白夜行 (集英社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「なんとも形容しがたい」「活字でこそ深く味わえる物語」「日の当たらない青春を生きた大河小説」「じっくりと読ませる悲劇」「読み取ることが大切。」
幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7)) (詳細)
東野 圭吾(著)
「満足。続編待たれる。」「書評は最後に読みましょう」「最高に面白かったです!」「白夜行のドキドキが再び!!」「美冬の人生とは?」
「ダークな叙事詩」「私は東野作品の中でもかなり好きな話です。」「究極のパロディ?」「徹夜本」「「殺人の門」をくぐるには・・・」
「燻銀の警察小説」「建前と現実の隙間を埋める、3人の警官の生き方」「人間の物語」「内容が濃い!!」「最高でした!」
「最初から最後まで目が離せない好サスペンス」「「涙」するかどうかは別にして・・・」「入り込んで読める作品」「「ひたむきな姿に感動します」」「ちょっと陳腐かな」
天国への階段〈上〉 (幻冬舎文庫) (詳細)
白川 道(著)
「柏木圭一郎の復讐劇待望の文庫化」「堂々の感動作」「久々の感動」「生まれて初めて、小説を読んで涙を流しました。」「泣いた!泣いた!」
「読みながら「クライマーズ・ハイ」状態に。」「なんと手ごたえある人生だったろうか」「人生には超えねばならない山がある」「思い通りにならない銀実」「それぞれの人生」
「最高の一冊」「再読する価値あり!」「最高傑作!」「面白かった。ラストの急展開にドキドキしました。」「「社会派ミステリー」の傑作」
「それでも輝く宮部の優しさ」「映画の数倍面白いです、特に上巻は」「模倣犯~ それぞれの人生」「初めての宮部作品」「「模倣犯」」
パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「東野圭吾の作品の中でもベスト3に入ります。」「読み始めたら止まらなくなってしまった!」「新鮮味に満ちたラブストーリーの真髄―友情と恋の狭間で揺れ動く人間心理!」「平行世界と現実世界」「臨界小説」
ボーダーライン (集英社文庫) (詳細)
真保 裕一(著)
「「生まれながらの犯罪者というのは存在するのか」というテーマを背景にしたハードボイルド」「実の父と探偵が追う、生まれながらの悪を宿した少年」「普通じゃない人。。。」「悪を描くむづかしさ」「反則かなこれは?」
「孤独の中にみる永遠」「自分探しの暗中模索」「桐野作品としても名作です」「けなげだ、、、」「男」
火の粉 (幻冬舎文庫) (詳細)
雫井 脩介(著)
「徹夜本」「刻々と崩壊していく家族が克明に描かれている」「類まれなる筆力で読ませる、サスペンス小説の傑作!」「何気ない日常の恐怖を描く。」「喉が渇くくらいの緊張感!」
神の名のもとに (講談社文庫) (詳細)
メアリ・W. ウォーカー(著), Mary Willis Walker(原著), 矢沢 聖子(翻訳)
「最初のレビュー」「人の強さ弱さ」「ぜひ読んでみて下さい」
深紅 (講談社文庫) (詳細)
野沢 尚(著)
「重いテーマを一気に読ませる」「引きずり込まれる」「深い愛を感じました。」「切ないミステリー」「お勧めです!!」
東京物語 (集英社文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)
「ツボをおさえている」「本書は青春小説でもあり時代小説でもある―作家・奥田英朗の誕生史!」「文章それぞれに思い入れの残る」「それぞれの「東京物語」(奥田版)」「奥田英朗の筆力をひしひしと感じる一作」
渡された場面 (新潮文庫) (詳細)
松本 清張(著)
「単なる「犯人探し」ではない推理小説」「尻上がりに調子の上がって行く本」
海は涸いていた (新潮文庫) (詳細)
白川 道(著)
「ハードボイルドは苦手だけど、これはすごい!」「命を懸けてでも守るべきもの」「スリル満点」「ハードボイルドの定義はよくわからないが…」「上質なセンチメンタリズム」
猛き箱舟〈上〉 (集英社文庫) (詳細)
船戸 与一(著)
「忘れられない興奮本!」「船戸大作の1つ」「読まずに死ねない」「船戸文学の最高峰。」「すごい冒険小説」
ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部) (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「見事!」「人には譲ってはいけないものがある。」「騙し絵的小説の面白さ」「1970年代生まれの奇跡」「バラバラからひとつへ」
「タイトルの意味が言い得て妙だが、実は儚くも美しい純愛小説だったりする。傑作!」「人間臭さがいい。」「誰が悪人で誰が悪人じゃないか」「聞きたいのです。」「誰が悪人か」
「日常をテーマとした秀作。おもしろい。」「文句なしのユーモア短編集」「まさに、“今”な感じの家庭小説!」「人間をよく見てますなぁ」「さすが奥田英朗さん、洞察力が違います!!」
「こんなに読後感の悪い小説はあまりない。でもこんなに面白い小説はあまりない。」「確信犯的に歪められた描写から窺うテーマ」「これはスゴい・・・」「倫理観はどこから生まれるのか」「斬新」
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>は行の著者>その他
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・「なんとも形容しがたい」
桐原亮司と西本雪穂。二人が小学生から大人になる十九年間の物語。高度成長末期からバブル経済の時代まで。彼らが歩む人生の周囲では、次々に不幸になる人々がいる。人々を絶望の泥沼に蹴落としながら、雪穂は睡蓮のように美しく咲き誇っていくのだ。 二人の主人公と読者の間には、レースのカーテンのような物が揺らめいていて、その姿ははっきり見えない。 特異な小説である。主人公二人の心だけが、一切描写されていないのだ。その周辺でもがく人々の主観を介してしか、亮司と雪穂に辿りつけない。
テレビドラマに引き込まれて、一気に読破した。過去にドラマ化不可能などという形容の小説は幾多もあった。しかし、本当に不可能な小説に出会ったのは初めてであった。 亮司と雪穂という主人公の人生には、殺人事件、レイプ、失踪、ハッカー犯罪などの事件が溢れている。最後のピースがはまった時、それらが純粋な魂から溢れ出た「果てしない悪意」だと読者は知る。 この小説と、放送が開始されたTVドラマとは、全てが違う作品になっていくだろう。小説だけの読者は、雪穂たちから、究極の悪意の快感を覚える。TVドラマだけの視聴者は、絶対的な純愛に感動するだろうからだ。そして両方を知った者は、鏡のように全てが正反対の、原作とTVドラマの特異なコントラストにくらくらと酔う。 小説とTVドラマが意図的に乖離せざるおえない作品。 昔、映画の「風と共に去りぬ」観た。その後に原作を読み、映画版のできの悪い模造品に感じた。これとは対照的に、百夜行は原作と映像作品が別個に独立した作品となっていた。両方とも鑑賞される事を強くお勧めします。
・「活字でこそ深く味わえる物語」
文庫版を解説している馳星周氏は本書をこう評している。「人間の暗い側面、邪な断面、人間のそうした性質を助長する矛盾した世界。それを描くのがノワールだと定義したならば、『白夜行』はもはや、ノワール以外の何ものでもない」そう、「白夜行」は紛れもなく上質のノワールなのである。暗黒街やマフィアが登場する作品ばかりがノワールではないのだ。
20年にもおよぶ亮司と雪穂のダークで沈鬱な物語。2人の人生には常に不気味な犯罪が見え隠れする。しかし、読者は2人の心の闇、心の傷をうかがい知る事はできない。小説には2人の内面はいっさい描かれていないのだ。冷たく、重い物語だ。出口がなく、救いのない物語だ。読後の爽快感はない。だが間違いなく後をひく傑作だ。
この名作がドラマ化されるという。小説では2人の内面描写がなく、余計な説明もないからこそ、深い読後感を味わえる構造になっているのだ。陳腐な純愛ドラマに貶められないか、非常に心配である。
この重い世界観は活字だからこそ味わえるものではないだろうか?表現手段が違うのだから、ベストセラー小説を何でも映像化するのは反対だ。活字だからこそ表現できるものもあれば、映像にしか表現できないものもある。「白夜行」は活字でこそ生きる物語だと思う。
・「日の当たらない青春を生きた大河小説」
2回読破しましたが、2回とも変わらず楽しめました。舞台が私の住居と近い東大阪であることもひとつの要因として、のめりこみました。二人の人生の中で描かれている社会現象も懐かしく、共に時間をすごしているような錯覚すら覚えます。
懺悔のためか、決して太陽の下に出られないような人生を選び、愛するがゆえに影から守る。決してハッピ―エンドにはならないと分かる半生を生きるには勇気、絶望どちらが必要なのでしょうか?
著者の最高傑作のひとつであるのみならず、日本のサスペンス小説の宝であります。
・「じっくりと読ませる悲劇」
仕事の合間を縫って、2日間ほどで読み終えました。最近この本を手にした多くの方と同様、私もドラマを見て、関心を持った一人です。 (売り切れの書店ばかりで大変でした)
読み終えて、真っ先に思ったのは、「ドラマを見る前に読めばよかった」という後悔でした。
ドラマの最初のシーンが本のラストにあたり、更に徐々に浮かび上がってくる二人の関係が、ドラマの初回で既に描かれてしまい、読みながら考えていく楽しみが減ってしまいました。また、読みながら俳優さんたちの顔が浮かんできて…(苦笑)
雪穂と亮司のふたりを決して同じ場面に出さず、出来事と周囲の人間の発言だけでつながりを浮かび出させていく…笹垣の口を通して描かれる解釈すら真実なのか?
あくまで最後は読者それぞれで彼らの人生を考えろ、というのが作者の狙いなのでしょうか。
確かに雪穂には人間の「情」というものが微塵も感じられません。心を失った彼女が、分身である亮司まで失ってしまった。美しいただの抜け殻であり、これから先の彼女の人生は、延々と続く悲劇でしかないでしょう。
全く救いがない物語ではありますが、救いのない悲劇をここまで描ききったことは見事としか言いようがないと思います。
最後に、この本とドラマは、全く別物として、それぞれ楽しんだほうがいいと思います。
・「読み取ることが大切。」
書評を読んでから小説を購入し、読みました。主人公の二人からの細かな視点は、この小説に必要では無い、と私は感じました。
なぜなら、たくさんの登場人物たちの複雑に絡み合った関係。過去の事件の真相を探る上で知りえる情報。二人の台詞。事細かに描かれており、たくさんの章があって大変だとは思いますがそれらをしっかり読み取ることで、二人の関係や想いを感じることは、できるからです。
この小説に、「雪穂はこう思った」「亮司は雪穂に対してこうこうこういう気持ちだった。」なんて視点があったら、野暮だしおもしろくはありません。
それから、ネタバレになるので詳しくは書けないけれど、二人がそれぞれ違うシチュエーションで、違う相手に向かって言う、同じ意味の言葉があります。それが唯一、二人の関係を示すものとなるのではないでしょうか。
この小説を読み終わったとき、私は村上龍氏の「コインロッカー・ベイビーズ」を読んだときと同じような気持ちになりました。生きるため、自分を守るため、誰かを守るためのエネルギー。様々な策略が感じさせるダークな部分。そういう点が共通してるのではないでしょうか。
素晴らしい小説だと思います。
小説の内容とは無関係だけど、文庫本は上下に分けて欲しかった。。。あのページ数の文庫本は手に持って読むのに向いてません。
・「満足。続編待たれる。」
「白夜行」は随分前に読み、詳細までは思い出せない。しかし、読中のずっしりとした心地よい重さを覚えている。
・「書評は最後に読みましょう」
文庫本で一気に読みました。物語の中盤で、物語のナゾの一つである美冬の正体について、「分かった!」気になっておりました。物語の展開は白夜行とかなり似ており、面白いけど、同じやな、とさえ思っておりました。
が、書評を最後に読んで、さらに伏線が隠れていたことに気付き、著者のなぞかけが、よく練られていることに正直感嘆せずにはいられませんでした。この書評は、ハードカバーにはないようなので、私のように伏線に気付かないままの方もいらっしゃるかもしれません。
ぜひ書評を最後にお読みになってください。そして、できれば白夜行を読んでから本作を読まれると、より一層楽しめるのではないかと思います。
・「最高に面白かったです!」
皆さんと同じく最初はこのとんでもない分厚さに怯みましたが、一気に読みました。というか読まずにはいられませんでした。随分前に白夜行も読みましたが、まさしく続編だと思います。私は白夜行よりもこっちの方が面白かったです。
以降ネタバレになりますが…
雅也は、きっとわざと暴発するように銃を作ってたんですよね。「最高傑作の銃」というような言葉がありましたが、「1発でお互いを葬る事ができる銃」という意味なのでは。美冬を殺して自分も一緒に死ぬつもりだったんだと思います。しかし加藤がやって来て…結局、雅也はやっぱり最後まで美冬を守ってしまったんですねえ〜…引き金をひけば、自分も死ぬとわかっていながら。
美冬にはホントに背筋がぞっとしてくる感じはありますが、面白かったです!是非とも続編が読みたいです。
・「白夜行のドキドキが再び!!」
幻夜は白夜行の続編だ。でも話は白夜行を知らなくても違和感なく読むことが出来る。抽象的な文体でアレコレ読者に想像させる文体は相変わらずでその言葉や文章の意味に気づいたときは"してやったり"というカンジで本当に楽しい。しかしその快感を読者に与えるのが目的といわんばかりで作者に一歩上から見られているようなカンジで意地悪な作者の性格が文章に表れている(いい意味で)今回は相方の雅也の心情や実際雅也が行った数々の仕業がわかるようになっているので白夜行より話全体がわかりやすくなっている。それにしても美冬は凄い。前回よりも計算高くなっている気がする。もはや敵はいないかのようだがこんなに美人で色気のあるしかも頭の回転が速い美冬だから敵がいないのも当たり前か!?分厚い本なのに一気読みしたくなる中毒的ミステリー小説!!!続編が早く見たい!!!
・「美冬の人生とは?」
白夜行の続編。また分厚い本だなぁ〜と一瞬躊躇しましたが、そんなことを考えたのは初めだけ。ページをめくる手も止まらずスラスラと読み進めてしまいました。主人公は阪神淡路大震災の直後に衝動的に殺人をしてしまった雅也とその現場を目撃していた美冬。
白夜行では主人公であるにも関わらず雪穂と亮司の心境は一切語られなかったため二人からは血も涙もない冷酷な印象をうけました。(ドラマでは雰囲気が違うかな?)でもこの幻夜では、主に雅也の視点から物語が進行します。そのため美冬の呪縛から逃れることのできない雅也の苦しさや葛藤、孤独さが手に取るように分かりました。贅沢でなくてもいいから、平凡な幸せな人生を送りたいと望むのに反し、一方で美冬にどうしようもなく惹かれていく。そして美冬に指示されるがままに数々の悪行に手を染めていく。
美冬はまさに魔性の女というべき存在でしょうね。美冬の表の世界で頂点までのし上がっていこうというとてつもない野心と、徹底した冷酷さ。そして懐柔の巧みさ。最後の最後まで美冬の存在は謎の暗いベールに包まれています。
前作の白夜行を読んだ方ならこの幻夜とのつながりがつかめるかと思います。読まれていない方でも独立したひとつの作品として楽しめますよ。続編が今から待ち遠しいです。
●殺人の門
・「ダークな叙事詩」
白夜行、幻夜を髣髴させる何十年に渡り、不浄な運命に振り回せる男の物語。
白夜行、幻夜が圧倒的だったからかもしれないが、この2作ほどのスケールはない。しかし、東野作品の叙事詩的かつ人間のダークサイドの描写力に魅力を感じる人なら是非読むべきだと思う。
・「私は東野作品の中でもかなり好きな話です。」
確かに読後感はよくないし、主人公田島に魅力が無いですよね。白夜行の桐原、幻夜の雅也、などとは大違いだ。田島は全てが中途半端の男です。中途半端にプライドを持ち、倉持に文句を垂れる。中途半端にドライな感情を持ち、祖母から財布を盗む。しかし金は売れない。毒が手に入ると自信を持つ。ここまで来ると滑稽だ! しかし、この滑稽さを東野さんは、実に上手く表現している。美晴との掛け合いのシーンなど、田島の感情が行間から溢れてくるようだ。東野さんの筆力は現代文学の中で最高峰だと思う。東野さんが書くことによって、このダメ男田島に、妙な魅力が吹き込まれる。感情移入はできないが、それでもページをめくる手は止まらない! 是非一読を、というタイプの本ではないかもしれない。しかし、これはもっと評価されてもいい作品だと私は思う。
・「究極のパロディ?」
主人公・田島は自分の不幸を他人(倉持)のせいにしているが、はっきり言って、完全に自分でその不幸を呼び込んでいる。話の中で田島が倉持の悪巧みの中にはまっていく度に、ドリフの「シムラ〜!!後ろ後ろ!!!」ならぬ思いが何度もよぎった。読んでる人間でさえ「そりゃおかしいだろ」と思う話に、主人公・田島はなんどもはまる・・・。読み終わった後、これって究極のパロディ?と思ってしまった。東野圭吾はうまい!!!
・「徹夜本」
作品ごとに様々な顔を見せる作者であるが、本作品は、1999年に刊行された「白夜行」に近い作品である。従って、この「白夜行」あるいは、「天国への階段(白川道)」を面白いと感じた方々には特にお勧めである。私にとっては、今年度「火の粉」以来の徹夜本となった。前作の「手紙」では「犯罪者家族の人権」テーマを求めた作者だが、本作品では「殺人」という行為にテーマをおいている。
本作品は私こと田島が過去を語るという、一人称の文章で進行する。歯科医の家に生まれ、裕福に育った田島だが、彼の人生の歯車は、小学5年生時の「死」「殺人」「不幸の手紙」に端を発して狂い始める。そして田島なりに軌道修正をして歯車がうまく回り始めると彼の前に現れる小学校以来の友人・倉持修。倉持により田島の人生の歯車が再び狂っていく。
読者の私たちは「いい加減気付よ」と思いながら、倉持の手練手管にはまり、田島の人生が翻弄される様にページをめくる手を止めることができなくなる。そして、歯車を狂わされるたびに「殺意」は強くなるが、「殺人の門」をなかなかくぐることのできない田島。これほどの目に遭いながらくぐるためには何が足りないのだろうか?そして、倉持の真の目的が明らかになったとき、田島は無事(?)「殺人の門」をくぐることができるのだろうか? 本作品は最近読んだ作者の作品なかで、私にとって一番楽しめた作品であった。また、今年度読んだミステリー作品のなかでは、「終戦のローレライ」「火の粉」と激しいトップ争いをしている
・「「殺人の門」をくぐるには・・・」
作品ごとに様々な顔を見せる作者であるが、本作品は、1999年に刊行され、文春で1位・このミスで2位を獲得した「白夜行」に近い作品である(このミスで1位・文春で2位を獲得したのが「永遠の仔」)。従って、この「白夜行」あるいは、「天国への階段(白川道)」を面白いと感じた方々には特にお勧めである。私にとっては、今年度「火の粉」以来の徹夜本となった。 前作の「手紙」では「犯罪者家族の人権」テーマを求めた作者だが、本作品では「殺人」という行為にテーマをおいている。
本作品は私こと田島が過去を語るという、一人称の文章で進行する。歯科医の家に生まれ、裕福に育った田島だが、彼の人生の歯車は、小学5年生時の「死」「殺人」「不幸の手紙」に端を発して狂い始める。そして田島なりに軌道修正をして歯車がうまく回り始めると彼の前に現れる小学校以来の友人・倉持修。倉持により田島の人生の歯車が再び狂っていく。 読者の私たちは「いい加減気付よ」と思いながら、倉持の手練手管にはまり、田島の人生が翻弄される様にページをめくる手を止めることができなくなる。そして、歯車を狂わされるたびに「殺意」は強くなるが、「殺人の門」をなかなかくぐることのできない田島。これほどの目に遭いながらくぐるためには何が足りないのだろうか?そして、倉持の真の目的が明らかになったとき、田島は無事(?)「殺人の門」をくぐることができるのだろうか? 本作品は最近読んだ作者の作品なかで、私にとって一番楽しめた作品であった。また、今年度読んだミステリー作品のなかでは、「終戦のローレライ」「火の粉」と激しいトップ争いをしている。
・「燻銀の警察小説」
各所で評判だったので、読む事にしたものの、題名からも、作家からも地味で重い雰囲気が出ててるわ、上下巻だわ、読むの辛そうだな・・・と思いながら読み始めたところ、
・「建前と現実の隙間を埋める、3人の警官の生き方」
三代続いた警官の家系。祖父も、父も、制服を着たままその生涯を終え。息子は祖父と父の生涯から、警官として生き抜く術を憶えた。法権力の執行者たる警官として、完璧な市民であり、品行方正・清廉潔白であるべき建前と。その建前が通用しない、現実と。駐在所勤めの、警邏警官として。あるいは、潜入捜査官として。その建前と現実に、折り合いをつけて生きていくことの難しさ。
佐々木譲の本を読むのは初めてだが。詳細な描写、というよりも、画素数の少ないモノクロの映画を思わせる、語り口。伝えたいメッセージは、ダイレクトに伝わってくる。陳腐な表現だが、骨太な小説。
・「人間の物語」
佐々木譲の作品に初めて触れたのは「鉄騎兵、跳んだ」だった。若い新人の熱い情熱に惚れ込んだのを覚えているが、その後年月をへて、作品に渋みと深みが加わってきた。
「ベルリン飛行指令」、「エトロフ発緊急電」あたりからはこのまま世界を舞台にした大型の冒険小説を手がけていくのかなと思っていたが、近年警察小説で佳品を生み出すようになった。「警官の血」はその集大成とも言える作品である。
重みのある作品であるが、決して難解なものでないのは、何より人間が描けているからだろう。警察官も、もちろん人間である。その人間の生き様が描かれていることにこの作品の価値がある。これは警察官としての「人間の物語」である。
・「内容が濃い!!」
内容がとても濃い作品です。警察官としての三世代の物語に終わらず、日本の社会、犯罪の歴史を交え、個人と組織の葛藤、そして祖父、父親死亡の謎、ラストの爽快感、一気読みの充実度120%。字数は、あまり多くないが、場面展開、人物造詣、登場人物の心理等、思わず何度も、「旨いなぁー」と唸らせる文章、とてもレベルが高いと思います。読んでいて、近年、ここまで自分の感情を作品に注入できた小説はなかったです。最高レベルの作品です。
・「最高でした!」
佐々木譲さんの作品を読むのは初めてでしたが、いっきに読んでしまいました。 三代の物語ということでそれぞれの時代背景といっしょに物語が進んでいって ひきこまれていきました。直木賞の候補にもなったということで、容疑者Xの献身 のように直木賞も取って欲しいです
●涙
・「最初から最後まで目が離せない好サスペンス」
自分の娘の離婚と石垣島への旅行で、萄子はかつての自分を思い出した。昭和39年の東京オリンピック前夜に挙式を翌月に控えた萄子へ婚約者であり刑事の勝が「ごめん、もう会えない」という電話を最後に姿を消した。そして後日、その勝と一緒に仕事をしていた韮山の娘が殺害され、殺害現場に勝の手帳の残されていたことから、勝に殺人事件の嫌疑がかけられてしまう。真実を求めるため、萄子は各地を飛び回り勝を探す一方、韮山も刑事を辞めて復讐のために勝を探し求めていた。全国各地を飛び回る中、孤独な旅の最後に宮古島で萄子は勝を捜し求め、意外な真実を知ることに……。
本書は乃南アサらしいサスペンスとして描かれていますが、全国各地と舞台が変わる中、萄子の揺れる思い、そして娘を殺害された韮山の思いが複雑に交錯し、更に事件背景が徐々にわかるに従い、物語も段々と佳境へと突入する展開は最後まで目が離せませんでした。事件の真相はラストで明らかにされます、勝がなぜ姿を隠さなければならなかったのか、そして事件の背景には何があったのかは、登場人物の思いと共に本文でじっくりと味わえます。最後のエピローグで、もう少し韮山のその後と勝のその後を描いてほしかったものですが、物語としてはしっかりと堪能できましたし、一気に読まされたサスペンスで、面白かったです。
・「「涙」するかどうかは別にして・・・」
主人公・萄子婚約者の刑事・奥田が突然失踪。先輩刑事・韮山の娘で奥田に思いを寄せていた、のぶ子の惨殺体発見され、奥田は容疑者となる。東京オリンピック前後を時代背景に、真実を求め失踪した婚約者をおう萄子を描いたサスペンスの秀作。
萄子があまりにも自由にお金の心配をすることなく、いろいろな場所を行き来するという展開に若干の無理は感じるものの(金持ちすぎる!)、上下巻を一気に読まされるだけの内容はある。(「涙」するかどうかは別にして・・・)
・「入り込んで読める作品」
乃南アサでは最高傑作だと思っている。正直乃南アサは短編はいいけれども長編はハズレも多い。けどこれは面白くてあっという間に読んでしまいました。
行方不明になり、殺人容疑のかかった婚約者を追い掛ける切ない話。あと少しというところで彼はいなくなるのですが、諦めず主人公萄子は探し続ける。ラスト、彼がいる土地に辿り着いたとき、もう完全にこの世界にはいって萄子になってしまいました。
早く萄子に幸せがこないか、真実がわかるようにならないか、でもまだこんなにページがある…ととてもわくわくして読める作品です。
・「「ひたむきな姿に感動します」」
お嬢様育ちだった萄子が、殺人犯の容疑をかけられて逃亡中の婚約者を探しに旅をする。ひたすら彼の無実を信じ、彼の最後の電話「俺のことは忘れてくれ」の本当の意味を探すために。なぜ無実の彼が逃亡生活を余儀なくされたのか、徐々に明らかになる事件の真相、そしてラスト。
真っ直ぐに生きようとしてそれが叶わなかった人間の苦悩と、ひたむきなまでに愛した人を信じつづける力強さに感動します。
・「ちょっと陳腐かな」
婚約者の失踪の理由を知りたくて、どこまでも追いつづける陶子には感情移入できませんでした。すんなり許す親、応援してくれる弟、そっとそばで見守る兄の友人。全てがなにか非現実的でした。それよりも、韮山のほうが自分の娘の行動をしっかりと直視できていて、人間味があって感情移入ができました。韮山の描きかたは、良かったと思います。しかし、勝の失踪の原因・そして失踪後のたどり着いた生活が、婚約中のシーンに出てくる勝からは、ちょっとありえないと思ってしまいました。陶子・勝のちょっと陳腐な行動に、読み進めるうちに疑問を感じてしまいました。
・「柏木圭一郎の復讐劇待望の文庫化」
父親と牧場、そして最愛の恋人をも奪われ、失意の元に北海道を後にし、上京した柏木圭一郎。26年の歳月がたち、実業家として財をなした柏木は、彼からすべてを奪った江成への復讐劇を開始する。しかし、財をなすために犯した罪が、思わぬ形で追求をうけることになり、柏木自身も追いつめられていく。
2001年はじめに出版された本作品、話題を呼びベストセラーとなり、日本テレビ系列でドラマ化もされたが、年末のこのミスで15位、文春で20位と、評価は今ひとつであった。しかしながら、私個人にとっては、「模倣犯」「邪魔」に続くベスト3であった。
なにぶんにも量が多く、一気に読むというわけにはいかないが、復讐劇に恋愛劇も絡まり、ページをめくる手が止められなくなる。
本作品のポイントは「血のつながり」と「タイミング」である。ほんの小さなタイミングのずれが、いくつか重なると、人生は周りの人をも引き込んで、予想し得ない方向に進んでいく。そして、天国への階段を誰と上ることになるのだろうか?
上巻では、柏木の復讐劇が始まる一方で、思いがけない血のつながりが明らかになってくる。
・「堂々の感動作」
たしかにミステリーとしての弱点、冗長さ、など欠点をあげつらうことは簡単にできる。しかし、完璧に作られた作品などは存在しないし、綿密なものが感動を誘うことにはならない。さまざまな意見はあるだろうが、これはいまの日本のミステリー界が無くした世界を体現してみせた大傑作であることは間違いない。それにしても幻冬舎は見せ方がうまい。そのふたつに対して、星5つ。読んで損はない。
・「久々の感動」
上巻の半ばあたりから、グイグイと引き込まれるように一気に読んでしまいました。絶望の淵でなお一条の光を見出したいと願う登場人物の感情がひしひしと伝わってきました。魂の底から揺さぶられるような経験をさせてくれる小説、読んだ後は自分を取り巻く日常の世界がやや霞んで見えるような、そんな読み応えのある小説に、久しぶりに出会えました。
しかし・・・最後のエピローグの部分だけは不要なのでは・・・?せっかくこれだけ説得力のある展開で描ききったのだから、その後の審判は読者の想像に委ねてもよかったのではと、少々残念。
・「生まれて初めて、小説を読んで涙を流しました。」
この本を知人に薦められたので、書店に行き、本のカバーを見ると、『一日で読んでしまいました』という感想が出ていたので、面白そうだと思い、購入しました。
ところが、最初は、競馬の場面から始まっていて、ラブストーリーとは程遠い感じで、あまりペースは進まず、100ページ読むのに1週間
位かかってしまいました。しかし、そこからだんだん面白くなり始め、ペースがどんどん速くなって、下巻は3日で読み終えたので、上下巻合わせて2週間で読み終えました。その2週間は、本を開いて、その世界に入っていくのが楽しみで、毎日充実した日々を過ごすことが出来ました。
この本には、大きなクライマックスが3回あるのですが、その場面に
なると、心臓がドキドキして来て、座ったまま読んでいることができず、部屋の中をグルグル歩き回りながら読み、溢れ出て来る涙を抑えることが出来ませんでした。僕は、映画ではよく泣いてしまうのですが、小説を読んで泣いたのはこの本が初めてでした。この本の、他の部分は、このクライマックスに繋げるために書かれた
んだと、その時やっと納得することが出来ました。
何十年隔てても変わらぬ愛って、本当に素晴らしいですね。そして、決して断つことの出来ない親子の情愛というものに、改めて納得させられてしまいました。読者の期待を裏切らないストーリー展開が、見え透いているというのではなく、納得させ、安心させてくれる。
昔のお涙頂戴時代劇のようなところもあるけど、水戸黄門の印籠のように『待ってました!』という気持ちにさせる、そういう本です。
この本は僕が今までに読んだ本の中で『火車』を凌ぐ最高傑作です
・「泣いた!泣いた!」
こんなに泣いた本は久しぶりです。ただのハードボイルドやミステリーだと思って読むととびっくりしますよ。これは復讐小説であり、最上の恋愛小説でもあるのです。男のロマンに酔いしれてしまいました。生涯忘れ得ぬ一冊です。著者に感動をありがとう、といいたい。
・「読みながら「クライマーズ・ハイ」状態に。」
傑作という評判は聞きながら読む機会がありませんでしたが、佐藤浩市氏主演でドラマ化された本作品を昨年暮れに観て原作を手に取った次第。
・「なんと手ごたえある人生だったろうか」
新聞社デスクの、ひりひりするような、日々の葛藤を、臨場感たっぷりに描いている。思わず感情移入させられ、その場で、ビジネスの、大小のさまざまな摩擦の中にいる感覚を味わえる。これらの瑣末なしかし影響度合いの大きな日常の葛藤と、大惨事、人の生死という、エポック・メイキングな出来事とを、錯綜させて、主人公の苦悩のほどを、描いている。新聞社でのキャリアを、寒村の記者として終えた主人公であるが、なんと手ごたえある、人間らしい人生だったろうか。これもまた、猪瀬直樹の「日本凡人伝」を彷彿とさせる、凡人でありながら、筋を通した人物の、ドラマである。
・「人生には超えねばならない山がある」
1985年新聞記者悠木は、友人安西と谷川岳登山を約束するが、おりしも日航ジャンボ機墜落という世界最大の航空機の悲劇に遭遇することになる。このスクープに忙殺されることに。一緒に登れなかったことを悔やむが、安西も谷川岳には行くことなく病院に運ばれていた。時はたち念願の谷川岳登山の果てに見たものは…。
もっとこの墜落という衝撃の中で日航関係者や被害者のことを書いているのかと思いました。予想に反して、事故のことは舞台が新聞社だけに淡々と書かれていますが、新聞社ゆえのことです。この事故への怒りや、見てきたものにしかわからない現場の雰囲気が伝わってきます。
また横山さんの持ち味、「組織の中の個人の葛藤」がこの新聞社の中で、いかんなく描かれています。新聞は売れればいいのか?新聞社のモラルとは?スクープとは?真実とは?次から次にと読者に投げかけられてきます。日本中が悲劇に哀しみ、生存者に涙し、日本航空への怒りが渦巻いた、暑い、熱い1週間の新聞社の内部をノンフィクションと間違うぐらいに熱く語られています。
そして、横糸がジャンボ機墜落なら、縦糸は友人安西の死。「なぜ山に登るのか」「下りるために上るのさ」この会話が最後まで投げかけられています。そう意味ではれっきとしたミステリー小説。それぞれの人物が過去を持ち、過去を乗り越えるため、山を越えていく。人生には山を越えるときがある。そして、上り切ったら、まさにクライマーズ・ハイ。極限状態を通り越して陶酔の境地になるという。そして次の高みへ。
主人公の行いについて、賛否が分かれると思います。「組織の中でどうなのか」わたしはそれでも主人公の一途といっていいわがままを支持します。過去から未来へ前を向くための手段だったのです。
お薦めします。違う側面から日航ジャンボ機墜落を扱ったこの小説。読みきったときまさにクライマーズ・ハイの境地。まれに見る傑作です。
・「思い通りにならない銀実」
責任を負った者がそれを果たそうとするも、壁に阻まれ思い通りにならない歯痒さに共感する方が多いと思う。阻む「壁」は、時には自分自身の揺らぎであったり、組織であったり、人であったりと様々。日航機事故を巡る新聞社を描写しながら、現実に対応していく人々の生き様が描かれ、人の弱さと強さが浮き彫りにされる。
生きていれば思い通りにならないことは沢山あって、主張や妥協を経て、着地点を見つけるのも一苦労だなと思う。安西の「下りるために登るんさ」というのも、彼が目指した着地点だった。読み終えて、自分にとって、何か見出したい着地点はあるのだろうかと自問が残る。また、何かに対して「クライマーズ・ハイ」な状況になったことがあるかと鑑みるに、無い。何だかそれも哀しい・・。
ところで、読了後に新聞社の方とお話する機会がありまして。諸々の話を合わせると、おおよそ本作に出てくるような編集局、広告局、そして各部の有り方は現実なんだなあと分かりました。事前に本作で予備知識?があったために、より生生しく感じられました。
・「それぞれの人生」
1985年夏に起きた未曾有の大惨事・日航機墜落。その墜落現場となった群馬県の地方新聞社はどれほど緊迫していただろう。この作品にはその緊迫した雰囲気がぎゅーっと凝縮されています。上司や部下との関係。夫婦、そして親子の関係。大きな事件を軸に、登場人物たちそれぞれの人生を垣間見ることも・・・。現実の厳しさが、びしびし伝わってきます。最後が少しハッピーな感じだったので、救われたような気分になったのは私だけでしょうか?
・「最高の一冊」
宮部みゆきさんの大ファンです。その中でもこの作品はNo.1ではないでしょうか?特に内容については記述しませんが登場人物が実にリアルに描かれています。そして何と言ってもあのエンディング・・・。読後感がしばらくぬけません。
・「再読する価値あり!」
私も何度も繰り返し読みました。クレジットカードの不透明性が割と身近に感じられて、飽きることがありません。 それから次から次へと謎が出てきては、それを解明するための小さな糸口が現れる。これほど巧みな謎解きはお目にかかったことがありません。
・「最高傑作!」
名作の多い宮部作品のなかでも、私はこの「火車」が最高傑作だと思います。物語の進め方、一つ謎が解けていくたびにはっきりとしてくる事件の輪郭。そしてなによりあのラストシーン!・・・流石宮部みゆき、と言ったところでしょうか。
犯人の人を殺す理由がとても切なく、思いっきり非難できないのも良いと思います。私は一度も姿を現さない犯人の女性に、とても感情移入してしまいました。
・「面白かった。ラストの急展開にドキドキしました。」
始めて読んだ宮部みゆきさんの本が「理由」だった。そして正直面白くなかった。もう宮部みゆきさんの本は読まないつもりだった。しかし「火車」を多くの人が勧めているのでしかたなくといった気持ちで読んでみた。面白かった。本当に面白かった。失踪した女性を捜すという小さな事件が少しずつ大きな事件へと発展していく。長い長い物語なのに飽きる事なく読み進めた。最後の数ページの勢いのすごさ。ゆったりと進んでいた物語が急展開する。このあたりは脱帽。長い物語を読んできたからこそ感じられるクライマックス。素晴らしい。この本は読んでおきましょう。
・「「社会派ミステリー」の傑作」
社会派ミステリには2つの要素がある。
一つは純粋にミステリとしての謎解きの面白さ。 そしてもう一つは社会の影を映し出す鏡の役割。
宮部みゆきはこの二つの要素を兼ね備えた秀作を 世に多く送り出してきている現代を代表する作家だが、 僕は彼女の作品の中でも「火車」が一番だと思っている。
物語は一人の女性の謎めいた失踪から始まる。 そしてそれを追う主人公は彼女の過去を探るうちに、 一つの信じられないような真実に辿り着く。
カード破産、戸籍、家族の形・・・ いくつものテーマが織り込まれながら、 謎解きに向かって進むストーリー。
必読の一言に尽きる。
・「それでも輝く宮部の優しさ」
全部を通読しての感想なので,上下巻両方のレビューに同内容で投稿させてもらいました.
多くの人が書かれているように,物語世界の全体を俯瞰するためとはいえ長過ぎると思いますし,所謂「犯罪小説」が好みの人には登場人物のキャラクターや最後の真犯人の稚拙さが納得できないかもしれません.また,やはり「火車」を超えていないと言われたら,そうかもしれないとも思います.でも,それなら読むに価しないかと問われたら,やはり読む価値は有ると思うのです.ちょっと甘いかもしれませんが,5つ星にしたのはそのためです.
最近巷に溢れる犯罪小説の犯人は頭が良くてスマートな人間が多くなってきました.でも,彼等が散々に猟奇的犯罪を犯した挙げ句に「だから人間の本質は残酷なのだ」みたいな㡊??とを言われても,本当にもう結構という気しかしないのです.いつからか犯罪者がヒーローのように扱われる本が巷に溢れているのに違和感を感じるーーそういう感覚を持っている人になら,この本は絶対にお勧めできます.
その意味で,本書の山場は前畑が真犯人と直接対決をするところではなくて,有馬義男と真犯人が電話を挟んで対峙するあのシーンにあると思うのです.連続殺人者でありながら自らの知性と正義に耽溺する真犯人に対し,「それでも犯罪者は愚かだ」と叫び,反駁し,論破してくれる彼の2ページに渡る台詞こそが,作者の書きたかった言葉なのではないでしょうか.
最初に述べたような箇所で批判するのは易しいでしょう.それでも私は,特に最後の50ページは,読む価値が有ると思うのです.
・「映画の数倍面白いです、特に上巻は」
上巻は5つ星、下巻は4つ星。上巻は被害者の家族の目線で、下巻は犯人の目線で描いています。次は一体どうなるのかと思うと、違う場面になり先を読みたいあまりにはまっていくという感じですね。2001年度のこのミス始めミステリーの1位を総ナメにした作品。
・「模倣犯~ それぞれの人生」
引き込まれて行く、どんどん引き込まれて行く。不思議な感覚。 最初は、いわゆる「宮部みゆきの新作」「猟奇殺人」などの 先入観で読んだ。しかし、そんな事は徐々に関係無くなって 来る。『被害者の家族』の心情が切々と語られる。 突然、『加害者の家族となった者』についても語られる。 犯罪者、それを追う警察、マスコミ、ライター、上記家族 が織り成す世界。もはや「社会派」「本格派」の分類が無意味 にすら思える程の圧倒的な臨場感を持つ作者渾身の作品。 犯罪を通奏低音とし、様々なメロディーがその上を舞う ち密なオーケストラを聞くような感動をおぼえる。
・「初めての宮部作品」
初めて宮部さんの作品を読ませて頂いたのがこの模倣犯。買うには勇気がいりましたが、買って正解でした。読んでいて、世間では一時的な事件ではあってもその事件に関わった人たちは、人生をも狂わせてしまうのだということが、ひしひしと伝わってきました。この本を読んで自分がいかに恵まれた環境にいるか幸せな人生を送っているのかを実感させられました。そして、このような事件は小説の中だけで終わらせて欲しいものです。また、私にとってこの本に出会うことで、今は宮部さんの作品にはまっています。長い物語だけに簡単にお勧めすることが出来ませんが、出来るだけ多くの人に読んでもらえたらいいなぁと思っています。
・「「模倣犯」」
これほどの重量があり、インパクトのある作品を女流作家で読めるとは思わなかった。宮部氏の筆力には定評があるが、これはまさに真髄を極めたと言っていいと思う。中でも、登場人物(被害者)の一人一人の生い立ちを細かく記しているところが、著者のこだわりを感じさせた。ほぼラストまで読まないとなぜ「模倣犯」なのか理解できないところも、ミステリーのやり方であろう。しかし、ただ「ミステリー」というジャンルではなしに、これは様々なジャンルが盛り込まれていると思う。人間の弱さを盛り込むことで、時には本当に切なくなるが、人間という動物の感情を考えさせられた。ここ数年で、自分の中では一番ヒットな作品であった。
・「東野圭吾の作品の中でもベスト3に入ります。」
大好きな作家である東野圭吾先生の作品の中でもお気に入りの一つです。
既にタイトルからして只ならぬ感じを受けたのですが、内容も素晴らしい
です。これほど気持の良い違和感を感じた小説は初めてです。
このストーリーは過去と現在という時間軸を平行(パラレル)に進めてい
くのですが、これが非常に面白い。二つの全く別のようなストーリーが繋
がったときの瞬間はあまりの感動に震えました。
東野圭吾先生の作品「秘密」「変身」「レイクサイド」「手紙」などは映
画化されていますが、個人的にはこの作品も映画化して欲しいです。是非。
ps.主人公の親友、三輪智彦のキャスティングが重要ですね♪
・「読み始めたら止まらなくなってしまった!」
私は読書は通勤途中に読んでいるのですが、この本は、読み始めて止まらなくなってしまい、仕事中にちょっと抜けて読んだり、帰宅してからも読みつづけて結局1日で読んでしまいました。そのくらい魅力あふれる小説でした。小説のテーマは"記憶"。それに、"愛をとるか友情をとるか"という永遠のテーマみたいなものも複雑に絡み合っています。ある記憶は、一人称の"俺"が語っているのに対し、もうひとつの記憶は3人称の"彼"を使用しているので読者は混乱せずに読むことができます。わたしは読み進めながら、「きっと裏切りとかの悲しい結末なんだろうな」と思ったのですが、思ったよりもさわやかな結末で読後感もとってもよかった。著者は、理工系ご出身ということで、記憶の概念が科学的に説明されていて説得力もあります。読みごたえのある作品です。
・「新鮮味に満ちたラブストーリーの真髄―友情と恋の狭間で揺れ動く人間心理!」
以前から妙に気になっていた東野作品の1つが本書だった。興味関心を惹くのは、タイトルの「パラレルワールド」という表現だろう。東野圭吾が描き出すラブストーリーが巷に溢れた並みの内容であるはずはない。事実、本書を読み終えて私はそう感じた。彼の作品は導入部分が素晴らしいとあらためて実感している。「序章」の分量は短いが、読者を彼の世界観(彼がこれから展開するストーリー)に引き入れるには十分な内容であった。要するに、最初の数頁で本書の価値は決まったわけだ。
「記憶」が本書の重要なキーワードの1つ。前後に揺さぶる作風は見事だが、「読みずらい」と感じる読者もいるに違いない。むろんそれは、ありふれた恋愛作品を超えたものを執筆したいという作者の信念に起因するものだが、現実と記憶のなかで揺れ動く人間心理のダイナミズムを克明に描いており、今読んでいる内容が「真実」なのか「虚構」なのか、混乱してしまう可能性があるからでもある。私自身、読み返した箇所が何度かあった。とはいえ、「友情」と「恋」(親友の恋人を愛してしまうという設定)の狭間で揺れ動く主人公の心理的葛藤は、十分に伝わる。自分をその主人公に置き換えて読んでしまう。簡単に「よくある男と女の三角関係の話か」と思うことなかれ。そこには上述された「記憶」をめぐる専門的知識を駆使した内容が加味されている。
総じて、本書が一味も二味も違う作風になっているのは、友情と恋を描き出した物語の基盤には、「高度な専門知識」に裏付けられた作者の世界観があるからである。本当に東野氏はよく勉強している。それを小説に組み込んで卓抜の作品を作り上げている。一気に読み終えてしまうような作品は少ないが、本書はその1つとなった。「帯」には「今ではもう書けない」とあるが、それは本書がそれだけの価値を秘めた作品であることを著者自身が明確に認めている証左であろう。神秘的なラブストーリーだ。
・「平行世界と現実世界」
主人公が願っていたありえないはずの世界、それと現実世界が同時に展開していきます。なぜパラレルワールドが存在するのか、という疑問は読み進めるうちに明らかになります。この先どうなるの?といった先が気になる展開はかなり良いです。
2つの話が同時に進行するということで、村上春樹氏の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」に通ずる所もあると思うのですが、やはり後半における2つの話が収束していく辺りは同じように楽しめました。SF小説と恋愛小説どちらなのかと聞かれれば、どちらも楽しめる小説だといえます。
・「臨界小説」
理想と現実、夢想と覚醒の間で行き来する不安定な心の兆しが、ほんのかすかに伺える様を、よく描いている作品だと思います。誰しも、あの時こうしていればという思いにかられるでしょうが、その思いが昂じた行き着く先の世界を明示している、これもまた筆者の臨界小説のひとつだと思います。今日の社会生活においては、職場においても家庭においても、人は様々な役割を併行で使い分けながら生活しているわけですが、そんな使い分けの行き過ぎた先としての警鐘の役割も果たしているような気がします。筆者の作品の中で、推薦したい本TOP3に入ります。
・「「生まれながらの犯罪者というのは存在するのか」というテーマを背景にしたハードボイルド」
ロサンゼルスで日系信販会社の調査部に勤めている探偵(調査員)が主人公のストーリー。ある日本人を捜す依頼を受けて調査を始めると、その相手は人なつっこい顔で握手をするように簡単に人を殺す殺人鬼だった。彼の行方を追う父親も登場し、主人公はさらにこの父親も追うことに。相変わらず詳細で緻密な描写が随所に見られ、カリフォルニア南部とアリゾナ南部を丹念に取材したことが伺えます。登場人物の会話(の文章)が冴えているのも相変わらずで、その独特の世界へ心地よく吸い込まれていきます。
一言で言えば「生まれながらの犯罪者というのは存在するのか」というテーマを背景にしたハードボイルド。決して目新しいテーマではないものの、笑顔のまま他人を撃ち抜ける精神は先天的なものなのか、教育の問題なのか、社会的な要素が影響するのか等々、父親と探偵が夜を明かして議論する過程は読ませるし、考えされられることも多かった。タイトルの「ボーダーライン」は、殺人鬼が密輸商売をやっているアメリカとメキシコの国境という意味だけでなく、物語のあちこちで(それとなく)触れられている目に見えない境界線(殺人鬼と普通の人、社会と個人、会社と個人、親と子、愛情と憎悪、モラルと犯罪など)のことも示唆しているのだろう。
・「実の父と探偵が追う、生まれながらの悪を宿した少年」
個人的に、真保作品の中でベスト3に入る作品。ロスで探偵業を営む永岡が探すことを依頼された少年・信吾には、人を殺すことに罪の意識はない。彼は、天使のような笑顔を称え、人を殺せる人間なのだ。人間に罪を犯させるのは、環境なのか?それとも生まれながらに、悪意を秘めた人間が存在するのか…??愛され、慈しまれ育ったにも関わらず、罪を重ねていく少年。死を覚悟しつつも、その暴走を止めようと、息子に向き合おうとする父。別々に信吾を追う父と永岡が、彼に近づくほど見えてくる現実…。人間の闇を描き、キレイごとで終わらせない本作は、ずっしりと重く心に影を落とすが、読み応え十分!
・「普通じゃない人。。。」
ボーダーライン、というタイトルではあるけれども「サニー」という”笑いながら人を殺す男”は、普通じゃない人、です。この人と小学校を襲ったTという男をなんとなく重ね合わせてイメージしていたのですがそれは見事に裏切られました。どちらかというと「サカキバラ」かな??
「サニー」は実際にはほとんど第三者、もしくは身内の話の中でしか登場しません。だから、なんとなく『ほんとかな??』という実体として捕らえられない、そんな印象を受けました。
日常生活に必要な知識や判断力などは持ち合わせているけれどもどこか異常な部分(しかも強烈な)がある、、そんな男を 探偵の主人公が探す。。。というストーリーです。
この「サム」という探偵のアメリカンドリームに焦点を当てながら「サム」との対決に進んで行くのです。初めてサニーに出会った場面は、どきどきします。とても恐い。ここから一気に盛り上がります。
普通じゃない人が、普通の顔をして生活している、、そんな今だからこそ読みたい、そんな一冊だと思いました。
・「悪を描くむづかしさ」
本作では,純真無垢な子供のように微笑しながら,喜んで虐殺行為を繰り返すという人物が描かれる。幼子が昆虫などを相手に,残酷な遊びをすることがあるが,善悪を知らない幼児の精神そのままに,肉体的に成熟し,残酷な行為の相手が虫から人間にかわってしまったのだ。
もし自分の愛する子がそのように育ってしまったら,親として,あるいはそのような人物と関わりをもったものは,どうしたらよいだろうか。本作の問いかけの一つである。
著者は本作以前の「小役人シリーズ」では,社会問題を取り入れてきたが,本作ではより普遍的な「悪」が問題として取り入られているのだ。その結果,かえって読後の印象は薄くなった。作品が面白くないのはない。ただ,社会問題に巻き込まれた主人公のモラルを描くのと,悪に対峙した主人公のモラルを描くのとでは,作者に要求されることが異なってくる。
社会問題ならば資料集めをすればよいが,悪を説得的に描くには,自身の心のなかの虚無を徹底的に観想する作業が不可欠だ。体験しない悪を読者に説得的に提出することはできない。 小説として面白く書けているから,読んで損はないが,著者の本領が十分発揮されているとは言い難いと思う。
・「反則かなこれは?」
前半はアメリカという国家での探偵のあり方をうまくとらえていてかなりリアリティを感じることができましたが、(日本の作家の場合はマーロウの焼き直しが多すぎます)後半になるに従ってぼろが出てきたように感じます。特にラストシーンはいい意味で裏切られたと感じられる人とこれは全面的に反則だと感じられる人が半々ではないでしょうか。
●メタボラ
・「孤独の中にみる永遠」
読み応え充分過ぎる。たっぷりと世界にはまった。登場人物は、宮古島出身の少年、アキンツこと昭光。そして記憶喪失の若者の二人。沖縄は、やんばるのジャングルを抜けた夜道で、お互いに「逃げた者」として出会う。そして物語は、各章ごとに、二人の登場人物の一人称で書かれている。暗い物語なのだが、アキンツの明るさと、弾けるような宮古島弁で、ずいぶんと救われる。桐野夏生が作者だと言う事を忘れるほどに、堪能して読んでいた。どこまで正確かは分からないけど、その宮古島の言葉で語られる部分は秀逸である。最後に記憶を取り戻した青年が語る、そのあまりの悲惨には、正直参った。でも、この言葉は響いた。 愛し、愛される。許し、許される。 甘え、甘えられる。信頼し、信頼される。 確かな人間関係を持たない限り、僕は破滅するかもしれない。主人公は、孤独そのものである。 誰よりも孤独で、苦しみや寂しさを忘れるために酔い、 ある人物を攻撃するのをやめなかった。 ある人物とは、僕自身だった。最後のシーンは、あまりにも切なくて、震えてしまって、涙が流れる。極普通の人間こそが生きにくい世の中なのだろうか。その描かれた孤独の世界には、切ないほどの永遠が見えそうに思えた。
・「自分探しの暗中模索」
舞台は沖縄で、沖縄特有の文化が散りばめられている。主人公である記憶を無くした「僕」と、周囲の人物は、全員がより良い自分を求めてもがいている。登場人物それぞれには、それぞれの事情があり、時に壮絶ではあるが、いちいち共感出来る部分は多い。
主要登場人物は、魅力たっぷりだ。当初、非常に謎めいている「僕」や、あっけらかんとしたアキンツには、愛着を持てる。アキンツが話す、郷里の言葉も、良い響きがある。
著者の作品の常であるが、作品を支配する独特な世界観は、明るいものではない。むしろ、絶望感を、これでもか、これでもかと提示してくる。そんな世界に、長時間酔える、長編作品だ。
また、著者の作品の成り立ちは、層を次々と積み重ねるタイプの、独特な印象がある。それは、綿密にプロットされた推理小説などとは対極をなし、その部分も、良い意味で新鮮だ。
若者たちが、自分自身を求めて、暗中模索を繰り広げる。否、のたうちまわる、と形容したい。
・「桐野作品としても名作です」
記憶喪失なんていう古典的な仕掛けが、今日的な小説にこんなに効果的に活用されるなんて信じられませんでした。沖縄という、若者の勤労意欲を微妙にはぐらかす環境設定も見事。 非日常はいつしか日常に置き換えられてゆくし、新しい思想や生き方は、今までの価値観に取り込まれていく。 そんな背景を切り裂いて、自分が自分として生きること=アイデンティティーをストレートに描いています。桐野作品の暴走スタイルが、テーマと文体に完全合致した、ジェットコースター・ストーリーでした。
・「けなげだ、、、」
いまどき自分探しの旅だけはやめよう。というニュアンスの本がおおくあるなか。ストレートにくるこの作品に読み方を少しだけ修正した。なんとなれば、若者が動き出すという事をのぞんでいるからだ。 親のすねかじりのニートにもそれなりの訳があるだろうが。個人的には自分のために体を動かし苦難承知で旅だった青年を生み出した作者は良いとおもいたい。
ぜひ一読推薦します。
・「男」
今回の作品は桐野作品独特の毒々しさはあまりなく、平坦な感じがするのですが、個人的には好きでした。 登場人物の男達。男が持つ愚かさだとかが鋭く描写されていて、男として恥ずかしくなりました。 今回も出口なしのお話でしす。涙
・「徹夜本」
2004 このミス 56位。
裁判官・梶間は一家惨殺事件で起訴された武内に無罪を言い渡す。数年後、大学教授となった梶間の前に姿を現した武内は、隣家に引っ越して来る。果たして偶然か? 母親の介護を手伝うなど親切な武内は、徐々に家庭に入り込むが、それにつれ、家庭の崩壊が始まる。そこに惨殺事件の被害者の家族が現れて・・・。梶間一家は、「火の粉」を振り払うことができるのか。 読み始めは、「十三階段」の裁判官版を思わせるが、徐々に「黒い家」や「ミザリー」に似た、「次に何が起こるのか」という恐怖に支配され、ページを捲る手か止まらなくなる。ミステリーの中でもホラー色の強い作品である本作は、評判を呼んだ前作「虚貌」を遙かにしのぐできばえで、徹夜本となった。
・「刻々と崩壊していく家族が克明に描かれている」
「犯人に告ぐ」ど俄然注目株となった雫井修介さんですが、本作「火の粉」は私的には「犯人に告ぐ」よりも完成度は高いと思います。 自分が無罪判決を下した元裁判官梶間の隣家に越してくる男、武内。彼が越してきて少しづつ身の回りに異変がおき始める展開の描きこみが凄く自然で巧い。展開が凄く自然なので、リアリティに富んでおり、読む進めば進むほど本当に恐ろしくなる展開に目が話せません。 文庫版で600ページ近くありますが、雫井さんの筆力は高くとてもわかりやすくさくさく読めるので、あっという間に読める一冊です。 ただ家族劇なので、視点を一人に絞らずそのつど家族の一人の目線で物語が進むので、元裁判官が主人公ではないのでそこのところはチェックしておいてください。 この文庫のあとがきにも書かれていますが、雫井さんは女性心理の描きこみが巧い。この物語では尋恵、雪見の二人の心情が特に巧く描きこまれています。これを読んで共感できる女性は多いのではないでしょうか。
・「類まれなる筆力で読ませる、サスペンス小説の傑作!」
最高におもしろい。息つく暇もない。ページをくるのももどかしい。物語がどのように帰結するのか、気になって知りたくてジリジリしてしまう。
元裁判官・梶間勲の隣家に越してきた男・武内。二年前、勲は殺人で起訴された武内に、無罪の判決を下していた。恨みを買ういわれは何もない。だが梶間家の周辺で、次々と不可解な事件が起こり始める。にこやかで親切で情の厚い武内。それは彼の仮面なのか?本当の彼はどんな人間なのか?勲の下した判決は間違っていたのか?それとも?真実は??
武内のキャラが秀逸。人間の複雑さ、ひずみ、脆さ、危うさ、そして普遍性をこんなに体現した人物は今まで誰も書かなかったんじゃないかと思える。うまい。怖い。
梶間家の面々の人物も、深く掘り下げて描かれる。特に義母を介護する尋恵の心のわだかまりと、武内に対する不安と疑心を理解してもらえない雪見のじれったさには、ものすごく共感してしまう。その心理描写だけでも読みごたえがある。俊郎の脳天気なお気楽さには本気で腹が立つし。
・・・のトリックが暴かれるシーンがよい。情景が映像となって目に浮かぶ。開くふすま。パシーン、パシーンと響く音。俯瞰するカメラ。勲のセリフ。解ける謎。鳥肌がたつくらいうまい。感嘆する。
ラストはアメリカ映画的で、まあちょっと作りすぎの感は否めない。けれどよくぞここまで引っぱってくれた、とも思える。
登場人物のリアルさ、たくみな物語構成、奇抜ではないのにあっと驚くトリック、迫力のラストシーン、そして考えさせれるテーマ。傑作のあらゆる要素を満たしていると思う。
・「何気ない日常の恐怖を描く。」
男は、かつて、「ある男」を裁判によって無罪にした。男は、その時下した判決は、正しかったのだと思っていた。無罪のものに、無罪の判決を下す。それが、男のした最後の審判だった。
やがて、事件からしばらくたって、「ある男」が、自宅の隣に越してきた。人懐こい性格と大らかな笑顔で、次第に家族に溶け込んでいく、「ある男」。しかし、時間がたつに連れて「ある男」は違う顔も見せ始めるようになる。その、ごく僅かな変化に気づいたのは、男の息子の嫁だけだった。深まる「ある男:との関係と、それに伴って次々と起こる不可解な事件。『自分は、殺人鬼を解き放ってしまったのか・・・?』。男がそう思ったとき、事態は思わぬ方向へと走り始めていた・・・。
■■■■■■■■派手なアクションがあるわけではないのに、最後まで一気に読み通せる「押しの強さ」を持った作品だと思います。情景や人物の心情などの、丁寧な描写。設定の綿密さ。どれをとっても、かなりのレベルの高さです。ぜひ一読をオススメします。
・「喉が渇くくらいの緊張感!」
怖い。ものすごく怖い。そして面白い!すごいスピードで一気に読んだ。とにかく続きが気になって、ページをめくらずにはいられない。閑静な住宅街に住む元裁判官。ある日隣りに昔自分が受け持った裁判で無罪にした元被告人が引っ越してきた。再会を喜ぶ元被告人っだったが、それからというもの小さな問題は抱えてはいるが平穏だった家庭が、音もたてず、自分も気付かない内に静かに静かに崩れていく。手を打とうと思った時にはもう遅い。全てが狂った後だった。徐々に明らかになっていく隣人の素顔。気付いたときには・・・。とにかく隣人が怖い。得体の知れない恐怖がビシビシ伝わってくる。生唾飲みながら、ドキドキして読み進む。手がじっとりと汗ばんでくる。文章から目を離した時に、大きく息を吸い込む。緊張していたのがわかった。怪しい人物がたくさん出てくる。一体誰が嘘をついているのか。隣人の本当の素顔は?一時は頭がぐちゃぐちゃになる。しかし、待ち受けていた結末は・・・やっぱり恐怖?読み終わってすぐ、「これ面白い!」そう母に薦めた。次の日から家の食卓は手抜き料理で埋めつくされた・・・。
・「最初のレビュー」
小学生を乗せたスクールバスが武装したカルト教団に襲われ、11人の子供とバスの運転手は地面に掘った穴の中で人質になった。主人公、女性事件記者のモリー・ケイツは以前に教団のリーダーを取材した事から事件に関わっていくという話。一応シリーズ物で主人公はモリーなんでしょうが、この一冊は別物!なんていってもバスの運転手の「デミングおじさん」でしょ。50日後に生贄として殺されてしまうかもしれないと言う状況なのか、11人の子供達をなだめ、励まし、徐々に慕われていく。元ベトナム兵で人付合いがあまり好きではなかった彼と子供達の心のふれあいが感動的。500ページ以上ある厚めの文庫ですが飽きることなく読みきりました。
・「人の強さ弱さ」
宗教に興味ないのでどうかなーと思ったのですが、全然読みやすかったです。小学生を乗せたスクールバスの乗っ取りから解放までの話で、実話の様な感覚で読めました。本のタイトルが大袈裟な気がしますが・・
・「ぜひ読んでみて下さい」
最初のほうを読むのに少し辛抱しました。途中で出てくる記者のモリーの説明や人物像が煩わしくてイライラしました。(あとサミュエルの説教もかなり鬱陶しいので読み飛ばしました。
・「重いテーマを一気に読ませる」
著者の作品は購入前に常に悩まされる。本を手に取って作品紹介を読む。重い 重そうだ。
たいていはこのパターン。
けれど類まれな筆力が一旦読み始めると重さに投げ出すことなく最後まで一気に読ませてくれる。
常に著者の作品に隠されたテーマとなっている家族。それにメディア批判。今回もそれは隠し味として存在。
メインは自力救済を禁じた法治国家という仕組みの中で被害者の人権というものが如何に扱われているか。そしてそこから生まれるゆがみ。憎悪の自己増殖。
被害者遺族への感情移入を完璧にさせておきながら加害者へのそれを直後にさせてしまう凄み。
立場が変わることで正義も変わる、相手の立場にたつということの難しさ。
そしてそれが容易にできないのならせめて出来ていないことを悟って安易な感情洞察は避ける方がより傷が少ないということを教えてくれる。
秘めたテーマのもうひとつは案外 連帯保証人などという摩訶不思議な制度への問いかけかもしれない。
好みは大きく分かれるだろうが様々なテーマ 様々な問題意識
これを避けることなく考えさせてくれることを評価したい。
・「引きずり込まれる」
小6の主人公が修学旅行先で突然家に帰るように言われるところから始まるストーリー、。子供ながらに、家族の死を確信し、東京に帰るまでの4時間を、不安な気持ちと覚悟を持ってやり過ごしていく。そして知らされる残虐な殺人行為。読者は、この少女を悲劇のヒロインとして認識し、罪を犯した犯人を心から憎む。第2章には、犯人の男の上申書が綴られていく。そこで知る、彼の悲劇。読み手を今度は行き場のない怒りに誘う内容である。この前半部分の展開は、読み手を一気に引きずり込み、途中で止めることを許さぬ構成だ。やがて始まる、被害者と加害者の二人の娘のくだり。前半に比べると、確かに緩慢かもしれないが、作者の言いたいことはこの後半にこそある。真綿で首を絞めるように徐々に加害者の娘を追いやっていくさまは、前半の性急な犯罪と対比されて、むしろ怖い。大変に計算されつくした傑作と思った。映画も見てみたい。
・「深い愛を感じました。」
皆さんの感想ですと前半はいいけど、後半が弱いとか書いてあったのでそうなのかな?と思い読んでみました。でも、私の感想は逆で、むしろ後半の方が素晴らしかったです。というより、後半部のために前半があるような気さえしました。発想、着眼点もとても新鮮でした。
被害者の少女も、加害者の少女も立場が違っても同じ苦しみを抱えて生きていた。生きていていいのか?そう思いながらの人生は切ないほど悲しいです。すべての呪縛から解き放たれた2人の少女。彼女たちのこれからの人生が、素晴らしいものになるように祈らずにはいられませんでした。本当に深い愛を感じました。
・「切ないミステリー」
ミステリーだというのに涙を流したのは初めてでした。ある事件の加害者の娘と、被害者の娘それぞれの心の痛みが伝わってきました。 事件には、加害者、被害者はもちろんその周りの人たちも、相当傷つくことを、あらためて思いました。
・「お勧めです!!」
面白かったです!普通のサスペンスじゃないところも。この手の本はいつも犯人探しだったり、トリック探しで退屈ですが、この作品は実際に事件があったかのように錯覚さえしそうな細かい描写で続きが気になって一気に読んでしまいました。
私も自分の家族を惨殺されたら、犯人に向けた憎しみをその家族にも向けるだろう。その次にはどのような行動をとるか。。。奏子のとる行動にどきどきしました。お勧めです!
・「ツボをおさえている」
80年代の時代を背景に、名古屋から上京した田村久雄の20代を描く連作短編集。他の作品同様「笑い」「しみじみ」「泣かせ」のツボを押さえた作品である。
作者自身は岐阜県の出身であるが、その後のコピーライター、雑誌編集者という職歴をみると、半自伝的な部分はあるのかもしれない。
作者の作品は、「最悪」「邪魔」の路線と、「マドンナ」「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に代表される路線に大別されると思うが、本作品集は、後者のカテゴリーに入る。
・「本書は青春小説でもあり時代小説でもある―作家・奥田英朗の誕生史!」
本書の主人公・田村久雄は、著者である奥田氏と同じ1959年生まれ。巻末の「解説」も指摘するように、主人公はある意味で著者自身である(決定的に異なるのは、久雄が岐阜市でなく名古屋市出身になっていること)。ゆえに本書は、1980年代を時代的背景として、作家である奥田英朗の誕生・形成史として読み進めることができる。90年代に大学に入学したわたしにとって、本書で描かれている6編に登場する話題にはピンとこないものもただあったが、それでも読んでいて懐かしい感覚に浸ることができる。「古き良き時代」をノスタルジックに想起するというわけではない。ただ、自分史において鮮烈な記憶がない諸事実を知ることで、思わず自分が詳しく知らない時代にタイプスリップしたような感覚になったのであろう。88年のソウル五輪の対抗地が名古屋市であったなんて、今までついぞ知らなかった。
時系列的にいえば、第2編の「春一番」が1978年4月4日で最も古く、締めの作品である第6編の「バチェラー・パーティー」が1989年11月10日で最も新しい。上京してから10年以上に及ぶ久雄の20代を多角的に描き出した一連の作品は、自らの青春時代とのズレがあったにせよ、多くの読者の心をくすぐるのではないか。地方から東京に「上京」すること自体、1つの大きなイベントである。6つの作品のなかで、特に印象に残ったのは、楽しくも淡い学生時代を綴った「レモン」、母親が強引にお見合い女性を連れてきたことから始まる濃厚な一日を扱った「彼女のハイヒール」の2作品。ここでいう学生時代とはむろん大学時代のことだが、この4年間というのは、人生において特別な意味を持っているように思う。卒業してすぐには分からないが、次第にその貴重さを実感できる。いずれにせよ、作家・奥田英朗が生まれるまでの一端を知りたい人は、本書を是非とも読まれたい。その息吹を感じることができる。
・「文章それぞれに思い入れの残る」
文庫新刊の本作を早速読んでみたがこんなに人を描くのがユニークな存在だったか?と。「最悪」でも町工場社長の憂鬱を、「邪魔」でも主婦の細かい心情の移り変わりを書いてきたがそれこそ本当に一変している。というより、改めてその器用さを発揮した、そういう感じかも知れない。
主人公は田村久雄。大学中退でコピーライターに。80年代を東京で生きてきた中で彼がみたもの、感じたものは。文庫解説にある主人公≒奥田英朗でなく≠なのだという誤読を誘う要因とその理由は?そこから何を感じ取っただろう。個人的には感慨無量の連作短編集だと思う。全部読ませて初めて別の読後感を誘う連作という要素を上手についている。
本作は時制はばらばらだが1978年~1989年の話でその時の社会と照らし合わせながら書いている。だからこそ余韻を誘うのか、それは作家が上手いのか。作家と似ているからと言って上に書いたようにあくまでもイコールじゃないんだな。
最後のベルリンの壁崩壊も含めて話は始まりだったり終わりだったりすることが多い。どちらからも得る物は多いと思う。激しくも速く移り変わりゆく時代を生きてきた中で久雄が得てきたもの。
文庫解説で「川の深さは」の解説も書いていた豊崎由美は“小説において過去を活写するというこころみは、読み手に現状を寄り深く認識させるという意味でも有意義なんである”と述べている。更には大きな主題より、細部の積み重ね。魅力のある一行が小説には求められる、と。多分、色んな人にもたらしてくれるものがこれにはある。感じ方は別だとしてもあー、っとさせられる文章が詰まったもの。思い入れが残るものだ。それは時代を書いてきたからでもあるだろうが作家の上手下手で変わる。だから奥田英朗というのは希有な作家なんだと俺自身認識した。いい読み物をありがとう。
・「それぞれの「東京物語」(奥田版)」
地方から東京に出たことのある人ならこんな感覚わかるでしょう。読んだとき、そのときの感覚が湧き上がってきて、一人恥ずかしくなって身悶えてしまいました。そうです、なんかわからないけど未熟な自尊心といってしまえばそれまでですが、かっこわるいカッコツケをしてたなー。後半は就職して30を迎えるまでの物語となっています。しかし秀逸なのは前半です。青春物を愛する人は必読です。
・「奥田英朗の筆力をひしひしと感じる一作」
どこにでもいる、ごく平凡な青年「久雄」の青春が6つの短編で綴られた力作。舞台は激動の80年代、東京。青春というテーマのもとに、誰もが共感しえ、そして共感したくなるなにかを、奥田氏の感性を通して淡々とたどっていく。楽しく、切なく、あまずっぱい1冊。
全編にわたり、1978年‾89年という久雄の11年間が描かれているのだが、本の中では1短編は主人公の各時代を象徴する「ある1日」の出来事のみを扱っており、全6編(都合6日分)を読めば、久雄の成長から当時の時代背景に至るまでを共感しながら知りえる。この構造が非常によく出来ており、読ませる。
・「単なる「犯人探し」ではない推理小説」
佐賀県坊城町の旅館に、東京から一人の作家・小寺康司が宿泊した。係女中としてついた信子が彼の留守中にとった行動が、やがて起こる二つの事件を結び付ける─。
犯人探し、トリック暴きではなく、犯罪の動機と二つの事件の交差に焦点をあてた作品。
犯人がわかっていながら読者にもどかしく感じさせないのは、要所要所に推理させるポイントがあることと、複雑な人間模様が見事に描かれているからだろう。
松本清張作品は舞台の描写が素晴らしいのだが、その中でもこの作品は特に街並みや風景の描写が細やかで、それが情感を盛り上げている。清張の描写力が遺憾なく発揮されている作品といえる。
・「尻上がりに調子の上がって行く本」
西鉄以来のライオンズファンだ。最も好きだった選手は東尾投手。
最も好きだった時代はもちろん1985年から1994年の西武黄金時代。エースは工藤(現:横浜)だった。
東尾と工藤は似ているところのある二人で、それはおどけるところとスロースターターな所。特に工藤は1回や2回に点を取られるのはクセみたいなものだった。
東尾も徐々に調子を上げていくところがあるが、彼は、最終回にやらなくてもよい点を与えるクセがあった。
さて、この尻上がりに調子を上げるタイプ、観客としては面白いものだ。
この尻上がりのピッチャーの試合を思い出させるのが、「渡された場面」なのだった。最初の部分は松本清張ぽくないのだ西村寿行かと思ったくらいだ。
また主人公がぽいぽい変わる。最初は小寺康司、次が信子。その次がやっとホントの主人公、香春銀作になる。
この香春銀作になって、抜群に面白くなるのだ。
まるで工藤の初回に2点を取られ、しかしその裏すぐに取り返してもらってからは無安打ピッチング。勝ち越しの3ランホームランが7回に飛び出してからは一人の走者も出さずに完投勝利を挙げた!
そんな本だ。
・「ハードボイルドは苦手だけど、これはすごい!」
ハードボイルド小説が苦手で、そっち系の男が苦手なのに、何となく買ってしまい読んだのですが…。感動しました。伊勢を囲む人間関係の濃さ。彼の妹も多くの人に守られましたが、やくざな世界の中で彼もまた守られていたのだと胸が熱くなりました。警部が伊勢追い詰めていくくだりには、「やめて」と言いそうになり、最後のシーンには涙が出ました。作中にあった、伊勢の人生のたくさんの「もしも」。こういう道を選ばざるを得かった伊勢の人生の重さを感じさせます。この作品の中で、一番好きな場面は、伊勢がある女性とホテルに入るところ。セクシャルな表現はひとつもないのに、生々しい大人の情事を感じさせます。行間を読ませる小説だと思いました。
・「命を懸けてでも守るべきもの」
生い立ちを隠し、異父妹や昔の仲間の幸せのみを祈って静かに暮らす主人公。そんな男が、皮肉にも昔の仲間との再会をきっかけに事件に巻き込まれ、自分の過去とも交錯をして、大切なものを全て失う危機を迎える。淡々と半ば世を捨てたような男に、大切な人を守るため、かつての激情が蘇る。しかし、その激情は、かつても、そして今回も男を幸せから遠ざける結果を招くものだった・・・。敏腕刑事(この刑事もなかなか魅力的な人物に描かれている。情はあるがクールな仕事人)の登場から結末に至るまでは、主人公の「大切な人を守りたい」という愛情や「状況を打開せねば」という焦燥が伝わってきて、一気に読ませる。ラストは・・・涙なしでは読めない。力作、一読の価値あり。
・「スリル満点」
この本は、ヤクザ側と刑事側の双方の視点に立って描かれたハードボイルド小説です。どちらの立場に立って読んでみても、切なさが感じられました。役所広司主演で「絆」というタイトルで、映画にもなった作品です。
・「ハードボイルドの定義はよくわからないが…」
■プライドを持つ。■自分自身の道義性を貫く。■愛に対しては愛で報いる。■愛する者のためにはどんな犠牲も厭わない■信頼を裏切らない。■私利私欲を捨てる。
ハードボイルドの主人公に必要とされるものが以上の通りなら、この作品は間違いなくハードボイルドである。ハッピーエンドでなくとも、彼の人生の美学は貫徹されたと思う。しかし、『天国への階段』を読んだ後だったので、インパクトは今一つであった。したがって☆は4つ。
・「上質なセンチメンタリズム」
作者の特徴なのか人物描写がとても硬く感じる。「天国への階段」でもこの違和感を持ちながら、結局大作を一気に読んだ。本書も同じで「硬質なサスペンス」。少し旧い人間像、展開。ありがちなストーリーながら黙々と読ませる力感。上質なセンチメンタリズム。渇いている時に読みたくなる一冊。
・「忘れられない興奮本!」
船戸与一の作品はどれも面白い。中でも私が興奮して読んだのがこの「猛き箱舟」である。冒頭、いきなり緊迫したシーンに始まり、徐々に過去が語られていく。舞台は日本からアフリカへ、そしてまた日本へと、男が成長していくさまが描かれる。最後は男の執念の凄まじさに身が震える思いであった。 まだ読んでない人、絶対のオススメ本です。
・「船戸大作の1つ」
友人からこの本を薦められた時にハードボイルドが苦手な私は一瞬躊躇した。しかし、読み始めると瞬時に船戸ワールドへ引き込まれてしまった。憧れの男からの裏切り、そして復讐への執念。もの凄く男臭いが物凄くかっこいい。ジャンルの壁を飛び越え小説好きな方には是非読んでいただきたい大作である。
・「読まずに死ねない」
週間プレイボーイに連載中(約25年前)から目をつけていて、単行本が出て、すぐに買い求めた。だから、初読は、20年以上前になる。それから何度読み返したことだろう。冒険小説とは何か、ビルドゥングスロマンとは何かを私に叩き込んでくれた小説である。この作品以降、作者自身の手になるものを含めさまざまな冒険小説が世に出たが、この作品を上回る作品にはお目にかかっていない。よく、無人島に行くなら、何を持っていくかという問いがあるが、私ならこの作品を持っていく。
・「船戸文学の最高峰。」
船戸先生の作品の中で最高だとおもいます。 とにかく熱い、また 作品の世界に引きずりこまれます。 熱過ぎて、読み終えたあとの脱力感がまた心地いい。 このような作品を読めて至福です。 船戸先生ありがとう。
・「すごい冒険小説」
ミステリーの中で、特に冒険小説を好きな人は絶対に読み逃してはならない一冊と思う。
海外での日本企業の活動を阻害するすべての物を排除する「守護神」・「灰色熊(グリスリー)」こと隠岐浩蔵。彼にあこがれる香坂正次は、かれの配下に加わることに成功し、アフリカの砂漠において、日本企業の隣の採掘権を確保するべく奔走する。しかしそこで思いがけない裏切りが起こる。
1986年3月、隻腕の殺し屋を追う警視庁特殊処理班のシーンから始まり、舞台は1984年の日本にもどる。そして戦いの地サハラへ。わずか2年の間に凝集された、壮絶な復讐の物語である。「坊や」とよばれた青年が、戦いをくぐり抜け、様々な死を経験することで「死人のような目をした男」に成長(変貌)していく様は、圧巻である。
言わずとしれた、日本の冒険小説の第一人者である作者だが、本作品は、その作者を代表する一作だと思う。本作品は1987年の文春のミステリーベスト10で堂々第一位を獲得した。
・「見事!」
2003年度版このミス11位
作者の2作目。今の知名度でこの作品を出せば、もっと注目された作品だと思う。そのくらい完成度が高い。
自分に楯突く者を絶対に許さない、傲慢で拝金主義者の画商独特のこだわりをもつ泥棒の黒澤リストラに遭い、野良犬と仙台の町をさまよう豊田お互いの配偶者の殺人を画策するサッカー選手の青山とカウンセラーの京子(彼女だけ姓がないのが一つのヒント)新興宗教の教祖の解体に立ち会わされる河原崎
これらの5組にまつわる話が時間軸を上手に操られ、微妙にリンクしながら最後に騙し絵のピースのようにぴたりとはまる。初読の際にはこの見事さに感動すら覚え、各章に隠された時間についてヒントをメモしながら再読し、再度感動した次第である。未読の方は、是非、この「時間」ということに注意しながら読んで頂きたい。最後の驚きが倍増(は大げさかもしれないが)するはずである。
作品中の「展望台」や「好きな日本語を書かせる外国人女性」など、一見意味の無いようなエピソードの使い方もうまく、また作者独特の鮮烈で暖かみのある文体が完成度を高めていることは言うまでもない。是非おすすめの一冊である。
・「人には譲ってはいけないものがある。」
伊坂幸太郎さんの面白さを知りたいなら、私はまずこの「ラッシュライフ」をお勧めします。 キャラクターの造形の面白さ。台詞回しの切れ味と面白さ。そしてなんといってもバラバラのストーリーがやがいひとつに結集されたとき。表紙の絵柄にまさに各人物の物語が収まったときの爽快感はもう格別。 あとに続く伊坂テイストの集結する物語の原型をわずか発表作2作目で完成しているスタイルはもう絶品。読後の爽快感もいままでの日本人作家にはなかったような、さわやかさ、があります。 しかし、内容的には結構辛辣で現実面の冷たさを描いている点もただの娯楽作にとどめてないところがみそ。御伽噺と現実を融合した傑作ミステリーと言ったところでしょうか。 またこの作品には伊坂ファンの中でも人気の高い「黒澤」が登場するお話です。このときからすでになかなか魅力のあふれるキャラクターに仕上がっています。 それにしても最後にあのキャラクターが物語の締めを飾るとは思いませんでした。そうですあのキャラクターがこの物語のとりを飾るとはまさか思いませんでした。まさに傑作。伊坂テイストを知りたいならまずこの一冊です。
・「騙し絵的小説の面白さ」
これは本当に面白いです。その面白さは読めば読むほど味が出てくる代物。伊坂幸太郎の比喩的表現を押さえ、人間模様をふんだんに織り交ぜ、尋常ではない数の人達の生活が繋がっている。この小説は困ったことに類似品が無い作品で、とにかく面白い以外感想を述べるとからくりを開けてしまう事にあります。
楽しみとしては、読後の人と話す時でしょうか。読後の満喫度が顔面に溢れまくりです。
・「1970年代生まれの奇跡」
読ませる力のある作家。当代随一のストリーテーラーといってもおそらく間違いではないと思う。
流れるように、文字をおえばよい。そうすれば、自然と伊坂の世界へ入り込むことができる。
素晴らしいボクサーがうつボディ・ブローのように、いつのまにか彼の繰り出す言葉が腹にしみてくる。気付いた頃にはもう遅い。純粋に物語りの波にのって、ただ文字をよんでいるだけで、ここちよい感覚を味わっている自分に気付くはずだ。
綿密にノートに構成を書き、あれやこれやと悩みながら、おそらく作者はそのようにしてこの物語を書いているのだろう。もし、そのような方法ではなく、思いつくままにこのような小説を書いているのだとすれば、それは、伊坂の天才性の証明であって、よりいっそう、作者への尊!敬の念を強くするだけだ。
まったく関連がないかと錯覚するエピソードは、いつのまにか、一本の線の上に並ぶ。すべての文字を読み終わったときに、「時間軸」を意識してもう一度読み返したくて仕方なくなる。
できることなら、早いうちに伊坂に注目しておくべきだ。乗り遅れてはならない。「平成」を代表する作家として、伊坂は記憶されるに違いないから。
・「バラバラからひとつへ」
5つのばらばらな話が織り成す不思議なミステリー。最初は話についていくのに精一杯で、何がなんだか分からない状態・・・いつの間にか話に吸い込まれ、徐々にパズルのピースが組み合わさっていくように、話がつながっていき、最後ははっとさせられました。ミステリーを読むとき、自分なりに結末を想像しながら読みますが、こんなにも裏切られたのには驚きました。もちろんいい意味での裏切りですが。とても新しい感覚の小説なのではないでしょうか。これで私も完全に伊坂ファンです^^
●悪人
・「タイトルの意味が言い得て妙だが、実は儚くも美しい純愛小説だったりする。傑作!」
凄いな、この本は、、、。読み始めてひとときも中座する事なく一気に読了した。傑作である。恐らく今年世に出た小説群の中でも読む者の心を鷲掴みにするといった点では屈指の作品ではないか。本の帯にある“なぜ、事件は起きたのか?”“なぜ、ふたりは逃げ続けるのか?”“そして悪人とはいったい誰なのか?”とのフレーズが見事にこの作品を読み取るキーワードになっている。冒頭から、今作の登場人物たちのぐだぐだとした満たされない日常生活の中で湧き起こる儚い嘘と悪意の心理描写の上手さにぐっと引き込まれ、ある「悲劇」が起こった後は人間の深淵に潜む「業」の様なものを読んでいくのかと思いきや、物語は第3章で劇的に変貌する。変えたのは馬込光代の存在。彼女の登場で、物語は儚くも美しい純愛路線に大きく舵を取る。世の時流に乗る事などまるで諦めていた生きベタなふたり、生まれて初めて出逢った真に心を許せる者たちの、安っぽいラブホテルでのあまりに痛切な抱擁と逃避行の道行きでの魂の絶叫に、ページをめくりつつ胸が張り裂けそうになる。ラスト、なんとも切なくやるせない気持ちになりながらも、今作に登場する傷ついた者たちの絶望の「闇」の彼方に見える魂の救済を思わせる様な一筋の光明が救いと信じたい。
・「人間臭さがいい。」
久しぶりに泣けた作品。年齢を重ねたから感じる事なのか、登場人物皆がとても人間臭くていい。登場人物皆悪人なのか、そうさせる環境で生きて来たのか・・・綺麗事の多い小説の中で人間味のある人々の心にふと足を止めてみたい作品。「生まれて初めて人の匂いがしたっていうか・・」と始まる少年の言葉が今の世の中に重なるような気がした。
・「誰が悪人で誰が悪人じゃないか」
久々に真ん中ストレートに刺さった本。 まだまだ進化する作家さんだと期待してるけど、現時点では 最高傑作だと思う。 被害者の父と、加害者の祖母(母代わり)、立場は真逆なのに 2人の辛さや悲しみがリンクしていました。 描写が秀逸で、登場人物や舞台となった地方都市が自分の中で リアルに浮かび上がってくる。 追い詰められ、切羽詰った2人の逃避行はせつな過ぎて痛い。 わたしにとって特別な映画「モンスター」と通じるものがあります。 両作品とも、誰が「モンスター」で「悪人」なのか分からない、 もしかしたら誰もが「モンスター」であり「悪人」なのかも知れない・・・ と思わせるタイトルも含めて。 心をえぐられる本です。
・「聞きたいのです。」
読書は自己完結するほうなので、他人の感想とか、あまり興味がない。なのに、この本を読んだ後、無性に誰かと、この本について話がしたい、と思った。
なぜ、この物語のタイトルが「悪人」なのか?途中まで浮遊したままだった、この「悪人」というタイトルが、最後にずっしりと、自分の中に沈澱してくる。
そして聞きたいのです。
この物語で締め括られる「?」のように、誰かに聞きたくなるんです。
・「誰が悪人か」
女は、殺されても仕方ない悪人だったのか。男は、冷酷な殺人鬼なのか。
●家日和
・「日常をテーマとした秀作。おもしろい。」
様々な立場の人の日常が、軽いタッチで描かれている短編集。 その中で秀逸だったのは、インターネットオークションをテーマとした「サニーディ」。オークションにのめりこんでいく主婦の心情が手に取るようにわかった。自分もオークションを活用するが、似たような気持ちになる。 ごくありふれた人物の、別に何ということもない日常を題材として書かれているだけに、登場人物に共感する読者も多いのではないだろうか。いつもながら、奥田氏の手法はすばらしい。
・「文句なしのユーモア短編集」
家をテーマにした6編。どの夫婦も、わざとらしいようなラブラブではないし、お互い少し不満もあるけど、でも長年暮らしてきた絆のようなものを持っている。あたりまえの夫婦が、こんな風にユーモア小説になっちゃうなんて、さすが直木賞作家!最後の短編で分身めいたキャラクターが出てきて、それも面白い。私も豚カツは、ヒレよりロースが好きです。
・「まさに、“今”な感じの家庭小説!」
この短編集は、6つの短編で出来上がっています。それぞれ、いかにも今風で、いかにもありそうな家族風景です。でありながら、凡百の人々でもないのです。倒産で失職したからすぐに職を求める訳でもなく。妻との別居も愉しみに変えてしまう。
平凡そうに見えても、平均とはちょっと違う行き方の方が楽しいよ、って言ってるみたいで面白いのですね。
その面白さに拍車を掛けているのが奥田さんの“今”を手中にしている表現力です。予想以上に美味しい弁当ができた時、主人公に「うっしっし」と言わせたり、思い通りのソファを見つけた時に、ひとりで小さくガッツポーズをさせたり、上手くイラストが描けた時の女性イラストレーターの感嘆詞が「ワオ!」だったり、いかにも今な感じがあふれてる小説。
奥田さんにしか、書けませんなぁ。買って1時間半で読んじゃいましたよ。
しかも、装丁が洒落てます。実際の風景をあたかもミニチュアのようにとるので木村伊兵衛賞をとった本城直季による新興住宅地の写真を使うなんてセンスいいっす。
・「人間をよく見てますなぁ」
新刊が出ると、迷わず買う数少ない作家の一人です。特に事件があるわけでもないのに、ぐいぐい読ませてしまう、その力量に今回、うなりました。軽い、といえば、軽いんだけど、松尾芭蕉のいう「かろみ」に近い世界なのかも。
短編集なので、いろんな人が出てくるのが面白い。「何でこんなに人の気持ちがわかるんだろう」と何度もうなりました。
特に、私は「家においでよ」で、奥さんと別居中にどんどん自分好みの部屋を作っていく男の人の話に共感を持ちました。佳作だと思います。
・「さすが奥田英朗さん、洞察力が違います!!」
家族にはそれぞれの形がある。この本は、そんな家族のそれぞれの形を奥田英朗の鋭い洞察力をもってして描いた作品です。ネットオークションの魅力にとりつかれた主婦、職を失い専業主夫になった男の話などなど今回も前作同様、盛り沢山のテーマでひとつひとつ丁寧に描かれています。
●告白
・「こんなに読後感の悪い小説はあまりない。でもこんなに面白い小説はあまりない。」
第一章ののっけから引き込まれた。自分の愛娘が亡くなった事件を淡々とクラスの生徒に語る女教師。文体も新しい感じ。新しいと言っても、「今風な薄っぺらな感じ」では全く無い。そして、第一章の驚愕のラスト。背筋が凍るとはまさにこのこと。小説を読む時、たいがいは主人公をはじめ、登場人物に感情移入しながら読むのだが、第一章で女教師に感情移入しつつ、ラストの恐ろしさに、感情移入の上限(?)を超えてしまった。
そして、第二章以降、それぞれの登場人物の語り口で描かれるさまざまな真実と心情。でも、もう読者はどの人物にも感情移入できないのではないか。
どの章にも漂う、不条理と悪意。でも、ページをめくる手は決して止められないほど引き込まれる。そして、ラストにはまた残酷なエンディング。なんて悪い読後感。虚無感が心に広がる。でも、面白かったとしか言えない。こんなに引き込まれた小説は久しぶりだ。そして、これがデビュー作とは、さらに驚きだ。
・「確信犯的に歪められた描写から窺うテーマ」
冒頭から取っ付き難いモノローグでしたね。渡辺くんも演出過剰な話しっぷりにうんざりすると、そう言っていますし。 しかし読み進めるにつれ、伏線の張り方とその回収技術には素晴らしいと言わざるを得なくなります。技術的には文句なしです。 そして、立場も思いも異なる語り手たちによる、多方向からの切口によって、次第に明らかになっていく事件の全貌と結末にため息が出ます。
そして何より、愛美さん、桜宮先生、竹中さん、下村家のお姉さんを除いた登場人物が、徹底して誰かへの悪意に満ちているあたりに、筆者の意図を感じます。 それは逆説的に表現されたものなのでしょう。HIVの描写が、確信犯的に歪められているあたりからも窺えます。 ただ残念なのは、それを徹底しすぎると、登場人物の設定上のリアリティーが多少薄れてしまうことでしょうか。もっとも、下村くんのお母さんは、とにかくリアルに描けていると思いましたが。 ちなみに読後感は、扱うテーマと筆者の表現方法上、こうなってしまうのがむしろ当然な気がします。
以上、減点対象はありませんでした。
・「これはスゴい・・・」
小説の中には、「暗い」「残酷」「不快」な話だっていっぱいあると思います。だから、「この話は陰鬱だ。」と批判することは間違っていると思います。「ハッピーエンド」「さわやか」「きれい」なストーリーのみが好きな人、または、告白のような「重い」「暗い」「悲しい」ストーリーが嫌いな人は、読まなければいいだけのことです。
この話の面白いところは、★主役がどんどん変わることで、さまざまな角度から1つのストーリーが描かれている事。これにより、だんだん現れてくる真実が予想外で驚かされる。★登場人物が皆、極端な人間、クセの強い人間ばかりであるということ。どいつもこいつも「ごく普通」の人間ではないのに、やたらとリアルな感情表現、共感してしまいそうになる文章。そのあたりがとても魅力的です。
暗いストーリーでも読める、という人には、そうとう楽しめる内容だと思います。
・「倫理観はどこから生まれるのか」
読後にジワジワと考え込まされたり、ふとした時に思い出したりする小説が、私にとっての「良い小説」なのですが、これはそんな一冊になりそうです。
・「斬新」
各登場人物の独白形式で章立てされている小説。一行目から、その後の何となく不吉な展開が察せられるほどの書き出し。やはり不気味な丁寧語で語られる、教師の独白部分が最も秀逸。斬新という印象はここから来ているのだろう。ラストは救いようがない、誰も救われない、でも少しスッとしてしまったのも事実。
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