ゴールデンスランバー (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「過去を称えるやさしさにあふれている傑作」「新作は大作。伊坂幸太郎氏の作家人生における注目すべき一書!」「伊坂ミステリーの妙を堪能しました」「こんな作品を待ってました。」「伊坂ワールド堪能」
容疑者Xの献身 (文春文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「●数学って、実に面白い!!」「犯人が犠牲として捧げたもうひとつのもの」「切なすぎる。」「タイトルが秀逸」「数学への愛情とプラトニック・ラヴは等価関係にある」
博士の愛した数式 (新潮文庫) (詳細)
小川 洋子(著)
「数学の内面の暖かさ」「感動しました。」「博士の愛した数式」「再読」「暖かく静かな時間」
天の瞳 幼年編〈1〉 (角川文庫) (詳細)
灰谷 健次郎(著)
「みんな読んでみて」「感動とそして子育てを振り返るきっかけに。」「素晴らしいです」「子供が園にあがる前に読んでいただきたい。」「はまります」
サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1) (詳細)
奥田 英朗(著)
「これはスゴイ!!!」「元過激派のハチャメチャな父」「こんなお父さんは嫌だけど好きだ。」「おとうちゃん、かっこいいー!」「少年を見守っているような印象」
「こんなに読後感の悪い小説はあまりない。でもこんなに面白い小説はあまりない。」「確信犯的に歪められた描写から窺うテーマ」「これはスゴい・・・」「倫理観はどこから生まれるのか」「斬新」
陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫) (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「陽気で痛快」「続編が読みたくなります」「銀行強盗が洒落た職業に見えてくるから不思議だ」「理屈抜きに面白いから読んでみて!」「何も考えないで読んだほうが」
模倣犯1 (新潮文庫) (詳細)
宮部 みゆき(著)
「圧巻!」「新潮文庫に苦言」「読書の喜びを感じた作品。」「犯罪被害者の苦悩を描き切った渾身の導入部」「読み応え度「大」の超大作」
白い巨塔〈第1巻〉 (新潮文庫) (詳細)
山崎 豊子(著)
「傑作」「病院腐敗告発ではなく人間ドラマの最高傑作」「「白い巨塔」の内部が緻密に面白い」「取材力のすさまじさ」「財前の生き方に共感を得られる読者も多いのでは」
パイロット・イン・コマンド (新潮文庫) (詳細)
内田 幹樹(著)
「読者を引き込む力強い作品」「飛行機の乗客としての安全に対する知識」「事件後の展開がおもしろい」「サスペンス小説?否、トラブルシューティング小説!」「内田幹樹氏小説デビュー作」
白夜行 (集英社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「なんとも形容しがたい」「活字でこそ深く味わえる物語」「日の当たらない青春を生きた大河小説」「じっくりと読ませる悲劇」「読み取ることが大切。」
幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7)) (詳細)
東野 圭吾(著)
「満足。続編待たれる。」「書評は最後に読みましょう」「最高に面白かったです!」「白夜行のドキドキが再び!!」「美冬の人生とは?」
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫) (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「伊坂ワールド」「二年前と現在との交錯」「カテゴライズに困る本」「河崎、ドルジ、琴美 3人の切ない物語」「まず読むべし」
数の悪魔―算数・数学が楽しくなる12夜 (詳細)
ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー(著), 丘沢 静也(翻訳)
「数学って面白い」「算数の面白さの入り口」「数で”遊ぶ”!?!?」「おもしろいぜー」「まーなんですがーー数学ぎらいです」
ぐるんぱのようちえん(こどものとも絵本) (詳細)
西内 ミナミ(著), 堀内 誠一(イラスト)
「いつまでも好きな絵本」「『子どもに伝えたい大切なこと』が詰まっています。」「自分さがしの物語」「まいにちのえほん」「子供の頃の気持ちを想い出しつつ」
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) (詳細)
カズオ・イシグロ(著), 土屋政雄(翻訳)
「文学のよろこび」「第三部を読み進めながら、涙が止まらなかった。」「豊かな語りもまた切ない」「完全な虚構のなかのリアリティ」「受け入れ方☆」
「タイトルの意味がわかったときゾッとしました」「待望の長編ガリレオシリーズ第2弾―<執念>という言葉が鍵概念か?」「タイトルに深く溺れる」「「救済」の意味」「女の情念」
「これは凄い。。」「とにかく読んでみて損はない」「だつりょく【ややネタばれ】」「男(父親、夫)、女(母親、妻)、愛、絆、家族、嫉妬、宿命、未来・・・。」「極限」
第三の時効 (集英社文庫) (詳細)
横山 秀夫(著)
「読み終えても何度も読み返したくなる警察小説の傑作短編勢揃い!」「傑作」「著者の筆さばきが冴える警察小説」「ゼッタイこの管轄では事件を起こしたくない(笑)」「素晴らしい」
「山に登る人は違う」「フィクションでもノンフィクションでもなく哲学書です。」「凍える世界に息をも忘れる、文字の力を超える本」「想像を絶する」「壮絶な登山の記録」
池袋ウエストゲートパーク (文春文庫) (詳細)
石田 衣良(著)
「マコトに会いに池袋に行きたいな」「おじさん・おばさんも楽しめます」「クール!」「良くできた読み物」「さくさく読めて楽し!」
最悪のはじまり (世にも不幸なできごと 1) (詳細)
レモニー スニケット(著), Lemony Snicket(原著), 宇佐川 晶子(翻訳)
「不幸なのにおもしろい!」「子どもの頃に読みたかった。絶対ハマってたはず。」「幸せな結末がお好みの方は読まないで!」「笑えないところがおもしろい」「お」
「緊迫の医療サスペンス」「東野圭吾による「長編医学サスペンス」の傑作品がここに!」「「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど「心」によって救われる。」「医者はいかなるときもその使命感を完遂できるのか?」「わかりやすい医療もの。」
あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック (詳細)
ロン クラーク(著), Ron Clark(原著), 亀井 よし子(翻訳)
「親子のルールブック?」「あたりまえで大切だけど、なかなかできないこと」「未来の子どもたちのために、こういう本は、あってほしい.」「健全な家庭で育った人が書いた本」「先生読んで!」
空中ブランコ (文春文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)
「日常に疲れた人に」「医学博士の伊良部一郎はもしかしたら「人間博士」かもしれない!?」「単におもしろいだけではない」「前作よりもやわらかく」「マユミちゃんの意外な一面」
・「過去を称えるやさしさにあふれている傑作」
伊坂幸太郎の小説のすごさは、構成力だと思う。点と点がいつしか線となり、大きなうねりを持って迫ってくる。そんな文章力が、一番の魅力だと思っていた。でも、今回の作品は、そんなことがちっぽけになるくらいに愛に満ちあふれていた。くだらない時間を一緒に過ごした学生時代の友人、そして一度別れてしまえば最も遠い存在になってしまう“元カノ”が登場するわけだが、時を経てもなお彼らの間に流れる“信頼感”は、目の前のとんでもない状況を凌駕するくらいに深い。自分の軸の所在をきちんとわかっているというか、自分の中の優先順位にきちんとケリをつけられているというか、そういう潔さに胸が熱くなる。変わっていっても、同じように大事なもの――その深さに胸を打たれた。話の軸は首相暗殺事件なのに、変わっていくことや、過ぎてしまった時間を称えるような優しさにあふれている大傑作です。
・「新作は大作。伊坂幸太郎氏の作家人生における注目すべき一書!」
伊坂幸太郎氏の最新作だ。帯には「伊坂的娯楽小説突抜頂点」と明記されているが、たしかに彼自身の持ち味が十分に活かされた読み応えある作品だった。個人的にジョン・F・ケネディ暗殺事件には関心があったので、それをモチーフにした本作品の展開構成には最初から惹かれるものがあった。さまざまなシーン・会話が見事に繋がり、立派なオーケストラの演奏を味わっているような感覚に浸ることができるのは伊坂氏の筆力である。タイトルも印象的だった。
首相暗殺の濡れ衣を着せられたある男と彼を偶発的に応援するかつての友人達らとの触れ合いに多くのことを考えさせられた。しかも500頁を超える大作であるため、読了するまでに意外と時間がかかった。一気に読み終えた読者もいるかもしれないが、私には大変だった。興味深い作風・内容であるとは思いつつも、途中で頓挫してしまうのではないかと幾度も危惧した。今こうしたレビューを書いているのは、きちんと最後まで読み終えたからである。当然のことではあるが、今回ばかりはそれが何より嬉しい。
「第四部:事件」がとにかく長い。自分が「逃亡者」にでもなったスリリングな気分になるが、関心事は「最終的にはどうなるんだ?」という一点だ。十二分に読者を引っ張っておいて、「第五部:事件から三ヵ月後」のコンパクトな締めくくりがかえって心地よかったりする。最後にもらった「たいへんよくできました」というスタンプは一体どんな意味を持っているのか。このエンディングに私は安堵した。そして伊坂氏の人間らしさを何となく垣間見たように思うのである。伊坂的娯楽小説の貫徹ともいうべき本書のメッセージとは何か。本書を通じて作者は読者に何を感じ取ってほしかったのか。「娯楽=エンターテイメント」という単純な話ではないだろう。「現時点の集大成」というから、今度も彼の作品は進化を遂げてゆくということだろう。私なりに注目していきたい。
・「伊坂ミステリーの妙を堪能しました」
杜の都・仙台を舞台に、仕組まれた首相暗殺事件の犯人に仕立てられた男が、必死の逃亡者として逃げ切り、生き抜こうとするストーリー。
謀略者や警察、マスコミによって作り出された男のにせの姿が、男をよく知る親友たちと主人公が関わっていくなかで、真実の姿へと変わっていく。最初のうちは、虚像として映っていた絵をばらばらにして、あるべき場所にパズルのピースをはめこんでいくと、最初の像とは全く違う青柳雅春の実像が浮かび上がってくる、そんな感じ。ぱたり、ぱたりと、主人公・青柳雅春の虚像が引っくり返されていく展開が小気味よく、絶妙でしたね。
暗殺事件の真相は、事件当時のものとは違っていたことを明らかにした上で(事件から20年後の話を描いた後に)、黒い霧の中に葬られた事件を、カットバックを巧く使いながら描き出していく話の展開、伏線の生かし方も見事だったな。 殊に、青柳雅春の必死の逃避行を描いていく中に、彼と親友、恋人との思い出の光景が差し挟まれるところがよかった。容赦のない、冷酷無惨な謀略事件と比べると一層、彼らの脳裏に浮かぶ思い出の風景が、あたたかく輝いているように見えました。
久しぶりに読んだ伊坂ミステリー。これは面白かった!
・「こんな作品を待ってました。」
とにかくノンストップで読みました。面白くて、途中で止めることが出来ませんでした。私も主人公・青柳と一緒に一気に走った感じです。
女二人の会話から入る第一部が、まずいいです。何とも平凡だけどどこか軽妙な会話に引き込まれる中、あっと驚く事件が起こります。そのあとは過去と現在を巧みに行き来して、ストーリーは展開します。ちょっとした会話の中にも伏線があり、あとあとそれが「なるほど!」と思わせるし、登場人物はそれぞれなんだか適当に喋っているようだけれども、すごく物事の本質を見抜いていて、ドキッとさせられることばかりでした。
読後感は、何故かデビュー作の「オーデュポンの祈り」を読んだときと似ていました。あの、初めて読む種類の小説!と感じた新鮮さです。更にパワーアップしたものですが。正直言うと、みんなあまりにも無条件に逃亡者・青柳に手を貸すし、うまい具合に話が進みすぎる(たった二日間なのに!)という感もあるのですが、それは許せるぐらいのおもしろさです。でも面白いだけじゃなく、ホロッとさせる部分もあるんですよね。わたしは3箇所でグッときました。そしてラストがまたいいんです!
う〜ん、書き切れません。とにかく、オススメです!
・「伊坂ワールド堪能」
伊坂作品は、伊坂ワールドを楽しむためのエンターテイメントです。
★1つ評価の方のレビューにもうなずけるところはありました。確かにこれを「ミステリー」と捉えるのは、私も無理があると思います。
オーデュボンの祈り、モダンタイムスもそうでしたが、何が起こったのか?はこれから始まるショーのきっかけ=客寄せパンダ的な存在に過ぎず、そこで繰り広げられる人々が織り成す幾何学模様のような伏線の交錯が楽しいのです。
なので、音楽と同じでもはや「好き」or「嫌い」、自分に「合う」or「合わない」という感覚のものだと思います。
文学という芸術に属するのか?と考えれば、新ジャンルとして確立されつつあるのではないでしょうか。
とにかく今回も伊坂ワールドを存分に堪能できたので大変満足です。徐々に楽しませて、ふくらませて楽しませて、最後に向かってぎゅぅっと絞られ、ふわっと放たれる…あの感覚がたまりません。
・「●数学って、実に面白い!!」
事前に『数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!』を読んでいたためか、文系出身の私でも、かなり楽しく読めました。数学的思考力によって「サキヨミ」ができる能力があると知っていると、天才数学者・石神の思考過程や行動が非常にリアリティーをもって感じることができました!
数学って、こんなにもスリリングでサスペンスな実用的な思考の訓練を学べる、超実用的なものだったのですね!私の人生は、これまで損をしていたように感じました。
理系のかたが書く本って、実にわかりやすくていいですね。ワクワクしながら読めました。これなら映画のほうも期待大です!
・「犯人が犠牲として捧げたもうひとつのもの」
犯人は愛のために自分だけを犠牲として捧げたのではない。何の罪も遺恨もない第三者を完全な道具として犠牲にしている。もちろんそんなことは探偵も作者も百も承知で、むしろ「献身」の重要な要素はこちらのほうなのだと思う。現世の罰ではなく、地獄堕ちの覚悟を決めたうえでの。犠牲者の身分が●●であることが話を見えにくくしている。これが幼い愛児を抱えた会社員とかだったらトリックは成り立たないわけだが、それだけの理由だろうか。差別的な人物配置としてむしろ作者や作品に嫌悪感を抱く者も出るだろう。あまりに異常すぎる愛の形として犯人にまったく感情移入できない者も多い(私はこれだ)だろうし、逆に、だからこそ感動できる人もいるかも知れない。ただ、この、もうひとつの犠牲のほうをやや軽く見て感動してしまった人も少なくないはずだ。私だったら、お節介にもこう言ってしまうかもしれない。この犠牲者の生活や人生に1章が割かれていたとしてもやはり感動できましたか?作者はあえてそうしなかったし、犯人の本当の凄まじさを強調することもしなかった。差別的と見られることも恐れずトリック優先の配置に徹した。その結果、どのような形で感動されようとも、あるいは反発されようとも、すべて読者にゆだねてしまったようだ。読後感すらトリックと化すような底意地の悪さともいえようが、むしろすべてを俯瞰するような虚無感に慄然とさせられた。
・「切なすぎる。」
これを読んで泣かない人っているのだろうか。あまりにも純粋で、純粋なあまりに悲しい。ミステリー自体も面白い。
女性の心理描写云々書いてる人がちらほらいるがその多くは男性なのではないだろうか。少なくとも私を含めた女性友人読者達は泣いた。未だに胸が苦しい…。
・「タイトルが秀逸」
「容疑者」「X」「献身」この3つがこの小説の三大キーワードをなしており、互いに絡まりあいながら、クライマックスに向かってぐいぐい収束してゆきます。読み終えた後、このタイトルがこの小説のテーマ・結末・そして雰囲気を要約しきっていたことに改めて驚かされます。簡潔にして的確、これ以上に秀逸なタイトルの実例をなかなか思い出せません。
・「数学への愛情とプラトニック・ラヴは等価関係にある」
冒頭の殺害シーンと主人公の登場からもう一気に物語へと惹き込まれた。そのスピード感は見事。人物設定と間然とする所のないプロット(トリック)も云うことない。文句なしの傑作。それにしても、最後の疑問だが、(1)P≠NP問題はそもそも数学的に解けるのだろうか?(2)哲哉と靖子はいずれ結ばれるのであろうか?
・「数学の内面の暖かさ」
今までに数学的な読み物をたくさん読んできましたが、小説はあまり読みませんでした。前に、子供達が数学を使って怪獣に向かう内容の[数のモンスターアタック]という物語を読んで、互いに助け合っていく心暖まる思い出があります。しかし、それ以外は数学的な読み物で心暖まる本は読んだことがありませんでした。[博士の愛した数式]は小説だと思って今まで敬遠してました。ようやく最近になって読んで、この本もとても心暖まる数学的な読み物だとわかりました。でも、前の本とこの本を比べて何か違うと感じて考えました。前の本は数学を応用して怪獣に向かうところに助け合う暖かさがありますが、この本は数学の内面にある暖かさを表現していることに気づきました。これができるのは数学者では無理な感じがして、すばらしい文を書く力のある小川洋子さんしかいないと感じました。さらに付け加えると、小川さんは数学をよく勉強したからこそ、その内面の暖かさを現せたと思いました。筆の力のすごさを心から感じます。小川さんの新聞連載の童話も大好きです。
・「感動しました。」
陳腐なタイトルですみません。この本は、タイトルから、堅いお話をイメージしており、読むのに気合が居るかもと後回しにしていた本でした。今日、ふとしたことで読み始め、最初から、「博士」の存在感を叩きつけられた感じがしました。
タイトルから連想できるように、ところどころに数式が出てくるのですが、数学が嫌いな人でも興味深いと思える解説を、「博士」がしてくれます。
この「博士」は若いときの交通事故のため、記憶を80分しか持つことができません。例えば家政婦さんが買い物に出かけ、戻って来るのが81分後だとすると、彼女のことは忘れてしまうのです。
「博士」の元に通う家政婦さんとその息子さん、そして博士の義姉・・この人たちが、博士のもっとも愛する「美しい素数達」のような存在で、博士の周りに位置しています。
自然に、数式で自分の気持ちを、的確に伝えようとする博士。それを理解しようとする人々。このような話を書かれた小川洋子さんを、改めて尊敬し、このような物語を読めたことを感謝します。
最後に。小説を読むと言うことは、数式を理解すると言うことに、似ているのかもしれません。
・「博士の愛した数式」
数学を、小説のなかに、取り入れたという着想に、まず乾杯!それをルート母子に伝える記憶が80分しか続かないという天才数学者というキャラクターを作り上げた小説家のイマジネーションに脱帽!
博士という人は、現実世界のなかでは、ちょっと存在しにくい人だ。記憶が80分しか続かないという破綻を与えてこそ、無垢な人物像としてありえるのだと思う。
しかし、この博士のもとに派遣される家政婦母子にとっては、80分しか記憶が続かない博士と過ごすことは、障害にはならない。きらきらした時間を、与えられることになる。博士の記憶には残らなくても、その過ごした時間は、二人には永遠の時を刻む。
この作品は、どんなに現実が煩雑で面倒でも、数式のように清らかに存在する真理があり、時を超越して普遍的なものがあることを教えてくれる。
清らかで美しい日本語の紡ぎだす世界は、とってもオススメです。
・「再読」
初めて読んでからはや3年あまりたちまして、今回、小川 洋子の「物語の役割」筑摩新書を読んで、読み返しました。 初めて読んだときはたいしたことのない小説だとおもいました。特に、感動もせず、ありきたりのような話だとおもい、第一回本屋大賞受賞作のレベルを疑いました。 今回、新しい視点の基に本書を読み返すと、自分が物語の中に入っていなかったことを実感しました。初読では、何か外側からしかこの物語に参加できていなかった自分を発見することができました。著者の記憶が80分しかない人間とのかかわりの設定に人間と人間が本当に人生の一瞬、一瞬しか出会えないということの気づきを感じました。果たして、私には通常の記憶があるが、私は大切な人は物に出会う準備と集中力、静けさを感じる感受性をはぐくめているのだろうかと考えさせられました。3年前はこの本のよさがわかる心がまだ、私になかったのだと思いました。一切の派手さはない小説ですが、心に残る行間があると思いました。
・「暖かく静かな時間」
私にとって小川洋子さんの作品はこれが初めてです。その一行目から引き付けられ、一気に読みました。読んだというよりは読まされたと言うべきでしょう。主な登場人物は事故で記憶する能力を失った「博士」、シングルマザーの家政婦「私」と息子「ルート」、博士の義姉の「未亡人」。おお、忘れてはいけないのは阪神タイガース、江夏豊、背番号28。です。小川さんの文章はとても簡潔です。読む人の五感に刺激を与え、目の前に見せてくれます。博士が着ている古ぼけた背広の肌触り、その背広にクリップで留められた記憶代わりのメモ用紙の大きさ、めくれ加減。「私」が作る夕食の味。雨降りの土の匂い。そして心への刺激。小川さんの文章には常に暖かく静かな時間が流れています。普通の生活の会話には決して出てこない「数学」という非日常の言葉が逆に日常の営みや感情をゆっくりと際立たせます。ひとり一人の人物は優しく、心の中には悲しみを持ちながらも前を向いて生きています。(「ルート」君はちょっと出来すぎ。私もこんな息子が欲しい!)人生には別れは付き物ですから最後の数頁は涙で文字がぼやけて大変でした。けれど悲しいというのではなく、愛しい切なさというのでしょうか。この作品を原作とした映画が封切られます。この暖かい静けさがそのまま生きていてばいいなあと思います。巻末の、数学者である藤原正彦先生の解説も、とっても気が利いています。
・「みんな読んでみて」
添う仕事をしているという言葉に衝撃をうけました。私は保育園の仕事を子供に教えることと考えていました。この言葉の違いは大きいです。この本を読んで子供に接する気持ちが変わりました。また、じいちゃんの人生経験からでる、真心がある嘘のない言葉がとてもいいです。大人になった人たちにぜひ読んでもらいたいです。子供のことだけでなく、仕事や人生についても教えてくれています。
・「感動とそして子育てを振り返るきっかけに。」
母親の芽衣、父親の宗次郎、じいちゃん、あんちゃん・・・わんぱくでこうと思ったら絶対まげない倫太郎をとりまく大人達の理解ととまどいは、子育て中の自分の姿と重なった。自分の子育てをあらためて振り返り、あらたな気持ちで子供をみてみよう。もっと、子供の深いところをみてみよう!と思える話です。もっとはやくよめばよかった。今子育て中のおかあさん(特に男の子の)に是非おすすめしたいお話です。特にじいちゃんの言葉は深い。
・「素晴らしいです」
私が小学生の頃、母親の影響で本棚に置いてあった「兎の眼」を読んで、灰谷健次郎を好きになった。
そして「天の瞳 幼年編」を読んで、灰谷 健次郎をもっと好きになった。
子供を持ったら倫太郎の両親のようにのびのびと育てたいと思いました。1人でも多くの方にぜひ読んでもらいたい作品。
・「子供が園にあがる前に読んでいただきたい。」
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・「はまります」
姉から進められて読み始めたのですが,このシリーズにはまってしまいました。倫太郎と倫太郎を取り巻く人々の成長,倫太郎を育てていく周りの人々…。倫太郎のような子供が,倫太郎の周りにいるような人達が今の社会にいて欲しいと本気で思いました。
・「これはスゴイ!!!」
早く仕事を終わらせて先が読みたい!!!と思える久しぶりの作品でした。主人公の小学生二郎、ちょっと(かなり?)変わった父、やさしさの中にも芯の強さを持った母、そしてどこにでもいそうな小学生の妹などなど、出てくる登場人物が皆、キャラクターが立っていて、ぐいぐいと物語に引き込まれていきます。文章も読みやすく、それでいて簡単すぎずといった絶妙なバランスで小学生から大人までエンターテイメントとして楽しめる作品だと思います。ちょっと予定の空いた週末にでもぜひ読んでみてください!読み終わった後には、前を向きたくなるとびきりの心地よさが待っているでしょう。
・「元過激派のハチャメチャな父」
かなりおもしろいです。過激派の事はよくわかりませんが、一郎はかなり頭のいいひとだと思いました。 二郎もなかなかたくましく好感が持てました。 中野から西表島に引っ越した上原家から目が離せません。 というわけで、下巻に進みたいと思います。
・「こんなお父さんは嫌だけど好きだ。」
元過激派の人が、自分の父親だとしたらどうします?税金は払わない、会社には行かず働かない。あげくの果てには「国民やめる!」とまで言い出す父親。そんな父と家族とのやりとりを描いたのが、この小説です。
個人的にはスラスラと読めた小説でした。読んでいてストレスも感じさせず、テンポがいい感じだなと思いました。
思春期の悩みや、家族に対する想いなどが読んでいて共感出来る部分があったりと。父親が本当に面白くて、現代社会に相応しい小説だと思います。
国に対するメッセージなどは、私たち国民が世の政治家に伝えたいことばかりで納得する部分もたくさんありました。
この小説に出会えて本当に良かった。と、思える一冊です。今の社会に不満、国民を辞めたいなーと思っている人にはピッタリの一冊だと思います。
・「おとうちゃん、かっこいいー!」
父も母も、もと過激派?なんていうコピーに、ひるみがちかもしれませんが、ぜひおすすめします。上では、お父さん一郎の言っていることが、すごく理不尽にきこえて、自分のお父さんだったら、二郎と同じくすごく恥ずかしいなぁとおもっていましたが、下巻にいったら、全然印象がかわりました。物事の正しい方向とは、何なのかが、一貫していてまったくぶれない。これがなかなかできません!それが、西表の人々の考え方とかさなっていくと、もともと人間とは、こうだったんだとす思いました。資本主義で、どんどん私利私欲を追求し、平気で嘘をついたり、人を裏切るようになっていったんでしょう。ほんと、お父ちゃんかっこいいです。ついでにお母ちゃんもかっこいいです。
ちなみにこのアカハチの像は、ほんとに石垣島の大浜地区にあるので、ぜひいってみてください。(この夏にいってきました!)
・「少年を見守っているような印象」
05年に刊行された単行本を,文庫化して分冊した上巻です.
型破りな父を持つ家族が,小学生の息子の視点で語られており,序盤こそ,そんな父の突飛な言動に目が行きがちになるのですが,実際には,その父のことがあまり好きになれない少年の成長物語です.
特に上巻は,家庭や学校など日常生活を中心に描かれていて,友だちや女の子のこと,時には大人のずるさやケンカに家出と,さまざまな経験をして,大きくなる少年の姿がなんとも頼もしく,「子供も子供なりに大変なんだ」と言う声が聞こえてくるようです.
また,別れと旅立ちでは少しあっさりしたところがあるものの,それが却って,子供たちの『強さ』にも思え,印象づけられます.
少年の視点,また語り口調ということもあってとても読みやすく,自分の子供のころを思い出したり,大人の視点で応援をしてみたり,読んでいる側が少年の成長を見守っているような感覚になる作品です.
●告白
・「こんなに読後感の悪い小説はあまりない。でもこんなに面白い小説はあまりない。」
第一章ののっけから引き込まれた。自分の愛娘が亡くなった事件を淡々とクラスの生徒に語る女教師。文体も新しい感じ。新しいと言っても、「今風な薄っぺらな感じ」では全く無い。そして、第一章の驚愕のラスト。背筋が凍るとはまさにこのこと。小説を読む時、たいがいは主人公をはじめ、登場人物に感情移入しながら読むのだが、第一章で女教師に感情移入しつつ、ラストの恐ろしさに、感情移入の上限(?)を超えてしまった。
そして、第二章以降、それぞれの登場人物の語り口で描かれるさまざまな真実と心情。でも、もう読者はどの人物にも感情移入できないのではないか。
どの章にも漂う、不条理と悪意。でも、ページをめくる手は決して止められないほど引き込まれる。そして、ラストにはまた残酷なエンディング。なんて悪い読後感。虚無感が心に広がる。でも、面白かったとしか言えない。こんなに引き込まれた小説は久しぶりだ。そして、これがデビュー作とは、さらに驚きだ。
・「確信犯的に歪められた描写から窺うテーマ」
冒頭から取っ付き難いモノローグでしたね。渡辺くんも演出過剰な話しっぷりにうんざりすると、そう言っていますし。 しかし読み進めるにつれ、伏線の張り方とその回収技術には素晴らしいと言わざるを得なくなります。技術的には文句なしです。 そして、立場も思いも異なる語り手たちによる、多方向からの切口によって、次第に明らかになっていく事件の全貌と結末にため息が出ます。
そして何より、愛美さん、桜宮先生、竹中さん、下村家のお姉さんを除いた登場人物が、徹底して誰かへの悪意に満ちているあたりに、筆者の意図を感じます。 それは逆説的に表現されたものなのでしょう。HIVの描写が、確信犯的に歪められているあたりからも窺えます。 ただ残念なのは、それを徹底しすぎると、登場人物の設定上のリアリティーが多少薄れてしまうことでしょうか。もっとも、下村くんのお母さんは、とにかくリアルに描けていると思いましたが。 ちなみに読後感は、扱うテーマと筆者の表現方法上、こうなってしまうのがむしろ当然な気がします。
以上、減点対象はありませんでした。
・「これはスゴい・・・」
小説の中には、「暗い」「残酷」「不快」な話だっていっぱいあると思います。だから、「この話は陰鬱だ。」と批判することは間違っていると思います。「ハッピーエンド」「さわやか」「きれい」なストーリーのみが好きな人、または、告白のような「重い」「暗い」「悲しい」ストーリーが嫌いな人は、読まなければいいだけのことです。
この話の面白いところは、★主役がどんどん変わることで、さまざまな角度から1つのストーリーが描かれている事。これにより、だんだん現れてくる真実が予想外で驚かされる。★登場人物が皆、極端な人間、クセの強い人間ばかりであるということ。どいつもこいつも「ごく普通」の人間ではないのに、やたらとリアルな感情表現、共感してしまいそうになる文章。そのあたりがとても魅力的です。
暗いストーリーでも読める、という人には、そうとう楽しめる内容だと思います。
・「倫理観はどこから生まれるのか」
読後にジワジワと考え込まされたり、ふとした時に思い出したりする小説が、私にとっての「良い小説」なのですが、これはそんな一冊になりそうです。
・「斬新」
各登場人物の独白形式で章立てされている小説。一行目から、その後の何となく不吉な展開が察せられるほどの書き出し。やはり不気味な丁寧語で語られる、教師の独白部分が最も秀逸。斬新という印象はここから来ているのだろう。ラストは救いようがない、誰も救われない、でも少しスッとしてしまったのも事実。
・「陽気で痛快」
銀行強盗4人組のお話.ですが,人を傷つけたりするなどということはありません.計画的に,そして美しく去っていく愉快な人たちです.
4人それぞれが特技を持ち合わせているわけですが,中でも『おしゃべりな男』の個性は抜けておもしろいと思います.
ことあるたびに彼は口を出し,仲間たちとも言い合うのですが,すべてが理屈っぽく,くだらなく,うるさいのですが読ませてくれます.そして,それらを適当に交わすしたり茶化す仲間たち.これらのやり取りはコメディのような雰囲気さえあります.
シリアスな部分もあったりしますが,全体的にはユーモラス.テンポもいいので飽きることなく読むことができると思います.
・「続編が読みたくなります」
伊坂幸太郎氏の文庫第三弾は、四人のギャング(銀行強盗)のお話。「オーデュボン」、「ラッシュライフ」に比べてテンポ重視のスリリングな展開です。
とにかく、四人のキャラクターが個性的で、コミカル且つお洒落な台詞回しは、銀行強盗という本来は悪事である仕業を、不謹慎ながらも魅力的な職業のように感じさせます。
それに加えて、前二作同様、細かく張られた複線が最後見事に一つにまとまるところは、いつもながら圧巻です。
一気に読めて、読後感も爽快。是非、この四人が登場する続編を読んでみたいです。
・「銀行強盗が洒落た職業に見えてくるから不思議だ」
2004 このミス6位2003 文春ベスト10 11位「軽快な文体で良作を書き続ける作家が、ギャング小説?を書くとこうなりました。」という作品。作者が書くと、銀行強盗が洒落た職業に見えてくるから不思議だ。
・「理屈抜きに面白いから読んでみて!」
登場人物は、伊坂作品にふさわしく、一癖も二癖もあるやつばかり。嘘を見抜く天才とか、妙なものを発明する発明家とか。この作品が成功したのは、普通のミステリーのように犯人と探偵(役)の対決ではなくて、銀行強盗対現金輸送車強盗と、結局どっちに転んでもろくなもんじゃない者どうしの対決にしたこと。まぁ、人殺しをしない分だけ、主人公たちの方がましかな。でも、こいつらは妙に仲間の連帯感が強くて、スタイリッシュでなかなかいい奴らかななどと錯覚させる辺りは、すでに連中の術中にはまっているのか。とにかく、理屈抜きに面白いから、読んでみて!
・「何も考えないで読んだほうが」
いい。
まるでルパン三世を思わせる痛快クライム・コメディの傑作。
タイトルについて・・・・。
数人の人が「先が読めてしまう」と言及しているが、そんなことにならないように何も考えないで一気読みをおすすめする。まあそうすれば意外とすごいスピードで読むことが出来ると思う・・・・。
敵と味方の騙しあい、裏切り者は誰なのか?映画化された傑作小説。良くも悪くも映画のようだが、あえて☆×5。
・「圧巻!」
一言、圧巻です。
決してボリュームの話ではありません。それどころか、平易な文章、“今”の言葉で丹念に書かれた物語を追っていると、長さなど全く感じなくなります。私は、第一巻を半分ほど読んだところで『あぁ、こんな面白い小説があと四巻余りしか楽しめないのか…』と残念に思ったほどです。
連続誘拐殺人事件という陰惨な出来事に巻き込まれてしまった人たち、自らかかわろうとするジャーナリスト、そして加害者。性別も年代も立場も異なるさまざまな登場人物の心の中を、時に視点を変え、時に時計を戻し、宮部みゆきの文章は丁寧に綴ってゆきます。
非行に走って両親の気持ちを独り占めしてしまった妹に反感を持つ姉が当の妹の被害の証拠を見た時の悲劇も、被害者の遺族の弱みにつけ込む有象無象の動きも、職場ではこわもての刑事が家庭では女子大生の娘にいいようにあしらわれるほほえましい描写も、それぞれ決して主役とは呼べない登場人物の記述の一つ一つがとてもリアルで、それ故に小説全体のストーリーに引き込まれてしまいます。
そして『模倣犯』というタイトルの意味が明らかになるクライマックスの迫力。この部分は二度も三度も読み返しましたが、いつも鼓動が速まる気がします。
是非、ご一読をお勧めします。
最後に蛇足ですが、文庫カバー全巻の裏表紙に書かれているあらすじと、どうしても目が行ってしまう帯のコメントは決して読まないようにして、本屋さんでブックカバーをつけてもらってください。
・「新潮文庫に苦言」
単行本で読んだが、今回の文庫化で再読。一気に読んだ。内容については、今さらどんな言葉を持ってきても足りない。だから、ここではあえて違うことを言いたい。ったく、なんでこれから読もうとする内容をわざわざ本の裏に書くかなぁ?頭にきます。初めて読む方は、絶対に絶対に本の裏と帯は封印してから読んで下さいね。
・「読書の喜びを感じた作品。」
※このレビューはあくまで「読まれる前の方」へのレビューです。
・「犯罪被害者の苦悩を描き切った渾身の導入部」
私は普段小説を殆ど読みませんが、宮部さんの小説は比較的よく読みます。とは言え、宮部さんの小説の中で私が読んでいるのは時代物や超能力者物が多く、サスペンスは全く読んでいません。もともと推理小説の類が嫌いなこともあり、いくら宮部さんの著書でも、連続殺人が絡んだ陰惨な話を読むつもりは、当初は全くありませんでした。しかし、ページ数がやたら多い割には評判が良く、単行本の発売当初から、友人達に盛んに勧められたこともあり、とりあえず読んでみようとは思っていました。しかしとにかくページ数が多い上、単行本なので持ち歩きにくい。単行本を購入することを躊躇する内に5年ほど過ぎてしまったので、今回の文庫化は非常に有難いことでした。とは言え、推理小説が嫌いなこともあり期待はしていませんでしたが、本書の内容には正直驚きました。当初の私の予想とは違い、本書は決して推理小説ではありません。事件に関わるあらゆる立場の人々の内面を描き切った、社会派サスペンスだと言えます。第1巻では、被害者とその周囲の人々、ルポライター、警察官など、事件に巻き込まれる人々の心が見事に描かれています。しかし本書で一番丁寧に描かれているのは、犯罪被害者の心でしょう。大切な人が殺されたことで、終わりのない悪夢や孤独に襲われる。本来なら責任など何もないのに、自分のせいで大切な人が死んだように思い詰め、自分で自分を苦しめ続ける。家族を皆殺しにされた高校生や、孫娘を殺された老人の、決して癒える事のない傷を背負い込んだ内面が、抑えた筆致で見事に描かれています。凶悪な殺人者の動機にばかり焦点が向きがちなサスペンスが多い中で、犯罪被害者の苦悩を描いた本書は心に強く残ります。本書は第5巻まである超長編ですが、被害者の苦悩を導入部で読者に強く印象付けた第1巻は、本当に素晴らしい1冊だと思います。
・「読み応え度「大」の超大作」
単行本の発表から5年を経て、ようやく文庫化された宮部みゆきの代表作。全5巻の長編ながら読み応えは充分で、時間の経過を忘れるくらいのめり込める。連続誘拐殺人事件を通して、被害者の遺族と加害者、マスコミや警察など事件に係るものを部分として捕らえ、すべてを組み上げていきひとつの作品に仕上げようとする気概を感じる。なかでも登場人物の造形に力が注がれており、加害者にあっては、環境が及ぼす影響や事件に走った経緯というところまで掘り下げて描こうとしている。また、中盤で一端物語が終焉を迎えたかのように見せかけて、新たな局面へ展開させるあたりにも、技巧的なものを感じる。よどみない筆致と、厳格なる作者の意思が感じられる意欲作で、この作品の『現代ミステリの金字塔』という触れ込みもあながち誇大広告ではないように感じられる。読み終わらないと真意がわからない、タイトルの付け方もうまい。
・「傑作」
ドラマ化もされていて、カスタマーレビューも高いので面白いのだろうと思って読んだのですが、医療現場・職場の人間関係・友情・家族・恋愛・人間の生き方、すべてが数十年前に書かれたとは思えない、社会小説の金字塔と呼ばれてふさわしい作品でした。
全5巻どれもけっこう厚いのですが、ストーリーに引き込まれ長さは感じないで読み進めます。けっこう字も大きいです。この作品は3巻まで書かれてからしばらくブランクをおいて4巻と5巻は続編として書かれたらしいので、昔「白い巨塔」を読んだ人はまだ4、5巻の内容は知らないかもしれません。私の母も昔読んだけど3巻までの内容しか知りませんでした。
5巻のラストはこの長編をしめくくるのにふさわしいラストで、読み終わり本当によい本だったなと思いました。このエンディングが好きな人多いと思います。
・「病院腐敗告発ではなく人間ドラマの最高傑作」
絶対におもしろいです。おすすめです。ぜひ読んでください。こんな最高の書を今まで読んでこなかった自分自身が恥ずかしくなるぐらい、おもしろい本です。
「抵抗感」がある人にアドバイス。・文庫本で5巻あるが、字も大きく量も少ないので、すぐ読めるので、「5巻もあるの?」と長さを心配する必要はまったくない。・「どうせ病院の腐敗を描いた社会派小説なんて嫌だ」という方、私も「社会派小説」だと思っていたが、こてこての社会派ではない。むしろ「人間ドラマ」が描かれたおもしろい小説ですので、その辺もご安心あれ。
病院、医療業界の腐敗を描いたものかと思ったが、それほどその点に注力を注がれてはいない。もちろん、到底信じがたい医療業界の実態が明らかにされてはいるのだが、むしろそんなどうしようもない腐敗業界の中で、世渡りしていく「加害者」でありながら「被害者」である医師たちの姿、特に主人公・財前の人生は、反発というより共感を覚える。
・「「白い巨塔」の内部が緻密に面白い」
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・「取材力のすさまじさ」
やっと現代版「白い巨塔」のテレビ化で25年ぶりに再会したのですが山崎豊子という作家の力量の凄さを思い知らされたような気がします。田宮次郎が演じた白いシリーズの乱発で原作は大したことないんじゃないかと、その時代は読む機会を逃していました。自分としてはこれは実に悔しい。
25年前山崎豊子氏はこの小説を執筆するにあたり膨大な時間を費やしたそうです。現代の医学会と当時の医学会、とくに大学病院という閉鎖された社会は当時と変化がないそうです。医学の進歩とはよく人の口にあがる言葉ですが、教授会の選任などは私利私欲が今だに渦巻いている世界だとか。
手術シーンや患者、医者の心理描写はその集大成です。
この小説を読んで違和感を感じるのは貨幣価値くらい。給料の桁が一桁違うのを現代風に置き換えてみれば、新作の小説となんら変わりがありません。財前という姓の野望を持った、たたき上げた医者の波乱に満ちた1人の医者の運命の序曲がページをめくった瞬間に押し寄せ、第一巻から読者を離さないといった書物です。
・「財前の生き方に共感を得られる読者も多いのでは」
助教授時代の、教授の意向に唯々諾々と従うだけが能ではなく、「得難い手術があれば、(教授を押しのけてでも)なんとしてもやる」「教授が、これだけ患者を救った自分を推さないのであれば、決然と決別する」といった、財前五郎の姿勢に、共感を覚える読者も多いのではないでしょうか。当時も今日も、長いものにまかれろ、上司や周囲の意向に汲々としている文化がまだ根強く残っている中で、いわば少数派である財前のその側面に、大いに注目して読んだものです。渡部昇一氏が名著「人間らしさの構造」の中で、人間にはふたつのタイプがあるという意味のことを説いています。ひとつのタイプは、世の中の慣習、上司が何を言うか、親の意向は何かということに盲目的に従って生きるタイプ。もひとつは、行動の価値基準が自身の内面にあり、それに従って生きるタイプ。後者の典型である財前が、その類型である人間が陥りやすい陥穽に、いかに対処して、いかに落ちているかを描いた作品であると言えると思います。鑑みれば、いまから30年前に、この書を読み、時々好きで、読み返しながら、その後30年、財前の生き方に、随分影響を受けことを印象深く思っています。
・「読者を引き込む力強い作品」
今や航空小説家となってしまった元国際線パイロット内田幹樹氏のデビュー作が文庫本化されて再登場。前回出版された単行本よりは読みやすくなっております。また、目次も付いていて物語の流れが分かりやすくなりました。さらに、CAの担当区域が一部訂正されております。特に、事故が発生してからの物語にリアリティとスピード感があり、読者をぐいぐい引き付けるだけの力が作品から感じられます。人物の描写が素晴らしく、読んでいて頭の中にその光景が浮かんでくるようです。作品に古さを感じさせない筆力と作品構成には驚きです。今後も著者の作品を期待します。
・「飛行機の乗客としての安全に対する知識」
ここにストーリーを書くのは避けるべきですが、帯に記載された「エンジン炎上、機長は意識不明」といえば、だいたい想像できるでしょう。そこに別な事件や人間関係が入り込み、話が面白く展開していきます。ストーリーも面白いのですが、飛行機の乗客としての安全に対する知識もリアルに伝えてくれる本です。
・「事件後の展開がおもしろい」
著者の処女作でサントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞作。この優秀作品賞。審査員が決める最優秀でもなく、読者が決める賞でもなく、どちらの選からもはずれたものから選ばれるという実に奇妙な賞。でも、その後活躍する作家が多いらしい。(解説より) そういう意味では著者もそのひとりかもしれない。
・「サスペンス小説?否、トラブルシューティング小説!」
横暴で傲慢な機長、操縦に自信が持てないでいる副操縦士、性格や過去に問題を抱えているCAたち。空という逃げ場のない空間で次々と起こる事故(事件)にそれぞれが必死に対処していく姿を描いた航空サスペンスです。 ちなみに、著者は元パイロット。その経験が十二分に生かされていて、飛行機の操縦シーンや無線のやり取りなどは圧倒的リアリティにあふれています。またコクピットから見たヨーロッパの街や、北の空にひろがるオーロラの描写が息をのむくらい美しく描かれていて、著者の空への愛着が感じられ素直に感動できました。
ただ、エンジンが炎上するまでに200ページ近くかかっていて、そこまでに行き着くテンポが遅く大変いらいらしました。エンジン炎上後は、嬉々として筆を執っている著者の様子がうかぶほどテンポが良くなり、物語りに没頭できましたが、350ページの本書の中で、半分以上経過しないと物語が本格的に動かないというのはどうかと思います。
あと、エピローグはショックでした。事件中に意識不明で全く操縦桿を握っていなかった機長2名の処分。乗客の安全や同僚の手当てなど必死に仕事をしたCPのその後…。飛行機事故の厳しい現実を見せ付けられると同時に、その理不尽さに憤慨もしました。これが現実なのかと思うと、操縦士も楽じゃないですね。
・「内田幹樹氏小説デビュー作」
第14回サントリーミステリー大賞の優秀作品賞受賞作品を文庫化。当時現役パイロットであった内田氏の執筆活動開始作品。 ちなみに、パイロット・イン・コマンド(PIC)とは、フライトの総指揮をとる機長のことをさすそうで第二指揮順位の機長だとセカンド・イン・コマンド(SIC)となります。 スピード感あふれる航空サスペンスで、かつ非常に緻密でリアリティーあふれています。 著者の本来の意図としては、安全に関する誤解や、現場からの声を分かりやすく伝えたいということだそうですが、物語としてもなかなかまとまっていると思います。
ただし、以下の2つの理由により☆1つ減点します。 1.多くのスチュワーデスさんが交互に入れ替わり立ち代り登場するので、どの人がどの人だか、やや混乱します 2.個人的に、主要キャラのうち一人の結末に少し納得いかない(笑)
・「なんとも形容しがたい」
桐原亮司と西本雪穂。二人が小学生から大人になる十九年間の物語。高度成長末期からバブル経済の時代まで。彼らが歩む人生の周囲では、次々に不幸になる人々がいる。人々を絶望の泥沼に蹴落としながら、雪穂は睡蓮のように美しく咲き誇っていくのだ。 二人の主人公と読者の間には、レースのカーテンのような物が揺らめいていて、その姿ははっきり見えない。 特異な小説である。主人公二人の心だけが、一切描写されていないのだ。その周辺でもがく人々の主観を介してしか、亮司と雪穂に辿りつけない。
テレビドラマに引き込まれて、一気に読破した。過去にドラマ化不可能などという形容の小説は幾多もあった。しかし、本当に不可能な小説に出会ったのは初めてであった。 亮司と雪穂という主人公の人生には、殺人事件、レイプ、失踪、ハッカー犯罪などの事件が溢れている。最後のピースがはまった時、それらが純粋な魂から溢れ出た「果てしない悪意」だと読者は知る。 この小説と、放送が開始されたTVドラマとは、全てが違う作品になっていくだろう。小説だけの読者は、雪穂たちから、究極の悪意の快感を覚える。TVドラマだけの視聴者は、絶対的な純愛に感動するだろうからだ。そして両方を知った者は、鏡のように全てが正反対の、原作とTVドラマの特異なコントラストにくらくらと酔う。 小説とTVドラマが意図的に乖離せざるおえない作品。 昔、映画の「風と共に去りぬ」観た。その後に原作を読み、映画版のできの悪い模造品に感じた。これとは対照的に、百夜行は原作と映像作品が別個に独立した作品となっていた。両方とも鑑賞される事を強くお勧めします。
・「活字でこそ深く味わえる物語」
文庫版を解説している馳星周氏は本書をこう評している。「人間の暗い側面、邪な断面、人間のそうした性質を助長する矛盾した世界。それを描くのがノワールだと定義したならば、『白夜行』はもはや、ノワール以外の何ものでもない」そう、「白夜行」は紛れもなく上質のノワールなのである。暗黒街やマフィアが登場する作品ばかりがノワールではないのだ。
20年にもおよぶ亮司と雪穂のダークで沈鬱な物語。2人の人生には常に不気味な犯罪が見え隠れする。しかし、読者は2人の心の闇、心の傷をうかがい知る事はできない。小説には2人の内面はいっさい描かれていないのだ。冷たく、重い物語だ。出口がなく、救いのない物語だ。読後の爽快感はない。だが間違いなく後をひく傑作だ。
この名作がドラマ化されるという。小説では2人の内面描写がなく、余計な説明もないからこそ、深い読後感を味わえる構造になっているのだ。陳腐な純愛ドラマに貶められないか、非常に心配である。
この重い世界観は活字だからこそ味わえるものではないだろうか?表現手段が違うのだから、ベストセラー小説を何でも映像化するのは反対だ。活字だからこそ表現できるものもあれば、映像にしか表現できないものもある。「白夜行」は活字でこそ生きる物語だと思う。
・「日の当たらない青春を生きた大河小説」
2回読破しましたが、2回とも変わらず楽しめました。舞台が私の住居と近い東大阪であることもひとつの要因として、のめりこみました。二人の人生の中で描かれている社会現象も懐かしく、共に時間をすごしているような錯覚すら覚えます。
懺悔のためか、決して太陽の下に出られないような人生を選び、愛するがゆえに影から守る。決してハッピ―エンドにはならないと分かる半生を生きるには勇気、絶望どちらが必要なのでしょうか?
著者の最高傑作のひとつであるのみならず、日本のサスペンス小説の宝であります。
・「じっくりと読ませる悲劇」
仕事の合間を縫って、2日間ほどで読み終えました。最近この本を手にした多くの方と同様、私もドラマを見て、関心を持った一人です。 (売り切れの書店ばかりで大変でした)
読み終えて、真っ先に思ったのは、「ドラマを見る前に読めばよかった」という後悔でした。
ドラマの最初のシーンが本のラストにあたり、更に徐々に浮かび上がってくる二人の関係が、ドラマの初回で既に描かれてしまい、読みながら考えていく楽しみが減ってしまいました。また、読みながら俳優さんたちの顔が浮かんできて…(苦笑)
雪穂と亮司のふたりを決して同じ場面に出さず、出来事と周囲の人間の発言だけでつながりを浮かび出させていく…笹垣の口を通して描かれる解釈すら真実なのか?
あくまで最後は読者それぞれで彼らの人生を考えろ、というのが作者の狙いなのでしょうか。
確かに雪穂には人間の「情」というものが微塵も感じられません。心を失った彼女が、分身である亮司まで失ってしまった。美しいただの抜け殻であり、これから先の彼女の人生は、延々と続く悲劇でしかないでしょう。
全く救いがない物語ではありますが、救いのない悲劇をここまで描ききったことは見事としか言いようがないと思います。
最後に、この本とドラマは、全く別物として、それぞれ楽しんだほうがいいと思います。
・「読み取ることが大切。」
書評を読んでから小説を購入し、読みました。主人公の二人からの細かな視点は、この小説に必要では無い、と私は感じました。
なぜなら、たくさんの登場人物たちの複雑に絡み合った関係。過去の事件の真相を探る上で知りえる情報。二人の台詞。事細かに描かれており、たくさんの章があって大変だとは思いますがそれらをしっかり読み取ることで、二人の関係や想いを感じることは、できるからです。
この小説に、「雪穂はこう思った」「亮司は雪穂に対してこうこうこういう気持ちだった。」なんて視点があったら、野暮だしおもしろくはありません。
それから、ネタバレになるので詳しくは書けないけれど、二人がそれぞれ違うシチュエーションで、違う相手に向かって言う、同じ意味の言葉があります。それが唯一、二人の関係を示すものとなるのではないでしょうか。
この小説を読み終わったとき、私は村上龍氏の「コインロッカー・ベイビーズ」を読んだときと同じような気持ちになりました。生きるため、自分を守るため、誰かを守るためのエネルギー。様々な策略が感じさせるダークな部分。そういう点が共通してるのではないでしょうか。
素晴らしい小説だと思います。
小説の内容とは無関係だけど、文庫本は上下に分けて欲しかった。。。あのページ数の文庫本は手に持って読むのに向いてません。
・「満足。続編待たれる。」
「白夜行」は随分前に読み、詳細までは思い出せない。しかし、読中のずっしりとした心地よい重さを覚えている。
・「書評は最後に読みましょう」
文庫本で一気に読みました。物語の中盤で、物語のナゾの一つである美冬の正体について、「分かった!」気になっておりました。物語の展開は白夜行とかなり似ており、面白いけど、同じやな、とさえ思っておりました。
が、書評を最後に読んで、さらに伏線が隠れていたことに気付き、著者のなぞかけが、よく練られていることに正直感嘆せずにはいられませんでした。この書評は、ハードカバーにはないようなので、私のように伏線に気付かないままの方もいらっしゃるかもしれません。
ぜひ書評を最後にお読みになってください。そして、できれば白夜行を読んでから本作を読まれると、より一層楽しめるのではないかと思います。
・「最高に面白かったです!」
皆さんと同じく最初はこのとんでもない分厚さに怯みましたが、一気に読みました。というか読まずにはいられませんでした。随分前に白夜行も読みましたが、まさしく続編だと思います。私は白夜行よりもこっちの方が面白かったです。
以降ネタバレになりますが…
雅也は、きっとわざと暴発するように銃を作ってたんですよね。「最高傑作の銃」というような言葉がありましたが、「1発でお互いを葬る事ができる銃」という意味なのでは。美冬を殺して自分も一緒に死ぬつもりだったんだと思います。しかし加藤がやって来て…結局、雅也はやっぱり最後まで美冬を守ってしまったんですねえ〜…引き金をひけば、自分も死ぬとわかっていながら。
美冬にはホントに背筋がぞっとしてくる感じはありますが、面白かったです!是非とも続編が読みたいです。
・「白夜行のドキドキが再び!!」
幻夜は白夜行の続編だ。でも話は白夜行を知らなくても違和感なく読むことが出来る。抽象的な文体でアレコレ読者に想像させる文体は相変わらずでその言葉や文章の意味に気づいたときは"してやったり"というカンジで本当に楽しい。しかしその快感を読者に与えるのが目的といわんばかりで作者に一歩上から見られているようなカンジで意地悪な作者の性格が文章に表れている(いい意味で)今回は相方の雅也の心情や実際雅也が行った数々の仕業がわかるようになっているので白夜行より話全体がわかりやすくなっている。それにしても美冬は凄い。前回よりも計算高くなっている気がする。もはや敵はいないかのようだがこんなに美人で色気のあるしかも頭の回転が速い美冬だから敵がいないのも当たり前か!?分厚い本なのに一気読みしたくなる中毒的ミステリー小説!!!続編が早く見たい!!!
・「美冬の人生とは?」
白夜行の続編。また分厚い本だなぁ〜と一瞬躊躇しましたが、そんなことを考えたのは初めだけ。ページをめくる手も止まらずスラスラと読み進めてしまいました。主人公は阪神淡路大震災の直後に衝動的に殺人をしてしまった雅也とその現場を目撃していた美冬。
白夜行では主人公であるにも関わらず雪穂と亮司の心境は一切語られなかったため二人からは血も涙もない冷酷な印象をうけました。(ドラマでは雰囲気が違うかな?)でもこの幻夜では、主に雅也の視点から物語が進行します。そのため美冬の呪縛から逃れることのできない雅也の苦しさや葛藤、孤独さが手に取るように分かりました。贅沢でなくてもいいから、平凡な幸せな人生を送りたいと望むのに反し、一方で美冬にどうしようもなく惹かれていく。そして美冬に指示されるがままに数々の悪行に手を染めていく。
美冬はまさに魔性の女というべき存在でしょうね。美冬の表の世界で頂点までのし上がっていこうというとてつもない野心と、徹底した冷酷さ。そして懐柔の巧みさ。最後の最後まで美冬の存在は謎の暗いベールに包まれています。
前作の白夜行を読んだ方ならこの幻夜とのつながりがつかめるかと思います。読まれていない方でも独立したひとつの作品として楽しめますよ。続編が今から待ち遠しいです。
・「伊坂ワールド」
小説の中だからこそ作れるミステリーという感じ。
現在と二年前のストーリーが交互に展開していって、それまでの不思議な行動や、些細な会話も全部納得できて、ストーリー的にもちょっと感動できるラスト。
伏線の張り方がさすがだなと思いました。なんとも言えない後味を残すのがすごい。
・「二年前と現在との交錯」
引っ越してきたアパートで出会った青年、河崎に、本屋襲撃の計画を持ちかけられる僕。その一方で、二年前の出来事が、河崎の元恋人、琴美を通して語られます。
現在にも二年前にも登場するのは河崎。“二年前”は、河崎にとっては終わっておらず、現在も続いています。本を読み続けていくうちに、現在と二年前がつながってきて、話の全貌が明らかになります。所々に話の謎を解くキーワードが散りばめられているので、細部にまで注意をして読みたい本です。
・「カテゴライズに困る本」
ミステリーなんだろう。ミステリーなんだと思う。
でも、印象に残るのは人物の心。
人物の心をこれだけ淡白な文章で表現できるのは凄い。私の場合、人物の心を追って読んでいたので、結構読後はもやもやした。人の幸せとか不幸ってのは、その人物にしか分からない事であって、現実なんて、そんなもんで、そして自分は生きていて・・・・・・
そんな感じでもやもやした作品。読後は悪かった。もやもやしたし。でも、印象に強く残る作品。
好き嫌いではなく、なんかよく分からないけど、凄いなって思う作品。読後の印象が悪いのに星5つあげたくなる作品。
でもって、読後の印象はいまだにもやもやしてるんですけどね・・・
・「河崎、ドルジ、琴美 3人の切ない物語」
物語は現在と2年前が交互に繰り返され進んでいきます。 それぞれの語り手は椎名と琴美。
現在の場面の冒頭で 椎名は進学のために引っ越してきたアパートで初対面の河崎に書店を襲う計画を持ちかけられます。
2年前の冒頭では琴美とドルジがペット殺しの犯人と遭遇する所から始まります。
一見まったく関連性のない2件の事項ですが、読み進めていくうちに深い関連性があることがわかります。(もちろんここでは書きませんが・・・)
伊坂幸太郎の作品を初めて読みました。読みやすい文体で、内容もよく練られていて飽きも来ず一気に読み終えました。 また好きな作家が一人増えました。
・「まず読むべし」
2005年度版 このミス2位。2004文春ミステリーベスト10で4位。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。
文句なく、2004年を代表する一作品である。 作品はいきなり、河崎と椎名が書店を襲う場面から始まる。わざわざ書店を襲って、盗むのは「広辞苑」一冊だけ。 この「なぜ?」から作品にグイッと引き込まれる。作品は「2年前」と「現在」の話が交互に進み、さまざまな謎が最終局面で明らかとなる。これまでの4作品同様、作者のセンスある文章を堪能しながら、本作品を楽しんで頂きたい。 作者自身、「ミステリーでは伏線の張り方が難しい」とインタビューで答えているが、確かに本作品でも、その点に若干の甘さがみられる。この作品の場合、特に先にネタが分かってしまうと作品のおもしろさが半減するため、レビュー・書評等を読むことなく、本作品を読み始めることをおすすめする。
・「数学って面白い」
私は今中学生で、小学生の時から算数が嫌いでした。もちろん数学も。ややこしい計算で頭がいつもこんがらがっていました。この本は母が、数学が嫌いで本を読むのが好きな私にピッタリと言って買って来てくれた本です。初めは数という字を見ただけで嫌だったけれど、話は勉強の漫画よりも面白く、今じゃ数学が好きになれました。ややこしく考えるからややこしくなる。簡単に考えれば良い。私の夢の中にも、悪魔に出てきてもらいたいです。数の悪魔というより、私にとっては、『数の天使』です。
・「算数の面白さの入り口」
小学校の算数、特に低学年のころは覚えることと訓練が多く面白みが少ないです。娘が算数嫌いにならにように、「算数は本当は面白いんだ」 といことがわかるような本を探していました。この本は正にピッタリの本でした。娘は10歳を待たずに読み始め、すっかり算数好きに。
内容を真に理解しているわけではないでしょうが、興味さえ失わずにいれば、それらは中学・高校。。。と一つづつ理解していけば良いと思っています。
・「数で”遊ぶ”!?!?」
この本は誰でも簡単に読めて、誰でも楽しめて、誰でも数に興味を持てる本です。僕はこの本で数の素晴らしさを知りました。
この本を読んだ時は、別に算数や数学が嫌いだったわけではないのですが、特に好きではありませんでした。でもこの本を読むことで、いかに数というものが興味深いもので、ましてや今まで
「勉強と日常生活のエキストラ意外で使うことがないだろう」と思っていた数で、 <”遊べる”>なんて思ってもみませんでした。少し大げさに思えるかもしれませんが、マジです。学校でも友達に勧めまくってます。(現在中2本を読んだ時は小6の受験勉強中でした)
・「おもしろいぜー」
算数の嫌いだった人。いや数字の嫌いだったひと、数字って美しいんだよ。ルールって、綺麗だよ。
・「まーなんですがーー数学ぎらいです」
イラスト、配置、表紙など体裁は概100点。おもわず詰め込み世代なので手にしてしまったが12夜ではとうてい足り無い。もっと時間が必要だ。 つんどく。では忍びないので、少しずつ読んでいこう。もっと頭の柔らかい読者のみなさまには、たいへん読みやすくきっと役にたつとおもう。わたしはせめて算数を脱出して数学の域に達したいとおもっています。 ぜひ一読推薦いたします。
・「いつまでも好きな絵本」
子どものころに読んで大好きで忘れられなかった絵本。自分に子どもができたとき、真っ先に買った絵本の中の一冊です。楽しくて愉快でちょっとしんみり、そして最後はあたたかい、子どもも大喜びで何度も読みたがりますが、大人にも楽しく読める絵本です。
ひとりぼっちの子象のぐるんぱが自分に合ったお仕事を見つけるまでのお話ですが、なかなかうまくいきません。でも、そのうまくいかない様子の絵がとても愉快で楽しくていいんです。特に巨大ビスケット・・子どものころ味見してみたいと飽きずにながめたものです。娘も同じでした。。。
最後に見つけたピッタリのお仕事はひとりぼっちだったぐるんぱにとってにぎやかであたたかい最適なもの。ラストの絵でそれまでの失敗作が子ども㡊??ちにとっては実に魅力的なものに・・・ほっとして楽しめる絵本です。
・「『子どもに伝えたい大切なこと』が詰まっています。」
ひとりぼっちの大きなゾウがお仕事をする為に出発します。ビスケット屋さん、お皿屋さん、靴屋さんと次々お仕事をしますがどこで作ったものも大きすぎて売れない為「もう けっこう」と言われてしまいます。そんなゾウが出会ったピッタリのお仕事は・・・。イラストがとても楽しくかわいいです。出会った全てのことには意味がある。誰かに必要とされる喜びや、絶対に必要とされる場所があることを語るのにいいきっかけになりました。『子どもに伝えたい大切なこと』が詰まっている絵本です。(読み聞かせた時の子どもの年齢:3才&5才
・「自分さがしの物語」
小さい頃夢中になった絵本の一つ。
特に、ぐるんぱが大きな靴をつくっている場面と最後の場面で大きなお皿をプールにして子ども達があそんでいる絵が大好きだった。
大人になって、ふと書店で手にしてぱらぱらめくってみた。懐かしい。でもそれだけじゃない、気づいた。昔はわからなかったけどこれはぐるんぱの自分さがしの物語なんだ。
ぐるんぱは初め自分の生きる意味を見出せない。そこへまわりの人が手をさしのべて、最初の一歩を踏ませてあげる。
そのあと、ぐるんぱはいろいろなことを体験していく。失敗を繰り返して、それでも次へすすんでいく。最後にぐるんぱは気がつく。今までやってきたことは決して無駄じゃなかった。全てに意味があったんだ!
うーーん、なんか人生がこの絵本の中にありますね。深い!うそだと思ったら読んでみてください★
・「まいにちのえほん」
子供のときに大好きだった本で、もうすぐ三歳の息子もそろそろ理解できるかなあと新調したのですが大ヒット。ほとんど毎日読んでいます。「ぐるんぱ悲しいの?」「おふろにいれてもらったの?よかったねえ」というコメントを毎日返してくれます。そして、最近のくちぐせが「もうけっこう!」。普通の生活のなかで言われて、どこで覚えたの?ときいたら、「ぐるんぱが、もうけっこうって」・・・なるほど。内容も繰り返しがあるので、小さい子にもわかりやすいのかもしれません。いまでは親子で大好きな本です。
・「子供の頃の気持ちを想い出しつつ」
子供が生まれて、(たぶん)四半世紀ぶりにこの本と再会しました。
読んでいると、子供のころに読んだ時の気持ちが、おぼろげながらも甦るような気がします。
ぐるんぱの可愛らしさ。ダメ出しされた時の胸の痛み、そして「ぐるんぱの幼稚園」への憧れ。。。
ぐるんぱの幼稚園には、真剣に通いたいと思っていたことも想い出しました。広くはない空間に、楽しさがたっぷり詰まってて・・・(子供の頃って、1つのモノにいくつもの仕掛けがあるようなものにすごく惹かれませんでしたか?)。その中にいる自分を想像したりしてたような気もします。
子供の想像力を掻き立てる、楽しい素晴らしい絵です。ストーリーも、大人の目からは優れていると感じますが、私の場合、この本は「ぐるんぱの幼稚園」という、子供にとっての楽園を創造した絵の素晴らしさで強く記憶に残っています。
・「文学のよろこび」
この本の前に日本のかなり有名なベストセラー作家のものを読んでました。が、<わたしを離さないで>を読み始めたトタン(トタンですよ)あまりの違いにグラグラしてしまった。圧倒的な創造、構成、描写。 ヘールシャムそして施設を取り巻く風景が<よみがえった>感を抱いてしまった。 SFちっくな設定はまったく気にならないどころか何故か当たり前のように頭にはいってくるから不思議だ。 読み始めてから閉じることができず終盤を前に致し方なく倒れるように寝てしまい翌日通勤の電車で読み終えた。落涙しそうになったが懸命にこらえた。胸の中央に集まってくる感情、感動。 素晴らしい翻訳をされた翻訳者に感謝。 久しぶりに文学の喜びを享受した。
・「第三部を読み進めながら、涙が止まらなかった。」
単行本が出版された時から、気になっていたのですが、本の重さとたぶん内容も重いのではないかと考えて、手が出ませんでした。今回、文庫になったので、いつか読むつもりで購入しました。実際、読み始めは頭の中に、様々な疑問と「もしかしたら?」という恐ろしい予測が渦巻いて一章ずつ辛抱して読み進めるのがやっとでした。第一部の後半、「やはりそういうことだったのか」ということが分かってからは、次の展開が知りたくてどんどん読みすすんでいきました。第三部に入ってから読了までは、読むことを止められず、悲しいとか感動したとかそういった感情の動きが一切なかったにも関わらず、自分の眼から涙があふれて頬をつたっていくという初めての経験をしました。読み終わった後、もう一度、苦労して読んでいた第一部を読むと、そこには結末を知ったからこそわかる精緻な表現があり、作者の構成力に感嘆しました。柴田元幸さんの解説に「作家が想像力のなかにとことん沈潜したその徹底ぶりによって、これまでのどの作品をも超えた鬼気迫る凄味と、逆説的な普遍性をこの小説は獲得している」とありますが、そのとおりだと思います。「この世に生を受けることの意味」と「おそらく罪悪感から生じるであろう中途半端な正義、あるいは理想主義の、残酷」を深く深く考えさせられた作品でした。
・「豊かな語りもまた切ない」
非常に抑制された静かな語りですね。語り手キャシーの豊かで温かい感性が、幼い頃のヘールシャムでの生活から、その後の日々を生き生きと語っています。人と人との交流がとてもリアルで、穏やかです。その日常の中に、ちらりちらりと謎めいたものが示されますが、決してあざとすぎることもなく、自然にひきこまれていきました。このキャシーの豊かな感性そのものも、作品の中核に繋がるものなのだなと気づかされました。作中での「感性豊かな絵画作品」と同様のポジションなのではないでしょうか。 非常に特殊な設定の物語ですが、ここに描かれている「抑圧するもの」「利用されるもの」「差別的感情」「死生観」などなどは、普遍性を持っていると思います。
・「完全な虚構のなかのリアリティ」
通常小説とはフィクションとは言うものの、その一つ一つの部分はリアルに基づいて構成される。登場人物の職業(ステータス)もその一つだ。たとえば作家やフリーター、学生など現実に存在する職種、かつ作者自らの経験や取材に基づいているため、そこにはかなりのリアリティがあり、読者は場面を思い浮かべ、登場人物に感情移入しやすくなる。しかしこのフィクションはそのような類の読者の共感を拒んでいる。というのも、「介護人」という職業は現実には存在しないからだ。では「介護人」とは何か?
この物語は言ってみれば簡単だ。臓器提供のために作られたクローン人間が、自分たちなりに己の運命を考え、それを受け入れながら我々と変わらない青春を謳歌していた。という話。そして介護人とは、どうやら自分より先に提供者になった者の世話をするという仕事のようだ。もちろん存在しない介護人経験者に取材するわけにもいかず、このような完全なるフィクションが一人の人間の頭の中で生まれたということは、まさに奇跡としか言いようがないだろう。
いきなり「クローン人間」など出てきて、しかも出版社も早川書房だから一体どこのSFだ?と驚かれたかもしれないが、英国きっての作家だけあってテーマは非常に「文学的」になっている。この小説のキーワードは「運命」と「奉仕」だと思う。どうせ抗っても抗いきれずどうしようもない運命なのだから、受け入れた上で他人のために生きようじゃないか、という現代の都会人に欠けたものをこのようなカタチで提示しているようでもある。そういう意味で、共感しにくいはずの登場人物のはずがごく自然に共感でき、繰り広げられるリアリティに圧倒される。
カズオ・イシグロ独特の静かで抑制の効いた文体でどこかミステリアスな雰囲気をかもしながら、物語は現代から過去の出来事を想起し、自然に現代に戻りまた昔を思い出すという、これも作者が得意とする構成により進んでいく。文庫版には訳者あとがきも付いており、いかに丁寧に訳し上げられたかが分かる。
こころの表面的な共感や感動ではなくて、たましいの奥深いところを掴まれて震わされる傑作です。
・「受け入れ方☆」
どこかミステリアスに描かれていて、読むに連れてこの小説の中の世界が段々と見えてくるようになっています。 それは私達の住む世界と異なる世界ですが、同時にその世界は私達の世界に重ねられるべきものであり、登場人物達は私達と同じ側面を持つのだと思います。形式はSF的でありながらも、彼らの姿は何よりも現実感を持って訴えかけられるものがありました。
これは登場人物達が、(極端に言えば私達と同じように)限られていて、抜け出せない現実があり、でもその中に何かを見出し、また受け入れようとしているからこそではないでしょうか。 彼らは決して諦めているのではなく、投げ出しているのでもなく、たしかに生きています。自分ではどうにもならないその運命、その社会と平行して自分の生を紡ごうとしているのが感じられます。
そしてこの小説を支えるひとつに文章の良さあると思います。描写や洞察力が素晴らしいのです。誠実に抑制の効いたそれは、この登場人物達を表すのにぴったりと重なります。
そうして描かれるエピソード群は細密でリアルな人間の営みであり、社会の光景ともいえるでしょう。(もしかしたら現実でも意識出来ないくらいに)人間の息づかいのひとつひとつまでが伝わってきます。そしてやはりラストシーンにかけての姿は本当に、本当に痛切なるもので、まさに胸がいっぱいになり言葉を失ってしまいました。やりきれない哀しみとまた苦しみを抱かずにはいられません。もうたまらなくなってしまいます。大袈裟ではなく、読み終わってもずっと何かヒリヒリしたまま、何も出来ないでいたほどでした。
今思い出しても、自分が何かを感じてるのがよくわかります。凄く「残る」作品だと思います。
・「タイトルの意味がわかったときゾッとしました」
犯人はわかっている。でも、その人物には鉄壁のアリバイが・・・。どうしてその人物に犯行は可能だったのか・・・・。緊迫感やスピード感は少ない物のただ一つの答えを追い求めるだけのシンプルさで読者をグングン引っ張ります。
最後の方でタイトルの「救済」の意味がわかったときはゾッとしました。通常ではありえないようなトリックを可能にさせたのは犯人の凄まじいまでの執念・・・。綾音さん、宏美さん、潤子さん・・・女心の深みを解き明かすには、やはり内海刑事の女性ならではの発想は不可欠だった。はじめはいつか映像化するために無理やり登場させたキャラに思えたけど、内海刑事なしではこの事件の本当の意味での解決は不可能だったかも!?今作の主人公はあくまで女性たち。トリックの不可能さに驚くよりも、女の情念の深さを読むべき作品だと思います。
・「待望の長編ガリレオシリーズ第2弾―<執念>という言葉が鍵概念か?」
何やら神秘的な響きを漂わせているタイトルだ。本作では、前作の長編『容疑者Xの献身』では登場しなかった内海薫刑事(ドラマではお馴染み)が、なかなかの直感と洞察力を発揮している。湯川、草薙そして内海という3人が中心となって難解な事件の解決が企図されてゆく。帯の表示から犯人は「女」であることから、内海という女性刑事を加えたのだろう。事件を解決するという共通の目的を有しつつも、草薙と内海という刑事間の視点の相違(それは男性と女性の相違に帰着する)も本作の注目ポイントの1つ。ガリレオこと湯川の活躍はむろん当然だ。
レビューで詳細を語ることは野暮の極みだが、1つだけ指摘すれば、思わず「はっ」とさせられるような驚きは、前作と比較してやや乏しかったように思われた。とはいえ、驚異的ともいえる犯人の<執念>を痛切に感じずにはいられなかったし、それは草薙ら刑事にも、湯川にも妥当する。著者自身の<気迫>もまたそうである。夫と妻のあり方、夫婦にとっての子供の存在意味、結婚の目的など、決して一筋縄ではいかないテーマに真正面から挑んだ、文字通りの力作だ。前作が取り組んだ<愛>という人間にとっての普遍的価値とも本書の内容は密接に関連している。そうした人間的で情感的な問題に対して、あくまでも客観的で合理的な根拠に基づいて事件を解明しようとする湯川の心的姿勢とのコントラストが読者をまた惹き付ける。あまりに当然のことで恐縮だが。
なかなか読む手を休めることができなかったが、多くの読者も同じ経験をされると予想する。そして湯川=福山雅治、内海=柴咲コウであることを想起して、本書を読み進めるだろう。もはやガリレオシリーズは国民的作品であるといっても過言でない。しばらくは第2弾の余韻を噛み締めて、次なる将来的な第3弾の作品の誕生を心待ちにしたい。
・「タイトルに深く溺れる」
ガリレオシリーズの2冊目の長編。 この長編のために内海という刑事は登場したんだなと必然性を感じました(ちなみに、内海刑事登場は「ガリレオの苦悩」1話。しかも、ドラマより発表は前です。この短編があったからこそ、ドラマの内海が登場したんだなと思います)。内海刑事が女性であることというのが、大切な要素なんですね。 ガリレオシリーズはキャラクターがしっかり認知されている分、読みやすさにつながっています。ちなみに、短編もののように、トリックが科学的で何をいっているのか難しくてわかりづらいということはないかと思います。難しい用語も多少出てきますが、気にしなくても大丈夫です。 他の人も書いていますが、タイトルの意味がわかったとき、その深さに溺れます。この深さがこの作品のポイントですね。 ドラマを見たことない人、容疑者X読んでない人でも、読めます。うなってください。
・「「救済」の意味」
帯に書かれている「完全犯罪」の文字に心躍らされながらも、「期待しすぎると裏切られたときの失望は大きいぞ」と諌めつつ読みました。
まさに完全犯罪!このトリックはそれ自体も素晴らしいのですが、巧みな叙述トリックにより更に解明を困難にしてます。
必死に考えたにも関わらず全くわかりませんでした。逆にわかる人がいたら素晴らしいと思います!
トリックが明かされる場面では唸りました。そして、タイトルにもある「救済」の意味が最後にわかります。
文体も今まで通り読みやすく、ストーリーもシンプルかつ面白いので読むのをおすすめします。
・「女の情念」
レビューでトリックが・・・とおっしゃっておられる方々は、この作品の本質を見誤っているように思われます。読後に「女って怖いな」と思わせる犯人の情念!これこそがこの作品のテーマだと思います。
・「これは凄い。。」
涙の無い感動。読了後 呆然。悲壮感、喪失感、虚無感、孤独感、絶望感。なんとも形容し難いブルーな感覚に陥りました。「うわぁ、マジかんべんしてよもう。こんなのって。。」という気持ちです。男って、心が弱いからせめて体だけは強くできているのかも。男にはちょっとつらい。女性にとってはどうなんでしょう?
自分が主人公の立場だったら耐えられそうにも、そして立ち直れそうにもないです。実際読み終わってブルーな気分からしばらく立ち直れませんでした。終わってからもう1度クライマックス付近を読み返すことでしょう。そもそも誰が悪いのかと問われたら、誰も悪くない様な、誰もが少しずつ悪い様な。最善の選択なのか、仕方無しなのか、ずるさなのか。
そして、ではどうすれば良かったのか、と考えずにはいられません。ラストで解るタイトル「秘密」の理由。必読です。
・「とにかく読んでみて損はない」
絶賛する人の多い一方、感情移入できない人や、しすぎて反感を覚える人も存在する本です。私自身は、沢山本を読む方ですが、読み終わった後、20分程「呆然」としてしまう本に初めて出会いました。
意外な展開だけでは呆然とはしません。主人公たちの「想い」に衝撃を受けて、呆然とするのです。
身近に妻や夫や娘のいる人、その人を大切に思っている人ならば、素晴らしい作品だと素直に思えるのではないでしょうか。
夫婦というものが、恋人関係のような単純なものでない事を知っていれば、なおさら感じ取れる部分や場面が増えることでしょう。
・「だつりょく【ややネタばれ】」
ああ、脱帽。というか読後の脱力感がすさまじい。とんでもSF展開だが、いたって真面目に現実的問題を扱う。直子はどう生きればいいのか。そして2人の関係はどうすればいいのか。年齢を重ねていくにつれ、その問題は深刻になる。物語は夫・平介の視点から描写されるのだが、男の嫉妬を描くのが非常にうまい。リアルすぎる。男の自分から見ると、やややり過ぎの感は否めないが、気持ちはわかり過ぎるほどわかる。
さて、この作品はこの主軸だけでは終わらない。事故の原因。そしてそれにまつわる人々の物語。これらの要素がメインの話がひと段落した頃に、タイミングよく入ってくる。飽きさせない展開。これがこの作品に厚みをつけていると思う。さすがです。
そして衝撃のラスト。感動した。感動したけども、釈然としない。
作者の意図通りであることは重々承知だが、どうしても平介に感情移入してしまって、直子の行動に納得がいかない。ラストの決断に、平介のためという気持ちはあったであろうが、正直自分のための行動に見えてしまう。
この結末以外にも他の手があったはずだ。と思わざるをえない。具体的に挙げろと言われても困るが。
要するに、俺は直子に平介を選んでほしかったんだ。別に、直子も考えた末での行動なのはわかってる。ただ、平介を選ばなかった。その一点だけが、ひっかかる。
これは男の私だからこその感想なのか。女性が読むとまた違った印象を受けるのかもしれない。
・「男(父親、夫)、女(母親、妻)、愛、絆、家族、嫉妬、宿命、未来・・・。」
江戸川乱歩賞受賞作『放課後』から14年後の1999年に日本推理作家協会賞を受賞したあまりにも有名な作品が本書『秘密』である。前作のラストがあまりに衝撃的であったせいか、本書も最後の最後で「何かがある」という私なりの「構え」が必要であった。
亡くなったと思われた妻の心が娘の肉体に宿るという不可解な事態に戸惑いながらも、平介と直子はこれまで通りの生活を始めてゆく。肉体は事故当時小学校5年生であった娘である以上、当然のように彼女は成長してゆく。彼女は「女として後悔させたくない」という強い決意から、中学受験と高校受験を果たし、そして最終的には医学部に進学してゆく。夫はその成長を静かに見守りながらも自分には決して与えられない(過去の)時間=青春と若さに嫉妬を募らせてゆく。夫婦であっても普通の夫婦ではない。そこに男としての痛いほどの苛立ちや葛藤を覚えずにはいられない。
ラストの部分に至るまでの筆致はこうしたさまざまな人間の本性・感情を生々しく描き出し、正直なところ平板な印象が拭えない箇所がなかったといえば嘘になる。しかし、である。やはり東野圭吾は卓抜した手法と構想力を有していることを遺憾なく発揮してくれた。382頁以降からだ。心は妻の直子だったところに、娘の藻奈美の心が蘇ってくるのだ。そして二人ではあるが、三人で生活をしているような奇妙な家族生活が始まる。以降のストーリー展開は書かないほうがよい。本書のタイトル『秘密』に投影された作者の真意も読者自らが味わうべきである。
とはいえ、一言だけ記しておきたいのは、やはり覚悟を決めたときの直子の深層心理である。むろん複雑であったに違いない。しかしそれは彼女の「宿命」であり「使命」でもあった。彼女の心はいつまでも愛する夫である平介を見守り続けるに違いない。そしてそれを悟った平介の心のなかにも彼女の魂が未来永劫に生き続けるに違いない。感銘の作品だ。
・「極限」
直子の行動が、平助への愛と感ずるか、身勝手と感ずるか、筆者はその中間でみごとに筆を運んでいきます。直子の藻奈美への思いのなせるわざなのか、どうしようもない諦観のなせるわざなのか、あるいは、身勝手な本質ととるのか、読者の性別や年齢によっても、大いにわかれると思います。ひとつの極限におかれたときに、自分がどう行動するか、どんな思いを持つか、内なる思いがつまびらかになる、その極限を描いた大傑作です。
・「読み終えても何度も読み返したくなる警察小説の傑作短編勢揃い!」
以前に読んだ『影の季節』と『動機』から受けたインパクトが大きく、自然と次なる作品に手が伸びた。本書にはタイトルの「第三の時効」を含む計6本の短編が所収されているが、すべてを読み終えると1つの繋がりをもった長編小説としての体裁を十分に整えているという印象である。すべての短編がすでにテレビ放送化され、なんとなくテレビを通じて見ていた光景が浮かんできた。私としては、「第三の時効」という謎めいた、そして意外な真犯人を暴き出す巧妙な仕掛けを巧みに描いた作品以上に、「密室の抜け穴」と「ペルソナの微笑」がとても興味深かった。長時間に及ぶ会議、いやその会議が行われている会議室それ自体が実は「密室」であったという結末には驚嘆したし、そこへ至るストーリー展開も見事である。「ペルソナの微笑」は、その構想をどのような経緯で思い付いたのか是非とも知りたいと思った作品である。子供を殺人の「道具」に利用するという悪質極まりない犯行ではあるが、それを(学生時代に落語研究会に所属していた)刑事の言動がそれを冷静にさせ、後味のよい締めくくりになっており好感が持てた。「囚人のジレンマ」という作品も、この言葉が経済学のゲーム理論のなかに登場する重要な概念として使われていることもあり、その表現が有するリアルな臨場感を味わうことができた。警察機構、特に捜査第一課強行犯係の3つの班同士が抱える熾烈な葛藤や、それを束ねる刑事課長・部長の内面を鋭く炙り出す作風と文体に、多くの読者が惹き込まれるだろう。すべての作品がその「出だし」からすんなりとわれわれを横山ワールドに引き入れる神秘的ともいうべき雰囲気を醸し出している。巻末の「解説」には、本書の諸作品を貫いているのが、手柄を競ってせめぎ合う刑事らの「心理的ダイナミズム」の鮮明な描写であると書かれてある。「心理的ダイナミズム」、この言葉で作品の理解が更に深まった気がした。
・「傑作」
横山秀夫の「刑事物」短編集。
「陰の季節」や「動機」で警務部等、刑事以外にフォーカスした作品もそれはそれでおもしろかったが、「第三の時効」はそれを上回ると思う。横山作品の中では一番好き。帯に「これが横山秀夫の最高傑作だ!」とあるが、それは過大表現ではない。
緊迫した捜査、他の強行犯との熾烈な争いの中で、予想外の結末が・・・。
最後の話の結末を読んだあと、最初の話をもう一度読み返した。
読んで損はない傑作集。★5つ。
・「著者の筆さばきが冴える警察小説」
管理部門をメインとした警察小説を書き注目を浴びた著者が、捜査畑の最前線―F県警強行犯係―を舞台に据えて描いた短編集。
捜査部門を舞台にしているだけに動的な興奮を呼び、緻密な構成で事件を鮮やかに解決してみせる。しかし、著者の作品が事件や謎解きだけに終始するはずがない。事件を描きながら人を描く。むしろ人が主役と言っていいかもしれない。刑事たちそれぞれの懊悩、葛藤、トラウマ、苛烈な手柄争い・・・人と事件を、限られた枚数で十分に書ききる筆さばきの見事さ。ほんの1、2行で、物語を一気に展開させ、あるいは心情を痛いほどに表現する文章の魅力。その結果、短編でありながら、濃密な味わいと満足感をもたらしてくれる。
冒頭一ページの文章とラストの一篇が響き合って印象的だ。
本書を著者のベスト1にあげる池上冬樹氏の解説によると、すでに続編が連載されているらしい。著者の小説はどこまで進化するのか、見逃せない。
・「ゼッタイこの管轄では事件を起こしたくない(笑)」
捕まるのは時間の問題だし、もしアノ"冷血"楠見(二班班長)が取調官だったら、私はすぐにオチるっ!〜さっさとオチた方がなんか楽に思える(涙)次にイヤなのは"青鬼"朽木(一班班長)。田畑課長じゃないけど、表情があるだけ、村瀬(三班班長)がマシ?! そう、結局は、単なる究極の選択に過ぎない。どうあがいたって逃げることはできないのだから...
この短編集に出てくる F県警捜査第一課強行犯捜査の3人の班長達は、互いに競いあい、恐るべき検挙率を誇っている。部下たちを手足のように、ある時は道具のように遣って目の前を事件を他の班より早く終らせ、新しい事件をかっさらい...部屋にはギスギスとした雰囲気が常に漂う。彼らの直属の上司の田畑課長は、色は全く違えど独断専行のやり方に腹に据えかねることは少なくない。が、しかし全く持ってつけいるスキがない彼らが出してくる"結果"のおかげで、課長自身が着々と出世しているのである...そんな課長が班長達を評してコトバ。「”事件で食ってきた”のではなく、”事件を食って生きてきた”」なんか、ハゲタカに内臓えぐられているような表現(怖)
でも、この作品、決して後味が悪くない。娘の父親をかばっていた母親がよよと泣き崩れたら、通常は「なんで捕まえるの〜かわいそうじゃない」と同情に走るのだが、それをすっぱり斬りさげるところに何やら爽快感すら感じるのはなぜ?横山作品に共通するのだが、何か”柔らかい”部分をいつも残しておいてくれるのだ。それがどんなカタチを取るのかはその時々だが。
だから、一見非道に見える班長達の捜査の行方をじっくりと観ていられる気がする...
・「素晴らしい」
文句なしです。
横山さんの作品はどれも面白いのですが、物によってはリズムが独特で、作者が一人でのめりこんで走っていくのを「ちょっと待って〜」と追いかけているような気がしていたものです。
しかし、この作品にはそういうところが殆どありませんでした。
人物の心理や事件の流れの描写の距離感が絶妙で、個々の人物像もくっきりと浮かび上がっています。
連作短篇ですが、どの短篇にも、事件の核や登場人物、彼らの織りなす泥臭くも熱き戦いがあますところなく描かれていて、きらりと光る作品群です。
泥臭いのや熱血は嫌いという人以外には、是非一度読んで欲しいです。
●凍
・「山に登る人は違う」
彼らは最初から、ふつうの人たちとは違っているのだと思う。山に登る話は、よく美しい表現がされていて、読む側が勘違いしてしまうが、ここには、喜びや苦痛を含めた、リアルな人間像が描かれており、自分とは違うけれど、魅力的な生き方をしている人の姿を感じ取ることができる。生きることと死ぬことが、常に隣り合わせの登山家にとっては、どっちを取るかは、驚くほど簡単な回路で選択できてしまう自分が生きのびるという観点から判断するというシンプルで恐ろしい解決のしかたなのだけれど、これは、自分たちが日々の暮らしの中でこだわっている小さな問題を簡単に吹き飛ばしてしまうほど、迫力がある。身体的なダメージを受けても、人が望むことがこれほどの迫力を持つ物なのかと驚いて読んだ。真実だから、すばらしいのかもしれない。
・「フィクションでもノンフィクションでもなく哲学書です。」
山野井夫婦の物欲のない清貧なる生活には本当に驚いてしまう。ピュアで、ストイックで、同志的な山野井夫婦には、おおいに惹かれるし、もっともっと知りたくなる。現代において、こういう生き方があるのかと居住まいを正す若い人多くいることだろう。沢木はいい主題を、いいタイミングで見つけたのものだ。山野井夫婦のギャンチュンカンの「凍」からの生還物語を無駄のない沢木の文体が見事に描いている。沢木も何かを掴んで生還したのではないか。本題とは関係ないが、20世紀の奇跡と言われたトモ・チェセンのローツェ南壁の単独登頂は嘘だったらしいと山野井も思っていることは少なからずショックだった。また、ギャンチュンカン周辺の地図を掲載してくれれば読者に親切だったと思う。
・「凍える世界に息をも忘れる、文字の力を超える本」
登山に興味が無い人も、すぐ物語りに引き込まれてしまいます。<そこに山があるから登りたい>純粋に山が好きな人の気持ちがこの本を読むことで実感できる1冊。中国・ネパール国境の標高7952mのギャチュカン。私なんかは登山に無知なため、山野井夫婦がこの山に挑むエピソードの部分は標高からも難易度が理解できず困りました。が、物語はすぐ登山未経験者でも夢中になってしまいます。それは、山野井夫婦が山に惹かれる生い立ちに、二人が知り合いお互いを必要としてゆき、今回のギャチュカンへ定めのように人生が流れてゆくから。山がどんなに悪天候であっても、山の頂きを目指してしまう。凍傷に見舞われても、頂きを目指す気持ちと、生きて帰る気持ちは揺るがない。氷点下の世界で、自分を信じ闘う姿。読んでいくうちに、息をするのを忘れる。山に圧倒され、山野井夫婦に圧倒され、沢木耕太郎の文才に圧倒され・・・文字を超えた力を感じる1冊だった。
・「想像を絶する」
私は低山ハイカーなので高い山はもっぱら本や映像で楽しむだけなのですが、山野井夫妻のギャチュンカンの経験は凄まじいとしかいいようがないです。渡したロープにブランコのように座って一晩ビバークとか(もちろん極寒のなか)目が見えなくなって素手で岩壁を探るとか、もうこれで今生の別れと思い立ち上がれない奥さんの写真を撮るところは泣けて泣けて・・・。フィクションより凄いノンフィクションです。
・「壮絶な登山の記録」
いっきに最後まで通読した。凍傷のために手や足の指が切断されると悟り、クライミングの第一線から引退することを覚悟したとき、「それは死ななくても済むということだ。生き残れるようになったということだ。」と語る山野井泰史氏。「絶対の頂」に魅せられたものは、自分の命よりも前人未踏の頂に自らの足跡を残すことが大切なのか。壮絶な登山の記録に息をのんだ。妙子夫人との関係も同じ志を持って生きる同志としてすばらしい。
・「マコトに会いに池袋に行きたいな」
最初の1ページからぐいぐいと物語の中に引き込まれてしまった。生き生き生きと躍動感を感じさせる文章。ちょっとクールだけど友達想いのマコトが主人公の短編集です。読み進むうちに池袋の街で暮らす少年達の息づかいまで感じられそう。事件が起こってマコトが解決する謎解きも面白いけれど、登場人物の性格付けがとても魅力的。特に主人公が格好いい。母と二人で池袋の駅前で果物屋さんをやってるんだけど、頭の回転が速くて頼りになるやつ。最初の事件でクラシック好きになったので、事件ごとに、マコトが何のクラシックを聴くかを読むのも、楽しみの一つです、私も思わずラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」買ってしまいました。本を通してクラシックを聴くって言うのも素敵です。
・「おじさん・おばさんも楽しめます」
高校生の息子に薦められて読みましたが、あっという間に3冊読んでしまうほど、登場人物が魅力的でした。特に主人公の「真島誠」には、本の中の何人もがそうであったように、大いに引き付けられました。池袋に行った事がない人も?中年の人も楽しめます。
・「クール!」
ドラマにはまって読んだのですが、原作本にありがちな違和感が全くありませんでした。むしろドラマより少年たちの「クール」な雰囲気が伝わり、少年たちの社会の中にある熱い感情と独特な軽さが、絶妙に物語に厚みを持たせています。また何よりも単純に気持ちを熱くさせてくれ、爽快な読後感を与えてくれる作品です。
・「良くできた読み物」
まず第一に、何よりも軽快なテンポの良さがいい。つい読み始めるとやめられなくなる。これは作者の才能以外の何物でもない。最近なかなかこういう作品はなかったような気がする。
第二に、作品内の世界観の完成度の高さ。どれだけ現実に近いか、が重要なのではなく、読んでいる人間がどれだけその世界にハマっていくかが重要なのだから、そういう意味では非常に高い完成度に仕上がっていると思う。読んでいるうちに、頭の中に作品の世界が鮮明に描けるような気がするほどだ。
第三に、魅力的な登場人物。主役から脇役?まで、短編とは思えないほど印象に残る。(余談になるが、TVドラマのキャスティングも不思議なほどハマリ役ばかりである。) 短編なので、退屈しのぎ、で良いから読み始めてみて欲しい作品である。文庫本にもなっていることだし、この価格でこの作品を読めるのは格安だと思いますが・・・。
・「さくさく読めて楽し!」
昔TV版を見て、単純に面白いなーって印象がありました。原作本は何度も書店で見かけてたけど、ぶっちゃけ、今さら・・・とか思って手に取ったことはなかったんですけど、雑誌のインタビューとかで著者に興味を持っていたし、偶然友人からも薦められたので読んでみました。読み終わった後、レンタルショップでTV版を借りてきて何年か振りに見たんですけど、この作品は本で読んだ方が楽しいかなーって思います。感覚ですけどね。
“読みやすい”と“面白い”を兼ね備えてる小説ってありそうでないと思うけど、これはまさに僕にとってそんな作品でした。ちなみに石田衣良作品はこれが初めてだったのでこれからどんどん読みたいと思ってます。
・「不幸なのにおもしろい!」
不幸な話なのにすごくおもしろい。ひねってある所がけっこうあるから、何度読んでもあきない。
・「子どもの頃に読みたかった。絶対ハマってたはず。」
上からヴァイオレット、クラウス、サニーの三姉弟妹(きょうだい)が、その身に降りかかる不幸の数々、大人の悪だくみに立ち向かう姿が痛快な……とか、そういった紹介の仕方じゃ面白くないと思ってんだろうけど、今の売り方は、ちょっとマイナスに働く場合もあるかもしれないな。いや、だってコレ、普通に面白いもの。なんとなく「みんなと同じ」が好きじゃなかった、子どもの頃のオレだったら、もう無条件でハマってたんじゃないかと思う。分量そのものがさほど多くないのもあるだろうけど、全般に本を読む速度がものすごく遅いオレが、本当にアッという間に読み終えてしまったし、しかもひとつのライトな読みものとして、今のオレの-当然ながら、もう子どもではない-視点からみても、めちゃくちゃ楽しめた。このページの(カスタマーレビューではなく、もっと上の部分の)紹介文にあるような、「不幸のオンパレード」「ちょっとブラックな児童書」……、みたいな感じのミニ知識だけで決めつけることなしに(実はさすがのオレも、そこで引いちゃって、読まずにおくところだった…)、まずは試しにこの第1巻を読んでみよう。
そういえばこのシリーズもまた、ハリウッドでの映画化の企画が進行中のようだけど、読んでいてあちこちに、映像化を視野に入れたようなけれん味たっぷりの部分や、ダイナミックな展開などもあったりするので(「クレヨンしんちゃん」の映画を、ちょっとだけ思い出した。赤ちゃんの名前も「サニー」と「ひまわり」で、似てるし……ね)、きちんと作れば、かなり面白いものができるはず!だ。
・「幸せな結末がお好みの方は読まないで!」
物語はボードレール姉弟妹の3人が海辺で遊んでいると、屋敷が大火事で、両親もろとも灰になってしまったことを告げられることから始まる。 その時から、彼らの身の上は不幸極まりないものとなる。
悲しんでいる間もなく、3人はオラフ伯爵という欲張りで意地悪な親戚に預けられる。そこでさんざんこきつかわれ、寝る場所も食べる物も満足に与えられずに暮らすのだが、ある日、劇場を所有しているオラフ伯爵は、3人を劇に出してやろうという計画を立てる。
しかしこれには、ボードレール家の遺産を横取りしようというとんでもない裏があったのだ。命さえも危険にさらされたこの悪巧みに、3人はどのように立ち向かうのか。
両親をなくしたばかりの罪もない子ども達が、悪い大人にだまされて、不幸な目にあう気の毒な話なのだが、姉弟妹の性格描写や、スニケット独自のユーモアの世界が笑いを誘う。児童文学のジャンルに入ってはいるが、上等なユーモアに、大人も十分に楽しめる世界である。
・「笑えないところがおもしろい」
映画見てないので買ってみました題名からしてずっしりくるような感じでしたが・・・
本当にずっしりです。字が大きく、かなり読みやすかったです。内容は少ししかなかったけど・・・
僕はこういう不幸に不幸をかさねさらに不幸を重ね続けるストーリーは他にないと思いますし、とてもおもしろいと思います。
僕の言葉では表現できないほどの内容です。
・「お」
こわいーーー
・「緊迫の医療サスペンス」
凄まじい緊張感に、手に汗を握る。特に、終盤の、緊迫した場面は、著者ならではだ。
当初、本書のタイトルは、何を意味するのか、釈然としなかった。しかし、読み進むとともに分かって来るが、最後は「使命」について、考えさせられる。警官の使命、医師の使命、、、そして我々自身の使命についても。
現在の手術は、電気とは切り離しては、考えられない。電気メス、心電図モニター、レスピレーター、人工心肺装置などなど。ここに着目され、さらに、いくつかの人間模様がからめられ、大変面白い内容となっている。
ところで、別の患者のレスピレーターを動かすために、通電を要請される下りがある。病院では、停電用バックアップ電源に加えて、レスピレーターそのものも、バッテリーを搭載している。このバッテリー駆動時間は有限ではあるが、電源が尽きた場合は、手動でエアバックを操作する事が出来る。私は、勤務医であるが、長時間の停電のため、手動でエアバックを操作し続けた経験が1〜2度ある。この部分に少し違和感を感じたが、物語の本質とは別の問題だ。
しかし、電気が使えない状態で、あらゆる工夫が行われ、最大限の努力がなされた。これこそ医師の使命だと感じる。
使命とは、与えられた(限られた)条件下で、最大の努力を行う事だとも言える。病院の外でも、それぞれの使命を、この様に解釈する事も出来る。
著者もまた、作家という使命を全うしている。
・「東野圭吾による「長編医学サスペンス」の傑作品がここに!」
今年50歳になった東野圭吾は幅白い作風によって多くのファンを獲得している。東野圭吾による「医学サスペンス」というのは、私自身最初はピンとこなかった。しかしタイトルが心を揺さぶる。心臓血管外科の研修医である氷室夕紀が主人公=ヒロインだが、彼女の父親の口癖である「人間は生まれながらにして使命を与えられている」(105頁等)というのが本書を貫く主題だ。本書を「医学サスペンス」と書いたが、帝都大学病院で生じるさまざまな事件が1つの事件(いや復讐)に結実してゆくというシナリオであり、「使命」が鍵概念である以上、単なる医療のあり方のみを問うた作品では決してない。そうした意味でも本書は緊迫感に富み、私にはなかなかの好作品であった。
医学の知識には全く縁遠いゆえ、医学や手術のまつわる専門用語を織り交ぜた内容がどの程度の正確なものであるのかはわからない。しかしそのこと自体は大した意味を有していないと私は思う。医者は人間であって神様ではないのであり、本書は基本的には帝都大学病院を舞台にしているとはいえ、やはり醍醐味はそこで繰り広げられる熱い「人間ドラマ」であると思うからだ。自分の父親の手術に全力を尽くしたのか否か、そのことを自分の目で確認すべくその執刀医(西園教授)のもとで研修生活を送る夕紀。最後の「運命」のオペに立ち会った彼女は心から確信し、こう告げる。「あたし、先生のような医者になりたいと思います。尊敬します」(376頁)と。最後は執刀医を自分の父親としても素直に受け容れる。本書の内容は詳述できないが、一気に読み通させる、決して後悔のない作品と断言できる。
東野圭吾は大学で電気工学を学んだエンジニア。その知識が本書でも遺憾なく活用されている。彼にこうした作風の作品を書く能力があることを知っただけでも私には大きな衝撃があった。読了後、私はあらためて自分自答する。「自分の使命とは何であるのか」と。
・「「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど「心」によって救われる。」
まさか泣くとは思わなかったのだが、最後の数十ページは、涙が止まらなかった。
一つには、研修医・夕紀の、長年の孤独──ごく近しい人たちを心の奥底で疑いながら、そのことを誰にも打ち明けることができずに生きてきた、悲しい孤独と、その彼女の疑念を知りながら、ただ見守ることしかできずにいた、周りの人たちの愛と苦悩を思って。
もう一つには、初めは利用し利用されるだけの関係だったはずの穣治と望の間に、いつしか本物の愛情が芽生えてしまっていたこと、そしてそのことが穣治の良心をどうしようもなく目覚めさせてしまったことに。
結局、この物語の中には、根っからの悪人と呼ぶべき人間は一人も登場しなかった。
誰もが、目に見えない自らの「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど最終的にはその「心」によって救われる。うまく言えないが、そんなふうに感じた。
文中に何度も登場する「使命」という言葉。人は誰もが果たすべき使命を持っていて、その使命を果たすことがかっこいい生き方であり、幸福な生き方なのだ、という人生観、人間観には共感を覚える。
この本のタイトルは、非常に風変わりであると感じる。「使命」という言葉が使われるのは分かるし、「リミット」も納得できる。ただ、もう一つの「魂」という言葉がなぜここで使われているのかは、もしかしたら著者から読者への一つの謎かけなのかもしれない。その理由を自分なりに考えてみるのも面白い。
直木賞作家の名に恥じない、堂々の力作であり、非常に完成度の高い、読み応えのある一冊だった。
・「医者はいかなるときもその使命感を完遂できるのか?」
ハズレのない作家であるが、この本も引き込まれてしまい、一気に読んでしまった。医者の倫理観が今回の大きなテーマで、自分の子供を間接的に事故死へ追い込んだ人間が患者となり、死亡するリスクもある困難な心臓手術を行うこととなった場合、医者は自分の使命を全うして患者を救うことができるのか、それとも手術の困難さに紛れて未必の故意にしろ患者を死なせたい誘惑に駆られるのかということを主人公であるインターンの女医が全編を通じて探っていく。導入部分でバラバラだったいくつかの伏線がクライマックスへ向けて一本の線に融合していくのは、本当に鮮やかな描写である。
・「わかりやすい医療もの。」
正直なところ、わたしは病院が舞台の小説は苦手です。用語を理解しようとするあまり、本筋がわからなくなってしまうからです。この本も最初は読むのをためらいましたが、主人公が女性なので比較的すんなり入り込むことが出来ました。
外科医・夕紀の父が亡くなった真相を解き明かす事がテーマの作品ですが、私としては事件を起こした穣治とその恋人・望の方に注目して読みました。
一見自信なさげで頼りない望が、思いの外芯が強く大変な働きをします。そして穣治もそんな望に心を動かされるのです。2人の距離感が次第に縮まって行くところが丁寧に描かれていて、そこがとても良かったです。最後の方の電話で話すシーンでは思わず涙してしまいました。
東野作品では久しぶりにラストがすっきり出来ました。
●あたりまえだけど、とても大切なこと―子どものためのルールブック
・「親子のルールブック?」
ルールがとても分かりやすい言葉で書いてあるので子供も納得して、出来る限り実践しようとしています。親である私がついうっかり忘れていてルール違反!と子供に言われてしまいました。「~~をしなければならない」ではなく「~~をしてみよう」というのに好感をもったようです。「いい大人になれる?」この子供の言葉に大きく頷いてあげました。私も子どもに倣って実践してみなくちゃ、今からでもいいかな?
・「あたりまえで大切だけど、なかなかできないこと」
「全米最優秀教師賞」を受賞した小学校教師の、指導のエッセンスが満載された本です。 「だれかが話しているときには、その人の目を見よう」 「人に何かをもらったときには、必ず『ありがとう』と言おう」 「全校集会のときには、おしゃべりをしてはいけない」20年のあいだ教室経営をしてきたルールと重なるものがたくさんあり、うれしくなってしまいました。書かれているのはどれも“あたりまえ”のルールばかりですが、そのルールに添えられたエピソードの数々に唸ってしまいます。“あたりまえ”を徹底すれば、子どもは伸びていくのです。家庭むけではなく、教師のための教育書として読むべき本とみました。じつは、担任している5年生のクラスで本書のルールを一つずつ読んで紹介しています。「全米最優秀教師賞の先生のルールは、ぼくの考えている大切なこととほとんど同じです。みんなも、大統領に会えるかもしれませんよ!」草思社の教育書は目のつけどころがおもしろく、“あたり”が多いですね。
・「未来の子どもたちのために、こういう本は、あってほしい.」
今日仕事から帰ったら、小学生の息子が風邪をひいて、セキをしていました.「マスクした方がいいぞ」と言うと「マスクは、何のため?」と聞く.「そうだ.こういう時こそ、きちんと説明することが、我が子の未来にとって大切なことなんだ!」などと思い、私なりに頑張って説明し始めました.①周りの人に風邪をうつさないため.(バイキンって何かの説明も含む)②自分のノドも乾燥しないので、マスクはイイ.③マスクをしていないでセキする時は、手のひらを口に当てること.「手にバイキンがつくやんか」と言うので、④そのためには、手洗いやウガイが必要…などと、いろいろ説明しました.そういう時の私の〝マインド〟が、この本のコンセプトです.「子どもの将来ために、教えてあげられる〝常識〟は、きちんと教えよう」という、「おばあちゃんの知恵袋」みたいな本です.「知恵袋を持ったおばあちゃん」がいない家にこそ必要な本です.
・「健全な家庭で育った人が書いた本」
機能不全家族で育った人は「機能不全家族じゃない家族」のことが分かりません。この本の著者クラーク先生は健全な家庭で育った方です。子供にとって何が正しくて、何が必要なのか、教えてくれます。子供にも大人にも参考になる本です。
・「先生読んで!」
現役の先生に是非読んで貰いたいと思いました。ルールは「その通り!」と思うものも「そんなこと今更・・・」というものもありますが、このルールにまつわるクラーク先生の情熱が半端じゃない!もし自分の子どもがこんな先生に出会うことが出来たならなんて素敵なんだろう!と思わずにはいられませんでした。子どもを育てる、教えるということが只単に勉強が出来るようになるということではなく きちんと大人になる為のルールを身に付けるという当たり前なことなんだという意識が今の日本では足りない気がしました。このルールを実践するかしないかは兎も角これだけの情熱と愛情と手間を日本中の先生方にもかけて頂きたいものです。
・「日常に疲れた人に」
小説を読んでこんなに笑ったのは久しぶりだ。人間みんなどこか可笑しなところがあるよね、というユーモアに溢れた人間賛歌。
飛べなくなった空中ブランコ乗り。尖ったものが苦手な先端恐怖症のヤクザ。義父である教授のヅラをはがしたくなる医師。ボールが投げられなくなったプロ野球選手。過去に書いた小説と同じ小説を書いてしまうのではないかと、気に病む女流作家。
それぞれの登場人物たちは、自分がどこかおかしいのではないかと思って伊良部総合病院の神経科のドアを叩く。しかしそこにはそんな患者たちよりもっとおかしい精神科医、伊良部がいるのである。
丸々と太った体、子供のような言動。伊良部に振り回されるうちに、患者たちはやがて、まわりの人たちも自分と同じような悩みを持っていることに気づく。こう書いてしまうと陳腐かもしれないが、実際狭い世界にいると、本当ならこだわらなくてもいいような部分に固執してしまうのはよくあることだ。僕自身もしばしばそうなる。
このおかしな医師、伊良部はそんな行き詰った人たちの視界をほんのちょっと広げてくれるのかもしれない。日常に疲れた人に、ぜひおすすめしたい一冊である。
・「医学博士の伊良部一郎はもしかしたら「人間博士」かもしれない!?」
伊良部総合病院の神経科医である伊良部一郎を主人公とする人気シリーズ第2弾。神経科医を軸に組み立てた作風はとても斬新で、表題作の「空中ブランコ」を含む計5本の作品はいずれも面白く(個人的には、特に「ハリネズミ」と「義父のヅラ」が実に印象的であった)、思い切り笑わせてくれるものもあれば、思わずホッとするものなど、味わいに富んだ作品ばかりである。本当に一気に読ませる内容・文体であり、文句なしの「星5つ」の著書である。
神経科医を主役とした作風それ自体に最初は違和感を抱く読者もいるかもしれないが、軽快な話の展開構成に自然と本書の魅力に惹きこまれるのではないか(「趣向」が合わないと感じる読者もいるから、本書の評価は割れるだろう)。誰もが神経的・精神的な「病」を抱えているといっても過言ではないこの現代社会において、本書に登場する奇抜な思考・言動を惜しみなく披露する伊良部医師は、一服の「清涼剤」的な存在感を十二分に醸し出している。あまりの荒唐無稽さに、患者のほうが「自分こそ医者ではないか」と思わせるくらいだ。こんな医者がいるとは思えないが、どこかにいてほしい類いの医者だ。治療していないようで実際のところは治療している。とにかくこの医師は「ただもの」ではない。白衣の名刺に付けられた「医学博士・伊良部一郎」の「医学博士」の隣に、「人間博士」と付け足したい気分である。
本書のメッセージは、やはり「(とくに)心の病を治すのは自分である」ということになろうか。伊良部はそれを大胆な言動を通じて遠回しに患者に気付かせているのだ。なお「人間の宝物は言葉」であり、「その言葉を扱う仕事に就いたことを、自分は誇りに思おう」(281頁)という最後の作品「女流作家」における女性作家の言葉は、まさに作者自身のそれであろう。伊良部病院の神経科が「地下1階」にある理由も私には理解できた。伊良部医師の今後の活躍が楽しみだ。
・「単におもしろいだけではない」
現実的には、こんな精神科医がいるわけがない。しかし、伊良部総合病院を訪れる患者たちの抱える病気は、現代の日本が抱える問題そのものである。程度の差こそあれ、自分自身にも思いあたることがある。そう考えると、笑ってばかりはいられない。 本の構成は、5編の短編集であるが、すべてに、精神科医の伊良部が登場する。5編とも上手くまとまっており、話の展開も本当におもしろい。
・「前作よりもやわらかく」
伊良部総合病院地下にある神経科。訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。シリーズ第2弾。
その患者たちの行動は確かに異常なのだが、ある程度は共感できてしまう。私たちが誰もが少しは抱えているであろう異常を、エスカレートさせたにすぎない。
そして精神科医である、主人公。その破天荒な行動に、患者は翻弄される。P193「無駄だって。話して治るなら、医者はいらないじゃん」このセリフは、すごいなあ。
ああ、あるある……ねーよwみたいな読み方ができると楽しい。主人公にいらつくともうアウト。フィクションと割り切れないと、かなり不快でしょう。
前作よりも、周りの人々との絡みが多くなっている。シニカルな感じが少しだけ薄れ、ハートフルな要素も入ってきたように感じた。その分深みが出ていいと思います。私は前作よりも好きです。「女流作家」には感動しました。
・「マユミちゃんの意外な一面」
「女流作家」に出てくるマユミちゃんの意外な一面に驚かされた。案外、直木賞受賞の決め手は、このマユミちゃんの以外な一面にあったのかもと思わされた。
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