくあります。“もう一度やり直せたら”と思うこともしばしばです。しかし、この本を読むと、人生をやり直すことが幸せとは限らないと感じます。それまでの人生を否定して過去に戻ることに“ためらい”を覚えない人はいないでしょう。しかも、“未来”を知っていることで、自分の行動や可能性を狭くしてしまうかもしれません。この本では、人生をやり直しても、前の人生で縁のあった人とは、関係を変えても、関わりがあります。何が起ころうとも、“代わりになる人なんていない”ということです。何度、人生をやり直しても幸福になるとは限らない。それならば、この人生を前向きに生きようと励ましてくれます。
・「衝撃を受けた徹夜本」
上下2巻で1000ページを超える作品だが、ページをめくる手を止めることが出来ない面白さだった。長編にありがちな中だるみもほとんどなく、この奇妙でダークな新世界を巡る少年少女たちの冒険に引きずり込まれていった。
物質文明が滅んだ千年後の世界。人類はほんの僅か生き残り、小さな集落が広い日本列島に数箇所あるだけとなってしまった。人類は「呪力」という超能力を得て、平和で貨幣経済もないユートピアにも似た共同体を作っていた。しかし、新世界は管理教育、情報操作、洗脳、そして歴史の隠蔽、改ざんといった闇の部分ももっていた。世界を維持するには、真実は隠されなければならなかった。図書の分類と検閲。新世界に生きる人々、特に子供達は徹底した管理のもとに置かれていた。世界の秘密の全貌はしかし、なかなか明らかにはならなかったが、戦慄を覚えるほどの謎の輪郭がじわじわと読者に迫ってくる。なにか腐臭を放つものがどこかに隠されているような、そんな感じを受けながら貴志祐介の描く「新世界」の謎に魅せられて物語の中にどんどん入り込んでしまった。 醜い奴隷として使役されるバケネズミ。 自爆して敵を倒す風船犬。 自走式図書館のミノシロモドキ。そして、呪力を暴走させる悪鬼と業魔。
なんという世界だろう。
貴志祐介の脳髄から産み落とされたこの新世界は、悪と秘密と汚濁、そして謎に満ちている。主人公の早季と覚が、バケネズミの巣から脱出するため暗闇と悪臭とおぞましい生物のなかを走り抜けるシーン。人類を破滅から救うために旧世界の東京の地下を下る胎内巡り。ファンタジーと呼ぶにはあまりに生生しく、不気味に息づく奇形なモンスターに満ちている。 そしてなんともすっとぼけた自走式図書館のミノシロモドキ。緊迫した展開のなか、唯一の癒しキャラ(?!)かもしれない(笑)不思議と恐怖とミステリーをたっぷり堪能させてくれる作品だった。長さにしり込みせずに、一読してほしい。
・「アキラを思い出す」
遥か未来、呪力と呼ばれる力をもった子供達の話で、言葉を喋るネズミがでてきたりと、表層はファンタジーだが、読み進めて行くうちに感じとるのは、サイコホラーである。アキラ私は、このイメージかしっくりた。アキラというのは、アニメのアキラである。未知なる力を手に入れ、やがて体も人格も力に呑み込まれてしまう小学生時にアキラを見て、ワクワクするような凄さと、気味の悪さを感じにはいられない話の流れ、それと同じものを、この本から感じた。
・「大作RPGをクリアしたときの気持ちを楽しめます」
(この作品は何も前知識を入れないまま読むことをおすすめします。下手にレビューサイトは見ないほうがいいですよ!)
人を選ぶ小説です。過去の作品の天使の囀りやクリムゾンの迷宮が好きな人におすすめです。
自分は特に活字中毒というわけでもないので、退屈するとすぐに本を投げ出してしまうのですが、上下巻怒涛の如く一気に読みました。下巻なんて、丁度その時腹痛で本当は本なんか読む気はしなかったんですが二転三転どころではない展開から目が離せず、痛いお腹を押さえつつ読んでしまいました。
ブログなどの評判を読むと、賛否両論別れるようです。「4000円ドブに捨てた」という意見もあれば「安過ぎる買い物」と大絶賛する声も。私は間違いなく後者です。
上下巻1000ページを超える長編ですが、それだけ楽しめると思って逆に喜ぶべきです。
ニコニコ動画 ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」 [クラシック]http://www.nicovideo.jp/watch/sm1439107
・「読み手の想像力が試される「新世界」」
「天使の囀り」にも衝撃を受けましたが、作者の生物学的センスは抜群です。ぼく自身、生命科学の「専門家」の端くれですが、本作に描きだされる想像上の生き物の体系は、ある意味、空前絶後のリアリティを持っていると思います。一方で「呪力」に関する設定は科学的には首を傾げざるをえないものだけに、作者の生き物への執着には畏怖を覚えます。この、少なくとも視覚的には醜悪を極める世界を数年にわたって脳裡に抱きつづけ、ここまでの完成度へと煎じ詰めた精神力は凡人には想像しがたいものがあります。
物語の詳細に踏み込むのは危険なので触れませんが、読み手の想像力が試される小説です。細かくディテールが描写されているようでいて、視覚的な詳細の描写はストーリーテリング上、最小限描写すべき対象に限られており、それ以外の多くは、世界を構成する要素がいかにしてそこにあるかというプロセス、メカニズムの描写の積み重ねによって提示されています。その結果として、この小説世界に五巻で感じられるどういった光景が展開しているのか、その大部分は読者の想像力に任されています。読み手のそれぞれが、それぞれの経験、想像力に応じて、異なる「新世界」を脳裡に描きだすことでしょう。
近年の日本のエンターテインメント小説の系譜上は、「屍鬼」「シャングリ・ラ」といった流れに連なるものと感じますが、それはストーリー展開の表層を捉えた比較に過ぎないかもしれません。生き物が争い、争いの中で他の生き物を殺すという、ほぼすべての動物種が行っている振る舞いを、詩的ロマンティシズムなどに逸れることなく、真正面から描こうとし、描ききれたかはさておき、完遂したことに敬服します。その中で、生き物が生き物たるがゆえに行う行為の積み重ねの中に、「神」をはじめとする、私たちが「人間らしい」と感じる概念を淡々と畳みこんでみせた点など、唸らされた部分も数多くあります。そして、最後の1行に、さまざまな意味で胸が熱くなりました。傑作です。
・「これこそエンターテイメント小説です」
壮大な寓話的な世界観、非常に細やかでイメージが膨らむ文章表現、牧歌的な雰囲気から一転してぐいぐい引き込まれる展開。これこそがまさにエンターテイメント小説です。
”分厚い本 x 上下巻”と最初は絶望する気持ちにもなりそうですが、スタートしてみたら(特に上巻の3/4くらいからは)あっという間に最後まで読み終わってしまいました。「ここまで細部まで創り込んでいたら儲かんないでしょ!?」と心配しちゃうくらい緻密に作られた物語の設定がすごいです。マンガのAKIRAや小説の「最後の物たちの国」をちょっと連想しちゃうかもしれません。
読後の感想としては、「考えさせられた」なんて人もいるかもしれませんが、僕にとっては”ほんとに楽しかった”が一番しっくりくる本でした。
・「綿密な取材に基づいた生々しい描写が魅力」
特定の主人公を置くわけではなく、アメリカのハゲタカファンドの日本人社長と、経営破綻したスーパーを再建するために友人に請われて邦銀からスピンアウトしたスーパーの社長と、これも経営に行き詰まっているホテルを建て直そうとしている女社長の三者の生き様をそれぞれ描く独特のスタイル。三者とも金融問題に直面している、そして日本に対する高い愛国心を持っているという共通点があり、同時並行でそれぞれのストーリーが進んでいく中で、相互に影響し合う。バブル前後の日本経済の状況を忠実に描写し、また、実在の企業をモデルにしているので、ノンフィクション性の高いフィクションであると言える。バブル期の金融機関の経営やコンプライアンスがどれほど緩んでいたのか、バブル後の金融機関の貸しはがし、貸し渋りでどれだけ地方の中小企業が影響を被ったのかなどといったことについて、アウトサイダーとしてはこれまで実感が湧かなかったのだが、本書を読むと、そのあたりがかなり生々しく描写されており、知的好奇心が刺激されてついつい引き込まれてしまう。かなりの長編小説であるが、中だるみもなく、興味深く読ませてもらった。
・「基本的にドラマとは別物」
NHKのドラマを見て原作を購入…そしてただただ驚いた。全然原作と違う…。良くこれで原作者がドラマ化許したなぁと…。
では、原作がドラマから劣っていたかというと、そんなことはなく、むしろドラマ版鷲津が引きずっている妙な暗さがなく、小気味よくストーリーが展開していく様は圧巻。そして経済小説らしく、裏舞台を丁寧に描いていく様は経済ニュースの裏舞台を覗いているようで非常に面白い。
上巻は三葉銀行(旧三和銀行?)のバルクセールを軸に、鷲津vs芝野の第一ラウンドや日光・ミカドホテルの話など、下巻そしてバイアウトへと続いていく伏線にもなっていてどんどん続きが読みたくなっていく。
私のようにドラマから入ったファンも、全くの別物として楽しめる一作である。
・「一気に読めます」
本書を原作に、NHKが作った同名のドラマが面白かったので、読んでみました。ドラマに比べて登場人物のキャラクターが立ちすぎていたり、ストーリーも劇的な展開が多く、リアリティに欠けるのですが、小説としてはこの方が読み進めやすくてよいです。上下巻とも、一気に読めました。
・「面白」
新聞の内容を脚色しつなぎ合わせ、著者の経験と想像力を混ぜ合わせた、いかにも元新聞記者が書いた小説、という感じ。
でも、だから現実とリンクしているように見えておもしろいし、好奇心を刺激される。でも、登場人物は紋切り型だなあ。
億単位の金を動かして債権を買ったり会社を買ったり。そういった世界を私たちはよく知りません。
正確にいえば、知ろうと思えば知ることは出来ますが、それにはそれなりの時間とコストを支払わなければなりません。たとえば新聞各紙をよ〜く読み込んだり参考資料にあたったり。でも普通の人はそんな面倒くさいことしない。
だから、みんな出来ればより安価なコストでそういう世界を知りたい、もっと言えば、誰か教えて、って思ってるわけです。
外資だ「ハゲタカ」だっていうけど、結局何なの?彼らは何をやってるの?どうやって儲けてるの?彼らの目的は何なの?
そういった期待にいかに応えるか。本書が目指しているのはそこです。そして本書は実に適格にそれに応えている。それはまさに元新聞記者の嗅覚のなせる業と言えるでしょう。
でも、それ以上の期待はしちゃいけません。私たちの知らない世界を、私たちの興味に応える形で、実に分かりやすくおもしろく書いている。それだけです。
・「バブル崩壊後の日本経済のダイナミズムを描く」
バブル崩壊後の日本社会で、次々と潰れていく企業。そしてそれに伴い増えていく不良債権。護送船団方式で保護されてきた日本の金融機関はその増え続ける不良資産を金に換える術を持たない。しかたなく二束三文で外資系金融機関に売りつけるのだが、そこはまさにハゲタカが死肉を漁る修羅場と化している。結局、それを金のなる木に変える数少ない錬金術を持つのが主人公の一人である鷲津が率いる外資系プライベートエクイティーファンドなのである。邦銀から買い取った債権を使って、安閑としていた放漫経営の企業を建て直し、あるいはばら売りし、邦銀では出来ないようなリターンを上げる。今でもしがらみの中に生きる邦銀ではどこまでやれるか分からない。バブル崩壊後のこの10年余りの間にこの日本という国を舞台に起きた経済闘争を、小説を通じて如実にあらわしている傑作である。限りなく真実に近いと思われる筆者のプロットは非常に面白く、エキサイティングであると同時に金融関係者や企業経営者などの専門家の世界で起きている事象を分かり易く伝えてくれている。
・「愛の物語なのだ」
熊本地域限定で、突如、死者のよみがえりが続く。とっくの昔に死んじゃった人が、元気に黄泉がえる。そりゃ、いろいろ大変だぁ...
ユーモラスで軽妙なタッチで物語は続くが、そこに描き出される愛はなかなか深い。
亡くしてしまった、失ってしまった、愛しい、あの人がよみがえってきたのだ。夫と妻、兄と弟、親と子、アーチストとファン、いったん失ってしまったからこそ、その愛は深いのかもしれない。
泣けるエンターテイメント、梶尾真治の描く愛の物語なのだ。お勧めの1冊です。
・「黄泉がえり」
もし、死んだ人が蘇って(黄泉がえり)帰ってきたらどうしますか?
私はもう一度ひいおばあちゃんに会いたい・・・本を読みながら、自分だったらどう思うか・・どうするか・・・考えながら読みすすめて、どんどん本と現実の境がなくなっていきました。
死んだ父が帰ってきた家庭・・、先代の社長が帰ってきた会社、
死んだ奥さんが帰ってきて、後妻と元妻と3人で暮らしすことになった家庭、その黄泉がえり現象は熊本市を中心に局地的で膨大な数の人々が愛する人のもとへ帰ってきた・・というお話です
最後はどうなるんだろう???見事に読むものの想像力を超えた結末を用意してくれています梶尾真治さん、すごいです!この本は感動して泣けますオススメです!
是非、読んで下さい!
初出:熊本日日新聞社「日曜版」1999年4月から2000年4月1日
・「死別した愛しい人にもう一度逢えるなら」
九州・熊本に落ちた流れ星。そして「奇跡」が起こり始める。死別した愛しい人やペットなどが死んだ当事のままのすがたで「黄泉がえって」くるという奇跡。実際そんな事が起きたら人ははどんな反応を示すだろう。狂言回しとして地方紙の記者をすえて、様々な人の様々な反応を淡々としかし優しい視点で描いてゆく描写力は流石です。
確かにアイデアは「誰も考えない」というような斬新なものではないけど前にどこかで作者、梶尾真治氏が言っていた「SFでしか語れない愛の形」というものがしっかり描かれていてじわりと来る秀作になっています。
・「泣く」
映画では泣いて泣いて泣いて泣きつくした。周りも声を出して泣いていた。家に帰ってからも、どうしようもない感情がずっとまとわりついていた。ありえないことが起きた時の混乱、そして本来ならもう2度と湧き出してこないあの日の感情。これが幸せなのか?死んだ人が帰ってくるというごく平凡なありきたりのテーマだが、思い出してしまった感情をもっと全面に押し出してもいいものを淡々と事後まで描いている。
・「映画に今ひとつ納得できなかった人も是非!」
ご存知、大ヒット映画「黄泉がえり」の原作。映画には大変感動したが、なぜ死者が突然黄泉がえったのかなど、多くの「?」が引っかかっていたのもまた事実。それを解消するために手に取ったのだが、、、原作にも新たに感動!
映画は"愛"をテーマとした心温まるラブストーリーであるが、原作はホラー/SF/感動と、1つのカテゴリーに納めることは出来ず、また、黄泉がえりをめぐる人々の人間臭さとリアリティが映画以上に表現されている。(ホラーと言ってもおどろおどろしさは少なく、小説でも映画でも、ホラーが全くダメな私でもこの作品は大丈夫だったことを追記する)
映画とは全く別の心温まるエピソードの数々逆に、黄泉がえりに翻弄される人々のリアルな姿映画では描かれなかった"黄泉がえり"の原因
映画に感動した人はもちろん、今ひとつ納得できなかったという人も、ぜひ原作を読んでいただき、その上で再度映画版をご覧いただきたい!
・「幸せって何?」
整形美女、繭村甲斐子と望月阿倍子の物語。もちろん、甲斐子はカイン、阿倍子はアベル。旧約聖書からの命名です。コミカルに命名された二人は、女子大生。甲斐子は強い意志を持って、阿倍子は雰囲気に流されてそれぞれ整形美女になります。幸せになりたい。だれもが願う思いを込めて。
整形後の二人の運命がドラマチックでした。
誰だって幸せになりたい。当たり前に想うことですが、では、幸せってなんだろう?美容整形の実態に触れているところも面白かったのですが、それよりも、自分にとっての幸せとは何か? を考えた自分に驚いた一冊でした。
正反対の幸福感を得る二人の女性を、それぞれ描いた展開にも圧倒されます。
・「鮮やかに、ひとしくひとの心の動きを述べた」
姫野さんが綴ることの中には、人生訓になりそうなこともある。この小説の二人のヒロインであるブスになった元美女と美人になった元ブスを並べてみれば、教訓めいたこともたくさん出てくるものだ。しかし結局、どちらが幸せなのかは、よくわからない。
ただただ二人の歩みを追う中で、個人の論理は状況によって磨かれるのだ、と感じ入り、姫野さんの論理的しつこさと勘のよさに脱帽する。
ああ、男はそんな質感が好きなのか。そういう可能性もあるなぁああ、美人の時間はこう流れるのか。そういう可能性もあるなぁ
紋切り型にならない、ひとりの美人やひとりのブス、ひとりの商社マン、ひとりの整形外科医といった個人個人の心の動きに関する至高のフィクションだと思う。私じしんのことなんて、振り返る暇が無かった。
・「どっちがしあわせか?」
正反対の幸せを手にする整形美女2人。整形すると性格まで代わってしまうのか、と怖くなりました。
本来の整形前の自分をとりもどし、さらに成長して、素敵な隣人に愛されている主人公のひとりの生き方は清々しいです。
鼻を整形すると うつ伏せで寝ることもできないのか!と、整形後の不自由さがリアルでした。中村うさぎは整形したことをオープンにしているから 整形前と変わらず生き生きしてるんですね。
どういう結末になるんだろうー、とワクワクしながら読めました。おすすめです。
・「テンポいいです。」
やはり姫野カオルコ、読ませますね。独特の文章リズムが冴え渡っています。しかも、美容整形です。深読みすればするほど、はまってしまう面白さに、整形の実態的記述と世間的心理の、その運びがただただ面白い。私は甲斐子と安部子の物語りそのものより(勿論痛快に面白いのだが)このリズムの躍動する文体に惚れてます。
・「並みの美人論なんて読まないでいい!」
姫野さんが綴ることの中には、人生訓になりそうなこともある。この小説の二人のヒロインであるブスになった元美女と美人になった元ブスを並べてみれば、教訓めいたこともたくさん出てくるものだ。しかし結局、どちらが幸せなのかは、よくわからない。
ただただ二人の歩みを追う中で、個人の論理は状況によって磨かれるのだ、と感じ入り、姫野さんの論理的しつこさと勘のよさに脱帽する。
ああ、男はそんな質感が好きなのか。そういう可能性もあるなぁああ、美人の時間はこう流れるのか。そういう可能性もあるなぁ
紋切り型にならない、ひとりの美人やひとりのブス、ひとりの商社マン、ひとりの整形外科医といった個人個人の心の動きに関する至高のフィクションだと思う。私じしんのことなんて振り返る暇が無かった。
・「最後まで飽きさせない!」
今邑 彩・・・初めて読みました。とても良かった。400ページ、最初は「どうかなぁ」と思ったのですが、なんと2日で読み終えました。文章、構成も読みやすく、更にラストがどうなるのか気になって、自分を急かす様に読み終えました。過去の人物は別として、現在形で登場する人物がみんないい!それぞれみんなが生きている。理想だとは分かっているけれど、どんな出自であろうと「生まれてきて良かったね」「あなたに会えて嬉しい」と思ってもらえる人生であるといいですね。あとがきに「私自身の予想よりははるかに明るいものにしました」とありましたが、このラストで良かったです。
・「まだの方は是非!」
著者の作品は、10年位前から読んでいてとても読みやすいのですが、ラストがどれも暗い感じがしました。この作品は少し分厚いのに、他の作品同様サクサク読めて、しかも次にどうなってしまうのか止められなくなりとうとう徹夜で読んでしまいました!でも、ラストは今までの作品と違い、なんとも爽やかな感じでした。まだの方は、一度読んでみては如何でしょうか?
・「絶対損をさせない一品です。」
ものすごく面白い。私の中では、このミス今年のNo.1です。何がすごいと言ったら、まず読みだしたら、止まらない。ホラーな部分も、感動する部分もそして何よりもミステリーである部分もどこをとっても一級品。少し高くて、分厚いですが、買って損はしないよと太鼓判を押せる一冊です。
・「惨劇と兄弟愛」
本書には著者の最近の作品でみられる様な幻想的雰囲気は無いが、骨格のしっかりとした物語性が有る。惨劇を背景とした真実に兄弟が迫るという内容だが、途中で驚くべき逆転劇が有るのが面白い。その意外性や精緻な心理描写に引き込まれ、時間を忘れて読み入ってしまう。兄弟の弟である優太が2度にわたって生命の危機を演じるところにはハラハラとさせられる。また、犯罪者の血は遺伝するのかという、結論の出ない様な問題も改めて考えさせられる。
本書の読後感は爽やかだ。その点では著者の蛇神シリーズなどとは大いに異なる。著者は本書執筆中に大病をしながらも苦労して書き上げたらしい。体調にご留意いただき、今後も本書の様な傑作を期待したい。
・「話に引き込まれ2晩で読破」
上下2段組 413ページ。決して短い作品ではないが、話にずんずん引き込まれてやめられなくなってしまった。昼間フルに働いて、家事をして、その後本を読むのは結構きつい。でも読んでしまった。
ミステリーの範疇に入るのだろうか。単純に隠された秘密を探っていくというより、家族愛・兄弟愛が色濃く出ている作品だと思う。よくあるここまで話を引っ張っておいてこんな種明かし・結論かとがっかりさせられる長編があるが、(例えば、宮部みゆき 模倣犯 )これは最後までしっかりと構成ができていて、まったく結末が予想つかない面白さで、大いに満足。 なにかの書評で取り上げられていたのに興味を持ち、読んだが、自分としては、大ヒット。
初めて読む作家ですが、今後も注目していきたいと思います。
・「橙色のリュックサック」
表紙を見ただけでも、うふふと笑ってしまう。京都在住経験者には、どこの景色が一目で知れることだろう。京大出身の作者による、京大生を主人公とする、京都が舞台の物語。葵祭のバイトに始まり、祇園祭を経て、気づけば吉田神社で奉納舞。十人の大学生が集められて挑まされるのは、大学対抗のある競技。対戦するは、京大青竜会、京産大玄武組、立命館白虎隊、龍大フェニックスの4チーム。野球でもなければ、ラグビーでもない。さて、ホルモーとはなんぞや?ホルモーがなにゆえ始まり、続くのか? 主人公達は謎の起源に迫るのでもなく、謎の解体を図るのでもない。巻き込まれて、盛り上がる。訳がわからなくても、わからないままに、続いていくもの。ホルモー自体が一つのお祭りのようなものである。伝統は続けることに意義がある、的な。奇想天外な設定に、片思いの繊細な男心の描写、リアルな生活感。妙な迫力と勢いにのまれて一気に読んだ。深くは考えないで、世界を楽しむのがお勧め。学生気分に戻りつつ、笑いながら楽しんだ末、読後に颯爽と香るは、春の青々しい楠の匂いだった。
・「“そこはかとなく”こみ上げる可笑しさ」
最高にバカバカしく、読んでるうちに“そこはかとない”可笑しさがこみ上げる娯楽小説!
・「レーナウーン、レナウンレナウン」
冗談というのは、大真面目な口調で言った方が面白い。爆笑はしなかったが、4箇所で思わず「ぐふふ」と笑ってしまった。サムシングって表現とか、チョンマゲのくだりとか。 縦軸のストーリーは、大学のサークルを舞台にした単純な大学生の片思いの交錯である。しかし、このサークルが思わせぶり。京都大学青龍会?しかもホルモーって何?たいした中身がなかったら勘弁しないぞっ(学生小説ってそういうのが多いから…)て息巻いていると、ナカナカどうして。古都京都の深遠さをうかがわせる大仕掛けが次第に明らかになる。 楽しませてもらいました。
・「読み始めから」
読み始めて数ページで、主人公が気に入ってしまいました。こんなことあんまりないことなので、一気に読んでしまいました。もちろん中身も最後までおもしろいです。特に今まで京都に住んだことのある人には、さらにお勧め。もちろん京都なんて修学旅行で行っただけって人にもお勧めです。
・「参加したい!」
「ホルモー」って何のこと?と思いながら読みました。しかし、いつの間にか、その言葉の意味なんてどうでもよくなり、というか気にしなくなっている自分がいました。「青春」、「恋愛」、「友情」、「笑い」などなど読んでいて心地よいキーワードが編みこまれていて純粋に楽しめる作品でした。私も「匂い」を放つものになりたいと思わずにいられません。
・「出会い。信じること。」
ほぼ主人公と同年代の私。子育てしながら働いて、と立場上は小夜子側なのだけれど、性格的にはどちらかと言えば葵と共通項が多いかな、と読み始めた途端、葵の過去に驚愕!!しかし、あの時のナナコとの出会いや共有した時間、ナナコからもらった友情に胸キュンとなった。切ない切ない。。。「もし私がみんなから無視されても葵もみんなと無視してて欲しいくらい。その方が安全だから。イジメなんて全然怖くない。そんなとこに私の大切なものはないし。」「いやならいやだと思うことに関わり持たなきゃいいんだよ。簡単だって、そんなの。」しかし、明るく言い放つナナコは想像絶するつらい環境で暮らしていた。今度は大人になった葵が小夜子に「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、一人でいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことの方が、うんと大事な気が、今になってする」と話す。旅行先の悲惨な事件を経て、人が親切にしてくれるのは当然ではなく、最低の人間もこの世に存在する。しかし、悪い方向ばかりを考えてしまえばこの状況は変えられない。自分は良い方に向かっていくと信じる。人ではない。自分が望む道ならば障害が発生する可能性もゼロではないと認識する強さ、あるいは割り切り。葵はそんな風に日々を刻んできていたのかな・・・。最後に小夜子は気付く。「なぜ私達は年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ」つらい経験はできればしたくないし、傷つきたくもない。だって、年いくほど立ち直りにかなりの時間を要するし、性格歪むし、人間不信になるし、自分を卑下しまくるし。実際、私自身がその状況下で苦しんでいる。でも信じようと思った。出会いを。自分の脆さがいつか必ず強さに変わる日を。
・「専業主婦、独身キャリア・・・にこだわらず」
「どうしてこんなに人間関係に臆病になってしまったんだろう」と思うことがある。30歳を過ぎてからだ。似た気持ちを抱いた経験のあるかたならこの本は響くと思う。痛快でスカッとして元気がわくという本じゃない。静かに背中を押してくれるような・・・
単行本刊行時、「専業主婦(小夜子)と独身女社長(葵)、正反対の二人に友情は成り立つのか」みたいな本として紹介されたと記憶する。「30歳以上、独身、子どもなし」(葵がそう)といったことが注目されていた頃だから尚更、そうした印象が強く刻まれている。けれどこれは物語の基本設定に過ぎない。「現在の小夜子の物語」「高校生の葵の物語」が交互に語られる。正反対に見える二人が実はそうではないと次第にわかってくる。いじめの経験を引きずる高校生の葵に、現在の陽気な女社長の面影はない。一体今の彼女とどうつながるのだ?という興味で高校生部分を読む。それが徐々に悲しく、切実で痛いほど胸に染みる展開を見せていく・・ここに登場するナナコという友達が実に印象的だ。本書の中に胸を刺されるような、胃が重たくなるような箇所を見つける女性は少なくないだろう。だがどちらか一方でなく、小夜子、葵それぞれに自分と重なる部分を見るのではないか。つまり、専業主婦/独身キャリア女性といったわかりやすい対立構造を借りつつ、二人の女性を通して、この年代に共通する心理−迷いや不安、停滞感や孤立感−をより深く描いているのではと思う。だからこそ、本書の中に見出せる希望も二倍、いやそれ以上になるのじゃなかろうか。
『対岸の彼女』というタイトル。当然対極にある二人を意味するものだと思っていた。でもそれだけではなかった。読了後、このタイトルがしみじみとした感慨と共に胸に迫るはずだ。
・「「フィクション」と見るか「ノンフィクション」と見るかは、あなた次第」
読み進み、終盤に差し掛かって思ったこと。「対岸の彼女、タイトルが絶妙ですね」。
2者の視点で平行して進めて行くのは、よくある手法。最後に、マッチをさせるのも、よくある手法。幸いなことに、この手法を用いた作品のハズレを読んだためしがない。
今回も『対岸=川』をイメージすると、見事なさじ加減、表現方法で2者のエピソードが『合流』する。
角田さんの作品を過去2作読み、「独自の人間観察力をお持ちの方だな」との思いを抱いておりました。これは、私にはついていけないよ、との諦めも含まれています。
しかし、今作に関しては、非常に登場人物に共感が出来た。起きている内容は、非現実的だけれども、その全てが、現実と紙一重に思えてならなかった。その危うさも捕まえた心を離さなかった。
久しぶりに、時が経つのを忘れて、没頭してしまいました(苦笑)。
・「対岸の彼女」
自分達の信じる道を進んでいるつもりだったが,どこにも行くことは出来ず,どこに向かっているのかもわからなかった二人の少女. 現実と理想との間にゆれながらも何とか道を切り開こうとする二人の女性. 年を重ね経験をつみ,知識を身につけてもぶつかる問題は何ら変っていない.いつの時代も自分のことを棚に上げ,他者の足を引っ張るという人は大勢いるのだから. 本質的なことは何も解決などしていない.ただし全てが無駄だたわけではない.かつて友人によって生き方を変えた少女が,大人になって他者に強い影響を与えるように. 学び続ける姿勢を崩さなければ,年を重ねることはそれほど苦痛ではない.誰にも理解されず,幸福とはいえなかったが,強い輝きを放った儚い過去.それがあるから今の彼女がいてそれに魅せられる人もいる. 対岸にいた二人が時に近づき,時に離れやがて一つに重なったとき,新しい世界が見えてくる.そこに必ずしも幸福があるとはいえないが,少なくとも希望はある.
・「初めてみる小説技法」
序盤は地味で読むペースが掴めなかった(注1)。しかし、小夜子が清掃業務の仕事に就職して、仕事現場で台所の清掃中に次の事を感じた。「油でベタベタしたステンレスの感触が、汚れの取れた部分は、手のひらの下でなめらかに滑った。汚れが落ちる瞬間がわかると、油まみれの台所の真ん中で、はいつくばって床や棚を磨き上げるのが楽しくなった。」そして「こびりついた油の層が薄くなるのに比例して、頭の中がどんどん真っ白になってく。」この文章を読んだとき、この本面白いと思った。 この本は、心理描写が主だが、現実に誰にでも覚えのある想いや感情そして過去等を使いうまく表現されている。また解説(森絵都)を読み気づいたのだが、この小説は、2つの物語が交互に同時進行しているが特筆すべきは、主人公本人の視点から描かれた話と、他者から見た主人公の様子が描かれていることだ。この初めてみる技法は、解説を読んで気づき驚かされた。(注1:序盤は誰が主人公なのかとわかりにくかった)
・「最高傑作!」
名作の多い宮部作品のなかでも、私はこの「火車」が最高傑作だと思います。物語の進め方、一つ謎が解けていくたびにはっきりとしてくる事件の輪郭。そしてなによりあのラストシーン!・・・流石宮部みゆき、と言ったところでしょうか。
犯人の人を殺す理由がとても切なく、思いっきり非難できないのも良いと思います。私は一度も姿を現さない犯人の女性に、とても感情移入してしまいました。
・「再読する価値あり!」
私も何度も繰り返し読みました。クレジットカードの不透明性が割と身近に感じられて、飽きることがありません。 それから次から次へと謎が出てきては、それを解明するための小さな糸口が現れる。これほど巧みな謎解きはお目にかかったことがありません。
・「まさにミステリー史に残る傑作」
そこそこの長編だがあまりの面白さに一気に読めてしまう。まさにミステリー史に残る傑作だと思う。自己破産やカードローンなど金融関係の用語が多く、現代の社会情勢をテーマにした内容で難しく感じるかもしれないが、心配することはないでしょう。ともすれば、説明的になる部分も、そこは著者の力量で面白く読めた。後半にかかるとスピード感はアップし、ぐいぐいストーリーに引き込まれていった。そして罪を犯すものにもそれぞれの人生があり、皆必死で「生きている」のだと感じた。ラストシーンはもうこれ以上ないのではないかと思えるほどかっこいい終わりかた。最後の1行まで楽しめた稀有な傑作。
・「なぜ直木賞とれなかったのか不思議なくらい」
一言でいうと、傑作です。重いテーマをこんなに情感と悲しみと人間の性を感じさせる作品はなかなかありません。「砂の器」以来かも。行方不明の女性を捜している過程で、いろいろな事が分かっていく・・はじめは話がどう流れるか検討つきませんでしたが、「誰を捜してるか」にピンスポットが当たった時点で、読んでいる私も、主人公たちと一緒の気持ちになり「早く捜してあげなければ」と思っていました。めぐりあえたシーンでは、安心感と恐ろしさと、憐憫と悲しいくらいの情が沸いてくるのを感じました。何度読んでもこの感動は薄れません。「理由」よりこっちのほうがだんぜんオススメです。なぜ火車で直木賞とれなかったのかが本当に不思議です。
・「読んでないとわかんないような批評になっちゃった・・・」
親戚の青年から突然失踪した婚約者捜索を頼まれたことから始まる長い長い人探しサスペンスです。
他の方が言ってるように、カードによる多重債務⇒自己破産のスパイラルが背後にあります。それは、この本の語り口だけで見ると少し古めに感じるけれども今の時代でも、十分当てはまる大きな社会の闇です。
途中から、探し人の『彰子』は一人の女性というよりもその闇をまとった時代の象徴のようになっていきます。
ラストで彼女がその実体を、本当にいるんだということをさらけ出したところでその象徴性が失われて、急速に一人の女性を形作っていきます。
するとどうでしょう。何百ページも費やして、主人公と読者とが探し出した『犯人』に対する感情がとても不思議なものに変わっていることに気づくはずです。そこが気持ちの最高潮。だからラストはアレでよかったんだと思います。
すごく、不思議な犯人を仕立て上げることのできる作家さんだな、と思いました。
・「風の様に爽やか」
長編ハードカバー単行本の同タイトル作品の番外編だ。登場人物や、それぞれの背景も同じだし、全体を貫く爽快感も同様だ。
長編ハードカバー単行本は大作なので、本書は手軽に、その神髄に迫る事が出来る。やはり、淡々としていて、物語も興味深い。草太のパワーと根性は健在だ。
本書では、爽やかさに付随して、独特な多幸感を抱く。それは、少々の困難に直面しても、じめじめとした面は皆無で、プラス思考で、我々を自転車が奏でる風に誘ってくれるからだろう。
文庫版である本書と長編ハードカバー単行本の両方を読むと、より楽しいと思う。著者の筆は、簡潔かつ爽やかだ。
・「少年少女じゃなくても楽しめる」
私はこの本を書店で見つけ、何かにひきつけられたように本を持ってレジに運んで購入しました。この本は自転車少年記の文庫版で、事実上単行本の続編といった感じです。主人公の昇平と草太の大人になるまでを描くストーリーで恋人との別れや失恋、出会いや進路など豊富な話題で続きがスラスラ読めてしまいます。最終的には昇平の子供北斗に自転車を乗らせるまでに至ります。何歳でも楽しめるし、自転車に興味がなくても好きになってしまうお話だと思いました。同作はドラマ化も決定されていてますます世に知られるお話なので話題づくりに読んでみてください。
・「旅がしたい」
自転車かぁ・・・
自転車で300kmもの距離を走りたいと思いますか!?300kmっていうのは、東京から新潟までの距離とほぼ同じみたいです。
思いますか? 300km? 自転車で・・・
「私は、不覚にも、思っちゃいました。」
この本を読んで・・・ 自転車に魅力を感じた。
自転車で東京から新潟まで1日で行けるんです。いや、行けるらしいです。
すごくないですか!?
バックパッカーって言葉も最近よく聞く。
詳細には少し違うのかもしれないけど、簡単に言うと、バックパッカーっていうのは、バック1つで、ツアーに頼らず旅をする人のことである。
自転車でバックパッカーもいいかもしれない。
やってみたいと思った。
この本を読んで、そんな気持ちになる人は一杯いるんだろうな。
・「変わっていくことと変わらないこと」
この本では、18歳の少年たちが30歳を過ぎるまでが描かれています。
子供の頃、誰もが自転車に乗るけれど、いつしか乗らなくなります。 しかし、彼らにとっては人生そのものなのです。 子供の頃の思い出も全て、自転車と結び付いています。うれしい時もかなしい時も自転車が側にあります。
私たちが忘れかけている気持ちを思い出させてくれます。
・「自転車と人生」
自転車とともに少年・少女たちの成長を描いていく物語なのだが、文句なしでおもしろかった。昇平、草太、伸男、奏、それぞれの心情がとても繊細に表現されており感情移入せずにはいられない。また、ストーリにおいても、単なるご都合主義では決してなく、人生は挫折の連続というのが非常によく表現されており簡単なハッピーエンドにはならない。もちろん落ち込んだり嘆いたりすることもあるのだが、そのたびに考えるきっかけを作ったのは自転車で、自転車に乗って冒険することで得られる達成感を味わうことによって、ちっぽけなことなんて考えずに自分のやりたいことをやるというのが読んでいて爽快だった。
・「理想から乖離した現実に打ちのめされることになる」
たいへん面白かったです。 死刑囚が思い出した「記憶の断片」「階段の記憶」を無罪の証拠とするために、弁護士が取り次いだ篤志家の意向を受けて刑務官の南郷と仮釈放中の青年純一が調査をはじめます。 すると、その事件にはやはり、別の犯人がいる可能性がでてきて…。 死刑囚が判決を受けるにいたった事件のほか、刑務官南郷の今までの職務内容や純一の起こした事件など、たくさんの事柄が語られていてとても興味深い筋立てになっています。 そのうえ、それらが後に伏線だったことに気がつかされ、何度も驚かされます。 とても重いテーマを扱っているのに文が巧みでスラスラと先に読んでいけます。 登場人物が魅力的で、感情移入がしやすくその心理描写が丁寧に描かれているうえ、推理小説としての謎解きも申し分なく描かれています。 一気に読めて、とても読み応えのある小説。 私が今年読んだ小説のなかで一番に面白かった本です。
・「「死刑」についていろいろ考えさせられた作品」
死刑囚の冤罪を晴らすため、刑務官の南郷と前科を持つ三上が調査に乗り出す。
物語が進み、徐々に真実が明らかになる中で、登場人物のほとんどが真犯人に思えてくるほど、多くの伏線が張ってある。物語の後半から一気にストーリーが進み、真犯人は非常に意外な人物であった。作中、死刑制度の詳しい解説・死刑執行の方法が書かれており、読み手の知的好奇心を満足させてくれる。死刑執行の描写は非常に生々しく、サスペンスとしてもお勧め。罪を犯した人間を国によって殺す「死刑制度」の必要性についてや、国が発出する命令書のため現場で実際に死刑を執行せねばならない刑務官の苦悩など、普段あまり意識していなかった死刑について深く考えさせられた。
・「驚いたぁ」
私の大好きな宮部さんが絶賛してるというオビに惹かれて購入。正直、最初の数十ページは、とくになんとも思わず、内心「失敗したかな」って思いました。ところが読み進めていくうちにハラハラと涙が出てきて止まらず、読み進めていくと、、、ページをめくった次の瞬間、目に入った言葉に「絶句」したのはこの本がはじめてです。思わず、「なんで」って独り言言ってました。読後感はやるせなさが残りますが、最近のイチオシとなりました。
・「罪を背負って生きること、罪を背負って死ぬこと」
死刑。死刑制度は今、その有無が問題になっています。私はこの本を読むまで、罪を背負って死ぬ「死刑」について深く考えたことはありませんでした。正直、死刑制度についてどんなことが行われているのか…わかったのですが、あまりに衝撃的でした。読んでいただくとわかるのですが、死刑を執行するという仕事に関しては、まして考えたことなどありませんでした。「だれかがやらなくてはいけない。」そんな言葉が強く印象に残っています。死刑が良いか悪いのかは、はっきりとは言い切れませんが、罪や死と向き合う登場人物達は人間味がありました。だからこそ、深く考えさせられました。
内容としては、読み始めると続きが知りたくなるようなミステリーです。私は、夜読み始めて、止められなくて読み終わるころには朝方になっていました…
・「やられた・・・」
正確には4,5点くらいかな?ただ、素直に面白かった、というのは確か。犯罪者の社会復帰や、それにまつわる保護司という社会派のテーマでありながら、しっかりとトリックなども生きていて面白かった。乱歩賞作品はいくつか読んでいたのだが、どちらかと言うとアクションというかサスペンス的な要素が強く、ミステリとしては弱い部分が目立つ作品が多かっただけに、賞に対しても見なおした。
ただ、筋は通っているのだが多少トリックに無理があるような・・・。微妙にその辺りが気になってしまった。
・「面白い」
この本はとにかく面白い。花村さんの本は全部読んでますが、私はこれが一番好きだ、ストレートでカッコイイ。ガツンと来る。この本を読む人はラッキーだ。。未読の人はとにかく読んで欲しい。二番目に好きなのは真夜中の犬です。三番目は眠り猫。四番目はブルース。五番目は皆月。こんなところです。
・「面白かった」
花村氏の作品を読んだのは初めてであったが、かなり面白かったため、朝方までかかって一気に読んでしまったほど。
元やくざの破天荒な主人公と元力士、幼馴染を連れて物語が展開する。中断が苦痛になるほど話に引き込まれた。
ちなみに、花村氏に興味を持ったのは、「父の文章教室」(集英社新書)を読んだため。氏は特殊な環境の中で父親から変わった英才教育を受け、義務教育すらまともに受けていない稀有の芥川賞作家なのである。父親が他界して以来10代で道を踏み外し福祉施設で過ごした経験もあり、そうした経験が小説の中に随所に現れていると思う。
本作品を読んで他の作品も読みたくなった。
●聖域
・「好感が持てる作品でした!!」
3年前のある事件から山に背を叛けて行きて来た草庭(くさば)。そんな彼が、学生時代からのコンビであり親友であった安西を山で失う。山に慣れ、そして技術的にも遭難したとは思えず…。草庭は、安西が滑落した真実を探しに再び山に向かう…!?★登山ミステリーです。しかし、登山の知識がない私でもすんなりと受け入れられてラストまでドキドキしながら読む事が出来ました。★単なるミステリーに終わっていない所もポイントアップです。草庭を取り巻く人間関係。そして、自らの居場所が掴めずにいる草庭が、自分の本当の場所を見付けて行くまでの過程がとても良かったです。★ミステリーに関しては、「まさか…!?」と言った部分があってすっかり騙されてしまいました。★山という自然の領域、そしてそれの立ち向かう姿もすっきりと描かれていて清々しいものを感じました
・「まあまあ」
最初から雰囲気が良い出足で始まるが、途中から息切れし、ラストは何となくわかってしまった。まずまずだと思う。
・「今年一番のミステリー」
親友が、冬山で不可解な遭難死を遂げたことの謎解きという縦糸と、リーダーを務めたパーティーの一員が事故死したために、山から遠ざかっている主人公の再生という横糸とがガッチリかみ合って、読み応えのある山岳ミステリーになりました。その主人公が亡くなった親友に代わって、未踏峰に挑む結末も、とても爽やかです。 それにしても、本書がいうように、現在の大学山岳部の活動は低調なのでしょうか。随分前に朝日連峰に行ったとき、キャンプ地で多数の山岳部員の姿を見ましたが、そういえば、最近はどこでもあまり見かけなくなりました。 そういうわたしも、この頃出かけるときは専らツアー、本書で<アルプス>という喫茶店のオーナーが嘆く、山の観光地化に貢献しているのですけどね。
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